7/17(火)
遊佐「よし! 学校いくか!」
時間は5時40分。
遊佐「かなり早いな……。適当な準備をしておくか」
俺は昨日用意した生徒手帳と読み漁った剣道の本をカバンに放り込んだ。
遊佐「覚悟を決めたからな」
適当に時間をつぶして家を出た。

遊佐「おはよう」
神契「あ、おはようございます」
遊佐「今日はもの凄く早く目が覚めた」
神契「あ、実は私もです」
遊佐「なんか緊張してさ、あんまり眠れなかった感じだ」
神契「わ、私もです」
遊佐「でも、今は神契さんの姿みてなんだかすげー元気になった」
神契「あは、私もです」
神契「……あの、遊佐君?」
遊佐「ん? 何?」
神契「私のこと、その、あの。しょ、晶子って呼んでくれませんか?」
ま、まじで!?
遊佐「ああ、もちろんだ! むしろそう呼びたかった。だからさ晶子。俺のことも洲彬って呼んでくれるとうれしい」
晶子「あ、はい! そう呼びます!」
なんだか、いま物凄い幸せだ。
フェンリル君がばうばう吠えている。
遊佐「今俺、幸せだ」
晶子「え?」
遊佐「ありがとうな。晶子」
晶子「え、え?」
遊佐「いや、無性にお礼を言いたくなった。それだけ」
晶子「それじゃあ、私もありがとう洲彬君、です」

学校にたどり着く。
遊佐「あのさ、晶子。俺昨日じいさんと約束したんだ。十日以内にあのじいさんから剣道で一本でも取るって」
晶子「はい、聞いてます……」
不安そうな顔をする。
遊佐「あのじいさんに俺達のことを認めてもらう必要なんて無いかもしれない。だけどさ、あのじいさんも晶子のことを思ってる。だからこれは俺のけじめなんだ」
晶子「うん」
遊佐「でも約束する。絶対成し遂げてみせる」
晶子「うん」
遊佐「と、言うわけで剣道部に入るつもり」
晶子「え?」
遊佐「流石に独自に練習はできないしな……。基礎を教えてもらわないと話しにならない。というわけで顧問にいまから話をしてこようと思うんだけど、晶子も来る?」
晶子「もちろん、行きます。でも私のために洲彬君に迷惑ばっかりかけて……」
遊佐「いや、これは俺が勝手にやってることなんだ。気にしないで」
そして剣道道場へ行く。そこでは何人もの剣道着を着た人達が打ち合いをしている。
早乙女「ん? そこにいるのは」
お、同じクラスの早乙女さんだ。ちょうどよかった。
遊佐「おはよう早乙女さん。ちょっと顧問の先生呼んで欲しいんだけどいいかな?」
早乙女「ああ、別に構わないが」
遊佐「悪いね」
そして顧問のかなりこの学校でも厳しいいかにも武道にはうるさそうな先生が出てくる。
遊佐「先生! この時期に無茶を承知でお願いします! 俺に十日の間剣道を教えてください!」
顧問「その心意気やよし。しかし何故だ?」
遊佐「理由は……ある人に俺と神契さん、晶子と付き合うのをある人に認めてもらうためです」
顧問「ふむ、教えるのは構わん。歓迎する。だが神契といえばあの神契先生のお孫さんか」
晶子「はい、神契雷太おじいちゃんの孫の神契晶子です」
顧問「はっはっは、あのお方はまったく。よし、良いだろう。十日の間剣道をお前に教えてやろう」
遊佐「ありがとうございます!」
顧問「剣道の経験は?」
遊佐「ありません」
顧問「ふむ、まずは基礎からだな。私がつきっきりになれればよいのだが、教師である限り何かと用事があってな。誰か他にも師となる人を探さねば」
その時声が聞こえた。
早乙女「是非、その話。私に任せて頂けませんか。私は彼と一緒のクラスであり今の話、私も深く感心しました」
早乙女さんだった。
顧問「早乙女か、お前なら適任だろう。よし、私が居ないときはお前に任す」
ありがたい申し出だった。
遊佐「ありがとう、早乙女さん。助かるよ」
早乙女「ああ、だが十日程度で剣道をするという考えは非常に甘い。私もできるだけのことはする、が期待はするな」
遊佐「それは重々承知してるつもり。だけど俺も本気でやる。今は出来ることをやっときたいんだ」
晶子「洲彬君……」
晶子がまた不安そうになっている。

いつものように教室の鍵をあける。
遊佐「晶子、ごめんな。不安になるようなことばっかりで」
晶子「……本当に無理しないでください」
遊佐「ああ、本当にごめんな。俺勝手なことやってるよな……」
晶子「ううん、私本当はうれしいの。ありがとうだよ」
そうだ、今は晶子のために俺はやれることやる。晶子のためだけじゃない。その晶子を愛してくれているあの家族全員のために。俺は認めてもらう必要があるんだ。
遊佐「よし! 俄然やる気が沸いてきた!」
最終更新:2007年02月19日 23:47