7/26(木)
[道場]

あの日から十日目。約束の日がやって来た。自信があると尋ねられたら無い。
はっきりいってこんな短期間でそこまで上手になるわけがない。
だけどいままで沢山の人に助けてもらってやってきた。
晶子、親父さん、早乙女さん、先生、中島(死)……。
今まで何度も挑戦したが一度も勝てる気配すらなかった、が今日で最後。
『やれるだけやったんだ』
そうだ、今諦めてはいけない。
晶子「……」
正座をして精神集中
遊佐「お願いします!」
雷太「うむ……」
構え、そして蹲踞。
大地「始め!!」

ここで焦ってはいけない。相手の出方を伺ってまずは守りにでる。いきなり攻めては勝てない。
返し技で一本取るしか方法はないだろう。
面はまず難しい。小手は自分の実力ではまだまだ無理だ。狙うなら胴だ。
雷太「……」
今までとは違う。とにかくじいさんの攻撃を受け流すしかない!
お互い打って出ず、向き合う。
じいさんが軽く竹刀を払う。これは払い技のフェイントだ。ここで焦ってはいけない。
ここで試合が動いた!
雷太「面ッ!」
来た! 面!
俺は一歩踏み出し竹刀を咄嗟に上で受け止める。
ここで油断するな!
俺は自分に言い聞かせる。じいさんが突っ込んでくる。
くっ、鍔迫り合いに持ち込むつもりか!
鍔迫り合いはじいさんの得意技だ。このまま引き胴を狙ってくることが多い。
胴に警戒しないと!
この引き胴を防ぐのは難しい。
となればこっちが先手を打つ!!
幸いつばはこっちが下
どうする!? 引き面を狙うか!?
俺はそのまま一気に下がり引き面を狙う。
遊佐「面ッ!」
だがじいさんは竹刀を受け止める。
竹刀が上がった! このまま胴を!!
遊佐「胴ッ!!!」
だが腕にかかる衝撃。
し、しまった!!
竹刀を上から打たれる。
雷太「面!」
やられた、胴打ち落とし面だ……読まれていた。
頭に衝撃がくる。
く、やはり返し技じゃないとダメか……。
わかってはいたがチャンスがくるとつい狙ってしまう。
大地「面有り!」
く、まだまだ。
二本目に集中しろ。
……。
大地「二本目、始め!」
二本目が始まった!
遊佐「……」
雷太「……」
………………。
明らかにお互い返し技を狙ってる。ここで動いたらやられる。
………………。
雷太「どうした小僧?」
遊佐「……」
そんな挑発には乗らない。
…………。
動いた!!
小手を狙ってきた。
させるか!
竹刀の横で弾く。
一歩下がってここは間合いを計る。鍔迫り合いにはなりたくない。
相手の得意な土俵にわざわざ乗ってるやるつもりは無い。
だがじいさんはそのまま面を打ち出してくる。
やっぱり鍔迫り合いを狙ってきている。
体が反応する。右斜め前に一歩踏み出し面を受け止め、そのまま流れるように胴へ……。
遊佐「胴ッ!」
正直こんな技で決まるとは思ってなかった。
スパァッン!!!
防具を叩いた音が響く。
大地「ど、胴有りっ!!!」
親父さんの声が防具の面で聞こえにくくなっている耳に響く。
遊佐「……」
俺は何となく感じた。そうだ、こんなんで決まるはずがない。
俺は気付くと正座をして面と小手を外していた。
遊佐「ありがとうございます!!!」
雷太「……ふんっ。まだ試合は終わっておらんぞ」
遊佐「はい!お願いします!」
そして試合は当たり前のようにじいさんが余裕で一本取って終了した。
最終更新:2007年02月19日 23:53