佐渡島方治&アサシン◆lkOcs49yLc







―幕末の世が過ぎ、明治の夜明けが到来してきた頃。
歴史の闇に葬られた、幕末の亡霊が動き始めた。

剣の腕、頭の切れ、他者を惹き付ける人望、彼はどれを取っても人より上を行っていた。
同時に、彼は幕府にとって危険視された存在でも有り、故に幕府によって存在もろとも焼かれた―はずだった。
弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ世を望んだ彼は、この京都を大火に沈めんと画策した。
だが、彼は変わろうとする時代には選ばれず、故に彼は焼かれた。
時代に焼かれ、時代を焼こうとした男の名は、志々雄真実と言った。
そして、その男の到来を待ち続けている、一人の男がいた。


◆  ◆  ◆


―この世に蔓延る13の魔族。
その魔族を次々と滅ぼしていった、一人の王がいた。

王には力があった。
万物を葬る闇の鎧。
魂を喰らう魔晶の剣。
竜の姿をした城。
そして、この世の誰よりも美しき伴侶。

この世の全てを我が物とした王は、殆どの魔族を絶滅に追い込んだ。
貴族たるファンガイア族の名を盤石の固きに置いた王の実績は、英雄の名に相応しい物だった。
しかし吸血王の退廃は、途轍もなく儚きものだった。
鎧も、城も、愛する伴侶さえも人間に奪われた哀れな王。
大半の魔族を絶滅に追い込んだ王の輝かしさなど、今の王には微塵も残されず、家畜との共存を望んだハーフの手で王は倒される。
しかし、その王の復活を望む、一人の男がいた。


◆  ◆  ◆



月が輝かしい夜。
静寂こそが相応しいその夜の公園の芝生に、数々の絶叫が鳴り響く。

「ああああああ!!」
「きゃあああああああ!!」

木々が生え芝生が敷かれ、多くの人々が寛いでいたその場所。
多くの笑顔が月夜の中で輝いていたそれは、一瞬で地獄絵図へと変貌を遂げてみせたのだ。
喘ぐ人々の首にあるは、二本の牙の如き物体。
牙に噛みつかれた人々の身体は、徐々に透明色に染まっていく。
まるで、魂を抜き取られているかのように。
色を失い、最早一片の生気も感じられなくなった人は、バタリと倒れる。
ある人が倒れ、またある人も倒れと。

色を失った人々は次々と倒れ行き、十秒後には、最早其処に生きている人など一人もいなかった。
皆々、色を失い芝生に倒れている。

しかし、ある木陰に、一人だけ色を残し立ち上がっている人がいた。
白いマフラーを首に巻き、眼鏡を掛けた男性。
その身は痩せ細ってはいるが、しかし眼はギラギラと光っている。

「足りぬ……足りぬ……」

男はボソボソと呟く。
飢えるように、菓子のお代わりを強請る子のように。

「まだだ……もっとだ……。」

男はそう呟くと、光の粒子となって消滅する。
1時間後に、警察や救急車がサイレンを鳴らしてやって来ることは、言うまでもない。



◆  ◆  ◆


早朝を迎えた、クリスタル・ヒルにある部屋。
其処に有る机で珈琲を飲む男がいた。
痩せ細った体型に彫りが深い顔を持った男は、その眼をギラつかせながらも、窓の外の景色を見つめている。
男の名は佐渡島方治。
日本に務める国会議員であり、今回はアメリカの視察に訪れていると言う。
それが、方治に与えられた「役割」だった。

「……やはり錆びた物だな、我が国も。」

しかし方治は、今いるロールに満足などしてはいない。
方治がいた時代といえば、明治維新が始まって幾年か立ったぐらいの頃だ。
その世において日本といえば、開国が始まった瞬間に欧米諸国の言いなりだった。
そして今も、それは変わっていない。

「やはり、あの方がいなければ……。」

方治は、一先ず明治から今に至るまでの150年間、日本がどうなったのかを調べてみた。
見てみれば、日本は欧米に影響を受け「富国強兵」の道を進んだという。
これは方治にとっても喜ばしい事だ。
法廷でぶちまけることこそ叶わなかった物の、結果的に自分が望んだ日本がやって来たのだから。
強ければ生き、弱ければ死ぬ。
日本も漸く、それが分かってきたということとなる。

