虚栄の果て、空白の先に ◆Vj6e1anjAc
何一つない町並みを、ただ一人きりで歩いている。
それなりに記憶はあったはずだが、常に一番に思い出すのは、そんな寂しい光景だった。
けれどもあるいはそれこそが、今の自分を象徴するに、最もふさわしいものなのだろうと、彼はそう理解していた。
人のいない町。眠りについた廃墟。
人を憎悪する魔獣を引き連れ、荒らして回ったメソポタミアに、数多打ち捨てられた墓標。
それを築いた側の己が、今やそれら同様の、廃棄物に成り下がっているのは、何とも皮肉な話ではあった。
いいや、なおのこと質が悪い。町であるなら、人がいれば、建て直すこともできただろう。
けれど一人きりの自分には、拾い上げてくれる者など、地上のどこにもいなかった。
ただ一人手を差し伸べた者は、それきり力を使い果たし、引き寄せたそばから消えてしまった。
自分の両足で立とうとも、どこに行けばいいのかも、どこに行きたいのかも判然としない。
結局己には何一つ、確かなものなどなかったのだ。
吹けば消えてしまうような、幼稚な使命感一つを剥ぎ取ってしまえば、そこには何も残らない。
そのことに気づけるだけの時間を、手に入れることができたのは、幸運かも、あるいは不幸かもしれなかった。
そうだ。この地は神代の紀元前ではない。
遠く時間と距離を隔て、未来の都市を更に模倣した、虚構に満ちた電子の世界だ。
この地へと踏み込むための切符を、偶然見つけ出したのも、ひょっとしたら、何らかの作為が、この身を動かした結果だったのかもしれない。
古代メソポタミアの世界には、存在し得ないはずのもの。
白紙の紙切れ一枚が、何故か廃墟の町の中で、無性に気を引いていたことを覚えている。
そうしてその場に歩み寄り、カードを拾い上げた時から、全ては始まっていたのだ。
この身の余生、無意味な歩み――神の名前を与えられた、伽藍堂の人形の最期は。
◆
キングゥという名前は、数ある神の中でも、それほどメジャーなものではない。
だとしても、不思議な響きを持った名前は、このスノーフィールドの地においては、それだけで目立つものだった。
キング――王様を意味する単語が、彼らのイングリッシュに存在したことも、それを助長させたのかもしれない。
いずれにせよ、神秘的な響きの名前と、輝く美貌の持ち主であった彼は、それなりに人気者として、ハイスクールライフを謳歌していた。
「………」
目に見える全てが一変したのは、そんな満たされた日常に、僅かな虚しさを覚えた時からだ。
今は大勢の仲間に囲まれ、ちやほやされているけれど、果たして卒業した後に、ここで培ったものの何割が、価値あるものとして残るのだろう。
そんな無価値への冷めた視線を、どこかで覚えがあると認識した時、彼は本来あるべき記憶を、一挙に取り戻してしまったのだった。
「………」
ストリートの片隅で、膝を抱えるその身体に、損傷の痛みはもはやない。
しかし健康体になったところで、そのことに何の意味がある。
一番大事な霊格のコア――聖杯をその力ごと失った時点で、新人類というアイデンティティは、まるごと消え失せてしまっているのだ。
いいやそれすらも、そもそもの奪われた原因を思えば、些末なことなのかもしれない。
力の有る無しなどどうでもいい。どちらであっても要らないと、死刑宣告を食らった己にとっては、存在そのものが無価値なのだった。
「ヒュウ、どうしたんだいそこの姉ちゃん」
男の声が聞こえてくる。
それが自分を呼んだものだと、正確に理解するまでには、ほんの少しだけ時間を要した。
元々オリジナルの身体は、その身をもって人の愛を伝えた、娼婦の姿を参考にしているらしい。
男神の名前を与えられ、男として振る舞っていたキングゥだったが、なるほど確かに黙っていれば、この顔はどちらかと言えば女顔だ。
「こんなとこで湿気たツラしてるよりもよ。どうだい、俺らと一緒に遊ばない?」
下衆た笑みが、合計二つ。二十代そこそこの若い男が、にやついた顔でこちらを見ている。
あわよくば据え膳を、と言わんばかりの、好色そのものの目線だ。
それが今のキングゥにとって、殊の外堪えた。
旧人類の卑しさに、呆れ果てただけでなく、思い出したくもないものを、思い起こされてしまったから。
「……遊ぶなら、行きたいところがあるんだ」
内心と裏腹に、シニカルに笑う。
