血濡れと殺戮◆7u0X2tPX0




  ―――――銀の月が夜を照らしている



 温く流れる青白い明かりが、窓を通り越して「それ」を私の瞳に映し貫く。
刃こぼれだらけの、けれど不思議とよく切れるボロボロのナイフ
………私にくれた「  」のナイフ


  『諦めていた』とは違う
  でも、叶わないと

 閉じた誓いを信じて。けど、どこまでも見えなくなって


    ………――――白い何かが、羽のように舞って視界を横切った




        ※※※※






「疾くその首を曝せ。刹那の間に刈り取ってやる」

 暗がりの中、光が描いたような綺麗な曲線が、音もなく金髪青眼の少女――――レイチェル・ガードナーの眼前に迫る。
煌めく刀の主は、荒々しく鋭利な気配を漂わせる幽鬼のような長身の男。

「………なぜ?私はあなたの気分を悪くするようなことをしてしまったの?」

 開口一番。(意訳して)「殺す」と宣言してきた男に、切っ先を向けられている少女はそう言った。
怖気づいた様子もなく、彼女は単純な疑問をただ口に出しただけのようだったが、男にとってはとても気に障ることだったようで。男の表情が怒りと嫌悪に染まっていくのが見て取れた。

「貴様のその死に顔がなにより癪に障る」
「…………」

 死に顔。
 なるほど確かに。レイチェルの顔はその年の子供と思えないほど生気がほとんど窺えない。まるでこの世の希望という希望を一度も感じたことのないようだ。
 彼女も、その言葉に思うところがあったのだろうか。男から目線を外し、顔をわずかに伏せる。

「彼岸にいるかの如く死に顔を晒すその心中が腹立たしい………!貴様のような愚物を、一時たりとて主などと認めるものか!」

 破裂するかのような激情を、男は容赦なくレイチェルにぶつける。

  主。
 そう、この二人はマスターとサーヴァント………即ちこの「聖杯戦争」を共に勝ち残る為の主従のはずなのだ。

 それがサーヴァント――――セイバーである男が主人のマスター相手に早々に殺意を示し切り付けている。

 そんな事情を知っていようといまいと、傍から見れば大の男が本気で少女を殺しにかかっている図だ。滑稽にさえ見える。
 だが対照的に、少女の方はなんら微動だにしない。
冷静沈着というより、我関せず。他人事。まぎれもなくこの場の当事者であるのに、明らかな自暴自棄さが窺えるほど少女からは空虚しか感じない。

「………よく言われた。つまらないとか、目が死んでるとか。」

 そして、空気の読めてないこの一言。
一歩間違えれば次の瞬間首が飛ぶかも知れないというのに、場を濁すかのような発言。
レイチェルは別にそのつもりはなく、ただ自身の事実を述べているだけなのだが。
 セイバーはレイチェルを見下る。幽鬼のような影が揺らめき、光の角度を変えながら刀の軌跡を定める。

  だが、


「………でも、ダメ。私はあなたに殺されない。私を殺す人は、もう決まっているの」


 すっ………と、レイチェルは顔を上げ、セイバーの目線と合わさる。二人の間に奇妙な火花が散った。

「私はザックに殺される。私が死ぬのはザックに殺されたとき。あなたじゃない」
「…………」

 キッパリと、レイチェルはそうセイバーの殺意を拒否した。
 先程と変わらずがらんどうな気配は拭い切れていない。だが、今のその瞳にはなにか意思のような、陰りがある光のようなもの感じられた。
 数秒。セイバーはその瞳に縫い止められたかのように睨み付ける。その眼差しは目の前の少女への嫌悪で溢れている。
やがて背を向けながら納刀し、苛立ちを隠すことなく鼻を鳴らす。

「……気狂いが。貴様ごとき、どこで野垂れ死のうと同義だ。愚物」

 顔だけを向け、セイバーはそう返す。
怒りと殺意と軽蔑。貫くかと錯覚するほどの激情を宿した男の瞳が、少女を映している。

(………でも、きっと「これ」はこの人の「普通」なんだろうな)

 と、レイチェルは自身のサーヴァントをそう分析した。
それしか知らないから、分からないから、そうし続ける。
無知。だが、それゆえの純粋さ

(――――ザック)

 彼と同じものを、何故か目の前のサーヴァントに感じた。
 彼女がかつて出会った男。殺すことしか知らない、殺すことを、殺されることを誓い合った殺人鬼。
 脳裏に浮かべたとたん、あのビルで誓い合った約束を同時に思い出す。



   諦めていたわけではない。あの施設での何もない日々の中、ずっと信じていた。信じ続けていた。
   ――――背負って持っていくと。そう心にしまい込んで

   でも、叶うのなら。願うのなら。


      ――――死にたきゃ、俺に殺されると誓え!!