だがしかし、日本は負け犬となった。
確かに日本は粘った。
国の誇りを掛けて戦った。
しかし力は及ばず燃え尽きてしまった。

(富国強兵……これを掲げた日本が何故負けた……)

答えは簡単だ。
―弱かった。
強ければ生き弱ければ死ぬ、その摂理に従い、儚くも日本は食われる側へと堕ちていった。
その挙句の果てに日本は武器を捨て平和主義を謳っていると言う。

(だがもし、志々雄様が生きていれば……)

もしも彼が、日の本の国を手にし。
この国を支配したとなれば。
他の国も全て焼けたのではないのか。
日本が、今方治のいるこの米国に敗れる未来も、無くなるのではないのかと。
十本刀、百識の方治の眼には、確かにそう映っている。

最早、現世に思い残すことなどなかった。
しかし、命を絶とうとした方治を引き留めたのが、何処かで手に入れたかも検討が付かぬ白紙の札。
これは寧ろ絶好の機会だ。
聖杯を手にし、志々雄真実を現世に舞い戻す絶好の機会。
それをむざむざ見逃す理由はない。
思い残すことなど無い。
ともなれば死ぬことなど覚悟の上。
ならば方治の向かう道は一つ。

(私は聖杯を手に入れる……そして志々雄様を蘇らせ……この国を最強の国へと作り変えてみせる!!)

改めてその想いを胸に宿した方治は、より一層顔を引き締める。

「只今戻りました、我がマスター。」

ふと、後ろから声が響く。
早口だが、しかしやや疲れているような声が。

「戻ったか。」

方治はそう答え、回転式の椅子を180度回転させ後ろを振り向く。
其処にいたのは、眼鏡を掛けた一人の痩せ細った男性だった。
彼こそが、方治の喚んだサーヴァント、アサシンである。

「ええ、昨夜も幾ばくかのライフエナジーを摂取しました。」
「そうか、ご苦労だ。」

アサシンの報告に、方治はウムと頷く。
方治が喚んだサーヴァント、アサシンは、人間が持つ「ライフエナジー」と呼ばれる生命エネルギーを貯蓄し、それを活用することに長けている。
故に、方治はアサシンには常日頃からNPCを襲わせる形で「魂喰い」を行わせ、魔力を貯蓄しているのだった。
既にアサシンを召喚して数日が立つ。
魔力は十分すぎる程に貯蓄されているが、使い道は有るのだろうか。

「念のために報告はしておくが、他のサーヴァントには発見されていないだろうな。」
「ご心配感謝いたします、今の所は発見されていませんご安心を。宝具は本戦において力を引き出しますので、貯蓄に関してはご安心を。」

アサシンの宝具。
それは、死んだ吸血鬼の亡霊を復活させ、使い魔として操ることだとか。
更に契約時に聞いた話によれば、その真価はその使い魔が「死んだ」時に発揮されるという。
死んだ使い魔の霊核は保存させることが可能で、数体の霊核を融合させることでより強大な使い魔を召喚することが可能、だということも聞いてはいる。
勿論、平時から派手に使うつもりはない。
使うのは本戦、闘うサーヴァントが減った時の話だ。
溜まった資金の切り方といえば、百識の方治の十八番、失敗するつもりは毛頭ない。

「そうか、引き続き魂喰いを続けてくれ。」
「畏まりました。」

方治の命令を聞き、アサシンは霊体化する。



◆  ◆  ◆



(やれやれ、まさかこんな物が宝具になるとは。)


アサシンのサーヴァント、チェックメイトフォーのビショップは笑う。
ビショップには、これという伝説的な武器はなかった。
例えばキングなら、キバの鎧やザンバットソードが宝具となりうるだろう。
しかしビショップには、そのような装備は与えられていなかった。
そんな彼に与えられた宝具とは、逸話系の宝具。
キングを蘇らせるために自ら行った儀式が宝具になるとは、座にいた時にビショップには想像もつかなかっただろう。

(しかし好都合な話です、これで計画は順調……)

