俺:そいえば、みんな部活ってやってるの?
千里:私は色々だよー。
俺:色々、って?
千里:色々は色々。
蔵人:オレはゲーセン部!
俺:帰宅部か。
ましろ:わたしたちも今のところ帰宅部だね。
聖:私生活が何かと忙しいからね。
俺:んー、俺はどうしようかな。
千里:色々見学すればいいんじゃない?
色々、ね。
聖:空手部でも入ったら? そのヒョロい体鍛えたらどうよ。
何だかものすごく気に入らない言い方だが……
俺:鍛える系の部活も悪くないな。
ましろ:じゃあ空手部案内しよっか?
既に決定しちゃったみたいな雰囲気だな。
俺:まあ、色々見学して決めるとして、まずは空手部でも見に行こうかな。
ましろ:決まりだね!
聖:仕方ない。
帰り道の途中でやってるし、連れてってやろう。
俺:別に聖の案内はいらないよ。
聖:いるんだよ!
千里:じゃあ私は色々寄ってくから、じゃねー。
蔵人:オレも仲間集めて寄り道すっから。
いい部活見つからなければ、お前も仲間に入れてやるよ。
ありがたいことです。
聖:んじゃさっさと行こう。さっさと帰ろう。
ましろ:おーう!
あーかわいいなー、元気なましろちゃん。彼女と帰る帰宅部が一番魅力あるなー。
聖:分かりやすい下心見せるなよ。
……聖さえいなけりゃなー。
聖:早く準備しろ。
俺:わかってるよ。
――ということで校庭までやってきた。
俺:あれ、道場じゃないんだ?
ましろ:剣道とか弓道はあるんだけど、何故か空手は道場無いの。
聖:部員が少ないらしいね。
俺:へえ。
聖:こりゃ遊佐が期待の新星だな!
俺:まだ決めてないけどな!
ましろ:あ、あそこだよー。
……そこは校庭の外れだった。
無数の丸太が円を描くように置かれている。
円の中心には、道着を身にまとった少女が目を閉じて立っていた。
ましろ:部長の『武僧都』 さん。小さな部活だけど、あの部長さんだけは有名なの。
俺:へえ、それまた何で?
聖:入れば分かるよ。
……こいつ。どうしても俺を帰宅部にしたくないらしいな。
――しばらく静寂が流れ、あたりの空気が緊張してきたのを感じた。
少女の集中力が極限まで高まり、空間を張り詰めさせ、
今にも破裂しそうなくらいに外部へ影響を与えている。
圧倒的な存在感、そして威圧感。足がすくみ、近くにいる者に恐怖を感じさせる程だ。
――少女はゆっくりと目を開け、目の前の丸太を見つめ構えた。
都:むそうあらしゅひゃくれっぱ!!!
足に溜めた力で丸太に向かって跳躍する!
目の前の丸太に一撃! 木っ端微塵に粉砕される!
続けざまに、次の丸太へ跳躍!
――目にも留まらぬ速さで、次々と丸太が粉砕されていく。
見た目の荒々しさとは逆に、正確に的を捉える繊細さが、俺を魅了した。
これぞ、一撃の美学か!
なんて少女の荒業に見惚れてしまったのが命取りだった。
都:あっ、あかん!
最後の丸太が粉砕されず、俺のほうへ飛ばされてきた。
ましろ:きゃあ!
俺:えええええ!?
……気がついたころには、丸太が俺を直撃していた。
痛みを通り越して全ての感覚が麻痺した。その中、少女の道着からチラリと覗いている胸の印象が頭に焼きついた。
俺:おっぱい……
聖:おい、変なこと言ってる。こいつ頭がおかしくなっちゃったぞ!
都:にゃあ!
またやってもた!
どないしよ!?
君っ、しっかりせえ!
死んだらあかんで!
薄れ行く意識の中、格闘少女に抱きつかれたらしい。
顔が暖かくやわらかい感触で包まれた。ふにふに。
俺:おっぱいにゃー……
都:何かニヤけとる! 頭打ったんやぁ!
聖:こりゃあしばらく学校には来れないかなあ。うっしっし。
……聖だけが何故か愉快そうである。
ましろ:と、とりあえず保健室に運んだらどうかしら?
都:せや、保健室や! 今つれてったるからな! 気いしっかり持ち!?
もう少しふにふにしていたかったが、終わりのようだ……
意識は徐々に闇に包まれていった……
ぬぅ……ん、頭痛が。何も見えん…… 俺は一体?
そうだ、丸太が直撃しておっぱいが……
っておっぱい?
俺:おっぱいふにふに!
俺は勢いよく体を起こして、あたりを見回した。
俺:ここは……
薬品の匂い。並んでいるベッド。保健室だろうか。
俺が横たえられていたベッド脇には道着の少女が座っていた。今にも泣き出しそうな顔をして俺の顔を見つめている。
都:あぁ、やっぱり頭打ったんやなぁ。
???:大丈夫よ、武僧さん。
都の隣に座っている女の人が優しい声をかけた。
白衣を着ているし、学生って年でもなさそうだし、保険の先生かな。
都:大丈夫なん?
保険の先生:ええ。起きるなり、おっぱいおっぱい叫ぶくらい元気なんだから。
都:ほんまに大丈夫なん?
少女は本当に不安そうにしている。というか泣き出しそうだ。
先生は俺の顔を覗き込んだ。
保険の先生:頭がおかしいのは元からよね?
俺:元から……
先生は都に見えないように片目を瞑った。
なるほど、合わせろということか。
俺:ええ、元からです。元から頭がおかしいので問題ありません。
保険の先生:ほらね、本人もそう言ってるのだから大丈夫よ。
武僧さんも、無茶な修行して疲れているのだから早く帰りなさい。
都:う~ん……
にゃ!? 夏のソナタがはじまっちゃう!
君、ほんまに堪忍な! ほな、またね!
保険の先生:さあ、あなたももう大丈夫でしょ?
さっさと帰りなさい。
俺:はい。ああそういえば、他に二人、いませんでした?
ましろと聖のことだ。二人はどうしたのだろう。
保険の先生:ああ、帰ったわよ。用事があるとかで。
……ぶ! 薄情な!!
俺:俺も帰ります……
保険の先生:気をつけてね。
俺:はい……
何だか悲しい帰宅路になりそうだった。
最終更新:2007年01月22日 23:27