バリスタ当日
【時期】バリスタ当日14日
【設定】バリスタで武僧と対決
【場所】学校グラウンド等
【登場人物】主人公【俺】、武僧都【都】、甲賀しのぶ【しのぶ】、村崎龍子【村崎】
中島【中島】、柊ましろ【ましろ】、月島聖【聖】
【その他備考】それぞれの階級【俺=二等兵】【中島=中尉】【ましろ=大魔元帥】
【聖=中将】【井草千里=大佐】【月島杏=大尉】【茜=少尉=作戦参謀】
【神契晶子=少佐】【毛森操=中尉】【早乙女不二子=中将】
その他の備考:毛森操の兄、毛森南吾(ケモリ ナンゴ)は元大魔元帥。
●学校教室前[作戦会議]
違うんだ。とりあえず言い訳をさせて頂こう。
俺はなんとか武僧先輩を倒す術を模索していたんだ。
これは我が2年生がバリスタで勝つためにも大事な事だ。
だから一生懸命考えていた。
人間というものは、考え事をしていると寝られないもので、
けれど途中で寝ないとだめだと思って寝ようとしても、時既に時間切れ。
焦れば焦るほど余計に寝付けなくなる。
……早い話、寝坊した。
そして今教室の前にいる。俺はドアノブに手をかけて扉を開けた。
【俺】「おはようございます……?」
一歩入り気が付いた。
教室が暗い。暗幕が張られ、外からの光を遮断しているようだ。
そして、一箇所だけ光が灯る教壇付近には、不機嫌そうな顔をした柊ましろ嬢が、
魔王の玉座に収まっていた。
多数の勲章を付けた漆黒の制服に身を包み、肘掛に肘をつき鋭い目つきで俺を睨んでいる。
【俺】「こ……、これは一体……」
【聖】「貴様……、どういうつもりだ?」
ましろ閣下とは対照的に、純白の制服を着込み多数の勲章をつけた聖が声を発すると、
教室中の生徒が一斉に俺に振り向き、氷のように冷たい目で見つめている。
俺が臆すると、どこから沸いて出たのか黒い服を着た男(クラスメイト)に両脇を抱えられた。
【俺】「ごめんなさいごめんなさい!寝坊したのは謝ります!」
【聖】「なんだ、寝坊か。それを先に言え」
【俺】「えっ……?」
【聖】「良い、席に着け」
【俺】「あ、うん。
ありがとう……」
一体なんなんだ、この雰囲気は!?
困惑しながら席に着くと、中島が声をかけてきた。
【中島】「災難だったな。こんな日に寝坊したのが運の尽き。
お前、最近3年と仲良くしてるだろう?
だから、3年に寝返ったんじゃないかって嫌疑をかけられてところだ」
俺は首を横に思いっきり振って、無実を訴えた。
【俺】「寝返るどころか、宣戦布告されたようなものだよ……。
俺は武僧先輩を倒さなきゃいけないんだし」
【中島】「……正気か?相手はバリスタ五蛇将の一人だぞ?」
【俺】「確かに武僧先輩は強いし、俺がかなう相手じゃないことくらいは理解してるが。
……バリスタ五蛇将ってなんだ?」
【聖】「その説明は私からさせて貰らおう。
バリスタ五蛇将、遊佐二等兵とマグリフォン=茜大尉以外は知っているな?」
二等兵……?
状況はよく分からないが俺は二等兵ということになっているらしい。
てか、同じ転校生である茜さんは大尉か……。
なんだこの差は。成績……、成績の差なのか!?