しかし、その御蔭でビショップは願いへとまた一歩近づくことが出来たのだ。
ビショップが聖杯に託す願い。
それは、嘗て13の魔族を怖れさせたあの英雄、2代目のキングの復活である。
あの時英雄は、人間と言う家畜の手で殺された。
しかし英雄の息子は、英雄に等成りきれなかった。
三代目が結ばれる定めとなったクイーン、それが全ての発端となり、チェックメイトフォーの秩序はグラグラと揺れ始めた。
彼女を殺害する形でそれを止めたは良いが、しかしキングはそれを許さなかった。

何故許さなかったのか、今でもビショップには理解に苦しむ一方だ。
ファンガイアが従うべきは、永久に続く血の証であるはずなのに。
何故私情で己を踏んだのか、理解に苦しむ。

結局、三代目は出来損ないの無能に過ぎなかった。
真のキングに相応しき存在は、やはりあの御方だった。

(ああ、お待ち下さい真のキング、今すぐに貴方様を蘇らせ、再びファンガイア族の誇りを築き直して差し上げます)

座から得た知識によると、儀式は失敗に終わりキングは暴走したと言う。
結果、無能のキングと紛い物のキングにより滅び去る運命に至り、貴族の血は人間に汚された。
次は失敗しない。
今度こそ、ファンガイアの秩序を作り直してみせると、吸血鬼の宰相は再び己が一族に誓った。













【クラス名】アサシン
【出典】仮面ライダーキバ
【性別】男
【真名】禁欲家と左足だけの靴下
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運D 宝具A+


【クラス別スキル】

気配遮断:C
自らの気配を絶つ能力。
ただし、戦闘中は解除される。


【保有スキル】

吸魂:A
魔族が持つ「ライフエナジー」を吸うファンガイアの力。
空中に牙を発生させ、対象に噛みつかせてライフエナジーを吸収、魔力を回復する。
サーヴァントに対してもこれは有効である。


護法の宰相:A
ファンガイアの在り方を護り続ける宰相(ビショップ)。
彼は秩序を尊重する人物だが、決して忠臣というわけではない。
王が王足り得ぬ器だった場合、彼が司る天秤は間違いなく傾くであろう。
属性が「混沌」の王と対峙した際に補正が掛かる他、「反骨の相」「単独行動」と同等の効果も併せ持っている。
三代目キングを見限り先代を蘇らせようとした逸話から。


変化:C
己の姿を「人間態」に変化させる。
ファンガイアは人間の姿に変化することで社会に溶け込んでいる。
この姿ではパラメータが隠蔽され、消費魔力は少なくなるが、パラメータは大幅に減少する。


戦闘続行:B
往生際が悪い。
ボロボロになっても尚先代キングを蘇らせようとした逸話から。


【宝具】


「死にゆく同胞達よ、その魂を汝が王に(サバト・フォー・マイキング)」

ランク:A+ 種別:対霊魂宝具 レンジ:50 最大捕捉:1000

アサシンが生前、死んだファンガイアの亡霊を解き放ち、そのライフエナジーを先代キングを復活させる糧に使用した逸話から。
地面からファンガイアの亡霊達を召喚する、ただし魔力はアサシンが負担するため、そう何体も召喚できるわけではない。
その上同じ真名のファンガイアは一度喚んだらそのファンガイアが死ぬまで召喚は出来なくなる。
復活したファンガイアに理性はなく、只ライフエナジーのみを求めて本能的に行動する。
一体一体がサーヴァントに勝てる見込みは無いが、それでも頭数が揃えば話は別である。
そしてこの宝具の最も恐ろしい所は、それらのファンガイアが死に、ライフエナジーのみが残った瞬間からである。
残ったライフエナジーは、融合させて「サバト」と呼ばれる対城宝具レベルの魔獣に変化させて暴れださせることが出来る。
更に、ある一定以上の膨大なライフエナジーを完全に使い切ることにより、「二代目キング」をサーヴァントとして召喚することが出来る。
二代目キングはセイバー、ライダー、アサシン、バーサーカーの適性を持ち合わせているが、復活時に魔力が足りなかった場合はバーサーカーとして現界する。

