• #シーン『あの子はバリ☆スター【黒井】』
  • 登場キャラ『遊佐、中島、黒井』
  • BGM『戦闘曲』
  • 背景『グラウンド』


(背景→黒一色)

ガァン!(背景→一瞬だけ白く光る)
ガァン!(背景→一瞬だけ白く光る)

(背景→グラウンド)

遊佐「よぉーし中島! よくやった!」
 両手で銃を構えながら、中島に賞賛の言葉をあびせた。
中島「……て、てめぇ……『よくやった』じゃねえよ……」
遊佐「お前すごい。よくこの人数に囲まれて風船割られなかったな」
中島「風船以外はボコボコに殴られてるんスけどねぇ!?」
風船は攻撃を避けていたものの、その代償をすべて顔面で受け止めていたようだ。
 頭からどくどくと血を流し、涙を滝のように流して叫んでいる。
 しかし立っているから大丈夫だよ。うん。
中島「なんですぐ来なかったのよ!?」
遊佐「そういう作戦だったからだ。そう、お前は図られたのだ」
中島「うおー! 図ったなユザァァァ!」
 頭を抱えてのた打ち回る。
中島「それでオレが死んじゃったらどうすんだよ!!」
遊佐「笑いがとれるんじゃないか?」
中島「笑うのかよ! オレの人生ってお前ら笑い一回分のために存在してたの!?」
遊佐「笑いに命をかけるってそういうことだって。きっと」
中島「違うよ絶対! 第一笑いに命かけてないし!」
遊佐「はいはいワロスワロス」
中島「笑い事じゃねえぇぇ――!!」
遊佐「大丈夫、お前はどの道死なないんだよ。なんていうかもうキャラ的に」
中島「……うぅ、死なせてくれ……」
遊佐「よし任せろ!」
中島「だからって殺すなよ! うわっ眉間に銃はやめれー!」


