診療記録5・6◆DdYPP2qvSs









カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。


診察室。
カルテの上で筆が踊る。
本日の『検査結果』が書き連ねられる。
患者は6名。
まるで殴り書くような荒々しい書体で、患者の容態が記されていく。


カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。


『標本1への×××薬物投与記録』。
『標本2の解剖記録』。
『標本3・標本4の接合手術記録』。
それは宛ら、治療と言うよりも実験の記録。
患者への施しを記したものと呼ぶには、余りにも残虐。
見た者に嫌悪感を与えることは間違いない。
人間をモノとして扱うかのような、非人道的な――――――人体実験のカルテ。


カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。
カリカリカリカリカリ。


筆者は、闇医者。
この非合法の診療所をたった一人で経営する男。
狂気に淀んだ眼が一字一字を舐めるように見つめる。
まるで自らの記した記録を反復するかのように。
その口元に不気味な微笑を浮かべ。
机の傍らへと、ゆっくりと、目を向けた。

異様な光景が存在していた。
人形程の大きさの人間二人が、小さなカプセルに納められているのだ。
会社員風の男性――――標本5。
妙齢の女性――――標本6。
二人はそれぞれのカプセルの中で何か喚き続けている。
何度ももがき、カプセルを叩いて外に出ようとしている。
無駄な努力だった。
男は壁を叩く両手を負傷させ、血に染め上げるのみ。
女もまた、ただ虚しい悲鳴だけが轟くのみ。

このスノーフィールドで人生を送り、生活を営んできた二人の男女も。
狂気に染まった診療所においては、ただの無力な実験動物でしかない。
医師は嗜虐的に嘲笑し、また別の方向へと視線を向けた。


「おまえは人間の身体に興味があるか?」


記録の手を止めた医師が、唐突に声を掛ける。
ぼんやりと浮かび上がるのは、白と黒の人影。
医師は人影に語りかけるように言葉を続ける。


「私はあった 人体に興味があった!だから医者を志した」


まるで人生を振り返るかのようにしみじみと語る医師。
彼は幼い頃から好奇心旺盛だった。
人間の身体というモノへの果て無き探究心を備えていた。
学生時代には老人ホームでのボランティアによって賞を貰ったこともあった。
成人してからは当然のように医者となり、数々の外科手術に携わってきた。

尤も、そんなものは表の顔でしかなかったが。

彼の探究心は極めて歪んだ形で発露されることとなる。
人体への好奇心は、同時に人間の精神への関心をも生み出した。
そして彼は、人間の苦痛を観察することを好むようになった。
老人ホームにおいては老人相手への虐待を繰り返した。
自殺へと追い込み事故として処理された老人は複数名いた。
医者となってからは更に歯止めが利かなくなった。
健康なものをわざと病気と診断し、手術などの実験台として利用した。
人体はどこまで切り刻めるのか。
毒性の強い薬にどこまで耐えられるのか。
四肢の分断と接合はどこまで出来るのか。
彼の好奇心と嗜虐性は暴走を繰り返し、数多の犠牲者を出し続けた。
最終的に『医療ミス』としてその一環がバレ、医者としての資格を剥奪された彼はギャングに拾われた。


「この場においても私の『好奇心』は変わらない……」


医者としての資格を奪われた今。
彼の精神性は、どうなっているのか?
答えは『かつてと何ら変わっていない』。
それどころか、彼の魂は更にドス黒く輝いていた。
『スタンド能力』を獲得し、その残虐性にますます歯止めが利かなくなったッ!



「『聖杯』!!私はそれを手にし!『生命』を掌握したいッ!!」



医師は高らかに宣言する!
残虐非道のスタンド使い『チョコラータ』の飽くなき好奇心は留まることを知らない。
彼の欲望は未だに満たされず、それどころか『聖杯』の存在を知ったことで更に膨れ上がった!


「人間だろーと 動物だろーと この地球上に存在するありとあらゆる生物をッ!
 この私の『実験対象』にしたいのだよ!わかるか?え?アーチャー!」


この世に存在するありとあらゆる生命を己の意のままにする!
そうすれば、あらゆる生命を使ったあらゆる実験が可能となる!
それはつまり地球という惑星そのものを己の実験台へと書き換えること!
狂人の妄言と捉えられかねない果てしない野望だ。
しかし、それを可能にする道具を巡る戦いにチョコラータは身を投じてしまったのだ!

