エルヴィン・スミス&ランサー◆lkOcs49yLc
「聖杯戦争、か……」
何の変哲もないが、しかしやや古びている屋敷。
その中にある、閉鎖的な雰囲気のある自室。
年季のある四角い机。
錆が少し付いている燭台。
机に腰掛けているエルヴィン・スミスはそこで、自分が置かれている情報を整理する。
「しかし、聖杯戦争、か。」
全く変わったことも有るものだ、とエルヴィンは独りごちる。
―聖杯戦争。
願いを掛けて殺し合い、「聖杯」と呼ばれる物を手にする儀式。
エルヴィンは、その参加者として呼ばれた、と言う事になるらしい。
「願い……か。」
エルヴィンにも、叶えたい願いが無いわけではない。
人類の進撃。
100年もの間、人類を鳥籠の如く閉じ込めてきていた三層の壁を必要ともせぬ世界の実現。
人類種の天敵たる巨人への勝利。
父親が話したことを真実だと証明するための戦い。
それが、エルヴィンが戦う理由である。
その結果が、エルヴィンがいるこのSE.RA.PHだ。
SE.RA.PHが構築した世界において、巨人など確認されていない。
ましてや存在したと言う文献すら明るみに出ていなかった。
時は1200年後の未来。
無論場所は、エルヴィンのいた世界の地図では確認されていない所だ。
アメリカ、スノーフィールド。
そもそも国と言う概念すら構築されているかどうかすら曖昧な世界において、幾つもの国があったと言うのは、エルヴィンからしてみても驚くべきことだ。
しかし最も驚くべきことは、この世界の文化だ。
「進化しているな……この時代は。」
窓の外から見える景色を見つめながら、エルヴィンはそう呟く。
1200年後の未来。
其処でエルヴィンが眼にしたものは、どれもこれも全て、とても当時からは考えられない様な物ばかりであった。
例えば「自動車」は兵団で扱われている馬など遥かに越す程のスピードで走る。
「電話」と言う代物は、自動的に遠くの相手に声を届ける事が出来る。
もしこれが自分達の世界にあったら、と言うような便利な道具ばかりが、この世界に揃っている。
しかしそれらを、エルヴィンは聖杯で叶えるつもりはない。
確かに、聖杯という願望機さえあれば、巨人の存在を瞬く間に消し去ることなど容易だろう。
寧ろそれこそが願いへの最もな最短ルートだ。
だがそれを叶えれば、先人達が培ってきた努力はどうなるのか。
父が見つけ出した答えはどうなるのか。
死んでいった兵士達の命は何なのか。
何より、壁外への進撃は、人間が行うべきことだ。
人間が人間として有り続け、人間が巨人に進撃し勝ち取る事で初めて、それは本当の価値を持つだろう。
故に、エルヴィンが選ぶは、脱出の道。
この世界で得た知識を持ち帰り、再び巨人と闘う。
それがエルヴィンの望む事だ。
「しかし、私のサーヴァントはどうしたものか。」
聖杯戦争の鍵となるトランプ。
つい先程まであったそれだが、今では光り輝いたかと思えば何処かへ消え去っている。
地下街の調査をしていた所で拾った物だが、はてさて何処へ行ったのか。
と考えていた矢先である。
開けっ放しにしていた目の前の窓ガラスから不意に、何かが飛び出してくる。
それも銃弾の如き速さで。
エルヴィンはそれに驚き目を覆うが、直ぐに眼に翳した手を離す。
その時見たものは、大変驚くべきものだった。
「何だ……!?」
其処にいたのは、一匹の蝙蝠…の様な何かだった。
しかし、その見た目はかなり異様だった。
顔は大きく、見た目は全体的にねずみ色。
何より特徴的なのは、まるで頭蓋骨のようにも見えるその顔だ。
人の死骸を見飽きた程に見てきたエルヴィンでさえ、顔を傾けそうになるほどに変わっている。
「何だ、これは。」
『つ~いてっきて、マスター。』
更に更に驚くべきことに、その蝙蝠は、喋った。
◆ ◆ ◆
エルヴィンの元に突然やって来た蝙蝠は、己のサーヴァントの使い魔、だそうだ。
その使い魔に案内されるがままに、エルヴィンは道を歩いて行く。
ふと自分が歩いて行く道を見てみれば、それは見たこともない材質の物だった。
アスファルトと言う物を見たこともないため、その珍しさに少し、眼を開く。
『こ~こ~だ~よ~』
到着したのは、一軒の古びた城だった。
まるで王族が済んでいたかのように感じられるこの巨大な城は、この世界にしては珍しく、エルヴィンの時代の建造物と寸分違わぬデザインだった。
しかしそれはそれは巨大な城で、おまけに何処か不気味な雰囲気を持っている。
(この中に、私のサーヴァントが……)
少し眉間に皺を寄せながらも、エルヴィンは城の入り口に入っていく。
◆ ◆ ◆
「成る程、貴様が俺のマスターか。」
エルヴィンのサーヴァントがいる場所は、チェック模様の入った大きな部屋。
その部屋の中心にある、巨大な玉座に座る化物がいた。
視界に数値と、クラスが浮かび上がる。
「……成る程、君が、私のサーヴァント、ランサーかね?」
「その通り、俺はレジェンドルガの王(ロード)、ランサーのクラスで現界した貴様のサーヴァントだ。」
顎をフンとした表情で釣り上げた尊大な男は、エルヴィンの問いに答える。
