血濡れ忍者◆DpgFZhamPE





何時からこの身は、この姿を形取っていたのか。
それすら分からず、彼女は人を救い続けた。
記憶が戻った今としては、何故―――義務もないこの異国の地で人を助け続けたのか、自分でもわからない。
だが、この身は忍者だった。
魔法少女だった。
今まで一人だった。
これからも、一人のはずだった。
ひゅるり。ひゅるり。
夜風が頬を撫でる。
和の趣を残す瓦屋根の上で、思う。
わたしを一人から掬い上げた、『彼女』と浴びた夜風がふと記憶に蘇る。
ああ。
彼女が持ってきた食事は、美味しかったな。
あれほど美味しいものを食べたのは、何時ぶりだっただろうか。
そんな物思いに耽り、ふと想いを溢す。
己の名は何だと、心が問い掛ける。
私は誰だ。
私は誰だ。
私は誰だ。
私は―――リップルだ。
リップル。
そうだ、リップルだ。
もう魔法少女ではない。
もう人間ではない。
人間であることを、魔法少女であることを此処に棄てる。
細波華乃には、もう戻らない。
戻れない。
人を助ける魔法少女は、既に死んだ。
細波華乃は、もう死んだ。
此処にいるのは、忍者だ。
修羅に堕ちた、忍者が一人。
ああ、殺そう。
私は、この場にいる全てを殺そう。
三千世界に血の海を。
臓物を注いだ万能の願望器で、願いを叶える。
こんなことを『彼女』が望むかと言えば、否だろう。
しかし。
しかし。
―――それでもわたしは、夢見てる。
あの人との―――ええ、認めましょう―――楽しかった、夜空の旅をもう一度。

「やーやー。良い夜空ッスね。忍者は夜空に映えるというか、何というか」
「……キャスターか」
「寝ないでいいンスか、明日に響きますよ」

舌を鳴らす。
苛立たしい。
己のサーヴァントが、飄々としたこの和風の男の雰囲気に腹が立つ。
気遣っているような態度に腹が立つ。
にへらえへらとした態度に腹が立つ。
何がそんなに可笑しいのか、問い正したいほどに。

「お隣失礼しますよっと」
「邪魔だ」
「はっはー、サーヴァントに神秘の籠ってない攻撃は効かな―――痛い!!!!!」

足元の瓦を適当に投げると、弧を描きキャスターの顔面へと直撃する。
…少しやり過ぎたかとも思うが、キャスターには丁度いいお灸だと判断した。
神秘云々は気にしたこともないが、魔法の力が働いたのだろうと思う。

「アタシの顔めり込みましたよ、5cmほど」

顔面にめり込んだ瓦をすぽっと取り除きつつ、キャスターは語る。
……大した耐久性能だと思う。
この程度では死なないだろうと思って投げたのだが、此処まで直撃するとは思ってもなかった。
そんなリップルの想いを知ってか知らずか、キャスターは話を続ける。

「ねえリップルサン」
「何」
「聞いてもいいッス?聖杯なんかを求める理由」

その目元は深く被った帽子で見えない。
だが、その口調は飄々としたキャスターとしては珍しく、何かを含んでいた。

「……聞いて何になる」
「いえね。こう言っちゃ何ですが貴女、望みの強いタイプに見えなかったモンで。
こんな負けたら死ぬ争いに身を投じてまで叶えたい願いってなんなのかなーと」

世界征服でも願っちゃいます?とおどけて見せるキャスターに、また舌を鳴らす。
別に教える義理はない。
キャスターとは聖杯戦争に必要だから手を組んでいるだけ。
仲良しこよしの馴れ合いをするつもりはない。
…ない、つもりだったが。

「まあ、言わないならアタシも手は貸さないッスけど。
ほら、アタシ商売人なモンで。ギーブアンドテーイク。
戦力が欲しけりゃ見返りを・ってヤツッス」

と釘を刺され、残念ながら明かすこととなった。
何か、キャスターの旨い方向に話を進められているようで、また腹が立ったが。

「―――生き返らせる」
「誰を?」
「そこまで教える義理はない」

疑問を増やしたキャスターの言葉を、即切り捨てる。
目的は教えた。
だから大人しく力を貸せ、と。

「ほうほう、ふむふむ」

顎に手を当て、短い髭を撫で。
うんうんと唸る素振りをして見せた後。
キャスターは、言い放った。

「恋人ッス?」
「違う」
「彼氏?」
「違う」
「夫?」
「……全部同じ意味だろ、ソレ」

下手な鉄砲数撃ちゃ当たるとは言うが、同じ場所に複数当てては当たるものも当たるまいに。
まるでクイズでもしているかのように。
ハズレかーとまたにへらと笑うキャスターに、また腹が立った。
手に握った杖で足元をコツン、と叩き。
あ、と何かを思い出した風に、またキャスターが話を切り出す。

