俺は神契さんの言葉を待った。どのくらい待っていただろう。
神契「実は……、遊佐君の事が」
俺の事が……?
神契「す、す、す……」
神契「好き……です……」
言われた。言われてしまった。
神契「遊佐君が同じクラスになってから、ずっと憧れてました……。でも最近遊佐君と一緒に居て憧れから
どんどん好きに変わって行って……。遊佐君といると楽しくって、ドキドキして……」
神契「だから、私と…つ、つ、付き合って……ください」
こんなに小さい気弱そうな神契さんが俺に言ってくれた言葉。俺だって言わなくてどうする。
俺の気持ちずっと探してたけど、いま分かった。
遊佐「ありがとう、神契さん。俺今本当にうれしい」
だから、言わなくちゃいけないんだ。
遊佐「俺も、好きだ。神契さん、俺もあなたのことが好きです」
神契さんの瞳を見つめ言う。俺の本気を感じで欲しいから目をそらさない。そしてその瞳からは涙が溢れて
もう止まらなかった。
神契「ほ、本当に?」
遊佐「ああ、こんな時に嘘はつかない。おれは本気で好きなんだ」
そうだ、俺は目の前のこの子が好きだ。間違いなく好きだ。
遊佐「俺、今わかったよ。ずっと決めかねてた気持ち。神契さんに押されてようやく気付けた。
だから、今度は俺が言わなきゃいけない」
俺は深呼吸をした。心臓がバクバク言ってる。痛いほどわかる。耳に響く。
遊佐「俺は神契さんとあの日出会ってから神契さんのやさしさに触れた。俺はそんな神契さんが好きに
なったんだ。俺に憧れてくれていた理由はわからないけど、その気持ちがうれしいよ」
そして俺は言う。
遊佐「俺と付き合ってください」
そうだよ。俺だって言わなくちゃいけないんだ。俺の気持ちのため、なにより
目の前に居る本当に大好きなこの子のために。
俺は神契さんに近付いて泣いている彼女を抱きしめた。ありがとう大切な人。
遊佐「本当にありがとう……」
俺は一言、そう言った。

その日の授業を受けられるはずがあるだろうか? 受けれるわけがない。
中島「どうした遊佐、今日のお前はどうしようもないくらいニヤニヤしている」
遊佐「中島ぁ、俺はもういま最高の気分なんだよ」
中島「……気持ち悪いな」
遊佐「今なら何でも出来そうな気がする」
中島「大丈夫かよ……」
中島の心配をよそに俺は浮かれていた。

短かった授業が終わる。
教室を出て行こうとする神契さんの姿が見える。
遊佐「神契さん待って」
神契さんが驚いて振り返る。
遊佐「一緒に行こう?」
神契「は、はい……」
赤くなってる。
遊佐「ほら、あの犬の様子見にいかないとな」
そうだ、もう教室から一緒に出たって別に構わない。誰が何と言おうと構わない。

一緒に歩いていく病院への道のり。何を話してよいのかお互いわからず一言も喋らない。
俺は神契さんの家族になんて言えばいいのか考えているとふと思い出した。
『お前の根性を確かめないことにはわしは納得できん』
あのじいさんの一言。そう、か。今分かった。
遊佐「神契さん」
神契「は、はい」
遊佐「今日も家に行っても大丈夫かな?」
神契「あ、あ、だ、大丈夫……です」
遊佐「ごめんな。どうしてもじいさんに話さないといけないんだ」
避けては通れない。あのじいさんを納得させなければ俺が納得できない。
神契「お、おじいちゃんですか……」
遊佐「ああ、昨日根性を確かめるって剣道やらされたんだけど、いま意味がわかったんだ」
そう、
遊佐「神契さんと付き合うのをあのじいさんに認めさせないといけない」
神契「……」
遊佐「そうしないと俺が納得できないんだ」
神契「わ、わかりました」
遊佐「ありがとう。でも、絶対認めさせるよ」
そう、絶対諦めない。好きな人のためなら何だってやる。そんな気持ちだった。
最終更新:2007年01月15日 23:16