 ※感情度分岐
感情度が高いキャラごとの見せ場に入ります。いない場合はスキップ。


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  • 黒井ルート

遊佐「よし蔵人くん! 向こうは任せたぞ!」
中島「あんた調子良すぎ! くそぅ! わぁーったよ! この中島蔵人、転んでもただじゃ起きねえんだぞ!!」
遊佐「長い剣じゃ小回りきかねえんだからな、囲まれないように気をつけろよー」
中島「お前も弾切れにゃ気をつけろよ! 水鉄砲ってやつぁ、水が切れても“鉄砲”にはなんねえんだからな!」
 だっ、とバスターソードを振りかぶって駆け出した。
遊佐「……大丈夫。弾切れは、しないよ。その気になれば永遠に」
???「あら、そこにいるのは遊佐君かしら?」
 俺の名を呼ぶ声。首をぐるりと回す。
 その時、
 ――振り向くんじゃねえ! 今すぐその手と足を全力で振り上げて逃げろッ!
 久しぶりに、俺の頭ん中のモーグリが警笛を鳴らした。
 ……あの時もそうだったように、語尾に“クポ”をつけずに。
黒井「ふふふ。ごめんなさいね。驚かしちゃったかしら」
遊佐「黒井先輩……」
周囲を重苦しい空気が支配していた。
黒井先輩が一歩踏み出すごとに、足元から闇の渦が現れて新鮮な空気を根こそぎ吸い込んでしまうような感覚。
 息苦しい。
 思わず、自分は外にいるというのに換気をしたくなってしまった。
黒井「どうしたのかしら? すごい汗よ」
背筋に氷を押し込められたみたいな背徳感。
この荒れ狂う熱波ですら、彼女の御前では氷点下の吹雪になってしまうのか?
 くそっ、どうした洲彬! 何もやましいことはないはずだろッ!?
 いや、まさか……バレたか?
 にこりと笑う黒井先輩が、俺を見た。
 その彼女の笑顔に、俺は見てしまった……冥界の扉を開いて、この世に出てきてしまった禍々しい死神の姿を!
 だ、大丈夫だ! 黒井先輩の笑顔がミステリアスなのはいつものことだろ!? いつも通りの黒井先輩だろう!?
黒井「あら……?」
黒井「ふふ。その水鉄砲……」
黒井「すごいのね。弾切れしないのかしら?」
 ぐっは……バレた……
黒井「……駄目じゃない。むやみに人前で魔法を使ってはいけないと言いましたよね?」
 ざあ――という音は木枯らしが吹いたのか、俺の体中の血液が怯えて引っ込んでしまった音なのか……
 いや、違う。
両方だ!
遊佐「そ、そんな! た、確かに俺は今水の方程式を使って弾を増やしています……だけど、先輩だって今風の魔法を使っているじゃないですか!?」
黒井「要は人に真実が伝わらなければいいのです。つまり、ばれなければ良いということよ」
 んなっ!?
黒井「変な顔してるわよ。ふふふ……」
黒井「約束を守らない悪い子にはお仕置きが必要ね」
 お仕置きって! 経緯はともかく、魔法禁止のはずの先輩も思いっきり魔法使ってんじゃん!
その意見は明らかにムジュンしていますよ!?
 黒井先輩は手の杖を捨て、代わりに腰の後ろに両手を回す。
そのわずかな動作が一秒程度で終了すると、クロスさせるように取り出した長くて黒い鉄塊が『ジャコン!』と音を立てた。
遊佐「い“!?」
 長い銃器だった。
 黒井先輩は、ポンプで水を汲み上げるような独特のアクションでの給弾方法を持つそのその銃を、だらんと手の先から垂らしている。
遊佐「ショットガン……」
 別に驚いたのは黒井先輩の腰の後ろからそんなデカ物が出てきたことじゃない。冒険者にはよくあることだ。
 驚くべきは……その鉄塊が両手にあったこと。
遊佐「ショットガンが、二丁!?」
黒井「これで遊佐君と同じ条件ね。さぁ、行きますよ?」
 ちょっと待て! ダブルショットガンですと!?
 たとえアレがショットガンだっとしても、あくまで水鉄砲だろう。そしてそれに水の方程式を使う。それはまぁ許そう。俺だって使っちまったから。
だがそれを差し引いても、その手の長物と俺の拳銃を並べて『これで同じ条件』だってことには全力で否定したい!!
黒井「ふふ。いくら自然界に素晴らしい資源があったとしても、それを出力するのは所詮人が作った物。どこで有効に式を使うか、見極めることはとても大事なことよ」
 ゆらっ、と黒井先輩のシルエットが熱波に霞んだかと思うと、次の瞬間には霧のようにどこかに消えうせた。
遊佐「消え……って、なんだそれ……ちくしょう! これ魔法じゃねえのか!?」
黒井「魔法ではありません。陽炎、という自然現象を知りませんか?」
 その声がどこから響いているのかわからない。
 陽炎に乗じて、自らの姿を消したってのか!? んな馬鹿な!
黒井「魔法は人の法ではないのよ。あくまで大気の元素の力を利用するものだと教えたでしょう? 自然を知り利用すること。魔法の知識を得、行使することは同じなのです」
遊佐「それってつまり魔法を使ってるっていうことじゃないんですか!」
黒井「ふふふ。そうかもしれないわね」
 くそっ! あまりの理不尽さに、もはや悪態しか口から出てこねえ!
 だが落ち着け。心を乱したらその時点で俺の負けだ。
集中しろよ。クールだ、クールになれ洲彬!
 どこから攻撃してくるにしても、それは必ず一箇所からだ。
耳を澄ませ。相手の息づかい、足音、全てをたぐり寄せろ。それらの情報は必ず勝利へと導いてくれる。
 さらに耳を澄ます。その瞬間から周りの大歓声や喧騒の音がすべてシャットアウトされ、俺は究極のランナーズ・ハイの骨頂に達した者だけが突入できるという臨界点『無音の世界』に足を踏み入れていた。

 ……

じゃり。
 足音ッ!
 左後方から、シェルに包まれた何発もの弾が同時放たれる爆発音にも等しい銃声が響く。
 しかしそれより一瞬早く、俺は身を投げ出していた!
 間一髪で初弾を逃れる。だが黒井先輩の銃撃がそれで終わるわけがない!
まだ空中にいる時に黒井先輩の姿を補足することができたが、薄い笑みの下からのぞく両腕のショットガンはずっと俺を見ていた。
銃口から放たれる爆発音がたて続けに俺を襲う!!
 バコッ! バコッ! バコッ!
 リロードモーションがないのは、弾に制限がないからいちいち給弾する必要もないということだ。
 しかし、リロードがいらない点では俺とも対等だ!
 着地と同時に受身を取ると、両腕をクロスさせてハンドガンの銃口を黒井先輩に突き刺す!
遊佐「うおおぉぉぉ――!!」
 ショットガンは中距離が本領の銃器だ。遠距離では命中率もクソもないし、近距離ではその長い銃身が邪魔になる。
 俺は怒声とともに地面を蹴った。
 滑るようなスピードで一気にゼロ距離へ身を持って行く!
 バコッ!
 足元に着弾。だが俺は怯まない。疾走することを止めなかった!
息もつかせぬ速射で弾幕を張り、黒井先輩に銃撃の暇を与えない。
黒井「……」
 だが、何かのつぶやきとともに彼女はその手のショットガンを捨てるという、目の前の事実としては信じがたい挙に出た。
 そして代わりに取り出したのは――魔界の王が駆る処刑具とでも呼ぼうか――凶々しい漆黒の大鎌だったのだ。
 待て待て待てぇぇッッ!!!
 いくらなんでもその大鎌を腰から取り出すのは無理があるって!!
 にこっ。
 ああ、黒井先輩スマイルが俺の首を刈り取ろうと優しく見つめている……
 ホント、戦場は地獄だぜ……
 目の前が真っ白になっていく中、俺は苦し紛れに一発の弾を放った。