「取り敢えず、人生の大先輩として言っときますけどね」

―――瞬間。
空気が、凍った。
キャスターの殺気―――いや、殺気ではなく威圧か。
まるで上から押さえつけられているような、威圧感が全身を蝕む。

「死にに行く理由に他人を使うなよ」

それは。
まるで、人が変わったかのような。
先程までの能天気さが、嘘に見えた。

「聖杯使って誰かを蘇らせるのは自由」

「でもね」

「弱者が無謀に無闇矢鱈に挑むのは戦争とは言わない」

「自殺・って言うんスよ」

弱者。
何の力も持たない者。
即座に反論が、出来なかった。
現時点で、今も重圧に潰されそうになっている己を見て、反論が出来ようか。

「じゃあ、どうしろって言うんだ…ッ!」

冷や汗が止まらない。
口を開いているだけで胃液が逆流しそうになる。
クソッ、と口の中で悪態を吐く。
すると。
フッと―――重圧が、消えたのだ。

「アタシを使いましょ」
「…は?」
「アタシを使え・って言ったんス。
一人じゃ貴女ならどう足掻いても死ぬ。バラされて終わりッス。
だから―――その願いの成就まで、アタシが働いてあげましょ」

…意味が、わからない。
自分を使えと。
そんな提案をするために、此処までしたのか?
脅迫紛いのことを。

「目的は?」
「そうッスね。聖杯の仕組みを理解したい・とかどうです?」
「適応だな」
「これがアタシなモンで」

また、飄々とした調子に戻る。
この反応が、こんな調子のヤツに反論が出来なかった先程の己に腹が立ち、また舌を鳴らす。

「理由は」
「理由?」
「商売人、なんだろ。ギブアンドテイクなんだろ?」
「…そうッスね。店の看板娘をしてもらうとかどうスか?」
「ふざけるな」

ぱさっと扇子を開き、キャスターが笑う。
ああ、調子が狂う。
どうもこのタイプの人間は苦手だ―――と、リップルはまた舌を鳴らした。

○ ○

この少女は、間違いなく死ぬ。
死なないとしても深い傷を負うだろう。
死に急いでいる、と言うべきか。
願い一つのために周りが見えていない。
このままでは勝ち目もない戦いに挑み、勝機もない相手に殺されるだろう。
それは、忍びない。
『今すぐ助けに行く』
『いつ殺されるかわからない』と。
無謀な勝負を挑もうとしたオレンジ色の髪の少年と、同じ眼をしていた。
それだけだ。
別に、助ける義理もない。
少し前に召喚されて知り合っただけの、赤の他人だ。
これが同じ技術者―――マユリと名乗る彼なら、彼女を捕らえて解剖しとっとと座に帰るだろう。
これが友―――夜一なら、適当に守りつつ望まれた通りに戦うだろう。
それだけでは足りない。
彼女の無謀さを、不器用さを改めさせなければ、聖杯戦争を勝ち抜いたとしても何れ彼女はまた機会さえあれば大怪我を負うような戦いをしかねない。
ならば。
この聖杯戦争で、彼女を変えるしかない。

「…アタシもお人好しッスね」

ポツリ、と。
キャスターは、魔力の粒子として夜に消えながら。
そう、呟いた。













【出展】BLEACH
【CLASS】キャスター
【真名】浦原喜助
【属性】中立・善
【ステータス】
筋力D 耐久D 俊敏B 魔力A 幸運C 宝具A+

【クラス別スキル】
陣地作成:A
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
彼の場合は、「技術開発局」を作成する。

道具作成:EX
魔力を帯びた器具を作成可能。
彼の場合は、どんなものでも僅かな時間さえあれば薬と器具を制作できる。
後述のスキル"特記戦力"と合わさり更に強大なスキルとなる。

【保有スキル】
偽装の師:B
尸魂界を追放され、現世にて隠し拠点を造り上げ地下に巨大空間を開いたことによるスキル。
陣地作成により造り上げた陣地は外からサーヴァントや魔術に精通したものが観察してもその真価は掴ませず、普通の一軒家として誤認させる。
彼の場合、駄菓子商店としての偽装効果を持つ。

攻略眼:A
人間観察を更に狭めた技術。
キャスターの場合は対象がどのような性質を持っているか、どのような動きをしどのような仕組みで動いているのかを判別する能力に優れている。