対する『話し相手』。
白黒の人影は、何とも言えぬ様子で念話を飛ばす。


『いえ、わかりません……』
「フン!つまらん奴だ」


『人影』の反応に対し、心底つまらなそうに吐き捨てる。
チョコラータは己のサーヴァントを見定めていたが、やはり退屈な奴だと断定する。
人体実験に関する話を降っても『はぁ』だの『楽しそうですね』だの空返事をするのみ。
怪物じみた姿をしている割に存外つまらぬ性格をしているのだ。
尤も彼の宝具はチョコラータ自身重宝している。
人間を小型化し、回収できたのもサーヴァントの宝具によるものだ。
こうして人間をモルモットのように捕獲して実験してやるのも中々楽しい。
暫くはこれで遊べそうだとチョコラータは内心ほくそ笑む。


(聖杯戦争に関してはまず様子見ッ!
 我が『グリーン・デイ』は無差別殺戮のスタンド能力!
 虐殺そのものはやぶさかじゃあないが 裁定者とやらに目をつけられるのは御免だ……)


同時にチョコラータは思考する。
己のスタンド『グリーン・デイ』の強さは自負している。
恐るべき殺人カビを撒き散らし、広範囲の人間を殺戮する能力。
このスノーフィールドの住人を虐殺することも容易いだろう。
だが、下手に目立った殺戮を行えば裁定者に目をつけられる危険性がある。
最悪の場合、討伐令――――――それだけは避けなければ。
故に『実験動物』で我慢だ。
それに、己のサーヴァントははっきり言って弱い。
幻惑などにはある程度適しているのかもしれないが、戦闘においてはからっきしだ。
下手に他のサーヴァントとぶつかれば敗北は必至だろう。

狡猾に。冷静に。
『勝ち』を掴み取る必要がある。


「まあ どのみち勝つのはこの私だがな……
 人間の好奇心は何よりも強い!好奇心こそが人間を成長させる!
 そう!無尽蔵の好奇心をいだく私は誰にも負けんのだからなアアアァァァァァァッ!!」







―――――何なんだこの男は……



冗談ではない。
こんな男の遊びに何故付き合わねばならないのか。
チョコラータのサーヴァントは心底呆れていた。
というより、引いていた。
宝具によってNPCを小型化、回収。
そしてチョコラータの実験台としてその生命を弄ばれる。
サーヴァントは彼の凶行の一端を担っていた。

アーチャーのサーヴァント『ダダ271号』。
かつて上司に命じられ、人間標本の作成・転送の為に地球へと降り立った宇宙人。
しかし地球を守る科学特捜隊、そしてウルトラマンの手によって任務は妨げられた。
ダダ271号は死後『任務に失敗したダダ』として同胞から蔑まれ、人類史においてもウルトラマンとの戦いに置ける敗者として記録されているのである。
彼が聖杯に託す願い。
それは失敗に終わった任務によって着せられた汚名の返上である。
過去を改竄し、己の任務失敗という結果を覆すこと。
敗北に終わった歴史を勝利の歴史へと書き換え、己の汚名を塗り潰すのだ。
そのためにダダは意気揚々と聖杯戦争への召還に応じたのだ。
尤も、今は三割程後悔の念が頭の中に浮かんでいるのだが。


―――――人使いの荒い上司の次は、こんなイカレた人間の下で働かなければならないのか……


ダダは頭を抱えていた。
まさか自分のマスターがこんな狂人だとは思わなかったからだ。
生前の上司も余り性格のいいタイプではなかった。
ウルトラマンの強さに何ら関心を寄せず、無慈悲にも任務の続行を言い渡してきたのだから。
人使いが荒い上に現場の意見に耳を傾けない。嫌な上司の典型例だ。
しかし、今回の上司はまさに別次元の異常。
同族を採集し、人体実験に利用?
同族を自分の欲望の為に手術し、そのことに何の呵責も無い?
狂っている。これほどまでに馬鹿げた人間がいるのか。
地球人はどうかしている。
ウルトラマンは自分なんかよりこいつを叩き潰すべきだろう。
どう見たってこいつの方が遥かに地球人類にとって危険だ。
ダダはそんなことを思い続ける。

今後暫くはこの男の下で働き続けなければならないのだ。
いっそマスターを乗り換えるか?という思考も過った。
しかし、そんな都合良く野良マスターが見つかるのか。
ダダはサーヴァントとしては弱小であり、敵サーヴァントとまともにやりあえるだけの能力は持たない。
むしろマスターを狙うべきという、アサシンに近い性能のアーチャーなのだ。
そのことが却って他マスターへの鞍替えをさせにくくしている。
単体でサーヴァントを潰し、マスターを未契約状態にすることが極めて困難なのだ。
とどのつまり、自発的な鞍替えの可能性は絶望的。
ならばはチョコラータをマスターとして認めて素直に戦い続ける他無い。


「さて!気分も良くなった 始めるぞアーチャーよッ!『手術』再開だッ!!」
(結局そうなるのか……)


人間標本5・6が納められたカプセルを手に取り、チョコラータは宣言する。
全く以て、先が思いやられる。
一応戦う意思があるだけマシと思うべきなのか……
ダダ271号は再び頭を抱えた。













【クラス】
アーチャー

【真名】
ダダ271号@ウルトラマン

【パラメーター】
筋力E- 耐久D 敏捷E 魔力C 幸運D 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラス別スキル】
対魔力:E
魔力への耐性。
無効化はせず、ダメージ数値を多少軽減する。

