まもなく試合が始まる。お互い配置に付く。
中島「遊佐さ。お前まじで先輩を好きなのか?」
遊佐「……正直、好きになってるな。困ったことに」
中島「じゃ、まぁお前に譲ってやるよ。しょうがないからな」
遊佐「それはどうもありがとうよ」
もともとお前の良い人でもないし、とつっこみを入れる気力もない。
けたたましい音が鳴り響く。
遊佐「行こうぜ、中島」
――試合が始まった。

遊佐「まず、忍ならどうしてくると思う?」
中島「……そりゃ、突撃してくるに決まってるじゃないか」
遊佐「だよな」
俺達は背後から責められないように位置を取る。あとは突撃してくるのを警戒して待つ。
今回は俺たちは動かない作戦で行く。お互い武器を構えていつでも応戦できる体勢で待つ。
遊佐「…………」
中島「…………」
自分の心臓の鼓動が聞こえる気がする。
中島「……来ないな」
遊佐「いや、そろそろ来るぞ」
耳を澄ませて聞いてみる。
……来たっ!
遊佐「逃げろ、中島!」
中島「は?」
ばっ、と目の前の障害物を超えて忍が現れる。
中島「マジかよっ……!」
中島がとっさに左に飛ぶ。だが先輩の狙いは俺!
忍「もらったよ!」
きらっと光った、ように見えた黒いものが飛んでくる。
遊佐「そうはいかないんですよっ!」
とっさに短剣でそれを弾く、が威力が高くて腕がのけぞる。
眼前数メートル離れたところに着地した先輩が逆手に武器を構える。
中島「どぉりゃあ!」
中島が声を張り上げて先輩に突撃して、横に薙ぎ払うようにして風船を狙う。
しかし素早くかわした後に向きを中島に取り直す。
忍「おっとっと。危ない危ない。先に中島君を狙った方がいいかな?」
中島「それは光栄です。が、簡単にはやられませんぜ?」
俺もダーツを取り出して構える。
遊佐「中島、逃げるぞ」
中島「わかった」
そう言っても逃げるチャンスがない……。ダーツを投げて牽制しても時間稼ぎにもならない。
忍「そうはいかないね!」
忍が一歩動き出すと同時にすかんっ!と乾いた音がして何かが落ちる。
弓だ。遠くからの牽制。多分これは……!
遊佐「今だ!」
中島「おうっ!」
二人で逃げだす。流石に勝てそうになかった。なんであんなに強いんだ!
忍「むむぅ。ここは私も逃げとこうかな」

早乙女「……外した。弓道は苦手だ」
とりあえずこちらも姿を隠した。私が狙うべき相手は別だ。
神契「それでも、相当すごいと思いますけど……」
早乙女「いや、弓削に比べれば私の腕など大したことはない」
神契「そうでしょうか」
早乙女「しっ……静かに」
集中する。姿の見えない相手がやってくることを嗅ぎとる。
早乙女「そこを動くな」
弓を置いて、神契にそう言って飛び出す。
早乙女「……」
勝負事は、正正堂堂。もうそのような世の中ではないのはわかっている。
敵A「ちっ、こんなところに早乙女か」
早乙女「手合わせねがいます」
だが、刀をもっていた歴々を思えば、そこには自身が汚してはならないものがある
敵A「真面目な奴だな。影からこっそり狙えただろう」
相手も、男子剣道部のかなりのつわもの。
早乙女「心得ています」

聖「ましろ、離れないで」
ましろ「だ、大丈夫」
まずい、こんな所で鉢合わせするなんて。
聖「……」
相手がじりじりと接近してくる。
盾を構えてましろをかばう。
聖「はぁっ……!」
突っ込んで盾で相手を殴打して怯んだところを狙う!
がんっ!
しまった! 武器でガードされた!
聖「やぁっ!」
続けて攻撃する!
がっ!
聖「くっ」
だめだ、当たらない。
一歩下がって、ましろの守りに戻らなきゃ!
ましろ「聖ちゃん!」
しまっ……。やられる!
ばたん!
聖「きゃっ!」
あれ、床に倒れて……。
聖「ましろっ!」
ましろ「えいっ!」
ましろが相手に一振り。無茶だ。当たらない。
聖「……っ」
でも、ましろが時間を作ってくれた!
もう一度盾で相手を狙う!
今度は体の横からの殴打だ。これならどう!?
聖「もらった!」
剣で、がむしゃらに突きを繰り出す。

中島「逃げきったか」
遊佐「なんとかな……油断はできないけど」
肩で大きく息をして、なんとか空気を送り込む。正直しんどいなこりゃ。
中島「やっぱ玉砕覚悟で突っ込むしかないんじゃねえか……?」
遊佐「お前は正直いうとやられてもいいけど、俺がやられちゃ話にならないからな。できれば確実な方法でいきたいけど」
中島「それなら先輩を罠にはめるのが一番だろうけどな」
遊佐「簡単にはめられたら苦労はしないんだがな」
がしゃん! がらがらっ!
遠くで何か音がする。忍か……他の誰かか?
遊佐「中島、様子を見に行く余裕あるか……?」
中島「当たり前だの……」
遊佐「グラットン……」
中島「ソード……」
とにかく警戒しながら音がした方向へ移動する。
中島「逆に俺たちが罠にはめられたりしてな」
……その可能性はあるだろうか? 忍の行動を鑑みるに……。
遊佐「その可能性はある、にはあるが。忍の仕業ではないと思う」
仕掛けようと思えば罠なんていくらでも考えそうな人ではあるがめんどくさいので倒したらおしまい。
そんな短絡思考をしているように思う。
中島「それならそっちに賭けようじゃないか」
近づくにつれ音が大きくなり、誰かが戦っている音だと確信した。
遊佐「助けにっ!」
行こうとした瞬間ドアが吹き飛とんで壁に叩きつけられた。
中島「うぉお!?」
それに少し遅れて早乙女が教室から敵と対峙したままの構えで出てきた。
早乙女「はぁ、はぁ」
遊佐「早乙女!」
早乙女「来るな。助太刀無用だ……」
遊佐「ばっ、そのまま戦えるわけねーだろ!?」
早乙女「それは相手も同じこと……」
どうしてこう、俺の周りにいるやつらは強いやつばかりなんだろう。
中島「好きにやらせてやろうぜ。早乙女がやるっていってるんだ」
遊佐「わかった……」
中島「それに、あの戦いに入ると俺達死んじまうかも……」
ドアが吹き飛んだので教室の中がよくわかる。はっきりいって無惨極まりない。
神契「ひゃああぁあ」
神契さん……大丈夫か?
最終更新:2008年03月24日 03:36