武僧出会い2回目
【時期】始めてあった日から数日後?
【設定】放課後清掃後、ゴミを出しに学校の裏へ
【場所】学校裏、ゴミ焼却炉前orその付近
【登場人物】主人公【俺】、クラスメイト【クラス】、
気弱な1年生男子【1年生】、怖そうな3年生【怖い人】、
武僧都【都】
●2年生教室
【俺】「んじゃ、ゴミ捨てに行ってくるから、先に帰ってて良いよ。」
【クラス】「うん、ありがと~。じゃあ、後はよろしくね!」
俺は一杯になったやたらと重いごみ箱を抱えて教室を後にした。
●ゴミ焼却炉前
【俺】「…しかし重い。つーか、このガラス球みたいのは何だ?」
ごみ箱が重い原因であろうそのガラス球には、
使用済みオーブと張り紙が張られている。
一体何に使うのか見当もつかないが、毎日毎日人知れず使われているらしい。
なぞのガラス球の事を考えながら歩いていたら、ごみ焼却炉が見えてきた。
一見何の変哲も無い普通のごみ焼却炉だが、
町の条例がどうとかで今は使われていないらしい。
極まれにごみ焼却以外の目的で使われる事があるとましろが言っていた気がする。
ごみ焼却以外に使われるって、一体何に?とか思っているうちに
目の前まで来てしまった。
【俺】「えっと…、ごみ焼却炉の近くにゴミ置き場があるんだったよな。」
辺りを見回しざっと探してみたところ、それらしきものは見当たらない。
あるのは掃除用具容れらしきものと、あまり自転車の止まっていない自転車置き場、
目の前のごみ焼却炉だけだった。
【俺】「近くには無さそうだよなぁ…、てか無いよなぁ。」
目的のものが無く途方にくれていると、
俺の耳に男の声らしきものが聞こえてきた。
小さい声なのでよくは聞き取れないが、それでも耳を凝らすと
【???】「なぁ、兄ちゃん。悪い事は言わない。さっさと出すもん出した方がいいぞ?」
【???】「げへ、俺達も手荒なことはしたくないんだな。」
なんていう、あまり出くわしたくない場面の台詞が聞こえてきた。
そう、おそらくカツアゲだろう…。
聞かなきゃ良かった…、聞いちゃったし無視できないよなぁ、
いや、こっそり逃げ出したほうが身のためか?なんて思っていると、
これも神が与えた試練か、その仲間に見つかってしまった。
【???】「おい、そこのごみ箱抱えた兄ちゃんもこっち来な。」
ああ…、もう…最悪だ。
さてどうするか?
こういうときは毅然と立ち向かったほうが良い。
俺はごみ箱をその場に置き、臆することなく不良に歩み寄る。
カツアゲから少年を救う勇者的なイメージを自分に重ね合わせ、
脳内には悪に立ち向かう正義のテーマが流れている。
そう、今の俺はカッコいい!
そして、俺はそのイメージ通りに事が運ぶのを想像して、振り向きざまに言い放った!
【俺】「てめぇら!カツアゲなんてダセェ事してんじゃねぇ!
1人相手に2人がかりとは、呆れて物も言えねぇぜ!この雑魚共め!」
正確にはそう言いたかったのだが、彼らを見て「言わなくてよかったぁ」
なんて思ったりなんかしちゃって…、しかも3人だったし…。
…うん、つまりは怖気づいた。
一人はモヒカンにピチピチのランニングシャツの大男。
もう一人は、スキンヘッドに目の周りに、星型の刺青が入っているムキムキの大男。
そして、少年の襟首をつかみ、直接脅していると思われる男がいた。
最後の男だけは他の二人とは、何か違う気配、オーラのようなものを感じた。
空気が張り詰める程の圧迫感、または威圧感といったもので体が硬直するのが分かる。
これと同じようなものを、どこかで感じたことがある気がする。
そうだ、空手部を見学したときに感じたものと同じだ。
圧倒的な力の下では何も出来ないと思わせるこの感じ、あの人と同じだ。
【モヒカン】「なぁ兄ちゃん、見ちゃいけねぇもん見ちまったなぁ。げへげへ。」
【ゲーハー】「あらぁん、ちょっとイケメンじゃなぁい?」
大柄の二人が、俺の斜め左右に陣取り、逃げ道を断った。
あのリーダーっぽい男もやばそうだが、
こいつらはこいつらで色々やばそうだ。絶体絶命ってやつか!?
