夢を見た。
1人の少年の冒険譚だ。
森で育った彼には、他の住人と違い相棒が居なかった。
しかしある日、その相棒が彼の前に現れた。
それが始まり。
育ての親を喪い、悪と戦う勇者という使命の為に故郷を旅立つ少年。
森の外に広がる平原を抜け、待っていたのは城での運命の出会い。
そこか火ら山を登り、川を上った。
しかしそれで終わることなく、彼は7年の時を超えた。
そして故郷を、火山を、湖を、村を、砂漠の奥を巡る。
こうして最後には運命の出会いを果たした城で、悪の大魔王を倒し彼は7年前へと帰還し相棒と別れ、物語は一旦幕を下ろす。
だが勇者の英雄壇はまだ続く。
別れた相棒と再会する為旅を始めた少年は、ある日別の世界へ行くことになる。
そこは3日後に月が落ちてくる滅亡寸前の世界だった。
しかし彼はその3日間を繰り返しながら、4つの神殿を巡り元凶である魔人を倒す。
こうして世界は救われ、彼はまた旅立ち、物語はそこで幕を下ろす。
さて、そんな2つの世界を救った勇者である彼にも願いがある。
それは己の名を後世に残すことだ。
これほどの偉業を残した彼の名が残っていないのには理由がある。
悪の大魔王を倒し7年前に帰った彼は、帰った直後に未だ動いていない後の大魔王の野望を未然に防いだ。
これにより被害は抑えられたが、同時に彼の戦いも無くなった。
また別の世界で彼は魔人と戦った。
しかしその世界は彼では無い別の少年の夢の世界、彼が旅立った後にその少年は夢から目覚め世界は消滅した。
彼は思った、己の名を残したいと。
せめてもの慰めに、己の子孫に己の剣技を授けたがそれだけでは嫌だった。
別に誰かから褒賞が欲しかった訳では無い。
別に己の力を見せつけたかった訳では無い。
別に己の偉業を称賛されたかった訳では無い。
ただ誰かに覚えていて欲しかった。
この冒険で得た称号を、その為に歩いてきた道のりを。
たった一人でいい、知って欲しかった。
唯一覚えているはずの相棒とは、会う事は終ぞ無かった。
だから――
◆
「夢か……」
見滝原の繁華街にあるホテルの一室で、1人の青年が目を覚ます。
彼の名は
ブローノ・ブチャラティ。
イタリアのギャング『パッショーネ』の幹部を務めている男だ。
そんな彼がなぜ日本に居るのかというと、仕事漬けの日々を送っていた彼を見かねて部下が骨休みの機会をくれたのだ。
彼はその好意を無下にせず、こうしてここに旅行に来た。
という事になっている。
だが実際は違う。
「セイバー、来てくれ」
ブチャラティは己のサーヴァントを呼ぶ。
そう、彼はここに聖杯戦争のマスターとして連れてこられたのだ。
「……」
ブチャラティの呼びかけに応え、セイバーが姿を現す。
緑の衣に金色の髪、そして背負う剣と盾。彼がブチャラティのサーヴァントだ。
ブチャラティはセイバーに話す。
「セイバー、お前の過去と願いを夢で見た。
だからこそ聞くぞ。お前はそれを聖杯、願望器に願って満足か?」
「……」
ブチャラティの問いに無言で首を横に振るセイバー。
満足なわけがない。
セイバーの願いを叶えるという事は、何も知らない人間に苦難の記憶を植え付けることと同義だからだ。
そんな己の利己的な思いを、人に押し付けて平然と出来るならセイバーは英雄になどなっていない。
「セイバー、俺はお前と初めて出会った時こう言ったな。俺はこの聖杯戦争を潰すと。
それに対しお前は承服しかねる態度だった。
理性では何も知らない人間を殺し合いに呼び出すなどあってはならない、と思っていてもお前の心に願いがあったから賛同しきれなかった。
それは叶えてどうなる問題ではないと分かっているにも関わらずだ」
「……」
ブチャラティの言葉に何も返すことが出来ないセイバー。
だがブチャラティの話は続く。
「セイバー、もう1度だけ言うぞ。俺はこの聖杯戦争を潰す。
吐き気を催す邪悪とは、何も知らぬ無知なる者を利用することだ。自分の利益だけの為に利用することだ。
俺はこんな悪を見過ごして生きるなど出来ない。
勇者なんて大層なものじゃないが、悪に屈するのではなくお前の様に悪と戦う道を選びたい。
自分を殺すのではなく、自分を生かす道を往きたい。
――だが」
ブチャラティはそこで言葉を途切れさせ、セイバーを見る。
そして手を伸ばしてこう言った。
「それにはお前の力が必要だ。
俺だけではサーヴァントには勝てない。だから、俺と共に戦ってくれセイバー」
その言葉にセイバーは考える。
本当はすぐにでもこの手を取りたい。
だが己の願いが邪魔をする。己の願いの小ささがそれを阻みそうになる。
否、そうじゃない。
本当は――
「……俺の手を取ってくれたのか、セイバー」
「……」
セイバーはブチャラティの手を取り、聖杯戦争と戦う道を選んだ。
躊躇いは在った、なぜならセイバーには誰かと組んで戦った経験が無いから。
かつていた相棒は、決して弱くは無かったが直接的な戦闘はずっと1人だった。
