「クソがッ!」

怒気を含めた声と壁を叩く音が、左右に出入り口がある広く長い空間――トンネルに鳴り響く。
眼鏡を掛けた黒い瞳と髪の男は苛ついていた。
男の名は皇帝龍――通称:皇帝、本名ではないが普段名乗っている名だ。。
つい先ほど『時の果て』という場所で長年の宿敵を倒し、想い人がいる元の世界に帰るために『超次元跳躍』を使った矢先、人殺しが許される世界に来てしまった。
そんな馬鹿げものに付き合う義理はない皇帝だが、自分の能力を没収され、爆弾を付けられてしまったために嫌でも参加しなくてはならない。
没収された能力は龍眼、時の力と極無の魔眼。最悪なことに、それらがあったという記憶が失われている。
武器はティアマットとシャドウストーク(別名:七霊神器)が没収された。
また、龍眼がティアマットに宿っていて、皇帝の知人である『アグニ』――如月 和輝が持っていることを彼は知る由もない。

「はぁ……はぁ……、チッ!」

充分と言えるほど壁に八つ当たりした皇帝は少し冷静になった。
彼は漸く、足元に転がってあるバッグに気付き、その中身を確認する。
少しの食料にこの世界の地図らしきもの、コンパスと時計、参加者名簿
バッグの中身の内、参加者名簿を確認すると、知っている人物たちの名が多く載っていた。
その中で皇帝が興味を持つ人物の名があった。

「剣龍帝……だと?」

皇帝の本名である【鳳鳥 剣龍】と同じ“剣龍”を名乗っている者。そして遙か未来の皇帝。
が、この時点で皇帝は剣龍帝が未来の自分であると言うことを知らない。
本来2人が出会うのは灰楼杯が終わった後の事である。

「こいつに会ってみるか。つーか、まず能力をどうするかだよなぁ……」

もう一度バッグの中を確認して、武器らしきものがあるかどうか調べてみた。
刀剣類や槍類ならそこら辺に捨ててあるかもしれないが、それらしきものは見当たらない。
ならば銃火器類やナイフの類だったらバッグにあると推測して探してみるがなかった。
中にあったのは何の加工もされていなさそうな普通の緑色のグローブとそれに説明が書かれている紙。

「本来の持ち主、瀬戸アカル……知らんな。で、能力は……どうやらこれに入っているな、使い方は分からんが」

皇帝はグローブに触れず、バッグのファスナーを閉めて背中に背負い込む。
と同時に上から轟音が聞こえた。

「どうやら、誰かが誰かを殺したみたいだな」

外の様子を確認するため皇帝は左の出入り口へと走った。



     ◆     ◆     ◆



「…………へっくしッ!」

川が傍にある森の方まで行こうと跳んでみたら川に落ちて危うく海(?)まで流されるところだった。
何とか西の海岸(?)にたどり着いた束の間、首輪から『警告します。禁止区域に抵触しています。 あと30秒以内に爆破します。』との警告メッセージを受けて慌てて禁止エリアからマッハの如く抜け出るという散々な思いをした。
そんな間抜けな失態を犯した剣龍帝。
水分を余計に吸った衣服を絞って水を出しながら歩く。
バッグと首輪は防水加工がしてあるようで、濡れなかったし爆発もしなかった。

「やれやれ……ん?」

髪を整えようと手で掻き揚げた瞬間、剣龍帝はある違和感に気がつく。
特に額辺りを手で探った結果、剣龍帝は自身にとって大切なものがないことに気付く。
動揺した剣龍帝は歩きながら急いで再びバッグの中を確認するが、やはり彼が探しているものはなかった。
剣龍帝がいつも額に巻いている黄色い鉢巻――否、黄色いリボン。
彼が犯した大罪の証、そして形見。
皇帝だった頃の恋人である天妃がポニーテールの髪型にするために使っていたリボン。
何故、彼が彼女のリボンを持っているのかというと、ある出来事によって天妃を殺してしまったからだ。
その事を忘れないため、剣龍帝は額に巻いている。

「クソッ! 『インペリアル』に置いて来てしまったのか? いや、どこかに落としたのかもしれないが…………ッ! まさか!?」

慌てながらも冷静に考え、剣龍帝はある1つの結論にたどり着く。
センライという金髪の女が言ったとおりならば、支給品として自分の能力が宿っている縁として配布されている。
能力はくれてやれるが、あのリボンだけは他の参加者の中にいる知人でもくれてやれない、あれは己の大事なものだ。

「本当ならば誰とも会わないようにしたかっが、仕方あるまい。見つけ次第取り返そう」

剣龍帝の目的が少し変わった。
バッグのファスナーを閉めて背中に背負い込んで視線を前に向けると、灯台の奥に病院らしき建物が薄らと見える。
剣龍帝は多少早歩きで1時間ぐらい時間を掛けて病院へと向った。
そして到着してから時計で時間を確認すると、時刻は既に深夜の1時を回っていた。


【北 トンネルの中/1日目/深夜】

【皇帝@理由の無い日記】
[状態]:健康
[装備]:緑色のグローブ (未装備)@誰かの館(瀬戸アカル)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):外の様子の確認
1:トンネルから早急に出て、他の参加者に見つからないようにする。
2:能力把握。
3:出来れば剣龍帝と接触する。

(備考)『死霊戦争』第七部・発狂編終了後。剣龍帝とは会っていない。

<提供能力>
縁となる武器:ティアマット
能力:龍眼発狂(理由の無い日記の用語集ラ行参照)
詳細:
感情によって身体能力が上昇する、ある意味では剣龍帝の『殺意の龍眼』と同じくらい誰でも使える能力。
無論、殺意の龍眼と同じく、精神的に弱い者にとっては毒。
本来なら皇帝の龍眼は6段階に分かれているが、灰ロワの場合は龍眼発狂だけがティアマットに宿っている。
が、本来の持ち主である皇帝でない者が使う場合は精々30分が限度。
その時間を過ぎてしまうと発狂して暴走するか、発狂死する。


縁となるモノ:式神・皇帝と書かれた紙
能力:極無の魔眼+『時の力』
詳細:
『極無の魔眼』は自分の視界に映る対象のモノを別のところに跳ばすまたは消滅させる。
ただし回数は両方含めて1日1回が限度。上手くすれば纏めることも出来る。また、別のところに跳ばす場合は、自分が行ったことのある場所でなければ跳ばせない。
『時の力』は、自分が行ったことのある場所へ移動する空間跳躍が使用することが出来る。素質があれば攻撃に転換させることも可能。(例:拳・足・武器に纏わせての攻撃、炎や水などの属性を出現させるe.t.c.)


<提供武器>
武器名:シャドウストーク(別名:七霊神器)
詳細:
皇帝が持つオートマチック式の大型拳銃。まれにトンファーとして使える。また、7つの武器に変化するが、それについては理由の無い日記の武器一覧『七霊神器』を参照。
因みに、シャドウストークを縁として極無の魔眼+『時の力』を宿さなかったのは、強者が持った場合だと強すぎるかもしれないため。


【西 川―病院 付近/1日目/深夜】

【剣龍帝@理由の無い日記】
[状態]:かなりの負傷(本人から見れば多少程度)
[装備]:不明
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):終盤まで傍観しつつ黄色いリボンを探す。隙あらば主催側を壊滅する。
1:病院で傷を癒す、他の食料の確保。
2:癒えた後はこの世界に関する情報収集 。
3:他の参加者と接触して黄色いリボンの所持をしているか聞く。




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最終更新:2010年02月04日 22:21