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「沙々ちゃん、ごめんね」
「どうしたんですか?」
「噂話あんまり集められなくて……」


今日も学校が終わって。
『出来たばかりの友達』と一緒に下校をしていた。
穏やかな並木道を歩きながら、私は友達に謝る。
友達である『この娘』に頼みごとをされていた。
同じ見滝原中学三年生で、隣のクラスの女の子だ。

「周囲で気になる話があったら私に伝えてほしい」。
「出来れば不審に思われない程度に聞き出してほしい」。
どうしてそんなことを頼むの、とは聞けなかった。
だけど、友達は心の底から私に頼み込んでいた。
だったら無下にするわけにはいかない。
力になってあげる。それがこの娘の友人である私の務めだ。

だけど、結局大した噂話は無く。
ほぼ手ぶらに近い状態で報告することになった。
ばつの悪い気持ちが胸中に浮かび続ける。
怒られないかな。がっかりされないかな。
気持ち悪い感覚がぐるぐると回り続ける。
恐る恐る友達の反応を伺った私だった。


「うふふ、いいんですよ!お気持ちだけでも十分です!」


だけど、そんな心配も杞憂で。
友達は笑顔でそう答えてくれた。
跳ねた茶髪を少しだけ揺らし、ニコニコとお礼を告げてくれた。
その暖かな笑顔に、安堵を覚える私がいた。

「ありがとう!頼りにしてますよっ!」
「沙々ちゃん……」
「また後日、よろしくお願いしますねー!」

気が付けば、あっという間に別れるポイントについていた。
分かれ道の左側に進んだ友達は、私に手を振りながら去っていく。
ここから先、友達とは別々の帰路に着く。
自宅の方向が違うせいで一緒に下校しても少しの間だけしか喋れない。
それがもどかしいけど、ほんの僅かにでもお喋りが出来るのは楽しい。

まだ、ほんの少しだけの付き合い。
だけど、間違いなく仲良しだった。
沙々ちゃんには他にも何人か友達がいる。
他の娘達とも親しげに会話しているのを何度か見たことがある。
きっと私以外にも親友と呼べる存在がいるのだろう。
けれども、私にとって一番の親友はあの娘だけだ。
何故だかあの娘の言うことなら何でも聞ける気がしちゃう。
我ながらちょっとヘンな気持ちだと思う。
出来たばかりの友達だというのに。
だけど、それくらい彼女のことを想っている。


優木沙々ちゃんは。
間違いなく、私の親友だ。




都合のいい間抜けがいると助かる。
こうして自分の「洗脳」に簡単に引っ掛かってくれるのだから。


くふふふ、と笑いながら私は思考する。
見滝原中学校に通う生徒数名は既に私の手駒になっている。
今は彼女らを経由して情報をかき集めている所だ。
小さな噂話程度でも現時点でな貴重な情報足り得る。
状況把握の糸口にはなるだろう。
故に骨の髄まで利用させてもらうつもりだ。

とはいえ所詮は学生。限界もある。
いずれ来る本戦に備え、より情報網を強固にすることも考えている。
より情報を集めやすい立ち位置の人間を探しだし、支配下に置く。
そうすれば自分が労すること無く優位に立てる。
尤も、魔法も決して万能とは言えない。
本体である私が衝撃を受ければ解除される危険性はあるし、魔法である以上他の主従に感付かれる可能性だってある。
故に、誰彼構わず不用意に多用するのは禁物だ。
警戒しなくてはならない。大丈夫、私になら出来る。
頭を振り絞り、必要最低限度のラインを見極めるのだ。

そんなことを考えながら、私は住宅街を歩く。
自宅のマンションはもうすぐそこだ。
帰ったらゆっくり休みたいところだが、あいつのせいでそうも行かないだろう。
私は思わず溜め息を吐いてしまう。


私、優木 沙々は魔法少女である。
そして同時に、聖杯戦争に参加することになったマスターだ。
見滝原に乗り込んで、失敗して、終わった筈だった。
だが、聖杯とやらの奇跡が私をここへと呼び寄せたらしい。


此処に呼び寄せられる前。
最後の記憶は、絶望だった。
縄張り拡大のために見滝原に乗り込み。
そこで美国織莉子と呉キリカに敗北し。
終いには、魔法少女の真実を伝えられ。
魔女の正体を知った私は、自らソウルジェムを砕き―――。

あの瞬間、意識が闇に沈んだのは何となく覚えている。
まるで眠りに落ちるような感覚だった。
きっと自分は死んだのだと思う。
あのときは間違いなく恐怖していた。
今だって思い出すとほんのり寒気がする。
真実を知ってしまい、死を選んだのだから。