単独行動:C
マスター不在・魔力供給無しでも行動できる能力。
Cランクならばマスターを失っても1日程度の現界が可能。

【保有スキル】
空間転移:D
その場から姿を消し、瞬時に別の位置へと瞬間移動することが可能。
転移時は霊体化の際と同様、移動距離上に存在する物質を無視することが出来る。
ただし遠距離の移動は出来ず、多くの魔力を使っても数十メートル前後の移動が限界。
更に他者を空間転移させることも可能なのだが、多大な魔力を必要とする上にNPCにのみしか使用できない。

透明化:C
自身の肉体を透明化する。
霊体化とは異なり、物理的な干渉力を持った状態で肉体を不可視化させる。
発動中はEランク相当の気配遮断効果を得られる。
ただし宝具「ミクロ化器」を使用する場合は透明化を解除する必要がある。

憑依:C
NPCに憑依し、肉体を自在に操る。
憑依中はサーヴァントとしての気配を絶つが、優れた魔力察知能力を持つサーヴァントには見破られる危険性がある。

戦闘続行:E-
戦闘時、致命的なダメージを負っても一度だけHPが極僅かに残る。
数多の怪獣を葬ったウルトラマンの必殺技「スペシウム光線」が直撃しながらもしぶとく逃げ延びた逸話の具現。

【宝具】
「ミクロ化器」
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:2~10 最大捕捉:1
『ダダ時間2・2・2以内に人間標本を完成させよ!』
ダダ271号に課せられた任務を達成するための装置。
対象に向けてミクロ化光線を放ち、人形サイズにまで小型化させてしまう。
一度小型化してしまえば能力もサイズ相応になってしまい、ダダが圧倒的に優位な状況となる。
ミクロ化器を破壊するか、ダダに一定以上のダメージ与えることで能力は解除される。
……とはいえ、サーヴァントならば光線を受けても抵抗することが可能。
対魔力スキルを保有していれば更に抵抗の成功率が上がる。

「三面怪人」
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
自らの異名となった奇怪な顔面変化能力。
三種類の顔を自在に使い分け、他者を幻惑させる。
彼の正体を知らぬ者に「同種のサーヴァントが三体存在する」と誤認させることが可能。
ただし、それだけである。

「小型エレクトロニクス動力源」
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:100
生前にダダが宇宙線研究所に持ち込んだ機械。
レンジ内に特殊なジャミング波を発生させ、外部との一切の連絡を遮断させる。
機械的な通信手段は勿論、念話や令呪をも完全に遮断してしまう。
ダダとそのマスターのみ念話や令呪の影響を受けない。


【Weapon】
ミクロ化器、格闘攻撃

【人物背景】
「三面怪人」の異名を持つ宇宙人。作中では人間大の大きさで主に行動していた。
複数の人間を小型化し標本にする任務を達成するべく奥多摩で怪事件を引き起こす。
警視庁の依頼を受けた科学特捜隊によってその陰謀を暴かれ、最後はウルトラマンに倒された。
怪獣・宇宙人の類いなのだが、ウルトラマンどころかムラマツ隊長にも格闘戦で負けるなど戦闘能力は極めて低い。
また上司のダダに「ウルトラマンには敵わない」と報告しても無視され、無慈悲に任務続行を言い渡される場面もあった。

作中で見せた巨大化はサーヴァントの能力として再現できず、使用不可。
また本来は地球の言語での会話は出来ないが、念話でのみ意思疎通が可能。

【サーヴァントとしての願い】
過去を改竄し、『人間標本作戦成功』という歴史に塗り替えることで自らの汚名を雪ぐ。

【方針】
とにかく勝ち残る。
チョコラータの趣味はどうでもいいのでさっさと戦術を練りたい。



【マスター】
チョコラータ@ジョジョの奇妙な冒険 第5部「黄金の風」

【マスターとしての願い】
ありとあらゆる『生物』を実験対象として管理。
全ての生命が自分の意のままとなる世界を作り上げる。

【weapon】
手術道具

【能力・技能】
『グリーン・デイ』
破壊力A スピードC 射程距離A 持続力A 精密動作性E 成長性A
周囲に殺人カビをばらまくスタンド。
感染者は現在地より低い位置に移動することで急速にカビが繁殖し、肉が腐り死に至る。
カビの犠牲者を媒介に更に他者へと感染を引き起こし、放っておけば無制限にカビは蔓延していく。
更にあろうことかチョコラータは傷口をカビで保護することで自身の肉体をバラバラに分離できる。

【人物背景】
イタリアのギャング組織「パッショーネ」に所属するスタンド使い。
かつては医者だったが些細な医療ミスをきっかけに解雇されている。
その正体は殺人鬼であり、手術や治療と称して数多の患者を残虐な人体実験に用いてきた狂人。
パッショーネのボスであるディアボロさえもその性格や能力を警戒していた。

【令呪】
亀裂が入った横向きの髑髏を模した形状。
消費は下顎(一画目)→後頭部(二画目)→顔面(三画目)。

【方針】
勝ち残る。その過程で『人間採集』を楽しむ。
裁定者からの罰を避ける為、カビの無差別な散布は極力控える。







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最終更新:2016年12月17日 22:52