すっくと身体を立ち上がらせて、男の傍へと歩み寄る。
また一度、口笛の音が聞こえた。これはひょっとして脈ありかもと、期待を隠そうともしない顔つきだったが。
「地獄まで、付き合ってくれるかい?」
瞬間、男のにやけ面は、一瞬にして凍りついた。
頬にぎらりと当てつけられた、輝く金の冷たさが、その熱を悉く奪ったのだ。
氷の笑みを浮かべたキングゥが、男の顔に添わせた右手――その手のひらが、光を放つ。
鋭さを宿した切っ先が、柔肌から恐るべき毒牙を覗かせ、男を静かに威嚇している。
「ひっ……ひぃぃ!」
予想通りの反応だ。そこには驚くまでもない。
神の刃を突きつけられて、命の危機を察した男が、情けない悲鳴で鼓膜を揺さぶる。
そうしてその男と、連れ添いの男が、示し合わせたかのように、一目散に立ち去っていく。
そこまでは、読めたことだった。
しかし意外だったのは、もう一人の男の視線が、妙な方向を向いていたこと。
何故か横に立っていた男は、キングゥの抜いた得物ではなく――背中に意識を向けていたのだ。
「……オマエは……」
答え合わせはすぐだった。
遮る背中がなくなってしまえば、当然視線の先にあるものも見える。
何ということはない。もう一人いたのだ。
キングゥとまるきり同じことを、全く別の角度から、同時に行っていたもう一人の者が。
「――忙しない呼びつけだと思ったが、よもや貴様だったとはな」
しかしその者の正体に、驚きが全くなかったと言えば、それは嘘になるだろう。
あり得たことだ。分かっていたはずだ。少なくともこの地において、サーヴァントに出くわすということ自体は。
英霊召喚の儀式を、人間が殺戮に転用し、聖杯を奪い合う戦と成した聖杯戦争。
それがこの偽りの町で、行われている出来事であるなら、マスターとして呼ばれた己にも、サーヴァントは割り振られて然るべきだった。
それこそ花の魔術師を始めとした、八騎の英霊を揃えてのけた、英雄王ギルガメッシュのようにだ。
「して、今度は何用だ? 貴様は何ゆえにこの私を、抜け抜けとこの地へ呼び寄せたのだ」
ああ、しかし誰に分かる。
そうして呼ばれたサーヴァントが、よりもよってこの女だったと、一体誰に予想ができる。
長い黒髪をひと束に括り、女だてらに刀を抜いて。
そのくせ雌の肢体を隠そうともせず、これ見よがしに露出させた、アンバランスな装いを纏い。
少女にしては高い背丈で、ほとんど目線を持ち上げることなく、キングゥを真っ向から見据えるこの女だと。
「牛若、丸……」
ライダーのサーヴァント、牛若丸。
灰の曇天の只中にあって、剣のように煌めく女を、キングゥは既に知っていた。
絶対魔獣戦線の、急先鋒に立ち戦った武芸者。
偽りの母神に打ち倒され、他ならぬキングゥが拾い上げ、そして汚し尽くした女。
真なるティアマトの洗礼を浴び、人理焼却の尖兵として、反旗を翻した女――だった、はずだ。
「……ハ、そうか。キミも死んでいたわけか」
ざまぁないな、と口走りながら、精一杯の笑みを作る。
動揺を押し隠さんがために、敢えて虚勢を張り軽口を叩く。
過去に召喚された彼女が、再度この地へと召喚された。
それもメソポタミアの記憶を持った、まるきり同じ霊基であるなら、それはつまりあの戦場で、彼女が一度消えたことを意味する。
偉そうに人を嗤っておきながら、結局は同じように滅ぼされ、この地へと流れ着いたわけだ。
「当然だ。あの方々は死力を尽くし、そして見事使命を果たした。であるならば、私も貴様も、首を討たれたのは必定であろう」
しかし嗤われた牛若丸に、怒りの色は浮かばない。
それどころか自らの死を、さながら栄誉であるかのように、薄めの胸を張って語る。
「……何だって?」
そのことが、キングゥにとってはとてつもなく――不可解で度し難いことだった。
「何だ貴様、何を驚く」
「それはこっちの台詞だ。牛若丸、オマエは……一体何を知っている?」
豆鉄砲を食らったような顔に、キングゥは真顔で詰め寄った。
受けた驚きを前にしては、笑顔を取り繕う余裕もなかった。
こいつは今まさに、間違いなく、聞き捨てならないことを言ったはずだ。
それは中途で退場し、あの戦いの顛末に、立ち会えなかった己にとっては、決して無視できない事柄であるはずだ。
使命を果たした者がいる? その果てに牛若丸が討ち死にしている?