      ――――お前自身に、そして――この俺に誓え!


(………ああ、やっぱり私は、ザックに殺されたい)

   誓いは、彼女の中で今なお息づいている。




     ――――月はまだ、満ちていない














【出典】戦国BASARAシリーズ
【クラス】セイバー
【真名】石田三成
【ステータス】
 筋力:B 耐久:C 敏捷:A+ 魔力:D 幸運:D 宝具:B

【属性】
 混沌:悪(正しくは秩序:中庸)

【クラススキル】
 対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力除けのアミュレット程度の対魔力

 騎乗:B
 騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】

 戦闘続行:A
 往生際が悪い。
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

 精神汚染:B
 精神が錯乱している為、他の精神干渉系魔術を高確率でシャットアウトする。
ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立しない。

 刹那:B+
 セイバー独自の縮地法
 瞬間移動とも見間違う程の神速で間合いを一瞬にして詰める。
見切るのは至難の業だろう。

 凶王:A
 凶暴酷薄。冷酷かつ苛烈。『凶王』と渾名されるほど人々から侮蔑され恐れられた。
敵対するサーヴァントのステータスをワンランクダウン。確率で相手の行動判定のファンブル率を上昇させる。
 また、このスキルの効果によりセイバーの属性は混沌:悪と表示される。真名が判明すればこの効果は消滅する。

 輪廻に絆す憎悪の罪咎:A
 戦前の経験からくる嘘や裏切りに対する過剰なまでの憎しみがスキルにまで昇華したもの。
 セイバーに対する虚言や何らかの裏切り行為が発覚した場合、その行為を行ったものに対するセイバーのあらゆる判定に有利な補正が付く。


【宝具】

『死色の翅翼よ 私を抉れ』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:50人
 突進しながら無数の斬撃を放つ。
 止まぬ斬撃を残しつつ姿を消した一瞬ののち、捉えた相手の背後から大きく斬りかかり、空中からの叩き斬りでトドメを刺す。
 終わりまでの一連が一つの事象として固定・確定している為、解放されれば如何なる手段を用いてもキャンセルすることはできない。


『君子殉凶・凶王三成』
 ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1人
 魔王・覇王に続く「凶王」という畏怖そのものに自らの内に燻る憎悪を複合・増幅させ自身を大幅に強化する。相対している対象への憎しみに比例してセイバーは強化される。
 発動時にセイバーは黒い瘴気のようなオーラを纏う。
これは「凶王三成」としてのイメージそのものをより具象化した姿であり、自身へ強制的にロックオンさせると同時に無条件に恐怖や警戒心を抱かせる。
 また、セイバーの斬撃がヒットするほどそれに応じて体力を吸収し、敏捷が上昇する。敏捷の上昇値は戦闘終了時にリセットされる。

【weapon】
無名刀・白

【人物背景】
 豊臣秀吉率いる豊臣軍の将
 主君である豊臣秀吉を神のごとく崇拝しており、その忠誠心は病的を通り越して狂信とも言えるほど。
 性格は良くも悪くも真っ直ぐ。極めて感情的で融通が利かないが、反面興味のないものはとことん無頓着。
 元来の苛烈さも相まってか人から嫌われやすく「生きているだけで損をする」とまで言われるほど。しかし、一度懐に入れた者には絶対の信頼を置く人らしい一面も存在する。
 その極端すぎる馬鹿正直な生き方や人としての危うさに惹かれるものも多い。

【サーヴァントとしての願い】
 主君・豊臣秀吉が統べる天下
 しかし、それは自分が願わずとも秀吉が存命であれば成し遂げられると信じて疑わないため、願いは「豊臣秀吉の死の回避」に止まるだろう。



【出典】
殺戮の天使
【マスター】
レイチェル・ガードナー
【参戦方法】
施設で日々を過ごしていた時に白紙のトランプを拾った。
【人物背景】
 虚ろな妖しい気配を漂わせる少女。
 とあるビルの地下で目を覚ました彼女は、ザックという殺人鬼に「脱出を協力する代わりに自分を殺してほしい」という約束を交わす。
地上を目指し。フロアに待ち構える殺人鬼を退け。己の「罪」を思い出し………「殺し」「殺される」誓いは、しかし果たされぬまま、二人は離ればなれになる。
 頭はいいが感情が乏しく、外からの刺激にあまり反応を返さない。

【weapon】
 ポシェット
 中には財布など外出に必要な最低限のものと、裁縫道具一式。そしてボロボロのナイフ(元居た世界で手に持っていたので偶然持ってこれた)
【能力・技能】
 特になし
【マスターとしての願い】
 ザックに殺される
【方針】
 決めてないが、とにかくザックに殺されるまでは絶対に死なない






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最終更新:2016年12月17日 01:00