アットウィキロゴ
 
一日の終わりを告げるチャイムが鳴った。今日も今日とてすることはなく。
中島「おーっす、遊佐。また捕まる前に帰ろうぜ」
遊佐「そんなこと言ってるとまた捕まるぜ?」
と、言いつつ別に捕まってもいいやと思っている自分がいる。むしろ、自分から行きたい……のか?
遊佐「はっ……いかんいかん」
中島「どうしたんだよ? いきなり」
遊佐「ちょっと変な考えを持ってしまってな」
忍「変なことって何? ねぇねぇ?」
な、な、な……
中島「で、でたーーー! 逃げるんだぁああ!」
そう言うと中島は走って出て行ってしまった。
遊佐「……それじゃ、俺もコレで」
ここは一つ、穏便に逃げてみる方向であえて挑戦する。
忍「逃がさないからね!」
遊佐「なんでですか……なんで俺達ばっかりなんでしょう」
忍「だって、遊佐君おもしろいもん」
遊佐「先輩に言われても嬉しくありません」
もっと普通の女の子に言われたら嬉しいのに、褒められてる気がしない。
忍「とにかく、今日は遊佐君に料理を教えることにしてあるから、行くよ」
遊佐「ちょ、ちょっとまってください。それ、確定事項なんですか?」
忍「ほら、ぎゃーぎゃー言わずにだまってついてくる!」
がしっと手をつかまれ引張られる。
遊佐「たったった、行きます行きます! ていうか先輩からは逃げられませんから!」
忍「あ、そう? んじゃ行こうか」
遊佐「まったくもう……どこいくんですか? 家庭科室とか?」
忍「そこはつまんないからダメ。とにかくついてくる」
他に料理なんて教えられるところなさそうだけどな。
忍「こっちね」
そして学校から離れて、って
遊佐「ちょ、ちょ……なんで学校の外に行くんですか」
忍「まーいいから着いてきて! で、トレーニングついでにちょっと走るかな」
遊佐「走るって先輩むちゃくちゃ早いから!」
忍「どんっ!」
だー! 本当に走り出した!! くそっ! 追いかけないと!
遊佐「無理ですって! まじで!」
忍「ゆっくり目に走るから大丈夫だよ! あとあんまり喋らない方がいいよー!」
全然ゆっくりじゃないです! みるみる離れていきます! ていうかスカートめくれそうです!
遊佐「ぜ、全然おいしくねえ!」
やっぱ普段から鍛えとかないとダメだこれ! 痛感した!
忍「遊佐君走るときはねー! 上体を安定させた方が疲れないよ!」
上体を安定させるって全力疾走に近いのにできるかー! どれだけ早いんだ-!
忍「ほら、頑張れ!」
遊佐「ふおらー!」
俺は訳の分からぬ雄叫びとともに、足に全身全霊の力を込めた。
忍「よし、その意気だ! ゴーゴー!」

それから三分後俺はへたり込んだ……。
遊佐「……もう、無理……ていうか……心臓いたい……超痛い」
忍「ま、よく頑張った方だよ」
遊佐「ていうか、全然……疲れてませんね」
忍「慣れてるしね~」
慣れるってどれだけ走ってるんだろうか。
遊佐「で……目的地って……あとどのくらいですか……?」
忍「ここだよ」
そういって指を指したのは本当にすぐ目の前にある家だった。
忍「ま、上がって上がって」
からから、と音を立てて開ける引き戸がなんとなく古い家を感じさせる。が、見た目は立派だ。
遊佐「えーっと……お邪魔します」
玄関はちょっとひんやりしていた。そして家が暗い。誰もいないのだろうか?
忍「ちょっとそこに座って待ってて、お茶もってくるから」
遊佐「それじゃあ、失礼します」
座って一息つく。はぁ……ここは涼しくていいや。
奥から冷蔵庫を開けて何かを取り出す音がする。
なんだろう。すごく落ち着く。下を向いて流れてきた汗をぬぐう。まだ体は熱いけど。
忍「はい、おまたせ」
遊佐「ありがとうございます」
お茶を受け取るとゆっくり飲み干した。はぁ……生き返る。
遊佐「ふぅ……」
忍「ちょっと休憩したら、早速始めるからね。時間もないし」
遊佐「時間って……」
忍「晩までに作らないと意味ないでしょ?」
遊佐「まぁ、そうなんですけど」
忍「それじゃ、やろうか」

それから先輩に料理を教わりながら作業したが、先輩は器用だった。
慣れた手つきでどんどん作業を進める。
これはちょっと予想外で、意外な一面を知ったようなきがする。
忍「ほら、手が止まってる」
遊佐「あ、ああ。すいません」
ぼーっと先輩を見ていて注意されてしまった。
忍「ちゃんと教わる気あるの?」
遊佐「あんまりありません」
忍「バカ!」
すかん!
遊佐「いったぁ! お玉で殴ることないでしょ! しかもそれ小麦粉ついてる!」
忍「これくらいしないと遊佐君は反省しない」
遊佐「無理矢理つれてきておいて……まったく」
忍「遊佐君は楽しくない?」
遊佐「……うーん」
忍「私は楽しいけどな」
とんとん、と包丁で野菜を切っていく音がする。
遊佐「まぁ、家でぼーっとしてるよりは楽しいですね」
忍「素直じゃないねー」
遊佐「……うるさいですよ」
最終更新:2008年12月14日 23:21