あの古代メソポタミアの地で――誰が、何を成し遂げている?
「……どうやら、事は予想以上に、面倒な拗れ方をしているようだな」
切迫したキングゥの問いかけに、牛若丸も悟ったのだろう。
目を丸くした間抜けな顔を、即座にきりりと引き締めて、真剣な面持ちで目線を合わせる。
「私も話す。だから全て話せ。貴様に起こったこと、全てをだ」
サーヴァントの身の上でありながら、主人に命令する不遜な態度も、今のキングゥにとっては、まるで問題にもならなかった。
◆
人理焼却は失敗に終わった。
自らを産み落としたティアマトは、未来から訪れたマスターに討たれ、滅亡の危機は見事消え去った。
それが人類と神々の、最後の決戦を体験し散った、牛若丸の見解だった。
言われてみれば、当然のことだ。キングゥは既にそれなりの時間を、この電子の檻で過ごしている。
それだけの時間を、あのティアマトが、悠長に過ごしていたというのは、あまりにも考えにくいことではあった。
戦いは続いていたのではない。終わっていたのだ。
それもティアマトの敗北により、人類史も、この箱庭も、燃え尽きることなく存続した。それだけのことだったのだ。
「人理が燃え尽きんとするその時に、この地に呼ばれたというのか。こいつは」
視線の先では牛若丸が、ぶつぶつと考え事をしている。
聖杯を宿していた時に得た知識によれば、こいつは天才と名高かった武将だ。
何か見逃しがたいことに勘付き、思考を巡らせているのかもしれない。
しかし今のキングゥにとっては、その程度の瑣末事など、もはや、どうとでもなれという心地だった。
「は……はは、ハハハハ!」
立ち上がり、乾いた声で笑う。
目元を右手で覆いながら、力ない笑いを挙げ続ける。
母の願いが挫かれたと、それを理解した時に、浮かび上がってきた感情は、悲しみでも喜びでもなかった。
負けて悔しいという思いも、ざまぁ見ろという思いも、不思議とこみ上げることはなく。
空っぽの胸の中にあって、その虚しさだけが際立つような――敢えて言うなら、それ自体が滑稽だった。
「何故笑う」
どこか不機嫌そうな顔で、牛若丸が問いかけた。
当然と言えば当然だ。こいつは己の顛末を、きっと言伝でしか知らない。
黒く染め上げられた後に、ろくに共闘することもなく、淡白に別れたこの女には、きっと己の思いなど、理解できるはずもないのだろう。
「これを笑わずにいられるか! 戦いが終わった? 全て無駄だったと? じゃあ結局のところボクは、何のために戦ってきた!?」
引き笑い気味に、吐いて捨てる。
悲劇に酔った役者のように、ふらふらと舞台を彷徨いながら。
埋まることのない虚無感を、無理やりにでも埋めようと、靄を言語化して吐き出していく。
無いものなど掻き出せないというのに。逆に埋め込むことをしなければ、虚ろは塞がらないというのに。
「ああ分かるとも、何も無い! 何も望まれなかったボクに、掴み取れるものなど、何も!」
結局は使い捨ての命だった。
自我なき破壊者であるティアマトが、自らの代わりに思考を行い、土壌を作ることだけを望み、作り出した消耗品だ。
にも関わらず、その命題を、至上の大義だと驕り、浮かれた顔をして無様に踊った。
何も見えていなかったのだ。であれば、どこにも行けなかったのだから、何も得られずして当然だったのだ。
初めから何のためにという問いすらも、何もかも放棄していた自分などは。
「――ッ!」
不意に、靴音が聞こえた。
かつかつと歩み寄る音が途切れ、ぐいと何かに引き寄せられた。
それが自身の襟首を掴む、牛若丸の左手だと気付いた瞬間。
「っ……!?」
既にキングゥの視点は、軽く宙を舞っていた。
アスファルトの上に、ごろごろと転がる。擦り傷の痛みが走った後に、微塵もぶつけていないはずの、顔面から痛みが湧き上がってくる。
この痛みは、あれだ。殴られた時のものだ。
いつ、誰に殴られたのだ。答えなど考えるまでもない。
両目をかっ開いた牛若丸が、空いていた方の右拳で、容赦なくキングゥを殴り飛ばしたのだ。
力を失った泥人形を、英雄サーヴァントの腕力によってだ。
「腑抜けたことを抜かすなよ、下郎……!」
見上げた先の牛若丸は、わなわなと肩を震わせている。
