聖「私のこと、どう思ってる?」
聞かれてしまった。まだ何も考えていない。
ずっと感じてた違和感。いつもの聖じゃないこの雰囲気。俺は気付いていた。
俺も気付いていた俺の気持ち。俺の気持ちは……
俺は意を決して言った
遊佐「俺は、お前が好きだ。目の前に居るお前が好きだ」
悲しそうな目をした。
聖「そう、か」
遊佐「もう一度いうぞ? 俺は、俺の前に居る、おまえ自身が好きなんだよ」
俺は自然に体が動いて、気づいたら腕の中に抱きしめていた。
遊佐「わかってたよ、本当は」
聖「え?」
遊佐「かなり無理してたもんな。
ありがとうな……」
俺は強く抱きしめた。大事な大事な人を抱きしめた。
遊佐「さすがに気づくよ、いつもお前を見てたんだから……」
聖?「……」
ぎゅっと背中に手を回された。
遊佐「好きだ、杏……。俺はお前が好きだ。」
杏「う、ぁあ、あぁああ·ぁああぁん」
杏は泣き出した。
遊佐「ありがとうな、俺のためだったんだろ?」
ここは自信を持っていいよな……。
遊佐「本当にありがとう、俺のために……」
杏「うん、うん……。うあぁ……うぁあぁあぁ」
もう声にならない。嗚咽が止まらない。
遊佐「落ち着いた?」
杏「うん、ありがと」
遊佐「こっちこそ、ありがとうだ」
そうだよな……
遊佐「ごめんな。本当は自分の気持ち気づいてたのに、杏に言わせちゃって。俺が言うべきだったんだ」
杏「私、自分の気持ちが貴方に変わっていくのがわかったとき、自分でも驚いた」
遊佐「うん」
杏「話、聞いてもらっていいかな……?」
遊佐「あぁ、いくらでも聞くよ。お前のこと知りたい。お前のこと知って行きたい」
杏「実はね……」
右手の長袖の袖を杏は引いた。そこには包帯が巻かれた手首が現れた。
杏「私、リストカットしてたの。こんな醜い腕して、私自分のこと嫌いだった。だから、周りを拒絶して誰も私に関わって欲しくなかった。近づいて欲しくなかった。でも、あなたはそんな私に踏み込んできてくれた。私を見つけてくれた……」
遊佐「……」
杏「こんな私でも、貴方は私をつかんでくれた」
遊佐「杏……」
俺は包帯に巻かれた手首の上に手を置いて、杏を見つめた。
遊佐「お前の傷も、お前が嫌いなところも、俺が気づいてやる、俺が好きになってやる。だからお前も自分のこと好きになって欲しい。まだお前のこと全部はわからないけど、これからだ」
杏「私も、自分のこと好きになりたい。自分のすべてが好きになるくらいに優しくなりたい」
俺たちはどちらからともなくこの
夜空の下でキスをした。愛しい人とキスをした。
きっと俺は杏を守ってみせる、もし杏が自分を見失っても俺が見つけてやる。
自分を見失わないよう俺が掴んでいてやる。もう離さない……。
杏「私、この傷が、嫌いだった。ううん、今でも嫌い。でもこれも私だもんね。痛みを抱えても、支えてくれる人がいるなら、私は大丈夫」
遊佐「あぁ、俺がいつでも支えてやる。いつまでも支えてやる。だから、俺の傍にいてくれ」
杏「私も貴方の傍にいたい」
ありがとう大切な人、
ありがとう支えてくれた人達
私はたくさんの人に支えられていた。
一人じゃなかった。
暗闇で何もできずに立ち尽くしていた私に光を照らしてくれた人達
私はもう迷わないで歩いていける、この人と一緒に。
最終更新:2007年01月14日 07:29