再帰性が普遍化した要因のひとつは、「大<他者>」の崩壊、つまり社会的制度、習慣、法といった共有のネットワークの衰退である、とジジェクは言う。(89)
性的享楽のイメージにたえずさらされ、また性的享楽に溺れるようにつねに促されているために、どのような意味でも、性的快楽が禁じられているなどとは、いまや主張できない。それどころかジジェクからみれば、肉体的満足は公的イデオロギーの地位にまで高められた。われわれは、性行動を楽しむよう強制されているのだ。(95)
ポストモダニティのパラドクスは、大<他者>の崩壊によって与えられた自由が、じつは重圧として経験され、それが規律への欲望として現れるということだ。(98)