トーイ、美咲、カノンがカノンの能力――龍眼を解明して1時間。
散々歩いたのでどこかの住宅街の民家に不法侵入した3人。
無論、明りは点けずに居間のようなところで身体を休めた。
トーイはロボット(?)のような物体なので休みは必要ない代わりに、人間である美咲とカノンのために食べ物を探している。
ちょうどその時だった。

『ッ……!』
「どうしたの?」

突然カノンが額を抑え、それに気付いた美咲が尋ねる。

『な、なぜか分からないんですけど、頭痛が……』
「ちょっと大丈夫?」
『一応、ガンガンするほどじゃないんですけど、長時間皮膚に針が刺さっている感じですね』
「さらっと想像すると痛いようなこと言わないでくれない?」

若干顔を引き攣らせカノンの言葉に突っ込む。
ちょうどその時、トーイが食料を見つけて戻ってきた。

「カップ麺があったある……って、どうしたあるか?」
『ちょっと頭痛がするんですよ。なんというかこう……何かに引っ張られるような感じで』

先ほどの言葉を訂正してカノンはトーイに説明した。

「引っ張られる感じね……因みに方向は分かるかしら」
『何となくですけど、地図から見て西側に引っ張られる感じですね』
「西側……映画館とビルがある方面あるね」
「それでどうするの? こっちから行く? それとも待つか遠ざかるかのどっち?」
「まぁ、待つある。2人はそこにあるカップ麺とガスコンロ要らずの湯沸かし器使って食べるある」

急いで結論を出そうとする美咲にトーイは一先ず食料を食べさせて落ち着かせようとする。
しかし、彼女はそれでも気になるのか険しい顔でいる。
これには少し溜息を吐きトーイは2人に偵察をして来ると言い、太陽が少しずつ昇って行く空へと羽ばたいた。
因みに遠くまでとは行かないが、美咲とカノンがいる民家の周りから遠過ぎず近過ぎず飛んだ。
どういう訳か高度を屋根以上の高さまで上昇せずに……。

     ◆     ◆     ◆

カノンに頭痛が起きたその頃、同じ龍眼を持った和輝もまた彼と同じ頭痛を起こしていた。
そして今いる場所は映画館付近の住宅街の民家。と言っても中には入らず、塀を盾にして隠れている。
無論、他の参加者に見つからないためだ。

「ってぇー、まだ頭がズキズキするぅ……」
「変だなぁ。俺が皇帝だった時はまだ制御できなかった龍眼で頭痛が出たんだけど、発動していない状態で頭痛がするって経験したことがねぇ」
「マジッすか? でも、普通の頭痛よりも何というかこぉ……見えない糸で引っ張られるような感じがするんですよねぇ……」

和輝の症状に皇妃はかなり混乱していた。
自分――皇帝だった時の記憶で何かに引っ張られるような感じは、今まで生きてきた中で経験したことがない。
龍眼の進化という考えも頭に過ったが、あれの場合は頭痛の感じはズキズキよりもガンガンまたはビンビンといった感じの症状だった。

(ならば一体何が原因でこうなったんだ? 同じ龍眼を持っていた蚩尤は皇帝の手によって(正確には足によって)倒された筈だが……)

ここで頭に“同じ龍眼”という言葉を思い浮かんだ皇妃に電流が走る。

「まさか……」
「ッ、何か分かりました?」
「可能性の話、だけどな。これが真実という訳じゃないが」
「…………可能性?」
「ああ。灰楼が過去の人物例えばレイのような参加者をこの世界に呼んだとしていれば、逆の可能性もありうるってことだ」
「逆の可能性って、まさか……!?」

この時点で和輝とレイも気づいた。
参加者の中に未来の自分という存在かいることに……。
そして先ほど皇妃が思い浮かんだ“同じ龍眼”という言葉で当てはまりそうな人物と言えば1人しかいない。

「そう、皇帝だ。参加者の中で現在と未来両方参加している奴はあいつ1人しかいない……」
「はぃい!? ちょ、ちょっと待って下さいよ、未来の皇帝さん? それだったら名簿に“皇帝”って名前が2つ載って……」
「未来でそのまま“皇帝”という名前で通していると思うか? 何らかの事情であいつが名前を変えたってこともある」
「じゃ、じゃぁその名前は? 心当たりがあるなら教えてください!」

明らかに動揺を隠しきれない和輝に、皇妃は静かに、はっきりとその名前を教える。

「……剣龍帝。恐らくこいつが未来の皇帝だ。理由はあいつの本名、“鳳鳥 剣龍”が入っていること。もし俺の予想が正しければ剣龍帝の能力は恐らく龍眼。そしてアグニさんの頭痛の原因は皇帝の龍眼と剣龍帝の龍眼の共鳴反応だ」
「…………マジっすか?」
「ただの仮説だ、だけど他に言いようがない。確かめるにしてもどこにいるのか分からないからな。それよりも問題なのは剣龍帝の龍眼を持っている参加者だ。そいつを探さないと」

皇妃は話題を切り替えアグニとレイに、剣龍帝の龍眼を持っている参加者を探す提案をする。
この発言に和輝は驚き、レイは興味がないのか反応はない。

「いや、待って下さいよ。本当に探すんですか?」
「あぁ、何か問題でもあるのか? 大体、仲間探すならそれぐらいしかあてがないだろに。それでもし相手が殺し合いに乗っている参加者だったら安心しろ、龍眼に関する危険性を捏造と脅しを織り交ぜながら言い包めてやるから」

