俺は分かれ道に向かって歩いていった。話とは間違いなく杏のことだろう。
だんだん分かれ道に近付いていった。
壁に寄りかかり待つ聖の姿が見えてきた。
遊佐「よ、待たせたな」
聖「いや、私もいま来たところだ」
遊佐「そっか、それで話って」
聖「ここじゃ何だから、公園いかない?」
遊佐「あぁ、そうだな」
俺たちは街頭に寂しく照らされたいつもの通学路を言葉は無く歩いて行く。途中にある公園にたどり着く。そしてベンチに座り込む。座り込んだベンチはどことなくひんやりしていた。
聖「今日、あの子いい顔してた。いや、いつもと同じ顔だけど、悲しい顔じゃなかった何だか、少し吹っ切れた、救われた。そんな顔してた」
遊佐「そっか……」
聖「それで、謝らないといけないことあって……」
遊佐「ん?」
聖「ごめん、実は二人が話してるところ陰から聞いてた……。本当に申し訳ないと思ってる」
遊佐「あ、あはは……。それは……恥ずかしい奴だな俺」
聖「……」
遊佐「でも、それってさ、聖がすごい杏のこと心配してるってことだろ?俺はそういう風に心配できる聖、尊敬するよ。それにそれだけ心配してもらえる杏。幸せだよな」
俺は何も輝いては見えない空を見つめる。
聖「……私達、双子でしょ。だから親がね、いつも私達のこと比べてた」
遊佐「……」
聖「それでね、私いつもあの子より何でも上手く出来てた。私はちょっとそれで妹のあの子の事、見下してたのかもね。いや見下してたのよ、心のどこかで」
ふと思い出した杏の言葉。
『人間なんて最低よ。何もかも見下して、他人より上になろうとする』
そっか、それで……。
聖「それでね、ずいぶん昔私とあの子喧嘩になった。理由なんてほんの些細なこと。でも幼い時にはそんな小さな些細なことでも自分達にとっては重大なことだったのよね。それで、もちろん親が怒るでしょ。その時ね……」
俺ははっとなって聖の方を見た。
話していくに連れてどんどん涙声に変わっていく。手が膝の上でぎゅっと握られていた。
聖「あの子ばかり叱られてた。あの子ばかり責められていたの……。私だって悪いのに私だってしからないといけないのに、あの子ばかり……」
だんだんと声にならなくなっていく。聖の喋り方にいつもの硬さが抜けていく。
遊佐「……」
聖「何でなのかなぁ……。何であのとき私、妹をかばえなかったのかな……。私も悪いんだ、私が悪いんだって言えなかったんだろ……」
涙が電灯に照らされて光ってこぼれた。
聖「それから、ますます私とあの子の扱い変わっていった。私なにもできなかったの、見て……いるだけ……」
手がますます強く握られていく。
そして言葉が途切れた。涙を流す一人の女の子と一緒に公園のベンチに座っている。相変らず空は曇りで何も見えない。
突然聖が体を倒してその顔を俺の胸に埋めた。
聖「ごめんね、ごめんね……」
そうつぶやいた。俺は何も言えなかった。俺にできることは今は何も無い。
ただできるのは聖が泣き止むのを待つだけ……。
聖「悪かった」
少し赤面した聖。きっと俺も赤面している。
遊佐「俺にできることなら、何でも言ってくれよ。手をいつでも貸すからさ」
聖「うん、
ありがとう。少し、いやとても気が楽になった気がする」
遊佐「あぁ、つらい事とか俺に分けろよ」
ありがちな、恥ずかしい言葉をする俺。
遊佐「俺バカだからそういうのカラッポだからまだまだもてるからな。そんな小さい体だから聖じゃもちきれねえだろ」
だから照れ隠しにふざけてみる。
聖「そうだな、ありがとう」
遊佐「あぁ、んじゃまた明日な」
俺はその場から逃げ出すように背中を向けて手をひらひらさせて
歩き出した。
最終更新:2007年01月14日 06:46