蒼天のように青い瞳は、今や嵐の苛烈さで、雷鳴の光を伴っていた。
その怒気が、まさしく天を衝き、灰色の暗雲を揺さぶったのか。
ぽつぽつ、と冷たい音が鳴り、水の雫を伴って、キングゥの身体を濡らしていく。
たちどころに、雨、となった。ぐずついた空は決壊し、バケツをひっくり返したように、世界に豪雨を降り注がせた。
「人々から伝え聞いた言葉からも、あの日この目で見た姿からも……もう少しばかりの自負と矜持が、貴様からは感じられていた」
嵐の只中にあっても、鬼の荒武者は動じない。
怒気の炎を絶やすことなく、射殺す威圧を瞳から放ち、倒れたキングゥを睨み続ける。
「それが何だ。何も無かったと? ただその程度を悟っただけで、全て終わりだと投げ出すと?」
靴音は、未だ鋭かった。
水たまりができるより早く、牛若丸は歩み寄り、足元のキングゥを見下ろす。
「空虚を嘆く暇があったら……虚ろを認められたのならば! 埋める努めを怠ってきたと、それを自覚しているのなら、今度こそ己を探すために立て!」
足りないものがあったのだと、それを自覚できるのであれば、どうにか埋める努力だってできたはずだ。
知っているはずの不足を放置し、諦観の中で立ち止まるのならば、それは無知ではなく罪悪だ。
そんな無様は許さない。罪を見逃すつもりなどない。
多くの仲間達を屠ってきた、悪鬼羅刹の反英雄が、その程度の糞餓鬼でしかなかったなどと、墓標に告げることがあってたまるか。
貴様の手前勝手な諦めは、あの魔獣戦線を戦ってきた、全ての同胞への侮辱なのだと、牛若丸は雷のように叫んだ。
「……オマエが、それを言うのか……」
そこまで糞味噌に罵られては、さすがのキングゥも堪える。
特によりにもよってその言葉を、他でもないあの牛若丸が、偉そうにたれたのであればなおさらだ。
「こともあろうに、己を、自我を! オマエがボクに説くのか、義経ッ!」
立ち上がり、怒声と詰め寄った。
白装束の襟首を、今度はキングゥが掴み返した。
お前にだけはその言葉は、決して言われたくはなかったと、紫の瞳が睨みつける。
偉大な兄を愛して慕い、自らはその二番手として、尻尾を振り獲物を追い続けた狂犬。
そしてその存在を疎まれ、結局は無慈悲に切り捨てられ、何者にもなれぬまま終わった敗北者。
お前は自分と同じではないのか。源義経の顛末は、この哀れな道化人形と、まるきり同じではなかったというのか。
その義経が――牛若丸が、この胸にぽっかりと空いた虚無を、偉そうに否定するというのか。
「……何も見えていないのならば、今だけは私が道を示そう」
言うべきことは言い終えた。
後は自分で受け止めろ、ということか。
キングゥの怒りなど意に介さず、返す牛若丸の言葉は、至極冷静なものであった。
「人理全体を脅かす、グランドオーダーへのわざわざの介入……此度の聖杯戦争は、明らかに異常極まるものだ。
あの方々の真似ではないが、見ぬふりをするわけにもいかん。委細を調べ上げるため、私に力を貸せ、キングゥ」
歴史の存亡の瀬戸際に、このムーンセルとやらはわざわざ、横槍を入れてキングゥを捕らえた。
そんな面倒な案件であると、知りながら介入を仕掛けたというのは、尋常な事態だとは言えない。
ただの聖杯戦争であるなら、個人的な願いのために、戦いに乗ることもあっただろう。
しかしどうやらこの戦い、それ以上の裏の意図が、渦を巻いているように思えてならない。
絶望に足を止めていられるほど、悠長な状況ではないのだ。
なればこそ、状況に対処するために、貴様にも働いてもらわねばならんと、牛若丸はそう言ったのだった。
「……命令した挙句、手下扱いか」
あんまりな物言いだ。
こいつは自分がサーヴァントであることも、キングゥの令呪の存在も、きちんと把握できているのか。
怒りよりも呆れが勝り、白けてしまったキングゥは、手に込めた力をゆっくりと緩める。
解放された牛若丸の、両足がアスファルトへとついて、すとん、と小さな音を立てた。
「何しろ、女を傷物にしたのだからな。男子(おのこ)であれば責任は取れ」
それで鮮血神殿でのことは、ひとまず我慢しておいてやると、牛若丸がキングゥに言った。
話すべきことはそれで終わりだ。拒否権など認めるつもりはない。
