マーちゃんを見送った後俺は大きくため息をついた。
遊佐「はぁあ……焦ったぁ」
忍「タイミング悪かったね遊佐君ってば」
遊佐「最悪でしたね……。なんでマグリフォンさんがここに?」
忍「手紙のことでなにか言いたいことがあったみたいだったからね」
遊佐「……でしたか」
結局すべての原因はあの手紙にあったというわけらしい。手渡してなお俺を苦しめるというのか。
忍「かなり深刻そうな顔をしていた……ような気もするけどあの子いつもあんな感じなによねー」
遊佐「深刻そうな?」
忍「私の勘だけどね。よくあたるんだよ? 例えばね……今遊佐君はマグリフォンさんのことを考えている!」
遊佐「そりゃ考えてますけど……」
とても信用ない勘であった。正解とかそういう問題ではなくて。
忍「そして……エロいことも一緒に考えている!」
遊佐「そりゃ考えてませんけど……」
忍「えー、うそだー。あー、揉んでみたいーとか思わないの?」
遊佐「……一体全体俺が何を揉むんですか」
忍「胸……とかって何言わせるのよ」
…………。
遊佐「はぁ……恥ずかしいなら最初から言わないでください」
いや、そりゃ揉める胸があったら揉んでみたいよ? 男だし? でも揉んでいい胸がないのよこれが。
遊佐「で、結局どういう話してたんですか」
忍「よくわからなかったなー」
先輩がイスに座ってくるくる回る。
忍「なんか、ね。言ってることがちぐはぐっていうのかな? 迷ってるっていうのとは違うけど」
遊佐「ただそれ困惑してるだけなんじゃないですか? 先輩が変なこというから」
忍「まっとうなこと言ってるはずなんだけど。むむむ」
何を話したのかはやっぱり気になるところだけど……。
遊佐「具体的にどんな話だったんですか」
忍「んー? んー? やっぱり気になる? 気になるよね-?」
先輩がにやにやしている。……なんか悔しい。
遊佐「はいはい、気になりますなります」
忍「といっても大した話はしてないよ。遊佐君とどういう関係なのかとか、どう思うか聞いただけ」
遊佐「大した話だと思いますけど……」
話の中心としては大変迷惑極まりない話でありまして……。
忍「で、結局……言っていいのかなぁ」
少し悩んでいるようだ。やっぱりあんまり話しちゃいけない話なんじゃないだろうか。
忍「まぁ、いいとは思うけど……昔から好きだったけど、今はわからない……的なこと言ってたかな」
……好き。なんて恥ずかしい言葉なんだろう。でもその好きは子供の頃の好きであってそういう意味じゃないんだ。
遊佐「……そうですか」
忍「がっかりした? ねぇ?」
遊佐「まぁ、多少は……。でもその話になんか矛盾してることありますか?」
俺には全く違和感を感じることはない。至って普通の話だ。
忍「なんて言うんだろうね。昔から好きだったってことは今も好きってことじゃないの?」
遊佐「子供の頃の好きと、俺たちの年頃の好きってずいぶん違うってことなんじゃないんですか……ね」
結局言ってて恥ずかしい訳で。
忍「んー、まぁいいけどね」
遊佐「で、前も聞いたような気がしますけど先輩はなんで俺たちのこと気にしてるんですか」
忍「そりゃあんな物見ちゃったらね。こっちも色々と考えるところがあるわけよ」
遊佐「……違うこと考えてはもらえないんですか」
忍「とにかく……折角来たんだからさ。なんか手伝ってよ」
遊佐「お疲れ様でしったたたた! 耳、耳がぁああ!」
忍「みみがー?」
遊佐「それは沖縄料理です!! 耳引っ張らないでください!」
忍「だって遊佐君逃げようとするから」
遊佐「そりゃ逃げたくもなりますよ、まったく。あー耳熱い」
相変わらず多少勝手な先輩である。一体どういう育てられ方したんだ。
忍「だめ……かな?」
上目遣いは
遊佐「……いや、別にいいですけど」
反則だと思うんだ……。
忍「やった!」
押しに弱い俺。一体どういう育ち方したんだ。
忍「はい、じゃあまずこれ! よっと」
遊佐「なんですかこりゃ」
忍「ポスターだね。色んなのがあるけど誰も目を通さないようなものばっかりかな」
遊佐「……っぽいですね」
忍「ま、これも仕事だからね。さ、行くよ!」
遊佐「画鋲はどこですか?」
忍「ほら、机の引き出しに……ってわわわわ」
ばさばさばさ……。……。
忍「どんまい」
遊佐「いや、何が!? っていうかどんまいは俺のセリフです」
忍「とにかく拾おう、うん。そうしよう」
拾おうと先輩が一歩前にでて、そして下が見えなかったのか紙を踏んだ。
忍「きゃ!」
そのまま片足が前へ滑る。やばい……後ろへ倒れる! 俺はとっさに前へ出る
遊佐「先輩っ!」
先輩の体を支え……ってやばい思ったより勢いが! そのまま倒れ……っ!
ばったーん!
忍「いたた……」
遊佐「あ、たた……大丈夫ですか先輩」
忍「え、……と。うん大丈夫。その、ごめんね」
遊佐「いや、結局倒れてしまったし……げ」
やばいまたこのパターンなのか!? そうなのだな!?
遊佐「……えっと、とりあえず謝っておきますね」
先輩……いい香りですね。やっぱり先輩も女の子なんだなぁ……。
体つきは細いし肌は白い。そして何よりやわらかい。
忍「何を謝ってるのかよくわからないけど」
遊佐「そうですね……よっと」
これ以上くっついてると……さすがにまずいので立ち上がる。
遊佐「……どうぞ」
俺は手を差しだす。
忍「ん、
ありがとう。よっと!」
忍「いやー、まいったね。たはは……。私としたことが恥ずかしいなぁ」
遊佐「あれは仕方がないですよ。それより大丈夫ですか? どっか打ってませんか?」
ただ倒れただけならまだしも、俺も一緒に倒れちゃったからな……。
忍「んー、痛いところはないし大丈夫そうだけどそれにしても……遊佐君もっとちゃんと支えられるような男にならないとね」
遊佐「情けない男ですいませんね……」
俺もそう思う。あんなに細い体ならさぞかし軽いのだろう。本当に情けないな……俺。