エルヴィンは彼に一歩、二歩、三歩近づいて、更に問いかける。
弩の如く何かを狙い撃つような、その眼差しで。
「ランサー、君に是非とも、更に聞きたいことが有るんだが、構わないね?」
◆ ◆ ◆
エルヴィンは、ランサーについて様々な事を聞き出した。
レジェンドルガ、とは、嘗て13の「魔族」と呼ばれる種族の内の一つで、その中で最も誇り深く強い力を持っていた種族だそうだ。
因みに、その中には人間も含まれているとか。
しかし、レジェンドルガはとある大きな戦争において大敗を喫し、自らもまた滅んだと。
まるで自分たち人間と同じだな、と内心エルヴィンは思った。
「それで、君の望む願いは?」
「嘗てこの俺を封印した王……キバを、この手で倒すこと、それだけだ。」
苛立ったような口調で、ランサーは、自分のマスターに己の願いを曝け出す。
彼は怪物であるが故に表情は分からないが、恐らく相当に怒っているのだろう。
実際、ランサーのサーヴァント、ロードは強い怒りを示している。
嘗て、魔族の中でも猛威を振るっていた一族の誇りを汚した、あの王を。
世界を滅ぼしてしまいそうな程のエネルギーを振るい、自らを棺へと追い込んだ、あの忌まわしきファンガイア族の王を。
決して忘れることはしない。
これまでも、これからも。
何時しかこの槍を、あの剣にぶつけるその日まで。
◆ ◆ ◆
「来たか。」
エルヴィンがこの城に来たのは、これで何度目だろうか。
とにかく、記憶を取り戻して1週間程経過したというのは事実だ。
「済まなかったな、仕事があって来るのが遅れてしまった。」
部屋の真ん中にある玉座に座っているのは、ランサー。
しかし今回のランサーは見た目が異なる。
全長は先程の数倍に跳ね上がっており、全身には胸に鎖が縛りついている甲冑を纏っている。
全長は3m、巨人にしては小さい方だが、しかし人類以上に大きいのは明白。
曰く、これがランサーの誇る宝具、だそうだ。
鎧を纏い、図体がでかくなろうとも相も変わらず玉座にふんぞり返り座っているランサーに、エルヴィンは軽く頭を下げる。
エルヴィンに与えられたロールは「教師」だった。
奇しくも死んだ父親と同じ職であることには、何やら運命を感じさせられるものだが。
「フン、構わん。」
「それとランサー、今日は何人ほど殺した?」
冷たい表情を向けて、エルヴィンは問う。
このランサーのサーヴァント、ロードは人を殺すことに躊躇をしない男だ。
まるで人を家畜だとも思っているかのように、彼は人を殺す。
そういう点ではある意味、巨人に似たような者なのかもしれない。
「先程アサシンと交戦した。然程歯答えの無い相手だったがな。」
「マスターはどうした。」
「貴様の想像通りだ。」
ランサーはそう言うと、パチンと指を鳴らす。
ふと後ろで、ガタッと音がする。
その音にエルヴィンは振り向くが、しかし表情は対して変えない。
出てきたのは、赤いジャケットを着たごく普通の青年。
しかしその身体はふらついており、眼は真っ白になっている。
そしてその様な状態になった人間を、エルヴィンは何度も見てきている。
「やはり、『洗礼』したのか。」
玉座が見える方向に振り返り、エルヴィンはランサーに問う。
「ああ、そうだ。文句はあるのか?」
「いや、無いが。」
エルヴィンは既に、聖杯戦争に乗ることを決めている。
確かに、人の命を奪うことに躊躇はある。
だが、部下の命など既に、元の世界で何度も奪って来ている。
今更惜しむことも無い、堪えると言えば堪えるのだが。
それに、自分にはまだ果たしていないことが山程ある。
外の世界を見るためにも自分は、まだ死ぬ訳にはいかない。
寧ろ、未来の技術を知る事が出来る絶好の機会に巡り会えたとすら思える。
既にノートには、幾らかこの世界の知識が書き込まれている。
聖杯など目の前の王にくれてやる。
だが願いを叶えるためにも自分は、こんな所で死ぬわけには行かない。
【マスター名】エルヴィン・スミス
【出典】進撃の巨人
【性別】男
【Weapon】
「立体機動装置」
人類が巨人と闘う糧。
腰に付けられており、ワイヤーを括り付け、ガスを噴出することで三次元的な戦闘を行うことが出来る。
ただし、これを扱うのは素人には極めて困難で、優れた空間把握能力が持たなければ扱えない。
「刃」
立体機動装置のコントローラーを拵えとして装着されているブレード。
エルヴィンのいる世界では最も鋭いとされている「硬質スチール」を素材としている。
「ノート」
現代の知識が記されたノート。
人類の進撃への糧とするつもり。
【能力・技能】
三次元的な空間移動を行う、「立体機動装置」を扱う技能。
優れた戦術能力の持ち主。
調査兵団を率いられるほどのカリスマ性を持つ。
【人物背景】
3層の壁で仕切られた世界の外を調査する「調査兵団」の隊長。
壁の外の世界を見ようという熱い思いに突き動かされており、周囲の人間からは「もっと先を見据えている」「何を考えているのか分からない」と評されている。
その背景には、教員である父が「壁内の人間は全て記憶を改ざんされているのではないか」と考えていることを聞き、その仮設に共感を覚えたことに有る。
