「はぁ・・・なんで私がこんな目に・・・和輝、どこにいるのかなぁ・・・」

山の中をズリズリと巨大な何かを必死に引きずりながら、ポニーテールが特徴的だった女性、神堂 美咲は彷徨っていた。

本来、彼女はピンク色のリボンで髪を結び、ポニーテールにしているのだが、今回の殺し合いにおいて、そのリボンが没収されてしまったため、今は髪をすべておろした状態になっている。新鮮。

「てか、何よこれ・・・超重いんだけど・・・!なんで私がこんな武器割り振られなきゃならないのよ・・・!!」

そして彼女が引きずっているもの、それは「ナワノツメ」という武器。四角い棺桶を三つに区切ったようなデザインで、先端にはガトリング砲が搭載されている他、後方部分には捕縛用のロープが内臓されている。

非常に使い勝手が良いように思えるが、如何せん普通の女性が持つには重すぎた。

元々の持ち主であるリメイカーの能力として、「時を止める力」が付加されている。本来の使用者であるリメイカーならば、5秒。時を止めることができるのだが、先ほど試した時、時間は体感で2秒ほどしか止まっていなかった。

2秒もあれば、十分優位に立てる筈なのだが、如何せん武器がこの重量。

2秒止めたところで、逃げることもできなければ、この武器で攻撃するにしてもまずはガトリングの照準合わせから始めなければいけない。

美咲にとってこの武器は、手に余るものだった。重いし。

「はぁ~和輝~どこにいるのよ~・・・」

丸腰になるのは流石に不安なのか、彼女はナワノツメを引きずりながらも愛しの男を探して山を彷徨う。

その探す相手が、今現在川に流されているなど、彼女は知る由もなかった。





「・・・さて、これからどこに向かうか。」

先ほど目撃した戦闘の跡地。そこから少し離れた場所で、地図と名簿を見ながら皇帝はどの方角へ向かうか決めかねていた。目的は剣龍帝という名の男との接触。だが、戦闘は避けたい。
現在地点は森の中。見通しは悪いが、その分敵にも気づかれにくいだろう。地図によれば、近くに市街地がある。そこに行けば、人が多く集まっている可能性も高い。同時に、敵に出会う確率もあがるのだが。

「剣龍帝・・・一体何者なんだ、こいつは・・・」

考えても答えは出ないが、それでもやはり引っかかるこの名前。身に覚えはない。だが、関係無い訳がない。

パキッ

「!?」

かすかに聞こえた、木の枝を踏み潰したような音。音が小さく、視界も悪い為、音のした方向、距離感などはわからない。ただ、近くに自分以外に誰かがいることは確かだ。

だが、それは相手も同じのはず。気付いていないのなら、そのまま隠れてやり過ごせばいい。

(だが・・・こちらに気づいていたら・・・どうする・・・!?)

無暗に殺し合いはするつもりはない。ならば逃げるのも一つの手。

(気付いていたとしたら、隠れているだけなら・・・格好の的か・・・)

考えれば考えるほど、様々な選択肢、状況が思い浮かぶ。どれも正解の可能性があり、どれも不正解の可能性がある。皇帝は疑心暗鬼へと陥っていた。

だが、時間は待ってくれない。再び、木の枝を踏む音が聞こえた。先ほどよりも近い。方向もわかった。確実にこちらへ向かってきてる。

このままやり過ごすのか、今すぐこの場を立ち去るのか、それとも・・・

(先制攻撃・・・それで怯んでくれたのなら、その隙に逃げる・・・!殺る気なら、そのまま殺るだけだ・・・!)

皇帝の選んだ選択肢は、それだった。今から逃げるのは、見つかって背後から襲われるリスクも高い。それに、もしかしたら今近くにいる人間がその剣龍帝なのかもしれないのだ。

(なら、確認の意味も込めて・・・)

「やってみるしかねぇよな!!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

近づいてきた足音の元凶に殴りかかる。暗くてよく見えないが、男のようだ。

狙ったのは、顎。ここに一撃入れれば、確実に相手の戦闘力は落ちる。それならば逃走も容易になる。

皇帝の考え通り、拳は顎に直撃。脳を揺らされ、もう戦闘不能になる・・・ハズだった。

ザクッ!

「グッ・・・!?」

嫌な音を立てて、皇帝の左腕に刃物が突き刺さった。だがおかしい。皇帝が殴りかかった男は、何もしていない。顎を殴られた衝撃で、地面に膝をつき、前かがみになっている。あんな体勢から、腕に刃物を刺せる筈がない。

傷口に手を当てる。だが、おかしい。【刺さっているはずの刃物が、既にそこには無い】のだ。

視線を傷口から相手へと向け直す。木の隙間から刺す月明かりで、先ほどよりもはっきりと相手の姿がわかる。

「なん・・・だ・・・これ・・・!?」

それは、あまりに異様な光景だった。だが、これならこの腕に刺さった刃物がどうやって刺さったのか、何故今その部分に刺さったはずの刃物が無いかも納得がいく。

その刃物は、現実にはありえないものなのだ。だから、すぐにこの世界から存在を抹消された。こんな技、いや魔術を・・・皇帝は知っていた。

腕にピンク色のリボンを巻いたその男・・・ガレッド=バスタードの周りには、無数のナイフが浮いていた。





(なんなんだよ・・・)

目の前には、今自分に殴りかかってきた男がいる。

(なんでみんな殺し合うんだよ)

男は血が流れる腕を押えながら、こちらを睨みつけている。

(俺は・・・俺はただ・・・)

殺されたくない。じゃあ殺すしかない。仕方ない。仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない。

「俺は・・・リーダーに会いたいだけなのにっ!!!!!」



殺したくない。でも殺されたくない。

奇しくも今争いだした二人の男は。互いに争いを望まぬ者だった。



【北 トンネル付近森/1日目/深夜】

【ガレッド・バスタード@紫色の月光】
[状態]:顎を殴られたため、立ち上がれない。
[装備]:美咲のリボン
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本・カイトを探し、合流すること。
1 ・突然の攻撃に逆上。
2 ・精神的に不安定な状態。能力が暴走気味。

  • 美咲のリボン-
付加された能力は「投影魔術の使用」
投影できるモノ、精度は使う本人次第。刀や剣の使用者なら、刀や剣を高精度で作り出せる。
ガレッドが作り出したのは精度の低い果物ナイフ。ただし、量は大量。

【皇帝@理由の無い日記】
[状態]:左腕負傷
[装備]:緑色のグローブ(未装備)@誰かの館(瀬戸アカル)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):現状の打破
1:ガレッドの撃退、または逃走によって戦闘を切り上げる。
2:能力把握。
3:出来れば剣龍帝と接触する。

【南東 山中/1日目/深夜】
【神堂 美咲@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:疲労
[装備]:ナワノツメ@吼えろ走馬堂(リメイカー)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):和輝との接触
1:この重いのをなんとかしたい


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年11月13日 21:19