時刻は誰そ彼時。場所は見滝原の外れにある過疎マンションの一室の前。
学生服にミニスカートの上にコートというスタイルで、魔法少女狩りスノーホワイトは臍を噛む思いで立っていた。
その胸中を占めるのは、自分はどうしてこんなところにいるのかという、焦燥。


あと少し、あと少しで―――『プク様』が全ての魔法少女をお友達にする世紀の瞬間に立ち会うことができたのに!


昔、児童向けアニメに出てくる様な、優しくて可愛くて正しい魔法少女に憧れていた姫河小雪という名の、ただの少女がいた。
姫河小雪は中学生になって本物の魔法少女に選ばれ、幼馴染と優しい人助けの日々を送る『スノーホワイト』になった。
その少しあと、スノーホワイトは森の音楽家クラムベリーという魔法少女が起こしたデスゲームの被害者であり、生還者になった。
その過程で、心を通わせた幼馴染も、優しい先輩魔法少女も、自分を守ってくれた少女も、一人を除いてみんな死んでいった。
だからよろず相談魔法少女ではなく、魔法少女狩りになろうと決め、『魔法少女狩り』スノーホワイトが誕生した。


訓練を積み、戦闘用ではなかった自分の魔法を鍛え上げ、悪事を働く魔法少女を狩り続けた。
勝って、勝って、勝ち続けた。狩って、狩って、狩り続けた。
人間の争いと違い、魔法少女の戦闘における敗北は、死を意味する。
魔法少女になる人間は全員大なり小なりネジが飛んでいる。悪事を働く者なら、猶更だ。
殺すことを忌避しない相手に負ければ命はない。だから人助けに使うはずだった魔法を相手の弱みを暴くような形に変質させてまで鍛造した。
もう後悔しないように、もう理不尽に奪われることがないように、走り続けた。

けれど、得られたものは何も無かった。
例え悪い魔法少女を狩り続けても死は泥の様に纏わり続け、周りの者たちを沈めていく。
理想はいつしか苦悩へと変わり、責任やプレッシャーだけが募っていく月日は確実に精神を摩耗させていった。
そして、無明の荒野を行く様な日々の果てに、ついに魔法少女狩りは『折れた』。
折れて、それでも無様に掌に熱を込めて立ち上がろうとしたところで―――出会ったのだ。
プク・プックという名の救世主に。

「……聖杯を、何としてもプク様の元に」

魔法少女全てをお友達にした後、魔力が枯渇し亡国の危機に瀕している魔法の国を維持するエネルギーにするというプク・プックの計画。
その計画を聞いた時、スノーホワイトは涙が溢れそうになった。
みんなプク・プックのお友達になれば悪事を働く魔法少女はいなくなる。何故なら、プク・プックが悲しむからだ。お友達はお友達を悲しませるようなことはしない。
争いはなくなり、この世で最も尊く偉大なプク・プックの名のもとに全ての魔法少女が笑いあえるのだ。

――――魔法の装置の中、どろどろに溶かされながら。


その夢が叶うまであと少し、後はプリンセス・インフェルノを殺したオスク派の遺跡を奪還し、妨害を退け、装置を起動させるだけ。
プク・プックは普通の魔法少女が千人集まっても勝てないほど強く、愛らしく、その魔法を使えば誰も傷をつけることができない。
だがプク・プックを傷つける事はできずとも、プク・プックの計画を妨害する悪い魔法少女は出てくるだろう。
そんな魔法少女達を相手に、純粋なプク・プックが悲しむ事がないようにプク派の魔法少女達は立ち回れるだろうか。
答えは否だ。だからこそ魔法少女狩りスノーホワイトが必要なのに。
万が一計画が頓挫していたら。プク・プックが悲しんでいたら。
想像して、スノーホワイトは胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
それを防ぐには、聖杯を持ち帰るほかない。
聖杯を持ち帰れば、計画が失敗していてもその願望器としての権能でチャラにできる。
成功していても献上すれば何かに必ず役立ててくれるはずだ。

『スノーホワイトお姉ちゃんも頑張ってるし、プクも頑張らないと!』


スノーホワイトはここへ来る前にプク・プックより賜った宝石、ソウルジェムを掻き抱く。
計画の大詰めという重要な時にこんな街連れてきた原因ともいえる宝石だが、端末を置いてきてしまいプク・プックの動画を見るすべがない現状ではプク・プックを感じることができる唯一のアイテムだった。
じっと見つめ、握りしめて、香りを嗅いで、思考を切り替える。