月島聖は教室の端へ移動すると、天井から吊るされているスクリーンに、
バリスタ五蛇将と思われる3年生の顔写真を映し出した。
その中の三人は知っている顔だった。
【聖】「この5人が、バリスタ五蛇将と呼ばれるバリスタ最強の戦士だ。
と同時に、我々に立ち塞がる最強の敵でもある。
……まずはこいつ。
ちょくちょく我々の前に顔を出しているから知っている者も多いだろう」
そう言って、指揮棒を俺も良く知っている顔を指した。
【聖】「甲賀しのぶ。こいつは諜報のエキスパートだ。
どこからともなく突然沸いて、我々の情報を盗んでいく。
残念ながら、こいつに対して有効な対処法は無い。
まさに神出鬼没そのものだ。
だが、攻撃力においてはそれ程でもない。五蛇将の中では低いほうだ。
やつの動きを捉えることさえ出来れば、倒す事もできるのだが……。
そして次に……」
また知っている顔を指揮棒で指し、「こいつが飛竜の村崎龍子だ」と言った。
【聖】「通り名の如く、こいつは龍のように空を飛び、そして龍のように荒々しい戦いを好む。
対峙した場合は上からの攻撃に注意する事だ。
長物使いなので、当然リーチも恐ろしく長い。
言い換えるなら、中距離戦のエキスパートだ。
正面及び村崎龍子の半径3メートルの範囲に死角は無く、接近するのは非常に難しい。
しかし、相手の間合いの中にさえ入ってしまえばチャンスはあるかもしれない」
聖は次々と指揮棒で五蛇将を指していき、説明を続ける。
【聖】「こいつは無手の真名。
正直、こいつにはどんな手段を使っても勝てる見込みは無い。
近寄った瞬間にいつのまにかやられてしまうからだ。
攻撃手段も謎。超常的な力を操るとさえ言われている。
まったく手を触れることなく相手を倒すがゆえに、無手と呼ばれる。
ただし、こいつは防衛や侵攻という意思は無く、
一定の場所をうろついているだけなのが救いだな」
この人には、あったことが無い。
しかし、話を聞く分には武僧先輩より、やばそうな臭いがする。
相手にするなって事だろうか。
【聖】「次に、歌姫・音羽奏。
歌姫自身の戦闘力は皆無といっていい。
しかし、彼女の歌を聴いたものは狂戦士となりて、
通常の何倍もの戦闘力を引き出し襲い掛かってくるぞ。
彼女自身に攻撃能力が無いためか、あまり前に出てくることはない。
五蛇将の中ではもっとも倒しやすそうに感じるが油断は禁物だ。
なにしろ、彼女の歌を聴いた狂戦士は、普段は我々でも倒せる相手だとしても、
狂戦士となったら一人一人が我が軍の少尉クラスに匹敵する力を発揮するからな」
我が軍の少尉がどれほどの力をもっているのか知らないわけだが……。
とりあえず、屈強な護衛が沢山付いているという認識でいいんだろうか。
【聖】「そして最後に、No1バリスター武僧都。通称、遊撃の虎。
類稀なる身体能力と格闘センスで、過去最高の敵撃破数を保持している。
と同時に、3年の攻撃の要にもなっている。
飛竜の村崎が引き付けている相手を奇襲するという戦術を多用する。
つまり、飛竜のいるとこ虎もありだ。十分注意せよ。
彼女は近距離戦闘のエキスパートだが、超人的な跳躍力で間合いを詰めてくる。
距離を取っているからと油断をしていると、
あっという間に目の前まで間合いを詰められてしまうので注意が必要だ。
我が諜報部によれば、ある瞬簡に隙が生じるとのことだが詳細は不明だ」
武僧先輩はNo1バリスターという、バリスタで個人最高敵撃破数を稼いだ者に
与えられる称号を持っているようだ。
そんな人に勝てる見込みなんてまったく無い。
しかし、俺は勝たなければならない。
結局昨晩はいい作戦を思いつくことなく今日を迎えてしまっていた。
もはや不安しか無い……。
【中島】「聞いたとおりだ。
お前は五蛇将の中でも一番戦闘に長けた者を倒すと言ってんだよ。
バリスタは敵を倒せば良いってもんじゃない。
ちゃんとルールがあって、それに則り得点を稼げば勝ちなんだ。
まあ、敵を全滅させればどちらにしても勝ちには違いないんだがな」
【聖】「中島中尉の言うとおりだ。
彼女達を倒せば良いってものではない。
ペトラと呼ばれる玉をルークに入れる。それが基本ルールだ。
今年から常時ゲートブリーチ状態という特別ルールになるため、敵を倒す必要は無い。