だが、同時にそこまで実感がないのも確かだ。
現在の私はこうしてピンピンしているし、死の感覚も一瞬過ぎて大した感慨がない。
砕いたはずのソウルジェムも何事も無く指に嵌められている。
聖杯戦争の予選期間、偽りの日常というクッションを挟まれたことで「変に冷静」になってしまっているらしい。

冷静になってみると何がなんだか解らない。
気がつけば、この見滝原の住民になっていて。
いつの間にか、本当の記憶を取り戻して。
訳が解らぬ内に聖杯戦争の当事者になっていた。
今の私は見滝原中学に通う生徒で、マスターだ。
別に参加したいと言ったわけでもないのに、勝手にマスターにさせられている。
勝手に聖杯戦争の知識をインプットされ、断りもなくサーヴァントを召喚させられている。
はっきり言って傍迷惑とも捉えられる状況だ。


―――――くふふふふ。


とはいえ、これはチャンスと言ってもいい。
自分は生きていて、聖杯戦争のマスターになっている。
死の記憶など無かったかのように。
見方によっては敗者復活戦だ。
私は資格を得たのだ。選ばれたのだ。
ならばそれを存分に利用させてもらう他ない。
私はそう考え、サーヴァントを従える戦いへと身を投じたのだ。

心のなかでほくそ笑んでいたのに。
気がつけば、そんな思いも急速に萎えていた。

そう。この私にもサーヴァントがいる。
あのクソッタレのアホサーヴァントが。
サーヴァントとは古今東西の英雄、らしい。
マスターに従い、マスターと共に戦う戦士、らしい。
マスターにも願いがあり、戦う理由がある、らしい。
聖杯戦争に与えられた知識によれば、だが。
自分のサーヴァントにそんな大それた野望があるようには見えない。
そもそも従者だというのに、私に従おうとする意欲が見られない。
いつも横柄。気だるげ。しかも下品。
召喚してから三日ほど経つが、殆ど家でくつろいでいるだけ。
リビングでテレビを眺め、勝手に冷蔵庫を漁り、暇になると部屋のものを物色したりする。
デリカシーの欠片もない。便所のネズミのクソみたいな男だ。
あんな輩を引き当てたくなど無かった。
叶うことならば追い払いたいが、今は贅沢を言っていられない。

そう思っている内に私はマンションの自宅前にまで辿り着く。
再び憂鬱に溜め息を吐きながら、ガチャガチャと鍵を開ける。
どうしようもない鬱屈を抱えながら玄関へと足を踏み入れ。
靴を脱いだのち、とぼとぼとした足取りでリビングへ向かった。
そして、あいつが視界に入る。



「およッ!戻ってきたのかい!」



―――クソ野郎がノーテンキに挨拶してきた。
思わず舌打ちをしそうになったが、何とか堪えた。
こんな奴に苛立たされてるという事実を表に出したくない。

男はリビングのソファーに図々しくふんぞり返り、テレビを見ながらくつろいでいた。
シルクハットやコートを纏った黒尽くめのファッションは端から見れば洒落ている。
黙っていれば伊達男に見え―――るかは疑わしい。
癖のついた頭髪を揺らし、不細工な面構えでニヤつく姿にはとにかく腹が立つ。
この冴えない男が私のサーヴァント、アサシンだった。

「なあ……ユウキ……なんだっけ?お前」
「だから沙々ですってば」
「あぁ!それだッ!ユウキササ!」
「覚えられましたか?」
「たぶんなァ」

こいつは従者の分際で口が悪い。
そもそもこっちの名前をちゃんと覚えようとしないし、そのことを悪びれもしない。
一発殴ってやりたくなるし、何なら魔法で支配してやりたい。
尤も、それが出来ないのでイラつかされているのだが。
「強いものを従わせたい」という願望から発現した洗脳魔法も、サーヴァントという強大すぎる存在には全く通用しない。

「ウイスキー買ってきてくれる?ノド乾いたんだよ」
「……マスターに命令するつもりですかぁ?」
「は?歳上の言うことは聞くもんだろ」
「いや、あなたが従者であって……」
「アメリカ産な、ジャパニーズウイスキーなんざ買ってくるんじゃあねーぜ」

だからこいつの横柄な態度を魔法で黙らせることも出来ない。
人の話を聞かずに注文をぶつけてくるアサシンに対し、思わず青筋が浮かびそうになる。

「何様のつもりなんですか?」
「知らねえよガキ、早くしろよ」
「未成年なんだから買えるワケないじゃないですか」
「メンドくせーな……魔法とか使えよ」
「はい?こんなことの為に?」
「おうッ、当たり前だろ」