しかしそれが原因となり、父は憲兵団に暗殺される。
父の仮説を証明しようと考えたエルヴィンは調査兵団に入り、巨人に進撃をすることを決意する。
温厚で人望は強いが、反面手段を選ばぬ冷酷な一面も持ち合わせており、民衆からブーイングを受けている時にも無表情でい続けた。
【聖杯にかける願い】
人類の進撃は聖杯で叶えるものではない。
強いて言うのなら、この世界の知識を持ち帰り、人類の進撃に利用することである。
【クラス名】ランサー
【出典】劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【性別】男
【真名】ロード・オブ・レジェンドルガ
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力A+ 耐久A 敏捷C 魔力A 幸運C 宝具EX
【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等大掛かりな物は防げない。
【保有スキル】
カリスマ:B-
人々を導く天性の才能。
一族を束ねるほどのカリスマ性の持ち主ではあるが、他の一族からすれば恐怖の対象となる。
戦闘続行:A+
往生際が悪い。
例え肉体が滅びようとも、その霊核を鎧に移し生き延びた逸話から。
一族の洗礼:A
他の種族をレジェンドルガとする能力。
レジェンドルガとなった者は神秘を帯びた使い魔となるが、常人以上の力を与える程度に留まらせたり、洗脳する程度にすることも出来る。
陣地作成:C
自らに有利な陣地を作り出す能力。
陣地を作る宝具を入手している。
【宝具】
「爪槍振るう原魔族の巨王鎧(アーマードロード・アーク)」
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:100 最大捕捉:1~50
ランサーが装着する、レジェンドルガの王の鎧。
装備は専用の巨大な三叉槍「アークトライデント」で、地面に突き立てることで天変地異を巻き起こす力も持ち合わせている。
胸のカテナを外すことでブラックホールを発生させ、敵を吸い込む能力も持ち合わせている。
そしてランサーは、この鎧に魂を移した逸話を持っており、もしランサーが死んだとしても、鎧に霊核を移すことでその死を免れることが可能となる。
全長3mを誇っているが、魔力消費を抑えるために縮めることも可能。
「月夜が照らす王の魔界城(ヘルキャッスル・オブ・ロード)」
ランク:B+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:100
ランサーが生前居住していた魔界城を召喚する宝具。
キャスターのクラスで喚ばれていれば、この宝具は生前従えたレジェンドルガを召喚する宝具として機能するだろう。
だがランサーのクラスで喚ばれた今では殆ど劣化しており、殆ど拠点としての役割しか果たさない。
その代わり、城内においてのみランサーに対し補正を働かせることが可能で、後述の宝具を起動させればその効果は増大するであろう。
「一族を見守る月の眼(サークル・オブ・ライフ・レジェンドアーク)」
ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:100 最大捕捉:1000
レジェンドルガを守護する「月の眼」の具現化。
SE.RA.PHにおいて再現されている月の景色に、月の眼を出現させる。
この眼が開いている間には、レジェンドルガに補正が働く。
更に、「爪槍振るう原魔族の巨王鎧」のブラックホールに月の眼を吸収させることで、「レジェンドアーク」と呼ばれる姿にランサーを变化させることも可能。
レジェンドアークとなれば飛行が可能となり、凄まじいスピードとパワーを手にするだろう。
ただし、この宝具の起動に必要な魔力は相当な物となり、令呪三角程の魔力を要する。
【Weapon】
「アークキバット」
宝具「爪槍振るう原魔族の巨王鎧」を起動するための鍵にして制御装置。
ファンガイア族に隷属する「キバット族」に酷似した形状を持っており、自我を持ち言葉も発せる。
しかし明確な意思は持っておらず、単にアークの鎧の制御装置としてしか扱われていない。
ウェイクアップフエッスルを出現させることでそれを吹き、鎧に有る胸の魔鎖「カテナ」を開放しブラックホールを発生することが可能。
「アークトライデント」
ランサーが持つ魔槍。
アークの鎧とは別に召喚することも出来る。
【人物背景】
全ての魔族のルーツとされている種族「レジェンドルガ」の支配者。
圧倒的な威厳を見せつけ、全ての魔族に恐怖を齎した存在とも言われた。
しかし、一族の威厳はファンガイア族との戦いで瓦解してしまう。
ファンガイア族の切り札である「キバの鎧」によって。
しかし、どこかに有るだろうその棺には、未だロードの魂が残っているとも言われている。
【聖杯にかける願い】
キバの系譜を破戒する。
最終更新:2016年12月12日 19:31