ただし、入れるべきルークは敵陣にあるから、戦闘は避けられないがな」
聞きなれない言葉が出てきたが、何より気になるのは中島が中尉待遇だということだ。
なんかむかつく、中島のくせに。
【中島】「まあ1年の頃に活躍したからな、俺は」
【俺】「だから、人の意識に介入するなと」
【中島】「とりあえず、お前はバリスタのルールでも読んでおけ」
【俺】「……わかった」
暗い中、目を凝らして説明書を読むに、
バリスタというのは学年対抗玉入れ合戦のような物らしい。
ルークという籠にペトラという玉を入れるゲームだ。
ただし、100対100という大人数で、武器使用可のデスマッチあり。
通常は敵を一人倒し、ゲートブリーチという状態でなければ入れることは出来ないが、
去年の甲賀組の影響があって常時ゲートブリーチ状態に変更されたらしい。
つまり、敵を倒さなくても玉さえ入れればOKということだ。
ただし、入れるべき籠は敵陣に設置されているとの事なので、
どちらにしても戦闘は避けられそうに無い。
プレイヤーは上半身に紙風船のようなものを付けて戦い、それが割られたら負けになる。
もちろん転倒して割れてしまっても負けになるため、
紙風船を付ける場所も戦闘に大きく影響しそうだ。
【聖】「……と、おそらく今年も同様に動いてくるだろう。
やつらの動きは統率が取れている。
しかし、指令を出しているリーダーさえ倒せばそれを崩せるはずだ」
聖は去年と一昨年のデータを元に分析した、3年生軍団の戦力図を広げていた。
それによると、五蛇将がリーダーの5つの隊で構成されているようだ。
甲賀先輩が戦場の状況を把握し、それを元に音羽先輩が的確に狂戦士の援軍を派遣し、
武僧先輩は遊撃隊として戦場をかけまわり、村崎先輩は正面から圧力をかけてくる。
黒井先輩はデータが少なく謎が多い。
ただし、一定の範囲内をウロウロしていて、近づいてくる者を片っ端から撃破しているようだ。
【早乙女】「しかしだ、月島中将。総司令を倒すと言っても、
その総司令が誰だか分からないのでは、どうすることも出来ん。
情報に寄れば飛竜と歌姫は一度撃破された経験があるようだが、
その二人が欠けても動きに乱れは無かったとある。
となると、残りの3人。いや遊撃の虎は除外しても良いとして、
無手としのぶだけになるわけだが、毎回変わっている可能性も捨てきれない。
仮に二人のどちらかだとしてもだ、
その二人を倒すのに割かなければならない人員の確保は至難だ。
ここは素直に、敵の戦力を大幅に上昇させることの出来る歌姫の撃破を、
なにより優先させるべきではないだろうか」
聖に意見を言ったのは早乙女不二子だった。
風紀委員に所属している通り、実直で自分の信念を貫く人だ。
聖や閣下と同じく沢山の勲章を付けていた。
腕を組みながらまっすぐ聖を見据えている。
というか、聖は中将か……。
【聖】「確かに、早乙女中将の話も一理あるが、、
これは柊ましろ大魔元帥閣下直々の御提案であらせられるぞ」
柊ましろ大魔元帥閣下……。
なんか凄い肩書きだが、早乙女さん……早乙女中将は怯んでいた。
【早乙女】「存ぜぬとはいえ、とんだご無礼を申しました。大魔元帥閣下……」
【ましろ閣下】「良い。余とて、余の案が最上とは思うてはおらぬ。
だが、敵総司令は既に分かっておることだ。
甲賀しのぶ、あやつしかおるまい」
それを聞いて、今まで沈黙を守っていたマグリフォン少尉が挙手をし、口を開いた。
【茜】「あの、よろしいですか?」
月島中将が閣下の顔を伺い、「構わぬ、申してみよ」と閣下を代弁した。
【茜】「甲賀しのぶ先輩が総司令であるという根拠は何ですか?」
月島中将が方眉を吊り上げた。
【聖】「むっ、貴女は大魔元帥閣下の言う事が信用できぬか?」
【茜】「いいえ、そういうことではありません。
兵士が何も知らずに戦う事は良くあることですから。
しかし、戦術というものは憶測で組む物ではありません。
確固たる理由があってこそ成り立つ物です。
私は甲賀しのぶ先輩という人物を良く知らないのでわかりませんが、
諜報と司令を両立させる事は可能なのでしょうか?」
マグリフォン少尉は臆することなく質問を投げかけた。
確かに、甲賀先輩を知らない人なら当然あって然るべき疑問だ。