【リーダー】「まぁ待て、お前ら。彼は見たくて見たわけじゃない。
ゴミを捨てにきただけだが、場所を間違えただけさ。
それと…、君は何か勘違いをしているな?
我々はカツアゲをしているわけではないよ。
少し脅してはいるが、危害を加えるつもりは無い。
一種の忠告をしてあげているだけさ。」
リーダー格の男が1年生とおもわれる少年の襟を掴みながら、俺に近寄ってきた。
少年は今にも泣き出しそうだ。恐怖で脚がすくみ、足取りがおぼつかないでいる。
目で必死に俺に助けを求めているのがわかる。
わかるのだが、俺も助けて欲しいんだよ!一体どうしたらいいんだ!?
そして、
【俺】「…こ、この状況でそんなことを信じろと?
どちらにせよ、1人相手に3人がかりなんて卑怯だ。
男なら正々堂々とタイマン張れ!」
俺は、よく分からないことを口走ってしまった。しかも、声が震えている。
かっこ悪い上に、これじゃ1対1で俺と勝負しろと
言ってる様な物じゃないか!?
【ゲーハー】「あら坊や、あたし達が怖いのかしら?」
【モヒカン】「おみゃぁの顔は怖いよなぁ。げへげへ!」
【ゲーハー】「まあ、失礼しちゃう!あなたに言われたくないわ!」
【リーダー】「なるほど、それもそうだな。君の言うとおりだ。
この状況は男らしくない。
…君の勇気に免じて、この子は解放してやろう。」
そう言うと、リーダー格の男は少年を放すと、少年は一目散に逃げ出した。
俺は取り残された。
さて、絶体絶命を通り越して死亡フラグでも立ったんじゃないかという状況、
こういうときこそ落ち着いた対応をするべきだな!
【リーダー】「では、男らしくタイマンで勝負しようか。」
リーダー格の男が構えた。
ちょっ、待って!心の準備が!
俺の考えもむなしくリーダー格の男が飛び掛ってきた。
速い!流石にさっきの威圧感を持ってるだけのことはある。
とっさに身をかがめ初撃をかわすことが出来たが、慌てて尻餅をついてしまった。
リーダー格の男の追撃が来る。
俺は足をばたつかせ、それもなんとか回避することに成功し、
次々と襲ってくるリーダー格の男の拳を死に物狂いで避け続けた。
今まで一撃たりとも貰っていないのは奇跡か、それとも遊ばれているだけか、
それすらも判断できない状況下で、俺はいつの間にか蹴飛ばして中身をぶちまけていた、
ごみ箱の中身を思い出した。
あのガラス球を投げつければ、一瞬でも怯まないだろうか?
ありったけの力を振り絞り、近くを転がっていたガラス球を
リーダー格の男に投げつけた。
狙いはバッチリ、顔面を捉える軌道をガラス球が飛ぶ。
よし、今のうちに逃げっ!?
ガラス球は粉々に砕け散った。
リーダー格の男の拳が、ガラス球を正確に捉え拳で粉砕していた。
リーダー格の男が大きく踏み込み、それでいて素早く、
おそらく最後の一撃となるであろう攻撃を繰り出してきた。
これは避けられない。
とっさに顔を守る動作をするも間に合いそうも無い。
完全に顔面を捉えられている。
ああ、痛いのはいやだなぁ…。頭が砕け散ったら嫌だなぁ…。
しかし、そんな不安をよそに、何時までたっても拳が飛んでくる気配が無い。
俺は、いつの間にか瞑っていた目を恐る恐る開けると、
そこには大きいけれどとても綺麗な手の甲があった。
男の手では無い。
顔を上げ、その手の持ち主を見た。
【みやこ】「君、大丈夫?」
武僧先輩だった。
【モヒカン】「げへ!?武僧か!」
【ゲーハー】「あら嫌だ、傀儡ちゃんに見つかっちゃったわぁ。」
武僧はリーダー各の男の拳を、左手で押し戻し払いのけた。
相当な力がこめられていたのだろう、
リーダー格の男の手の甲には痣がついている。
武僧は俺の前に立ちはだかり、不良どもの壁となった。
【みやこ】「なんでこんな事するん!?あんたらも武の道を歩んでたのに!