そう言わんばかりに、牛若丸の背は、雨の中を歩み去っていく。
いつまでも濡れ鼠でいるくらいなら、家に帰ろうということだろうか。彼女が歩いていったのは、キングゥの仮住まいの方向だ。
(ああ、そうだ)
今更ながら、自覚する。
黙ってついて行く他に、行くあてもない己を嗤いながらも、キングゥは記憶を掘り返す。
怒りに燃えた彼女の瞳を、最後の一言を発した瞳を、彼は既に知っていた。
(その自信たっぷりな目が、ボクは嫌いだったんだ)
絶体絶命の窮地にあっても、減らず口を叩いたあの時の顔。
手も足も出ない有様で、陵辱されかかったその時に、阿呆と罵った不敵な笑み。
こともあろうにあの状況で、図星を突いて怯ませてきた、彼女の根拠のない自負が、ずっと気に食わなかったのだ。
全然似ていないはずなのに、何故だかあの英雄王を、思い出させたあの瞳が。
望めば何でも手に入れられた、黄金のギルガメッシュを想起させる、牛若丸の在り方が。
そこで王を思い出すことも、無論キングゥにとっては、耐えられないほどに業腹だった。
【出展】Fate/Grand Order
【CLASS】ライダー
【真名】牛若丸
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷A+ 魔力B 幸運A 宝具A+
【クラス別スキル】
対魔力:C
魔術に対する守り。
二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣まで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。
【保有スキル】
天狗の兵法:A
人外の存在である天狗から兵法を習ったという逸話から。
剣術、弓術、槍術などの近接戦闘力及び軍略や対魔力などにボーナス。
カリスマ:C+
万人に好かれる器ではないが、近付けば近付くほどに彼女の奇妙な魅力に取り憑かれる。
燕の早業:B
燕のように軽々とした身のこなしから。五条大橋にて、弁慶の恐るべき斬撃を一度ならず二度三度とかわしきった。
【宝具】
『遮那王流離譚(しゃなおうりゅうりたん)』
ランク:A++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
牛若丸が源義経となり、奥州で果てるまでに産み出された様々な伝説の具現化。
五景の伝説全てが「奥義」と分類されているのは、個人の技量が宝具として認定される領域に至ったことの証明である。
○自在天眼・六韜看破/対軍奥義
フィールド上にいる全員の強制転移。自陣を圧倒的有利、敵陣を圧倒的不利に変更する。
○薄緑・天刃縮歩/対人奥義
薄緑による煌光の斬撃。天狗の歩法による縮地からの一撃は、躱すことが難しい。
○弁慶・不動立地/対人奥義
武蔵坊弁慶の肉体のみを擬似的に再現。弁慶への信頼が強ければ強いほど、盾として強固になる。
Bランクの対軍宝具までなら防ぎきれる。
○壇ノ浦・八艘跳/対人奥義
壇ノ浦で見せたという、八艘跳びの具現化。
どれほど足場が悪くとも、足を載せる箇所がわずかでもあれば、跳躍による移動が可能。
また、跳躍力そのものの強化も行う。
○吼丸・蜘蛛殺/対軍奥義
薄緑の本来の「力」を発揮する。周囲の「魔」を打ち払い、音によるダメージを加える。
【weapon】
薄緑
腰に携えた日本刀。退魔の力を帯びており、宝具解放によってその真価を発揮する。
【人物背景】
五条大橋の昔語りで知られる、日本有数の武将・源義経。
それが知名度補正によるものか、全盛期の姿ではなく、幼少期の姿で現界したサーヴァントである。
多くの人々を惹きつける、麗しの天才武者として知られているが、
挫折を知らぬが故に恐怖を知らず、家族を知らぬが故に愛を知らぬ彼女には、人として有して然るべき、思考のブレーキが存在しない。
故に戦場においては犠牲を厭わず、実行難度を悉く度外視し、最大効率での敵殲滅を実行する、冷酷非情な鬼武者へと変貌する。
ただし、他者に犠牲を強いる時には、それに見合った戦果を約束し、死を無駄にはしないと豪語するなど、彼女なりの仁義も有している模様。
部下に対しては厳しいが、上官に対する態度は忠犬そのもの。
