甲賀「あー、二人で楽しそうなことしてる!」
弓削「!」
甲賀先輩が急に入ってきた。そのせいで弓削さんがかなりびびってる。
遊佐「楽しそうなことしてるって……。来るの早かったですね」
甲賀「あんなの適当だよ」
適当で終わらせるような量じゃありませんでした。
甲賀「あー、名前書いたんだ」
旗の名前を書いたところを見て先輩が言う。
弓削「う、うん」
甲賀「これで一緒だね~」
弓削さんはうれしいけど恥ずかしいって顔をしていた。本当、仲むつまじい。
遊佐「さて、そろそろ作業始めちゃいますか?」
いつまでもやってそうだったから話を振ってみる。
弓削「そ、そうしよ。ね?」
甲賀「ん~、そうしよっかぁ」
甲賀「今日はこんなもんでしょう!」
顔にペンキをつけた先輩が終了を宣言する。
弓削「顔にペンキついてるよしのぶちゃん」
甲賀「うげっ、どこどこ?」
指摘された甲賀先輩は顔をこする。
遊佐「余計広がるんじゃ……」
弓削「あぁ、広がっちゃった」
甲賀「うわー」
少し考えが足らなかったな……。黄色が広がった顔。
弓削「ちょっと待ってて。ハンカチを濡らしてくるから」
ハンカチを持って弓削さんが出ていく。
遊佐「面白いなぁ……二人は」
甲賀「むむぅ」
二人の関係を完璧に掴めないけど、すごい絆だと思う。
甲賀「ん~ん~」
どうやら顔が気になるらしい。さっきから顔をぺたぺたしている。
遊佐「あんまり気にしない方がいいですよ」
とりあえず、鏡を見てもらったら面白いかも知れない。カバンから手鏡を取りだす。
遊佐「ほら、先輩」
甲賀「あちゃ~、あ~」
鏡を見ると先輩がますますあわててかわいかった。
弓削「もどったよって、あぁ。もっと広がってる」
さっきの部屋を出て、
生徒会室に戻ってきた。とりあえずやることをやる。
主に先輩の残したものだったが。思ったとおりほとんどを残していた。
遊佐「ほっとんど残ってるじゃないですか……」
甲賀「はっはっは、私だけ置き去りなんていやだからね」
というわけで俺たちは巻き添えを食らっていた。
遊佐「もぉおおお~~~」
悔しいので叫んでみた。すごい理不尽だと思うのだが?
弓削「ちゃんとやらないのはいつものことだから……」
もう弓削さんは諦めていた。なんでこの人生徒会長になったんだろうか……?
遊佐「何で俺も手伝いしてるんでしょうかね……」
とりあえず用紙を本にまとめる作業を延々と繰り返していた。
甲賀「それは私の仕事じゃないし、ついでだよ」
確かに実際の仕事の内容は生徒会員じゃないからわからないからこうやって単純作業してたほうがいいけど。
遊佐「折って、束ねて、がしゃんっ!」
でも、繰り返しの作業って時々熱中してしまう。どこまで正確にできるかってところで。
甲賀「うーるーさーい」
遊佐「ええい、手伝ってるんだからその言い方はないでしょう」
弓削「そ、そうだよ、しのぶちゃん……」
甲賀「ふぅ……終わったぁっ」
どうやら作業が終わったらしい。こっちもずいぶん完成していた。
遊佐「それじゃあそろそろ帰りましょうか?」
甲賀「うん。あーあ、今日も終わりかぁ……」
弓削「……そうだね」
先輩がイスに座って左右に揺れながらつぶやく。どこか残念そうな顔をして。
遊佐「終わるまであと六時間はありますけどね」
甲賀「それ前も聞いた~」
遊佐「そうでしたっけ……」
いつそんなこと話したのか……。ずっと前のような気がする。
甲賀「家帰ったら、寝よっと!」
そういってイスから立ち上がり背伸びをしている。
甲賀「それじゃあまたね」
弓削「さようなら」
そういって俺たちはまた別れた。二人の去る後ろ姿はなぜかさみしそうに感じた。
遊佐「……帰ろう」
そして俺たちは次の日も準備に追われていた。
甲賀「……ふぅ」
遊佐「甲賀先輩?」
しかし先輩はどこかぼーっとしていた。
甲賀「ん? どうしたの?」
遊佐「いや、ぼーっとしてるから」
甲賀「さぼるなーってことぉ?」
そういうつもりでいったんじゃないんだけどな。
甲賀「ちょっとね……。よっし気合いいれる!」
そういってガッツポーズをつけた。
遊佐「んじゃ俺はこの荷物運んできますから」
甲賀「ん? あぁ、よろしく~」
荷物を運ぶにはグラウンドの付近を通らなければならない。
遊佐「村崎先輩今日もがんばってるな」
だから運動部の活動なんかが視界に入る。
村崎「ん、遊佐じゃないか」
遊佐「村崎先輩。どうも」
村崎「ああ、今日も手伝ってるのか。大変だな」
そうだった。俺は手伝いだったんだ……忘れてた。
遊佐「そうでもないですよ」
と、返事をしたけど実は重くて大変だったり。
村崎「もし、私が言ったことを気にしてるのだったらすまないな」
村崎先輩が申し訳なさそうにする。
遊佐「気にしてはいますけど、構いませんって。それより俺でその何かに力になれるのかどうか」
よく考えるとそうなのだ。どうして先輩が困るかもわからないしそもそも俺が力になれるのかもわからない。
村崎「大丈夫だと思うぞ。きっと忍はお前を好いているだろうからな」
遊佐「ええ。って、はい?」
そういうと微笑んで去って行った。
遊佐「……えーっと」
すごく意味不明だった。
どんっ
男子A「いてっ」
考え事をしながら歩いていると一人の男子生徒にぶつかってしまった。
遊佐「あ、悪い」
見た目ちょっとやんちゃそうな(婉曲的表現)坊野三人組だった。
男子B「兄貴! 大丈夫っすか!」
男子C「おい、お前何してくれてんだこらぁ!」
そして典型的だった。
遊佐「考え事をしていて気付かなかった。すまない」
男子A「んだとっ……。ん?」
俺の運んでいた荷物をじっと見つめてる。なんだこいつら?