同じ武の道を歩む者として、あたしは悲しい!」
同じ武の道を歩む者…?やはりこいつらも空手部なんだろうか。
人間離れした猛者達がいる空手部に人が少ないのが分かった気がする。
こんなの相手にしてたら命がいくらあっても足りないよ!
【リーダー】「空手部に人を入れさせないために決まってる。
あんな危険な部活、さっさと廃部にするべきなんだ!」
【みやこ】「危険なんかあらへん!ちゃんと訓練さえすれば事故なんて起きんのや!」
【モヒカン】「げへげへ、でももう起きちゃったんだな。」
【ゲーハー】「そうよねぇ、いくら綺麗ごと並べても、所詮は傀儡の戯言よネェ。」
【みやこ】「あたしは傀儡なんかじゃあらへん!」
【ゲーハー】「過去を知ってるあたし達には説得力が無いのよネェ。」
武僧の怒りが頂点に達したのか、体が少し震えている。
握りこぶしに、今にもツメが食い込み
血がにじみ出るのではと思われるくらいに、力をこめているのが分かる。
自分の感情を抑えたいが抑えられない、そんな印象を受けた。
何時飛び掛ってもおかしくは無い。もしそうなれば、俺では止められない。
誰に助けを求めればいいんだ?などと思っていると、
【リーダー】「ゲーハー、その辺でやめておけ。
キレられたら手がつけらん。もう行くぞ。」
【ゲーハー】「好きで禿げてるわけじゃないのよ!その名前で呼ばないでよ、もう!」
【モヒカン】「衝撃的事実なんだな、げへげへ。んじゃのぉ。」
リーダーが仲間達を連れて、去っていった。
モヒカンはなぜかにこやかな笑顔で手を振って去った。
本当は見かけより悪い奴じゃないのかもしれないとか思ってしまう。
いや、だまされるな。馬鹿なだけだ、うん。
緊張が解け、一気に力が抜けて、俺はその場にしゃがみこんでしまった。
【俺】「助かった…。」
【みやこ】「間に合って、ほんまに良かったわぁ。
一年生の少年が、ここで喧嘩が始まってるって聞いて飛んできたんや。」
【俺】「あの子か…?」
【みやこ】「そうやぁ、君が助けた少年や。カッコエエとこあるなぁ。
せやけど、あまり無理したらあかんよ?」
【俺】「そうですね、以後気をつけます。
ありがとうございました、武僧先輩。」
【みやこ】「あたしのこと知っとるん?」
【俺】「ええ、部活の見学に行ったときに、クラスメイトに聞きましたよ。
素晴らしい技を見せていただきました。」
【みやこ】「ああ!あの時、丸太を当ててしもた少年!
…にゃははは。ほんまに堪忍なぁ?
あの技、いつもあそこで失敗してしまうねん…。」
困った顔でうつむく先輩が妙にかわいらしい。
さっきの先輩とはまるで別人だった。
【俺】「でも、凄くカッコよかったですよ。
思わず見惚れてしまって、避けれなかったのは
自分のせいなので気にしないでください。」
【みやこ】「にゃは!ありがとう!
せや、君名前なんて言うん?」
【俺】「二年の遊佐 洲彬です。」
【みやこ】「遊佐君かぁ、あの噂の転校生は君の事やったんやね~。
これも何かの縁や、よろしくなぁ。」
先輩の八重歯の可愛い極上スマイルを拝み、差し伸べられた手で体を起こした。
そして、本来の目的である本当のゴミ捨て場を教えてもらって、俺達は帰路に着いた。
その時聞いた話だが、
噂の転校生というのは3年生の間でも広まっているらしい。
武僧先輩も甲賀先輩から色々聞いていたとのことだった。
というより、甲賀先輩が噂を広めているんじゃなかろうか。
まあそれはいいとして、今日は色々謎が残ったな。
あの不良はカツアゲをしていたわけじゃなく、空手部に入れさせないため、
入部しそうな新入生に釘をさしていたということ。
何のために?
そして、武僧先輩のことを傀儡と呼んでいた事。
傀儡…人形?
武僧先輩のあの怒りようはただ事じゃなさそうなのは、わかった。
触らぬ神に祟りなし…か?
色々気になることはあったが、時々空手部を見学するのも悪くなさそうだな。
あの笑顔ならもう一度見てみたいし。
【俺】「…疲れた。寝るか。」
部屋の明かりを消し、眠りについた。
最終更新:2007年02月01日 18:58