医者と拓也が話している。
俺は家庭の事だと思って診察室には入らないでいた。
確かに霞の事はとても気になるのだが。
遊佐「……」
外の待合室でのイスに座っている。
中での話していることが気になる。
拓也が入ってからしばらくして診察室への扉が開けられた。
拓也「あの、遊佐さんも一緒に……」
遊佐「え? いいのか?」
俺は内心戸惑った。
拓也「はい」
遊佐「……わかった。悪いな」
謝りながら俺は返事をする。本当にいいのかどうか、俺は少し罪悪感を感じていた。
遊佐「失礼します」
医者「ふむ、霞さんの友達と聞いたので話をと思って」
なるほど……。そういうことか。
ここしばらくどんな様子だったかを聞かれた。
医者「どうやら、無茶が祟って風邪をこじらせたのと過労……でしょうな」
イスを回し机に向かう。
医者「とにかくしばらく、二、三日休養として入院するのがいいでしょう。後は点滴しておきましょう」
過労……。
拓也「
ありがとうございました」
拓也がお辞儀をする。
俺も黙ってお辞儀をする。
医者「部屋を案内してあげなさい」
医者はそこにいた看護士に指示をする。
俺たちはその看護士について行った。
案内されたその部屋で霞は点滴を受けながら寝ていた。
拓也「……」
遊佐「……」
二人してイスに座り込む。
遊佐「……拓也」
俺は思い切って聞いてみようか考えた。これは避けられないことだ。
遊佐「……」
聞こうとは思った。だけど聞けなかった。
遊佐「大丈夫だって」
俺は拓也と自分にそう言いかけた。
拓也「……はい」
それにしても過労、か。
この事には何か大きなものが隠れていると思った。
遊佐「お前の姉ちゃん、何でそんなに一生懸命なんだろうな……」
理由の半分は俺の予想、半分全くわからない。
つまり、全くわからないわけなんだけど。
拓也「……はい」
話したくない、という雰囲気が感じられた。
そうだよな……。これ以上は踏み込めないよな。
他人……だもんな。
遊佐「ちょっと俺、飲み物買って来るわ」
俺は立ち上がる。
遊佐「拓也も何かいるか?」
拓也「いえ、大丈夫です」
遊佐「そっか」
俺は部屋を後にした。
飲み物を買いに行くと言って出たが売店は開いてないだろうし、なにより場所を知らない。
遊佐「……外に出るか」
俺は外を目指して歩いた。
外に出ると既に夜が明けていた。
電源を消していた携帯をつける。既に七時が周っていた。
遊佐「……店長に連絡したほうがいいか」
店長は俺たちにとって頼れる大人だから。
遊佐「そうしよう」
時間からしてまだ店には居ないだろう。後で連絡をすることにする。
遊佐「……自販機を探そう」
一応口実にした事だからな。余計な心配はさせなくて良い。
遊佐「悪い、売店開いてなかったから自販機探していた」
俺は病室に戻ってきた。
拓也「おかえりなさい」
遊佐「まだ、目を覚まさないか……」
まだ眠っていた。
点滴の袋の中身は殆どなくなっていた。
俺はベットの傍に歩いてゆく。
この小さく華奢な体で精一杯やっていたんだな。
しばらくゆっくり休めよ。
そう心の中でつぶやいた。
霞「……ん」
霞の瞼が動いた。
遊佐「霞?」
拓也「姉ちゃん?」
二人が呼びかける。
どうやら霞が目を覚ましたようだ。
霞「あれ? 遊佐君……拓也?」
遊佐「おう、俺だぞ」
拓也「大丈夫?」
霞が首を傾けて横を見る。
霞「ここ、どこ?」
遊佐「病院だ」
霞が目をぱちぱちする。
霞「何で?」
遊佐「……倒れたからだよ」
霞「誰が?」
遊佐「霞」
霞「……」
拓也「姉ちゃん、過労と風邪で倒れたんだよ」
拓也が説明する。
霞「過労……?」
遊佐「働きすぎなんだよ」
霞「……うん」
拓也「お医者さん二、三日入院しろって言ってたよ」
霞「え? 大……」
遊佐「大丈夫じゃない」
先回りをして答える。
拓也「そうだよ」
霞「んー」
遊佐「いいから休むの!」
霞が顔半分布団をに埋める。
霞「……はーい」
遊佐「しばらくバイトも休まないとな」
霞「……うーん」
この発言には少し悩んでいるようだが。
霞「わかった」
はぁ、まったく。
遊佐「それじゃあ、拓也。ちょっと家に戻って準備したほうがいいんじゃないか」
拓也「あ、はい」
入院するとなれば色々必要となる。
遊佐「俺も手伝うよ」
拓也「え、でも」
たく、この姉弟は。
遊佐「一人じゃ大変だろうからな。いいから甘えとけって」
拓也「わ、わかりました」
遊佐「それじゃ、寝てろよ?」
霞「うん」
念を押して病室を拓也と共に後にした。
遊佐「うーん」
重要なことを忘れていた。
俺たちは二人で頭を悩ませていた。
拓也「……どうしましょう」
遊佐「どうするかな」
何が必要かは大体わかるんだが。
パジャマなんかはまぁなんとかクリアした。
問題は、下着。
遊佐「持って行っていいのか?」
拓也「僕にもちょっと……」
困った。こんな時頼れそうなのは……。
中島は……だめだ役に立たないぞ。
遊佐「……恥を忍んでクラスメイトに聞く」
携帯を取り出した。
拓也「お、お願いします」
ましろに頼るか……。こんなの聖に聞かれた日には……。
そして何とか連絡を取りかなり恥しい思いをしながら尋ねた。
これも霞のためだ……。
最終更新:2007年03月17日 01:45