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タイトル

概要とか

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自分達の親が何を思ってこんな名前を付けたのかは知らない。
希と幸。いい名前だとは思うけれど。思うけれど、今となっては少し複雑な気がしなくもない。だって希なる幸いを得た二親は早々にいなくなって、希と幸はばらばらになった。自分はいい。単体でもそれなりにいい名前だ。幸。女の子みたいな名前だけれど。でも希は単体じゃ珍しいとか少ないとか、そんな意味でちょっと理由がわからない。別に二親がいなくならなくたって、十数年後にはばらばらに暮らすんだろうし、単体でも意味のある名前を付けてやれば良かったんじゃないかとも、少し思う。
複雑な理由はそれだけじゃない。双子なんだから一緒に引き取ってくれればいいのに、ばらばらに引き取られた。希の引き取り手は今でも健在で、年頃の青少年らしく少しばかりぐれてる希を温かく見守ってくれている。希だから。でも自分は幸だ。引き取り手はやっぱり早々にいなくなった。だから自分は小さい家に1人で暮らして、小さな店で働いている。まるで自分を引き取ったから引き取り手が死んでしまったように思わなくも、ない。幸い。引き取り手の幸いを自分が全部奪っちゃったみたいな。希は少しだけだから、今も引き取り手と幸せにやってるんじゃないかとか。
希の引き取り手は、自分の引き取り手がいなくなった時、改めて引き受けようかと言ってくれた。でも義務教育は終わっていたし、11年間育ててくれた新堂の家を捨てるみたいで複雑な気持ちだったから、首を振った。それに幸いを奪いたくないし。そんなのはいい訳だけど。それじゃあなんだか、名は体を表しすぎている。から、両親と引き取り手の幸いを全部受け継いでるんだとか。そんなふうに思っている。結局複雑だったりする。
原付の免許は働いている酒場のおやっさんの好意で取った。そのときに譲り受けた原付を、仕事とプライベートで使っている。黒い原付でトコトコと走って、あちらこちらに配達に行く。
希とは時々会う。話すことはあまりない。希は高校を中退した自分に気を使ってか、それともあんまり高校が好きじゃないのか、学校の話はあまりしない。家の話をしないのは間違いなく、自分に気を使っての事だと思う。いきおい話の内容はなくなって、結局昨日見たテレビの話とか。どこの店のお嬢さんが綺麗だとか。そんな話になる。だからそんなに長く喋らなくて、ほとんど立ち話だ。そうして自分が「じゃ、また配達だから」と切り出して終わりになる。
辞めた高校の恩師が時々電話をくれる。心配してくれるいい人だ。飯食ってるかとか、ちゃんと寝てるかとか、大学に行かないのかとかいろいろと世話を焼いてくれる。忙しいだろうになとおもわない、こともない。


原付で毎日、街をトコトコと走っている。最近は「原付酒屋」って呼ばれているらしい。名前で覚えていただきたい。せめて店の名前だけでも。



最終更新:2010年02月17日 18:47