計画実行目前での失踪。この失態を挽回するには聖杯しかない。
しかし、その為には問題がある。


「帰ったか、マスターの情報は掴んだのだろうな?」
「……いいえ、すみません。バーサーカーさん」


身を寄せている自宅のドアの先、薄暗い闇の中に一人の男。
ハート形のサークレットを嵌め、筋骨隆々の肉体をレオタードで包んだ偉丈夫。
バーサーカーと呼ばれたその男は、主の報告に「フン」と鼻を鳴らした。

「何故、DIO様ではなく貴様の様な無能なマスターが私を呼べたのか不思議でならん。
困っている衆愚共の心の声が聞こえるのではなかったのか?それを使えばマスターを探しだすなど…」
「…………」

スノーホワイトは言い返さず、俯いて叱責に耐える。
バーサーカーの物言いは使い魔と思えないほど尊大だが、的を得ているからだ。
スノーホワイトは魔法少女としての固有魔法により、困っている人間の心の声を聞き取る読心術ができる。
訓練により深層意識まで聞き取ることができるようになったそれを応用し、街を散策すればマスターを見つけることは容易…そのはずだったのだが。
結果はこの見滝原に来て数日、記憶が覚醒して直ぐに捜索を始めたのにもかかわらず空振りを続けている。
この原因をスノーホワイトは「マスターには読心に対して何らかのプロテクトがかかっているか
あるいは自分の記憶が戻るのが早すぎたせいではないか」と推察していた。

スノーホワイトはこの見滝原で目覚めた時からプク・プック邸までの記憶を持ち、偽りの記憶を植えつけられることがなかった。
この世で最も尊いプク・プックの記憶が奪われることがなかったのは僥倖と言えたかもしれないが、
そうであればいくらマスター候補の心を声を聞こうと無駄である。
何故ならまだ記憶の戻っていないマスターが聖杯戦争について困った事、など考えるわけがないからだ。
全く知らない事柄について悩んだり、困ったりする人間はいない。
こうなればリスクを覚悟で殺人鬼の方を追うべきだったか。

「…モラトリアムが終わるなら聖杯戦争について考えるマスターも一気に増えるでしょう。
その時こそ、私の魔法の真価が発揮できます」
「どうだかな。まぁ私は最初から貴様に何も期待してはいない。
ただしこのヴァニラ・アイスDIO様に忠誠を示す時、足を引っ張れば生かしてはおかん。即刻暗黒空間にバラまいてやる」

生前の主であるDIOへ聖杯を献上する。それが狂信者ヴァニラ・アイスの願いだった。
その為に邪魔するものはすべからく暗黒空間にバラ撒く心づもりでいる。
無論、マスターであっても例外ではない。
マスターも崇拝する存在がいるらしいが何処の馬の骨ともしれない輩に聖杯を渡せばあの便所のゴキブリにも劣るジョースターの血統の様にDIOの障害になりうるかもしれない。
世界を統べるものは天上天下にDIOただ一人。それ以外は不要である。
令呪がある以上迂闊に手は出せないのが歯がゆいが、聖杯のもとへ辿り着いた暁には…。
どうせ本心を隠しても小賢しい魔法で暴かれるのだ、ならば本来の態度を隠すつもりはなかった。

そんな腹積もりのバーサーカーの恫喝を受けてなお、魔法少女狩りは鉄面皮を崩さない。
この時点でスノーホワイトはすでに、ヴァニラ・アイスという名のバーサーカーより弱くても御しやすいサーヴァントがいれば鞍替えを視野に入れていた。
一度宝具を確認し、その実力は本物であると分かっているがこちらの命令を聞く気が一切なく、協力は望めない。
一人で戦うのは慣れているが、背中を撃たれるリスクを背負い続けるつもりはなかった。
だが、今はまだ駄目だ。肝心のサーヴァントが見つかっていないし、その選定も慎重に行わなければならない。
それまではこのバーサーカーとやっていかねばならないのだ。
こんな時、ファルがいたらと思う。
ルーラと四次元袋は持ち込めたが、端末とファルを置いてきてしまったのはかなりの痛手だ。
おかげで迂闊に変身を解除することもできず、また容姿が目立ちすぎるため学校も休学せざるを得なかった。
状況は悪く、道行は遠い。けれど今までに比べればずっと気は楽だ。
この戦いが終われば、全てが報われる。もう、泣くことも後悔することもない。
何かを選ぶ必要もなくなる。
そんな未来を、プク・プックは作ってくれるのだから。


