無題(ホル・ホース&アサシン)◆VJq6ZENwx6


オレは何をやっているんだろう。
ふとやってきたスノーフィールドの地で、ガールフレンドに泊めてもらったホル・ホースは、ソファの上で愛用のテンガロンハットを直しながらふと、そう思った。
育ちの良さそうな女と付き合って、世話になるなり金目の物を貰う、それはたしかにオレの性分だが、オレは年がら年中そうやって暮らしている腑抜けた男であったか?
オレが女に世話してもらわなきゃ生きられない、腑抜けた男だというのなら、どこか生活に不安もあるかもしれない。
しかし、今後の生活を考えても、何の定職も無いはずのオレには、なぜか自信がみなぎっていて、それすら飲み込むドス黒すぎる、腑抜けた男には荷が重すぎるはずの強大な悪への恐怖が巣くっていた。


『君は…普通の人間にはない特別な能力を持っているそうだね?』

なにか、とても恐ろしいものから逃げているような

『ひとつ…それを私に見せてくれると嬉しいのだが…』

そして、何か大切なものを忘れているような、
そんな気がしてならねえ。

―ブーン、ブン

ん?ハエ?ハエもなんか記憶に残っているような…

―ブン、ブン、ブーン

「ええい、鬱陶しい!纏わりつくんじゃねーぜ!」

腕を振り回し、ハエを追っ払おうとするが、ハエは離れることはなかった。
まるで、逃れようとしても無駄だと、あざ笑うようにハエは宙で舞っていた。

「………」

不思議と心は落ち着いている、怒りもあるが、それ以上の殺気を込めてハエを見据えた。
冷静にハエの動きを目で追う、いつまでも飛び回ってるはずがねえ、止まった時に叩く。
そう考えた途端、ハエはやはりあざ笑うかのように、オレから離れ、飛び回ったが冷静に目で追った、
そしてオレから約一メートルほど離れたテーブルの上、当然オレの手の届かぬ所で止まった時、オレは動いた。
オレはハエに向かって拳銃を持つかのように構え、次の瞬間その手の中に拳銃が現れ、それを当然のように思い、引き金を引いた。
そしてそれを察知したかのようにハエが飛び、銃弾は標的から外れ、テーブルを貫くーーかと思われた所で、弧を描いて上方にカーブしてハエを貫き、さらに天上を傷つける前に消えた。

これがオレの立ち向かう意志、常人には見えぬ拳銃のビジョンのエネルギー、すなわち側に立つ者<スタンド>。
『意思』の暗示を持つ4番目のタロットカード、皇帝<エンペラー>だ。

「思い出したぜ…DIO」

バラバラになったハエをゴミ箱に捨てたオレは、ポケットからタバコを取り出し、火を着けた。
タバコを取り出した手の指の間に、気づいたらトランプが挟まっていた。
入院したカイロの病院で女目当てでトランプ占いに興じていた際に引いた、白いトランプだ。

そして、白紙のトランプから放たれたまばゆい光とともに、現状―スノーフィールドに置ける聖杯戦争の知識を理解し、
目の前でトランプがオレの新たな相棒、サーヴァントに変貌し始めた。


聖杯戦争、万能の願望機を巡り
マスターと呼ばれる魔術師がサーヴァントと呼ばれる英霊を召喚し二人一組で戦う、これは良い。
No.1よりNo.2、これが彼、ホル・ホースの人生哲学であり、矢面に立つ側を用意してくれると言うなら願ったり叶ったりである。だがーーー

「オレにか弱い女子どもを相棒にする趣味はねーぜ…」

相棒運の無さに、思わずため息を付いてしまった。

「え?」

白紙のトランプから現れた、とぼけた顔の目の前の少女を見つめる。
頭から生えた犬耳が貫通したフード付きケープ、尻尾、肉球グローブともこもこふわふわした格好、
これで英霊とは何かの間違いではないかと頭を抱えたくなる十代半ば程度の美少女。
ホル・ホースの白紙のトランプを核にしたサーヴァント、たまである。

「いや、なんでもねえ、悪いな。
で、嬢ちゃんがオレのサーヴァント…ってことで良いのか?」

「は、はい!そうだと…思います」

いかにも気の弱そうな返事だぜ…
オマケに会話も苦手そうだが、まぁオレの口説きテクにかかればどうにでもなるだろう
萎える気持ちに鞭打って、もう一つ質問を投げつける。