 ……

遊佐「あれっ?」
黒井「……」
 すれ違い様、時代劇のワンカットのような互いの一撃。
 その直後、乾いた破裂音が『二つ』響いた。
黒井「……何故? 私の風船が……」
遊佐「あれ!? 俺の風船もないけど、黒井先輩の風船も……割れてる?」
 どういうことだ?
 苦し紛れに撃った俺の一撃が風船に当たったってのか?
んなご都合主義な……それに黒井先輩が濡れてるってことは、俺の一発は風船ではなくて彼女の体に命中したってことであって……
遊佐「……って! 黒井先輩の体がびしょびしょだ!!」
 黒井先輩から俺の放った水が滴っている!
うわあああ! 見るな見るな! 視線が向いちまうのは男だから仕方ねえけど、ああそれでもそれを理由にして見るな俺ッ!
 で、でも少しだけ見るならいいよな……?
 濡れた体操服を抱くように両手でかばいペタリと座り込んでいる黒井先輩……肩やふとももの張りのある肉がスッキリさとスポーティさを演出。
遊佐「……」
丸いおしりのブルマから伸びるふともものラインも太すぎず細すぎないところがGOOD!! これこそシンプルイズベストたる所以! ブルマと足の長さもとってもゴールデンレシオ! つまりは黄金比だ! 白い肌、これでもかというほど美しく白い肌はまるで純白の雪原の上に更に穢れなく咲くスノーリリーの如し! 年相応の若さ残しつつも水を滴らせるそのしなやかな肢体はまぎれもなくミステリアスな大人っぽさをしっかりアピールし……ぐっ、こりゃ片山先生派のむっちりふともも連邦軍と黒井先輩派のすらっとふともも公国軍が真の『ふともも神』をかけて宇宙戦争を繰り広げても可笑しくないレベルだぞ! まさに体操服+水=??????????(ハラスメント発言のためフィルターが作動しました)。っとおおおああああ!? よく見りゃうっすらと水に透けた体操服の下からのぞくはくくくく、黒のらららららららんじぇ○――――!!!
もっとじっくり見てえ! でも、ああくそっ! 男だからこそ、ここは我慢だろう!?   うおーうおー!! ちなみに『ちょ、おまっ、すでに十分見てるだろ』って突っ込みは禁止だ!
 俺の頭の中でモーグリが謎の神『ふともも神』と戦っているあたりで、何かが俺の視界を不意に横切る。
困惑している俺と黒井先輩に呆れて答えを教えにくる先生のように、一枚の羽根がふわりと舞い降りてきた。
 なんだこれ。真っ黒でカラスみたいな羽根だ。
???「羽根吹雪です」
 ざっ。
 乾いた土を舞い上げる西部劇のガンマンのごとく、静かに歩み寄ってくる人影がひとつ。
遊佐「青島さんっ!?」
 驚愕する俺。
 それに対して黒井先輩は、やられた、という苦笑を浮かべるのだった。
青島「残念ながら、この場で冥界の門を開くことは断念しましたが……これを代わりに使わせていただきました」
 先ほどの羽根と、同じ物を目の前に掲げる青島さん。
黒井「ずっと狙っていたのね……まりなちゃん」
青島「はい。あなた方の死闘、この羽根吹雪が全部見てたんだよぉ! です」
 ぽかーん。
 と、するしかないだろ。
青島さんは最初から漁夫の利を狙っていたということだ。
 青島さんらしいっちゃ、青島さんらしいんだけど。
青島「こう見えても負けん気は強いんですよ」
 俺の目を見て、一言だけ残した。
青島「だから要・注意です」
とほほ……

(暗転)

 とは言え、ルークキーパーの主力だった黒井先輩を封じ込めることが出来た俺たちの作戦は大成功。
 青島さんをはじめとする一年生も、うちの精鋭(まぁ、アイツらだよ)たちが撃退。
ついでにルークも確保し、二年生は所持ルークを二つに増やす。
そしてそれからは一気に大量得点を追加だ。
試合開始直後にも関わらず二年生の得点は他チームを大きく引き離し、もはや独走状態になっていた。
 いくら二年連続ゴールドバリスターの武僧先輩がいる三年生や、クセの強い子が多い一年生でも、俺たちとの間に生じた溝は埋められなかった。
 そしてそのまま試合は進み……
最終更新:2007年04月20日 13:55