喧嘩売ってんじゃねえ。
当たり前のように「当たり前だろ」とか言ってるんじゃあない。
初めて召喚した日からずっとこのふざけた調子だ。
クソほどイラつくし、クソほどムカつく。

「はぁ……そんなデカい態度取ってんですから、ちゃんと仕事はしてくれるんですよね?」
「おおッ!そこは任せとけ!オレだって聖杯に用があるんだ!」

こいつに願いがあることを今初めて知った。
というか何もしてないのに何故そんなに堂々としているのか。


「オレを裏切りやがったウェカピポ……オレを助けに来なかったDio……
 あいつらは許さねェ……存在ごと消し去ってやるぜ……へへッ」


忌々しげに、憎々しげにアサシンはそう呟いた。
軽薄な表情は変わらない。だが、明確に憎悪の色が見えた。
どうやら私怨で聖杯を求めているらしい。
まあ、心底どうでもいいが。
重要なのは私の願いなのだから。このクソの望みなんかどうだっていい。

「あッ!そうだそうだ」
「今度はなんですか……?」
「つまみ買うの忘れんなよ」
「いや、あの、ふざけてんじゃ……」
「よろしくなァー」

なんでもう買いに行くことが前提になってるんだ。
本当に身の程が解っているのか。
令呪を使ってやろうか―――そんな考えが脳裏をよぎるも、思い止まった。
令呪はサーヴァントに対する絶対命令権。いわば最強の切り札だ。
それをこんな下らないところで使う訳にはいかない。
ましてや「下っ端のクズを従えられず令呪に頼る」という構図そのものが屈辱的すぎる。
プライドの問題に加え、絶対的な勝利を得るためにも温存しなくてはならない。

「あとさァ」
「今度は何ですか……?」
「お前って戦う気あんだよな」
「いや、当たり前でしょ」
「キミ 女子供がいたら躊躇うタイプかい?」

そんな思考を続けていた矢先。
アサシンが急に変な質問をしてきた。
いや、まあ、答えは簡単なのだが。


「別に……躊躇いませんよォ」
「よかった、じゃあ楽だわ」


しれっとそんなことを言ってのけた。
少しだけハッとしたように、私はアサシンを見てしまった。
再びテレビに目を向けてニヤニヤ笑っている。
一瞬だけ垣間見えた薄気味悪い雰囲気は、すぐに消え失せていた。
素っ頓狂な輩だと思っていたが。―――いや、実際そうなのだと思うが。
一応は手段を選ばずに戦う意思がある、らしい。
何だかんだで、こいつも勝ちたくて此処にいるのだ。
そうだ。私も勝たなくてはならないのだ。


魔女にだけは、なりたくない。
なってたまるものか。


魔法少女の現実は虚飾で塗り固められていた。
魔法少女の敵、魔女の正体は魔法少女の成れの果てだった。
知りもしなかった。キュゥべえに騙されたと言ってもいい。
あいつは肝心の魔女の正体を一言も伝えず、詐欺のような形で奇跡を売り付けてきたのだから。
その一件もあり、聖杯がもたらす奇跡への疑心も少なからず抱いている。
だが、つべこべは言ってられない。
自分が化け物になるかどうかの瀬戸際なのだ。
もはや藁にも縋る想い。これで願いが叶うのならば、それで万々歳。
そもそも一度死んだはずの自分が此処にいるという時点で、奇跡の実在はある程度約束されている。
ならば賭けるまで。賭ける価値はきっとある。きっと。

魔法少女はいずれ魔女に成り果てる。
その運命から逃れられるというのなら、自分は何だってする。
聖杯を掴むために他の主従を蹴落とすことだって構わない。
私、優木沙々は決して手段を選ばない。
どんな強者だって屈服させられる強かな魔法少女なのだ。



【クラス】
アサシン

【真名】
マジェント・マジェント@ジョジョの奇妙な冒険 第7部「スティール・ボール・ラン」

【属性】
中立・悪

【ステータス】
筋力D 耐久E+ 敏捷E 魔力E 幸運D 宝具D

【クラススキル】
気配遮断:E+
サーヴァントとしての気配を断つ。
アサシンとしてはあるまじきランクの低さであり、効果は微弱。
しかし後述のスキル「下衆の輩」の影響で特殊な隠密性を備えている。