「OK,理解したぜ。
それで、お嬢ちゃんは何ができるんだ?」

重要な質問だ、あのDIOもスタンド使いを集めているように、人を選ぶのに、一番『大切な』事は『何ができるか』!
あの元相棒のボインゴも異常な人見知りだったが、能力は万能の願望具にも負けるとも劣らない『都合のいい未来を漫画にして映し出す』なんてインチキ能力。
英霊になるんだ、たまもきっとすごい能力を持ってるに違いねえ!
「ええと、ちょっと、待っててください」

訝しむオレを横目にアサシンは中庭に駆け出し、芝生に爪を立てる。
すると、爪を立てた所に直径1mほどの穴が開いた!
驚いたオレはすぐに駆け寄り、穴を覗き込んでみたが底が見えねえ…
試しに咥えていたタバコを落としてみた所、か細いタバコの火はすぐに見えなくなり、煙も出てこなくなった、どれだけ深いのかは全く検討もつかねえ。

「その…こうやって、穴を開ける魔法が使えます」

「ふぅむ…」

整った真円の穴に思わず右手が疼いた。

「なあ嬢ちゃん、この穴っていうのは地面じゃねえと開けられねえのか?」

「え?いや、傷つけられればなんでも大丈夫です」

「そうか」

あのエンヤ婆のスタンドのように人体でも…と聞きそうになったが、
能力を使ったアサシンの自信なさげに子犬のように小さく縮こまった佇まいを見てやめにしておいた。
常にコンビで動いてきたオレにはわかる、この嬢ちゃんはあのボインゴの様に強力な能力を持ってもビビって使えねえタイプ。
召喚に応じてる以上、聖杯を持って願いを叶える意思はあるんだろうが、それを実行できる精神力があるかどうかは微妙だ。
ま、スタンドで人を殺して、人から金を貰ってるオレにその辺をとやかく言う筋合いはねえし、
女に対してボインゴの様に発破をかけるのは流儀に反する、ちっと厄介な相棒を引いちまったもんだぜ。
途中で心が折れて、聖杯戦争に参加する意思自体が無くなったら、強要する気はねえし、迷わず手を引いて次の相棒を探さなきゃならねえかな。


「あ、あのう…他にも…こんな道具もあります」

穴を見つめながら考え込んでるオレを、能力を微妙と思ってると見られちまったのか、アサシンが自信なさげに怖ず怖ずと飴の二つ入ったビンを差し出してきた。

「えっと、元気の出る薬です」

元気の出る薬、アサシンを自信付けるためにも精一杯フォローしようと思ったオレだが、なんと返せばいのかわからない。
ヤバイ薬じゃないのか、健全な薬でも元気が出るからどうなのか、返事に詰まってしまった。
そんなオレを見て、アサシンはさらにたどたどしく外套を取り出した。

「えっと、その、スイムちゃんのだけど、うんと、透明外套です…」

そう言って、外套を着たアサシンは消えたーーー消えた!?
魔力のパスからしても、目の前にアサシンが居るのは感じる。
しかし、目を凝らしても全く見えない。
そうして固まってる間に、外套を脱いだアサシンが目の前に現れた。

「えっと…どうですか…?」

「凄え道具じゃねえか…疑ってたわけじゃねえが、本当に魔法みてえな道具だな…
 それ、お嬢ちゃんじゃねえと使えないのか?」

「あの…どうぞ」

返答代わりにアサシンは外套を差し出した。
受け取ったオレは早速外套を羽織ってみる。
サイズは合わないが魔法の道具というだけあり、オレが無理に扱っても破けそうにはない。
着終わったオレは自分の腕があるべき所を見てみる、無い、いや、完璧に透明になっている。
それを確認したオレは静かに外套を脱いだ。

「ど、どうですか…?」

「クックックック…」

笑いが止まらねえ、『暗殺』のオレの能力と『透明』のこの外套、これほど相性が良いものがあるだろうか

「オレたちゃ無敵だ!無敵のコンビだぜ!」

「え!?」

「凄えな嬢ちゃん、これさえあれば聖杯に手が届くぜ」

「ほ、本当ですか…?」

「ああ、きっと手に入れようぜ、オレたちの手でな」

アサシンの顔にここで初めて笑顔が浮かぶ。
オレも嬉しい。
このお嬢ちゃんの手を、わざわざ汚させねえで聖杯を取る。
このやり方に差し込んだ一筋の、いや大量の光にオレの目の前は明るくなった。