そんな自分が、誰かに背中を任せる戦いが出来るのか。
自分以外の全てを敵と決め倒すのでなく、誰かを守る戦いが出来るのかが、ずっと不安だった。
だがもう迷いは無い。
セイバーは選んだ、マスターと共に戦う事を。
まだ見も知らぬ誰かの為に再び戦うと、セイバーは決断した。
「ならば早速行動しよう。まずは他のマスターとサーヴァントを探すぞセイバー。
そいつが聖杯を狙うなら排除し、そうでないなら一緒に戦ってくれる同盟を組む。
異論はないな?」
セイバーはブチャラティの方針に異を唱えることは無かった。
それを確認したブチャラティは、ホテルのドアを開ける。
「セイバーは霊体化して着いてきてくれ」
その言葉と共にセイバーは霊体化する。
そしてブチャラティは歩き出した。
歩きながら彼は思う。
(すまない。アバッキオ、ナランチャ。
俺はまだお前達の元へは逝けない。俺にはやるべきことが出来てしまったからな。
だがこの聖杯戦争を潰した暁には、きっと……)
彼は歩く。
例えこの戦いを終わらせても、待っているのが死だけであったとしても。
ブローノ・ブチャラティとはそういう男なのだから。
【クラス】
セイバー
【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具A
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。
騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。
Bランクでは魔獣・聖獣ランク以外を乗りこなすことができる。
【保有スキル】
時の勇者:E
ハイラルを救った勇者。
あらゆるダンジョンを1人で攻略した逸話から、トラップや仕掛けを見抜く事が出来る。
さらに、あらゆるアイテムを使いこなした逸話からどんな武器でもある程度の技量を持って扱う事が出来る。
ただし、セイバーが歩んだ歴史には時の勇者が存在しないためランクが大きく下がっている。
勇気のトライフォース:A
ハイラルに伝わる聖三角の一つ。
同ランクの戦闘続行と無窮の武練を兼ね揃えた特殊スキル。
【宝具】
『時を超える退魔の剣(マスターソード)』
ランク:A 種別:対魔宝具 レンジ:1 最大補足:1
ハイラルに伝わる伝説の剣。
混沌もしくは悪属性を持つ者には、本来以上のダメージを与える。
『勇者を支えたもう一つの武具たち』
ランク:D 種別:対魔宝具 レンジ:1- 最大補足:1-
セイバーの持つ『時を超える退魔の剣(マスターソード)』以外の武器。
ハイリアの盾、爆弾、弓矢、ロングフック、メガトンハンマーなど。
この中で消耗品である爆弾や矢は魔力を消費することで補充が可能。
ただし、セイバークラスとして召喚されたため本来より効果が落ちており、中には再現されていないものもある。
【weapon】
上記の宝具。
【人物背景】
大魔王ガノンドロフを倒した時の勇者。
そして彼は過去に帰り、ガノンドロフの野望を未然に防いだ。
だがそのせいで、時の勇者としての戦いは無くなり彼は歴史に名を残すことが出来なかった。
【サーヴァントとしての願い】
自らの名を残したい。
だがそれは聖杯に祈ることでは無い。
【運用法】
高い水準で安定しているのでどんな状況でも安定した戦いが出来るサーヴァント。
マスターも戦闘力があるので気をそれほどやらなくていいのもプラス。
欠点は、主従揃って遠距離攻撃に乏しい事。(セイバーの宝具に弓があるものの決め手にはならない)
アーチャーやキャスターと同盟を組めれば盤石となるだろう。
【マスター】
ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風
【マスターとしての願い】
この聖杯戦争を潰す。
【weapon】
スタンド『スティッキィ・フィンガーズ』
【能力・技能】
触れた対象にジッパーを取り付ける能力のスタンド。このジッパーは遠隔からでも開閉可能。
別の空間を作り出して物を隠す、ジッパーを開ききって切断など様々な方法で使用可能。
なお、近距離パワー型のスタンドなので単純なパワーとスピードも優れている。
ブチャラティは顔の汗のテカリ具合で嘘を見分けることができる。
汗を舐めればもっとわかる。
【人物背景】
ギャング組織「パッショーネ」の幹部
だったがボスに反旗を翻し、ボスを倒すために戦った男。
正確は冷静沈着、頭脳明晰で部下思い。
温厚で責任感も強く、街の人々からの人望もある。
自身と父親の人生を狂わせるきっかけとなった麻薬を憎悪している。
【方針】
聖杯戦争を破壊するために動く。そのために同じ志の仲間も欲しい。
戦う意思の無いマスターは守る。
【備考】
参戦時期は
ディアボロ戦で死亡した後です。
ですが肉体は普通の人間に戻っています。
最終更新:2018年04月14日 11:16