「プク様が創る、もう選ぶことも後悔することもない世界。

           ―――その為に、私は戦う」



全ては、DIO様/プク様のために。


【クラス】バーサーカー

【真名】ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険

【パラメーター】
筋力:B 耐久:A+ 敏捷:C 魔力:D 幸運:D 宝具:EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:EX
邪悪の化身の殉教者としての狂的なまでの忠誠。
精神干渉を一切シャットアウトし、全パラメーターを1ランクアップさせる。
その狂気を一言で表すならば『バリバリと裂けるドス黒いクレバス』であり、
特定の人物以外がマスターであれば反旗を翻しかねない。

【固有スキル】

狂信:A
バーサーカーの忠誠の高さを表すスキル。
普段は物静かな男だが一たび崇拝対象への逆鱗に触れれば豹変しその狂暴性を露わにする。
発動時にはその威圧感から対象のファンブル確立を向上させる。

吸血鬼:D
生と死を超えた者、または生と死の狭間に存在する者。死徒。
多くの伝承に存在する、生命の根源である血を糧とする不死者。
並外れた不死性と吸血能力、怪力を備えるが生前吸血鬼になって間もなく、血を吸う事もなく没したため、ランクは低い。
また日光や紫外線に弱く全身浴びれば灰となって消滅してしまう。

戦闘続行:A
往生際の悪さと吸血鬼としての生命力の高さ。
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。
彼は脳髄を串刺しにされても主の敵を追い詰め続けた。


【宝具】
『亜空の瘴気(クリーム)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
バーサーカーが有する実体ある精神のビジョン『スタンド』
その口の中は暗黒空間に繋がっており、バーサーカー以外の物が触れると耐久値を無視して消滅する。
また本体とスタンドを飲み込むことによって完全に無色透明かつ、無臭で気配を感じられない存在になることが可能で、この状態のバーサーカーは初撃に限りAランク相当の気配遮断を得る。
クリームに飲まれた状態のバーサーカーは暗黒空間という異次元に存在し、如何なる攻撃も防御も意味をなさないが、その代わり令呪や念話等の恩恵も受けることができない。

また暗黒空間からは外の様子が見えず、攻撃の際に一切の衝撃・手ごたえが無い。
そのため、逐一顔を出して相手の位置を確認する必要がある。

【weapon】
  • 宝具『亜空の瘴気』のスタンドビジョン
サーヴァント換算でそのステータスは筋力B、耐久C、敏捷B相当

【人物背景】
悪の救世主の信奉者の男

【サーヴァントとしての願い】
DIO様に聖杯を献上する。

【マスター】スノーホワイト(姫河小雪)@魔法少女育成計画QUEENS

【能力・技能】
『困っている人の心の声が聞こえるよ』
魔法少女がそれぞれ持っている固有の魔法。 困っている人間の考えていることが聞こえる。
本人の意識していない反射や深層心理の声も聞こえるため、行動の先読みや隠し事の傍受も可能。

『誰とでも友達になれるよ(被)』
魔法の国の三賢人、プク・プックがスノーホワイトに仕掛けた魔法で、彼女を『お友達』にしている。
そのためスノーホワイトはDランク相当までの精神干渉をシャットアウトし、思考の優先順位が全てプク・プックのためのものとなっている。
この魔法は聖杯の記憶操作も退けるほど非常に強力で、特にスノーホワイトには念入りに掛けられている。
だが絶対ではない。プク・プックから離れた時間が経つにつれて魔法の効果も弱まっていく。
……甘やかな夢から醒める瞬間は、必ず訪れる。

【Weapon】
『ルーラ』
魔法の国製の武器で、絶対に壊れない。

『四次元袋』
見た目は口に紐のついた布袋。
一人で持ち上げられる重さなら、生物、無生物を問わず、何でも、いくらでも入れられる。
本当は中に色々なものが入っていたが、うるるがぶちまけて回収する暇もなく見滝原に来たため現在は空。

【人物背景】
三賢人にして魔法の国の救世主である魔法少女の信奉者である少女。
【ロール】
「姫河小雪」の戸籍で一人暮らしの高校生。しかし現在は休学中。

【マスターとしての願い】
プク様に聖杯を献上する。

【方針】
聖杯狙い。
最終更新:2018年05月01日 10:05