「じゃあ、そろそろこれ閉じてくれ」

「え?」

「魔法とやらで開けたこの穴だ、泊めて貰ってるガールフレンドの家に穴あけっぱなしは流石に不味いからな」

「え、えっと…」
アサシンの顔がみるみる青くなっていく。

「ん?」

「ご、ごめんなさい!私の魔法だと穴を開けても閉じられないんです!」

この答えを聞いた時、光は消え、オレの顔も真っ青に染まった。


『この後二人は頑張って穴を埋めようとしたけど、埋めきる前に家の持ち主が帰ってきてホル・ホースはメチャクチャ怒られたあげく、絶交されて家から追い出されちゃった!
 がんばれ、ホルホースとたま、人生そんなものさ!』



【クラス】アサシン
【真名】犬吠埼 珠
【出典】魔法少女育成計画
【性別】女性
【属性】中立・中庸

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:D 幸運:C 宝具:C

【固有スキル】

気配遮断:E
サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。

【保有スキル】
観察眼(土):B
大地に対する造詣が深い。
落とし穴などの罠に回避補正がつく。

魔法少女:C
魔法の才能を持った生物が、魔法の国の技術によって変身する生命体。
通常の毒物を受け付けず、暗闇を見通し、飲食を必要とせず、精神的に強化される。
内包した魔力は使いようによって、魔法の国を再興させうるとも言わる。
これによってアサシンはランクB相当の単独行動を保有し、魔力消費量も軽微なものとなる。

仕切り直し:D
戦闘から離脱する能力。

落第生:A
落ちこぼれゆえに自分以外に敵対対象がいる場合、アサシンの優先順位が大きく落ちる。
幸運、宝具を覗いたパラメーターが全てアサシンより2段階上回る相手は実力差故慢心し、アサシンに対し心眼(真)と直感が無効になる。

【宝具】
いろんなものに素早く穴を開けられるよ
ランク:C 種別:対物宝具 レンジ:1-10 最大補足:1人
視界内にある自分で掘り返した穴・傷などを一瞬で、直径1mまでの穴に広げられる。
たとえどれだけわずかな傷であっても、傷つけることさえできれば広げることができる。


抱き合い飛ぶ片翼の天使達(元気の出る薬)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1~2人
この薬を服用していたことがアサシンによるジャイアントキリングの要因の一つであったとされる。
本来は10錠だがアサシンは己が服用した2錠分しか出せない。
服用してから30分の間、筋力値、敏捷値を一段階上げ、戦闘続行D、心眼(偽)Cを付与し、
更に30分の間ピーキーエンジェルズのユナエル、ミナエルを召喚する。
召喚されるのはランダム、かつ2錠で二人召喚されるため、ユナエルorミナエル、無しorユナエルandミナエルのパターンで召喚される。(一度召喚されたものは召喚されない)

アサシンの仲間、ユナエルが3年分の寿命を差し出し、手に入れたとされる魔法の国の日用品。
たまは仲間といる時が一番元気。


土曜日のメリュジーヌ(透明外套)
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
羽織っている人間の姿・匂いを消すマント。
認識されながら強敵を打ち倒した、及び見てはならないものを見てしまったアサシンの末路から、これを羽織っている最中のアサシンを認識した相手の幸運値を一段階下げる。
更にこの効果で相手の幸運値がEになった、または効果を受けたが元々Eの場合はアサシンに一回限りの直感Bを付与し、更に落第生が発動している場合、確実に先手が取れる。

アサシンが所属していた魔法少女グループの、当時のリーダーとされる魔法少女が25年分もの寿命を差し出し、手に入れたとされる曰く付きの魔法の国の日用品。
前述の通り元々はアサシンの所有物でもなく、元気の出る薬のように有用に扱った覚えのない道具である。
さらにアサシンはこのマントの元々の所有者に殺されたとのことであり、未だに所有権が譲られているとも考えづらい。
この道具をアサシンが所有できている理由は謎。


みにくい愚民の子(ルーラ・ザ・ビギニング)
ランク:― 種別:対人宝具 レンジ:2~3 最大捕捉:1人
アサシンが5年分の寿命を差し出し、手に入れたとされる魔法の国の日用品。
当時のリーダー、そしてかの魔法少女狩りの手に渡り、数多くの戦いを通し不遜、聡明、可憐にして唯一無二の女王(ルーラ)として宝具に至る武器。
仮にも寿命を支払った当人であるアサシンが用いてもおかしくはないはずだが、
当のアサシン本人に所有している意識がないため、使用不能である。


【サーヴァントとしての願い】
受肉して復活。

【マスター】
ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険

【参戦時期】
ボインゴと仲良く病院に入れられている最中。

【マスターとしての願い】
DIOの粛清から逃げる。







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最終更新:2017年01月29日 01:15