死神:C(A)
 素質のあるものが修練を重ね、斬魄刀を持ち現世と霊界の魂魄の量を一定に保つ役割を持つ霊的存在。
 精神汚染への対策を持ち、サーヴァントなど霊的なものへの特効を持つ複合スキル。
 本来なら隊長格にまで登り詰めた彼は最高クラスのAを持つはずだが、尸魂界を追放された逸話によりランクダウン。

万策の一:EX
「千の備えで一使えれば上等」
「可能性のあるものは全て残らず備えておく、それがアタシのやり方です」
「戦いですよ、負けたら死ぬんス」
「死なないために死ぬほど準備することなんて、みんなやってる事でしょう」
 死神の中でも、特に警戒された五人の人物の一人。
彼の場合、それは"未知数の手段"に該当する。
あらゆる出来事においてあらゆる準備を備え最適解を導き出し、"道具作成"のスキルにより効果的な器具や薬を造り出す。

【宝具】

『起き随え、血濡れ姫(べにひめ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~40 最大捕捉:50人

普段は仕込み杖の形状にして封印しているが、"起きろ"の真名解放と
魔力を血液のような形と為し斬撃・防御・相殺・拘束・爆破と様々な柄の先だけが折れ曲がった直刀の形状に姿を変える。

『造り改め、血濡れ姫(かんのんびらきべにひめあらため)』
ランク:A+ 種別:対物質宝具 レンジ:1~40 最大捕捉:50人

解放すると、身体中に継ぎ目のある巨大な仙女を召喚する。
能力は「触れたモノを造り変える」。
この能力の影響下に置かれると、どんなものでもまるでフェルトのように裂け、次の瞬間縫い合わされるように修復され、造り変えられる。
死滅した臓器や細胞なども一瞬で新品同様のものに造り替えられ、復活してしまう。
自身に使用した時は、腕を作り変えて、一時的に強化させた。
色々なものを作り出して様々な局面に対応する始解をさらに発展させ、造り変えることでその局面自体を大きく変えてしまう能力であると言える。
生物や物質に対しても勿論のこと、その能力は空間にも作用する。

【人物背景】

深緑の下駄に甚平、目深に帽子をかぶり、扇子やステッキお持ちの洒落たオジサマ。
自称「ちょっと影あるハンサムエロ店主」、また「しがない駄菓子屋の店長」と言った事もある。いつも下駄と帽子、甚平という格好(同じものを百個ほど持っているとのこと)で杖と扇子を携帯し、飄々としていて真面目なのかふざけているのか判別が難しい。
初登場時からことあるごとに何かを隠しているような、あるいは仄めかすような言動を繰り返している為その真意は掴みにくい。
また、若干Sの気がある。以上の性格・言動のために、周りからは「胡散臭い」「変態」と思われている。一方で地声で凄むと一護が凍りつくほどの迫力がある。
その正体は藍染惣右介の策略により尸魂界を追われた先代の護廷十三隊・十二番隊隊長であり、技術開発局創設者にして初代局長を兼任した死神である。
戦闘においては十刃(エスパーダ)の一人であるヤミーを赤子同然にあしらうなど、元・隊長としての実力を垣間見ることができる。
また、鬼道を術名すら唱えず使用し、得意の義骸技術を活かした新発明“携帯用義骸”を使用することで変わり身の防御技を編み出している。
作中では折に触れ、一護や死神らがピンチに陥った際に駆けつけている。
夜一と共に事実上の一護の師として、彼の能力を伸ばすための助力を行う。
鬼道もかなりの腕で扱える。

【サーヴァントとしての願い】
なし。
既に死んだ身で望みごとと言われても…な思考。


【出展】
 魔法少女育成計画

【マスター】
 リップル

【参戦方法】
 人助けの際に拾った紙がトランプだった模様。

【人物背景】
忍者姿の魔法少女。
人間関係を構築するのが苦手で、売られた喧嘩は買う主義。
本人は否定しているが、魔法少女トップスピードの相棒役。

―――しかし、それは永遠に喪われた。
子を宿した身体ごと切断された遺体。
朗らかな笑顔。優しい言葉。
それらは全て、奪われた。
故に、この身はただひとつ。
万能の願望器を得て、ただひとりの女性を蘇らさんが為に。

【weapon】
  • クナイに手裏剣、忍び刀。

【能力・技能】
  • 魔法『手裏剣を投げれば百発百中だよ』
何であれ彼女が投擲すれば必ず相手に命中する能力。
忍者が投げるもの=手裏剣という理論で何を投げても追尾し必中する。
魔法少女としての肉体・戦闘能力も高い。

【マスターとしての願い】
 トップスピードを甦らせる。

【方針】
勝ち残る。







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最終更新:2016年12月13日 21:30