【Weapon】

「剣」
セイバーが己の身体から生成する剣。
相当な切れ味の持ち主。


「燐粉」
口から発射する粉。
敵に当たった瞬間爆裂し、対象にダメージを与える。



【人物背景】

人間のライフエナジーを糧とするファンガイア族の秩序を管理する「チェックメイトフォー」の「宰相(ビショップ)」に位置する人物。
「全てのファンガイアの在り方」を管理する天秤の如き存在で、管理する対象にはキングを初めとするチェックメイトフォーも含まれている。
冷静沈着で早口、秩序に固執し、その為なら手段を選ばぬ非道且つ狡猾な性格。
二代目キング亡き後は三代目の世話係をし、彼がキングの称号を受け継いだ後は補佐を担当する。
しかし三代目がクイーンとの恋愛関係で悩んでいることに気付き、それに何体もの同胞を殺した「黄金のキバ」が絡んでいる事に気づく。
「このままではチェックメイトフォーの在り方が崩れてしまう」と判断しクイーンを暗殺するが、それによりキングは激怒、しかし怒る理由にビショップは気づけなかった。
彼は王の器ではないと判断したビショップは、ライフエナジーを大量に集めることで先代キングを現世に復活させることを考える。
ビショップ本人は人間の戦士の手で殺されるも、結果的に策略は成功し、先代キングは現世に復活を遂げた。


【聖杯にかける願い】

先代キングを現世に復活させる。


【基本戦術・方針・運用方法】

頭脳労働派にして宝具が使い魔という、実質キャスターに近いサーヴァント。
一応、剣術と燐粉を使った卓越した戦術能力の持ち主であるが、彼は魂喰いを行うことで本領を発揮する。
普段はスキル「吸魂」でNPCのライフエナジーを吸い取り、魔力を集めることに専念しよう。
召喚したファンガイアは使い魔としても贄としてもサバトの材料としても活用できるので、何処でカードを切るべきかは慎重に考えよう。
因みに二代目キングを蘇らせることはアサシンが聖杯にかける願いでもあるので、恐らくは死の直前に使用する可能性が高い。



【マスター名】佐渡島方治
【出典】るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
【性別】男


【参戦経緯】

拘置所で何らかの形(政府からの賄賂の封筒からか、或いは隣の囚人からか)で白紙のトランプを入手した。


【Weapon】

「ライフル」
方治がロールにおいて飾り物としていた旧式のライフル。
それは奇しくも、彼が嘗て所持していた物と同物だった。


【能力・技能】

その明晰な頭脳と政治力。
組織の財布持ちも担当しており、志々雄一派を戦艦一隻買える程の巨大な組織に変えたのは紛れも無く彼である。
ただ決して肉体労働が苦手なわけでもなく、銃撃戦においても人間離れした戦闘を見せつける。


【ロール】

海外視察に訪れている国会議員。

【人物背景】

幕末の亡霊、志々雄真実が擁する「十本刀」の一人で、「百識の方治」と言う二つ名を持っていた男。
元は明治政府の官僚だったが、腐敗したその内部事情に絶望し途方に暮れていた所を志々雄真実に拾われる。
その優れた手腕で志々雄一派の財政を支えており、甲鉄艦「煉獄」の購入に一役買うなど十本刀の中でも特に重要な存在の一人となった。
志々雄に「完全勝利」を齎すことを目的としており、彼と真っ向対立し、挙句親指以外の爪を全て引き千切ってでもそれを成し遂げようとする。
しかし方治が立てた作戦は緋村一行によって力押しで滅茶苦茶にされ、結局の所剣心と志々雄を対峙させるに至ってしまう。
その際志々雄の勝利を確信し愛用の銃を捨てるが、彼は業火の中に消え去る。
虚しくも方治は投獄され、挙句その手腕を買った政府に国家反逆罪を帳消しする代わりに戻ることを勧められる。
今回は、獄内で自決するよりも少し前からの参戦。

真面目で冷静沈着だが、一方で堅物であるためマイペースな人間には弱かったりする一面も。
志々雄に心酔しており、「今の日本が生き残る為には弱肉強食の考えを掲げる他ない、彼こそが国を率いるべき存在である」と考えている。



【聖杯にかける願い】

志々雄真実を復活させる。







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最終更新:2017年01月10日 18:36