男子A「ほぉ……お前そんなん運んどるのか……」
遊佐「まぁ、運んでるけど?」
男子A「お前ら手伝うぞ!」
男子B「えー!? なんでっすか!?」
男子C「そ、そうっすよ!」
どうやらリーダー格っぽいやつとその手下二人といった感じらしい。
というかなぜかリーダー格っぽいやつが手伝うと言っている……。意味がわからなさすぎる。
二人の反応があまりに適切に感じられるから恐ろしい。
男子A「バカ野郎! お前らよく見てみぃ!」
男子B・C「あっ!」
何かに気づいたようで素っ頓狂な声を上げる二人。
遊佐「はぁ?」
男子B・C「うっす! 手伝うっす!」
すごい剣幕で迫ってきた。うっとうしいことこの上ない。
遊佐「そ、そりゃどうも」
そしてなぜか手伝ってもらえることになった。
男子A「ここでいいんか?」
荷物をゆっくりと丁寧におろしてそうたずねてくる。
遊佐「あー、いいと思うけど。助かったよ」
男子A「おいおい、しっかりしてくれよ。あんた生徒会のもんだろ?」
遊佐「生徒会の手伝いはしてるが生徒会のメンバーではないんだな」
男子A「まじでかっ! お前も俺たちと同じくちか!?」
遊佐「同じくちってなんのことだ?」
男子A「ああん? おぉ、いや、すまねえ。うん、違うならいいんだ」
男子B「ここいらでいいっすかね!」
男子Bも大声でおれに聞いてくる。そんなに気合はいらないと思うぞ。
遊佐「適当に置いといてくれ」
男子B「わかりました!」
遊佐「で、結局あんたらなんなんだ?」
男子A「そ、それは秘密じゃあ!」
遊佐「はぁ?」
男子A「ええい、うるさいのう!」
遊佐「まぁいいや。あんがとな。そんじゃ」
男子A「ちょっとまってくれ!」
俺はその部屋から出て行こうとするが呼び止められてしまった。
男子A「その、わしらが手伝ったことは内緒にしておいてくれんかの?」
遊佐「どうして? 別に恥ずかしいことでもないだろう?」
男子A「いやぁ、ちょっとそれは無理だのぅ」
男子C「兄貴がそう言ってんだからお前は従ってればいいんだよ!」
遊佐「あーもう、わかったわかった。黙っておくよ」
男子A「おうおう、助かる! それじゃあの!」
遊佐「んじゃ、まじでありがとなー」
なんか不思議なやつらだった。名前も知らないような奴らだったんだけどな。
遊佐「もどりましたよー」
甲賀「おかえりー。早かったね」
それは手伝ってもらったからな。早いのは当たり前だ。
遊佐「あー、これって間に合うんですかね……」
甲賀「そのために作業してるの! ほらみんながんばってるんだから遊佐君は昨日のとこへいく!」
遊佐「はいはい」
普通に元気……あるよな。元気ないかと思ったんだが気のせいだったか。
遊佐「さて、今日もやるか」
今日が木曜日なのであと金曜日と土曜日しかないわけで。
遊佐「とりあえずペンキ塗ってかわかさないとな……」
早くしておかないと旗が完成しないかもしれないからな……。
…………。
弓削「あー、すごい。ほぼ完成してますね」
遊佐「お、すごいだろ?」
弓削「はい!」
延々と作業してたため気づいたら下校時刻が近付いてきつつあった。
甲賀「うわっ! 完成しそうになってる!」
遊佐「ふっふん。どうよ……?」
甲賀「完成しないと思って諦めかけてたんだよね!」
だからそれはあまりに適当すぎやしませんかと……。
弓削「し、しのぶちゃん……それは」
遊佐「はい、先輩、弓削さん」
俺は二人に筆を渡す。二人は不思議そうな顔をしている。
遊佐「最後は二人が描いてください」
もともと二人でやってたんだから二人が締めを描くのがいいんじゃないかと思う。
本当は二人でやるつもりだったんだろうし。
甲賀「ふふ……」
弓削「あ……」
先輩は笑って弓削さんは驚いている。
甲賀「それじゃ、言葉に甘えちゃおうかな。ね梨香」
弓削「うん……」
最後の一文字に色が加えられていく。旗が完成に向かって。
…………。
弓削「できた……」
甲賀「うん!」
甲賀「うーん、だいぶ準備も進んできたし間に合いそうかな」
弓削「そうだね」
少し暗くなった
帰り道でゆったり会話をしていた。
甲賀「でも、終わったら……」
一瞬先輩の顔が陰りを見せた。
甲賀「そうだ! バリスタがさ。終わったら、どこか行こうよ」
弓削「しのぶちゃん?」
遊佐「そうだな……それも悪くないな」
最終更新:2007年11月22日 01:57