【保有スキル】
射撃:D
銃器による早撃ち、曲撃ちを含めた射撃全般の技術。
殺し屋として最低限の射撃技術を備えている。

仕切り直し(偽):D
しぶとく生還する能力。
瀕死の重傷を負った際、アサシンの意図とは関係無く戦場から離脱しやすくなる。

傲慢:B
土壇場で謙虚に振る舞うことのできない浅はかな性分。
戦闘で優位に立った際、全判定のファンブル率が上昇する。

下衆の輩:A
敵存在からターゲットとして捕捉される確率を大幅に減少させる。
脳ミソが少なめの三下を警戒する英雄など殆どいないし、ましてや下っ端のクズの生死など誰も気に止めない。
戦闘態勢を維持している際には効果が多少劣化する。

【宝具】
『20th Century Boy(トゥエンティース・センチュリー・ボーイ)』 
ランク:D  種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
アサシンの精神の具現、通称「スタンド」。
能力は「絶対防御」。本体がスタンドを身に纏うことであらゆる害を無効化する。
単純な物理攻撃は勿論、酸欠など生命活動に関わる状況からも完全に本体を守り切る。
サーヴァントの特殊能力や宝具さえも完全に遮断するが、発動中はアサシン本体が一切動けなくなるという欠点を持つ。

『死に損ないの虫螻(ボーン・トゥ・ブギー)』
ランク:E+  種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
瀕死の状態から生還を果たし、舞台から退場した際にも死を回避した逸話が宝具と化したもの。
アサシンは外傷では決して消滅しない。
全身を刻まれようと、脳天を撃ち抜かれようと、霊核を攻撃されようと、絶対に消滅しない。
どんなダメージを負おうと瀕死の状態で必ず現界し続ける。
言うなれば“絶対にHPが1だけ残る”宝具。ただし魔力枯渇の際には消滅を免れない。

【Weapon】 
拳銃、二連装散弾銃

【人物背景】 
合衆国大統領「ファニー・ヴァレンタイン」の部下にしてスタンド使い。
気だるげで陽気な性格だが短慮な一面も持ち、ウェカピポからは「下っ端のクズ」と称されていた。
聖人の遺体奪取のためにウェカピポとコンビを組み、ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターに襲い掛かる。
しかし油断の隙を突かれて敗北。瀕死の重傷を負うも、通り掛かったディエゴ・ブランドーに助けられてかろうじて生還する。
後に再登場し、自身を裏切ったウェカピポと激突。
スタンドの特性を活かして追い詰めるも、ウェカピポの奇策の前に敗北する。
スタンドによる絶対防御を展開した状態で川底に沈められ、抜け出すに抜け出せない状況を前に考えることをやめた。

【サーヴァントとしての願い】 
ウェカピポとDioを存在ごと消し去ってやる。



【マスター】 
優木 沙々@魔法少女おりこ☆マギカ~symmetry diamond~

【マスターとしての願い】 
いつか魔女に成り果てる運命を何がなんでも覆す。
キュゥべえの一件から聖杯への疑心も捨てきれないが、つべこべは言ってられない。

【能力・技能】 
ソウルジェムによって魔法少女に変身することができる。
固有の魔法は「洗脳」。作中では複数の魔女を従えたり、他者の記憶を書き換えて支配することが出来た。
ただし沙々がダメージを受けた際には洗脳が解除されるなど、強制力はそこまで高くない。
手に持った杖から魔力の球を形成して攻撃することもできるが、魔法少女としての単体の戦闘力は極めて低い。

聖杯戦争においては存在としての格が遥かに勝るサーヴァントを洗脳することもできない。
また魔法である以上洗脳の術には魔力が籠められており、魔力探知に優れる存在ならば他者の洗脳を見破れる可能性もある。

【人物背景】 
見滝原の隣町・風見野で活動する魔法少女。
表面上は明るく丁寧な物腰だが、実際は極めて陰湿で利己的な性格の持ち主。
固有の魔法も「自分より優れたものを従わせたい」という願望の発露である。
「symmetry diamond」では縄張りの拡大を狙って見滝原に来訪し、魔法を駆使して美国織莉子・呉キリカを翻弄するも最終的に敗北。
更には魔女の真実を知ったことで絶望し、自らソウルジェムを砕いて自害した。

聖杯戦争においては見滝原中学に通う学生となっている。
原作中で年齢は明かされていないが、本企画ではキリカや織莉子と同じ中学三年生として扱う。

【方針】
どんな手を使ってでも勝ち残る。
いけ好かないアサシンもいつか屈服させる。
魔女にだけは絶対になりたくない。
最終更新:2018年04月17日 17:24