(黒井立ち絵表示)

黒井「こんにちは。遊佐君」
遊佐「あ、黒井先輩……」
黒井「あら……どうしたのですか? 顔色が優れないようですけど」
遊佐「いえ、どうってわけじゃないんですけど、バリスタのこのぴりぴりした空気にちょっと緊張しちゃいまして……」
黒井「あら。緊張、ですか」
遊佐「昔からこういう大きな舞台に弱いんですよ俺……」
黒井「ちょっと意外ですね。遊佐君ならいつもの調子で先陣を切っていそうなイメージがあったのですが」
遊佐「うぅ……人を見かけで判断するのはよくないですよ……」
黒井「ふふ、すいません」
遊佐「先輩は落ち着いてるなぁ……」
黒井「そう見えますか?」
遊佐「はい、そりゃもう。ポーカーフェイスって感じですよ。どうやったらそんな落ち着いていられるんですか?」
黒井「そう訊かれると困ってしまいます――強いて言うなら、緊張したという経験がないから、かしら」
遊佐「は? 緊張したことないって、今までに一度もですか!?」
黒井「ええ。『緊張』という言葉の意味は知っていますが、どのような心理状態なのかは、わからないのです」
遊佐「その、緊張したことがないから……ですか?」
黒井「はい。……あの、私何か変なことを言っていますか?」
遊佐「い、いえいえ! そうですよね、よくいますよ緊張から無縁な人って! いやぁ、あるある――」

(青島立ち絵表示)

???「ねーよ!」

(青島立ち絵消える)

遊佐「はっ! 今余計なことを言ったのは誰だ!?」
黒井「ふふ、いいのですよ。私だって変なことを言ってるっていう自覚はありますから」
遊佐「自覚って、それを分かっていて言うのもどうかと思いますが……」
黒井「あらあら。そんなことを言う子にはお仕置きが待っていますよ」
遊佐「う……すいません」
黒井「ふふ。冗談ですよ――緊張はほぐれましたか?」
遊佐「え、あっ……」
 そういえば、俺って緊張していたんだっけ……
黒井「では、もうすぐ試合ですので、私はこれで失礼しますわ」
遊佐「えっ、あ、ありがとうございます先輩!」
 親切心からなのか、それとも先輩のお遊びの結果、偶然こういう結果になったのか……わからないけど、とにかく緊張はほぐれたみたいだった。
 うーん……やっぱよくわからない人だよな。
こうして、あとはいよいよ試合開始の笛を待つばかりとなった。
最終更新:2007年04月20日 13:48