だが俺には、あの人なら出来るかも知れないと感じていた。
実際、マグリフォン少尉以外のクラスメイトはましろの言葉を自然に受け止めている。
ましろ大魔元帥閣下は少し悩んでいるように見えた。
なぜ?と言われて、絶対的な根拠が無いのだろう。
甲賀先輩は根拠が無くてもそれだけの能力を持っていると認識させるだけの信頼があった。
【聖】「……普通に考えれば難しいだろうな。
だが、それでもアイツならやってのけるだろう。
変な話だけど、それが出来るという信頼性があるんだよ」
【ましろ】「うーん、改めてどうして?って聞かれると難しいね」
一生懸命考えてた所為か、二人とも素に戻っていた。
【聖】「だが、そう考えることが出来る客観的な意見こそ、我々には必要かも知れんな。
マグリフォン少尉。
貴女を只今から我が軍の作戦参謀に命ずる!」
茜さんは驚いたように目をぱちくりとしていた。
まあ、無理も無い。いきなり作戦参謀とかにされてもな。
俺とかが言ってたら、間違いなく「越権行為であるぞ!遊佐を処刑せよ!」とかになるに違いない。
そもそも、茜さんが言ってたようなことを思いつくこともないだろうけど。
と、そんな事を考えていた時だった。
【???】「クックック。どんな作戦を練っているのかと思ったら……。
これは今年もあたしらが優勝かねぇ~?」
不意に聞き覚えのある声が教室に響き渡った。
教室に明かりが点けられ、声のした方にクラスメイト全員が振り向いた。
噂をすればなんとやら、この話の張本人が腕を組んで背を壁にもたれ立っていた。
【聖】「しのぶ!?」
【しのぶ】「ご尊顔を拝し、恐悦至極に存じ上げます。柊ましろ大魔元帥閣下……。
去年もこっそり聞いてたんだけど、何も変わっちゃいないね。
そんな事じゃバリスタ五蛇将、誰一人として倒せないね」
甲賀先輩はましろに挑発するように、目線を向けてにやりとした。
ましろ閣下の拳に力が入っているのがわかる。
……御立腹だ。
【聖】「我々の作戦を盗み聞きとは、底が知れるな!」
【しのぶ】「最初はそのつもりだったんだけどね。
いくら君達でも1年もあれば学習するだろうと思って。
けど、ガッカリだ……。
まさか、去年から成長してないなんてね」
甲賀先輩はさらに挑発するように高笑いをした。
聖のボルテージが上がり「なんだと!?」と声を荒げた。
その反応を見た甲賀先輩は、今度は楽しそうに笑った。
【しのぶ】「あっはっはっは!いいねぇ……、思い通りって……。
こんな簡単な挑発に乗るようじゃ、あたしらには勝てないよ。
まあ……、あんまり苛めても仕方が無いからヒントをあげる」
【聖】「ヒントだと!?馬鹿にしやがって!
もの共!奴を捕らえよ!」
月島中将の言葉で、クラス中の生徒が一斉に甲賀先輩に飛び掛る。
地が揺れるほどの轟音を轟かせ倒れこんでいった。
しかし、甲賀先輩はそれをひらりとかわし続け、
いつのまにか大魔元帥閣下の目の前の机の上に、足を組んで座っていた。
甲賀先輩が閣下の顔を覗き込み嘲笑を浮かべた。
【しのぶ】「この程度じゃ、あたしは捕まえられないよ。
クックック……」
甲賀先輩は足を組みなおし、机に手を突いてましろを蔑むような目で見つめた。
ましろが下を向き腕を震わせているのを見た聖は、
ましろを守るように二人の間に入った。
【しのぶ】「人の親切は聞くもんだよ?クックック……。
ヒントってのは総司令の事だけど、
……あたし達に総司令なんていないよ」
【聖】「なんだと!?」
【しのぶ】「勿論、作戦なんてものも無い。
一人一人がやるべきことを把握してるからね」
甲賀先輩が言葉を止め、人差し指を一本立てて一拍置いて続けた。
【しのぶ】「そう……、あたし達は常にスタンドアローン。
あたし達は全員、自分の意思だけで動いている。
五蛇将に付いている一般兵でさえ自分の意思で動いてるのさ。
つまり、あんたらがどんな作戦を立てようが、
あたし達はその状況で最善の動きをするだけ」
【ましろ】「嘘だ!!!!!」
ましろの悲鳴にも近い声で、クラスメイトがビクっと体を震わせた。
俺もその一人で、あまりの衝撃に目を見開いていることすら数秒間気が付かなかった。
【ましろ】「アレだけ統率が取れた動きは、指導者がいなければ出来ない!!