反論は許さんとばかりに皇妃は自分の意見を押し通した。
ここまで言われてしまえば意見出来ないと判断した和輝は、彼女の案に従うのだった。
レイも会話にはあまり参加していなかったが、彼も従うとのこと。
そしてちょうどその時、第一回目の放送を告げるアラームが鳴り響いた。

     ◆     ◆     ◆

西の病院または灯台から離れた西の森林。
そこにいるのは臙脂色の髪の男。
背中には支給品一式が入ったバッグと手には黒い刀剣類と腕に巻きついている黒い鎖。
男は展望台方面から大きい揺れに反応し、只管走って森林から抜け出す。
やっとの思いで森林から抜けだすと同時にある団体を目撃する。

「おや……?」

男が見たものは剣龍帝・アステリア・アーニャ・クロードが展望台へと道の真ん中を堂々と向かっているところを背後から気づかれないように追跡しているメシアだった。
その状況を理解した男は急に口元を歪ませ、邪悪なる笑みを作る。

「見ぃ~つけた♪」

欲しいおもちゃを見つけた子供のように喜ぶ。
無論、男がやろうとすることは決まっている。

「ちょっと癪だけど、乗らしてもらうよ灰楼。全員殺した後に君たちも殺してあげる、この蚩尤・イノトゥの分身体がね」

男――蚩尤・イノトゥの分身体と名乗る者。皇帝、皇妃、その仲間らと敵対していた組織『死霊(イノトゥ)』という組織の首領の分身体。
首領は皇帝によって倒され、組織も壊滅したが、その分身体だけは各世界に生き残っていて、今も尚他の世界を“無”に返そうとしている。
そのうちの1人がこの殺し合いが許される世界に参加した。

「さてと、気づかれないように後を付けないとねぇ……。もし争っていたら疲れているところを一網打尽っと」

完璧な作戦だ、と自画自賛しながら蚩尤は彼らに気づかれないように追跡した。
しかし、彼はこの時気付かなかった。あの中に剣龍帝という未来の皇帝がいることに……。


【南 図書館付近の住宅街――民家】

【神堂 美咲@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ナワノツメ@吼えろ走馬堂(リメイカー)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する
1:和輝との接触
2:トーイと共に他の参加者と接触する
3:危害が加わるようならば対抗して戦う意思あり
4:カノンをやや警戒 (殺し合いに乗った者が襲ってきたら生贄にする気満々)
5:民家に侵入。

【トーイ@誰かの館】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:無し(地図と名簿はHDに書き込んであります)
[思考・状況]
基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する
1:美咲とカノンと共に安全そうな参加者に接触 (殺し合いに乗った者が襲ってきたらカノンを生贄にする気満々)
2:首輪の解除をする
3:ケーブルを奪還。無ければ代用品を探す
4:アカルに対して警戒しながらも接触したい
5:リースという名に対して警戒
6:民家に侵入。その後、食料を見つける。
7:民家の周りを巡回。

【カノン@紫色の月光】
[状態]:顔面に痣 、頭痛(軽)、疲労(小)
[装備]:黄色いリボン@理由のない日記(剣龍帝)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:仲間を集めてゲームを破壊、あるいは脱出する
1:トーイと美咲と共に参加者への接触を図る
2:身内(カイト、ガレッド、トリガー、メシア)との接触
3:出来ればマスクを回収したい
4:民家に侵入後、頭痛が起きる。


【西 映画館付近の住宅街――民家の庭】

【南西 ビル/1日目/深夜】

【如月 和輝@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:頭痛(軽)
[装備]:ティアマット@皇帝(理由のない日記)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:ゲームを何とかして終わらせる
1:メシアと大帝を警戒
2:仲間を探しに住宅街へ
3:頭痛が起き、その後、頭痛の原因と参加者の中に剣龍帝が未来の皇帝と知る。

【皇妃@理由の無い日記】
[状態]:健康
[装備]:REX@ディアナ(吼えろ走馬堂)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):この世界の情報収集と同時にゲームを終わらせる。
1:レイ・アスカの行動をサポート。
2:仲間を探しに住宅街へ
3:和輝の頭痛の原因が剣龍帝の龍眼と皇帝の龍眼の共鳴反応だと推測。
4:剣龍帝が未来の皇帝であると仮定する。

【レイ・アスカ@希望と絶望の協奏曲】
[状態]:視力の喪失
[装備]:ドラゴントゥース@シュヴァルツ(希望と絶望の協奏曲)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):不明
1:仲間を探しに住宅街へ
2:和輝の頭痛の原因が剣龍帝の龍眼と皇帝の龍眼の共鳴反応と知る。


【西 病院から遠く離れた森林】

【蚩尤@理由の無い日記】
[状態]:健康
[装備]:凶魂(刀剣類)・鎖暗(鎖)@レイ・アスカ(希望と絶望の協奏曲)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
(基本):参加者全員を殺して、主催者も殺す。
1:展望台からの揺れに気づく。
2:森林を抜けて剣龍帝たちを追うメシアを発見。
3:争っているところを漁夫の利狙いで皆殺し。

(備考)『死霊戦争』第七部・発狂編終了後。提供武器能力はなし。


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最終更新:2010年03月31日 23:50