特に最愛の兄・頼朝に関しては、酒の勢いで「兄上は厠になど行きません!」とか言っちゃう。
今回は通常の召喚とは異なり、第七特異点・絶対魔獣戦線バビロニアでの戦いを終え、「成仏」して以降の再召喚がなされている。
始祖の英雄王の呼び声に応え、バビロニアの地に降り立った彼女は、激動の運命に翻弄されながら、神代の血戦を駆け抜けた。
マスターであるキングゥとは、浅からぬ因縁の持ち主であるようだが……
【聖杯にかける願い】
自身を危険視し抹殺を命じた、兄・頼朝との仲直り。
ただし現状においては、不確定要素が多すぎるため、単純な聖杯確保よりも、状況確認が最優先。
【基本戦術・方針・運用方法】
天狗の兵法と伝説の五景により、白兵戦では無類の強さを誇る。
特に敏捷性に関しては、およそサーヴァントとして実現し得る中でも、最高クラスのポテンシャルを発揮するので、
これを活かして懐に飛び込み、一気呵成に畳み掛けることを心がけたい。
弱点は非力であることと、遠距離攻撃の手段を持たないこと。
一応弓術も使えることは使えるのだが、現地調達した弓矢では、大した戦果は望めないものと思われる。
本人も足は速いのだが、できれば乗り物を確保しておけば、戦術の幅も広まるかもしれない。
【出展】Fate/Grand Order
【マスター】キングゥ
【参戦方法】
ラフムのジャングルから逃れた後からの参戦。廃墟と化したメソポタミアのどこかに、白紙のカードが落ちていた
【人物背景】
ギルガメッシュ叙事詩にその名を刻まれた、神の造りし兵器・エルキドゥ。
彼は死したエルキドゥの肉体に、全く異なる新しい魂を植え付け産み出された、存在しなかったはずの英霊である。
元々キングゥという名前は、ティアマトの魔獣達を率いる神に与えられたものであり、同じ役割を割り振られた彼に、改めてその名が与えられることになった。
自らを人理消滅後を担う「新人類」と豪語してはばからず、傲岸不遜に振る舞う独善的な人物。
……しかし、その自信はあくまでも、ティアマトに選ばれた人間であるという自負によって支えられたもの。
使命を果たし用済みと断じられ、追われる身となったキングゥは、それまで自分を支えてきたもの全てを、一昼夜にして喪ったのだった。
人型兵器であるキングゥは、自分自身が触媒として機能し、自身と縁を結んだ英霊を引き寄せることができる。
彼が特異点で関わったのは、復讐の蛇神、燕の鬼武者、最古の賢王の三名。
しかし、魔力の源泉を失った今の彼が、使いこなせる英霊はただ一人――三名の中でも最下位に位置する、鬼武者・牛若丸のみである。
【weapon】
神造兵器として産み出されたエルキドゥは、自身の肉体そのものが、千変万化する無形の武器である。
当然その特性は、肉体を引き継いだキングゥにも備わっている。
……しかし、いかに神の兵器といえど、所詮は一度停止した死人の器。
動力源たる聖杯を失った、今のキングゥの肉体は、その機能の大部分を喪失している。
サーヴァントを傷つけるための、最低限の神秘性こそ備えているが、出力は大きく減衰してしまっている。
当然ながら、最大駆動による絶技『母よ、始まりの叫をあげよ(ナンム・ドゥルアンキ)』は、使用することすら敵わない。
【能力・技能】
キングゥは本来、エルキドゥが生前有していた機能を、聖杯によって再起動させていた存在である。
……しかし、現在のキングゥには、その聖杯が存在しない。
このため、彼の戦闘能力、および魔力総量は大幅に弱体化。
優秀な魔術師程度の力こそあれど、一般的なサーヴァントですら、相手取ることが難しくなってしまっている。
最高クラスのものを有していたが、霊格が落ちた現在では、相応にスペックダウンしてしまっている。
【マスターとしての願い】
知る由もない。
【方針】
何となく死にたくないとは思う。牛若丸ごときに諭されたのは業腹だが、今はついていくしかないらしい。
自身も戦えないことはないし、人間ごときに遅れを取るつもりはない。
しかし、無理をすればサーヴァントの使役すらままならなくなるのが、自分の現状であるようなので、それなりに自重することにする。
最終更新:2016年12月17日 07:39