一人一人が自分の意思で最善の動きをしているだと!?
そんなことはありえない!!!!!
こいつの言う事は全て嘘だ!!!
デタラメだあああああああああああああああ!!!!」
ましろが頭を抱えて絶叫した。
俺達は全員それを呆然と見ている事しか出来なかった。
甲賀先輩はひたすら楽しそうに腹を抱えて笑っている。
人の考えを破錠させて喜んでいるように見えた。
【しのぶ】「驚くのも無理は無いよねぇ。
あの都ですら、戦場では的確に動く。
いや、むしろ戦場だからこそあの子は的確に動く事ができるのさ。
おおっと、これは最大のヒントになっちゃうかな?
クックックック……!
あたし達のデータを良く調べてるなら、
もう一度よく見直してみると良いよ。
そこに答えはある……」
甲賀先輩が振り向いて俺を見た気がした。
彼女は言いたいだけ言い終わると、静かに教室を出て行った。
ドアが閉まる音が教室に響き渡ると、教室全体がどよめきだした。
ある者は甲賀先輩の真意を考え、ある者は甲賀先輩の虚言だと言い張り、
またある者は呆然とする事しか出来ず、クラスメイトは完全にバラバラになっていた。
柊ましろ大魔元帥閣下はというと、俯いて目を見開き、ブツブツと何かを呟いていた。
月島中将はそんな閣下を「しっかりしろ!ましろ!」と言いながら肩を強く揺すっている。
時々、閣下の首が後ろに大きく振られた。
【中島】「完全にやられたな」
クラスが大混乱の中、意外と冷静な中島は呟いた。
【俺】「これも甲賀先輩の作戦?」
【中島】「確実にな。それともう一つ目的があった」
【俺】「混乱させること以外に?」
【中島】「ああ」
【茜】「あなたを誘っているのよ、遊佐君」
茜さんが話しに割り込み、俺に告げた。
【茜】「やれるものならやってみろ。最後にそういう目をあなたに向けていたわ。
あなたと甲賀先輩の関係は知らないけれど、
この戦いは恐らく……あなたの戦い。
とても重要な意味を持っているような気がするの」
【中島】「宣戦布告されたっつってたな、そういえば。
今日はそれの確認ってところか?」
【茜】「それもあるかもしれません。
でも私は、それ以外にも何かあると思っています。
甲賀先輩は柊さんに話していたのではなく、
本当は貴方に話しかけていたのかも」
俺に話しかけていた……。だとすると、これは俺に当てたヒントか?
甲賀先輩が言っていたことを思い出して考えてみた。
常にスタンドアローン。武僧先輩は戦場だからこそ的確に動ける。
データを見直してみろ……。
だめだ、解らない。
そもそも甲賀先輩が言っていた事が真実とは限らない。
ただ純粋に俺達を混乱させているだけかもしれない。
俺が悩んでいるを見て茜さんが話しかけてきた。
【茜】「今は考えても仕方が無いわ。
甲賀先輩の仰る事が真実とは限らないし、
あの方の策略の可能性も捨て切れない」
中島も同じように「悩んでも仕方ない」と俺を諭した。
【中島】「けどよ、普通に受け取れば武僧先輩を倒すヒントだよな」
【茜】「私もそう思います。ただ、あの方がそれを教える理由は分かりませんが」
ダメだ。ますます混乱してきた。
この状況を作り出すことが狙いなのは間違いない。
疑心暗鬼に駆られた兵士は統率を取れなくなる。
まして指揮系統がぼろぼろの今、俺達はなす術も無く壊滅するだろう。
【俺】「うーん……、どうしたものか」
【中島】「まあ、スタンドアローンがどうあれ、敵の統率が取れているのは間違いない。
こっちもその場の状況で対応するしかないんじゃねぇか?」
【茜】「遊佐君、私は作戦参謀を任されているから、
もし戦闘中に何か良いアイディアが生まれたら教えてくれないかしら。
それに従って、指令に進言してみるわ」
【俺】「……わかった」
3年生はシード。俺達はまず1年生を相手にする事になっていた。
バリスタ初体験の1年生と経験者の2年生では相手にならず、
陣地の有利性もあり難なく攻略することが出来た。
そして、大ましろ帝国2年生軍vsバリスタ五蛇将軍団の戦いの幕が切って落とされた。
最終更新:2009年01月12日 18:43