――スノーフィールド国立研究所。

新興都市の発展を国が認めたのか、近年で新しく設立された国立研究機関である。
近い将来、アメリカにおける軍事・機密研究における新たな重要拠点の一つになると目されており、それ以外でもあらゆる分野において研究が行われている。
研究所は今後の科学の進歩のためならばと資金を捻出することを惜しまず、研究の制約はないに等しい。
それに惹かれたか、世界中からも著名な科学者やエンジニアが集っており、誰が形容したか「科学者達の楽園」とも呼ばれるようになっていた。

しかし、寛容な研究所も、軍事・機密研究となれば態度を変える。
軍事・機密研究とは自国軍の使用する兵器の情報そのものである。他国に知られればフェイクを造られた上にテロに転用されかねない。
それだけでなく、その兵器の情報は国際間の情報・交渉戦においても重要なカードに位置づけられる。
まさに、研究によって生み出された成果は国防上においては命そのものと言っていい。
国からの支援もあり、研究所は研究の内容とその産物を世間から隠蔽することにぬかりはなかった。
仮にそれが正義を標榜した性質の悪い自己陶酔ジャーナリストなどにでも暴露されればアメリカという国の威信にも関わってくるため、何としてでも秘匿せねばならないのだ。

そんな国立研究所で、数ある機密兵器を保管している区画の通路にて二人の男が話しつつ歩いていた。
無機質な電灯が艶やかな床を照らす中、二人の体は防弾機能のある重装備で固めており、手には殺傷能力の高いマシンガンが握られている。
二人は研究所お抱えの警備員で、機密を守るためならばこれくらいの武装は当たり前といいたいところだが、今回ばかりは別の理由もあった。

「俺達って、この先にある兵器を警備するんだっけ?」
「ああ、聞いたところによると生物兵器らしいな。いつ背後から襲われるか分からないだとよ」
「おいおい、それ大丈夫なのか?この研究所、ちょっとチヤホヤされ始めたからってつけあがってるといずれ痛い目見るぞ」
「ま、冬眠制御装置で眠らされてるから目覚めるなんて万に一もないんだけどな。要は気を緩めるなってことだろ」
「やれやれ、そんなもん作るなんて科学者サマの考えることはわからねえぜ…」

変わり映えのない通路を進んでいると、やがて男の言う生物兵器の保存室前に辿り着いた。
見上げるほどにまで巨大な入り口はシャッターで閉ざされており、どこかで装置が動いているからか重い羽音とも思える駆動音が常に響いている。
直前まで警備に当たっていた二人の同僚に交代の旨を伝え、代わって入り口の両端の位置についた。

研究所は警備も厳重なため、侵入者の心配はない。
これから半日ほど、ずっとここの見張りをすることを考えると、警備員は気が滅入る思いだった。








僕は何者だ。何のために生まれて、何故ここにいる。
わからない。わからない。わからない。
過去もなく因果もなく、ただ「ここにいる」という事実だけが突きつけられている。
思い出そうにもからっぽな記憶は何も答えてくれない。
返事の代わりに在るのは深い闇と、居心地の悪い寒さ。
どこか懐かしい、そして忌々しい感覚だった。
それを知覚するたびに、やるせない感情がこみ上げてくる。
怒り、悲しみ、苦悩。負の方向に走る情動がファクターもなく僕を襲う。
これに記憶の手がかりがあるとしても、闇の中で宙吊りにされた僕にはどうすることもできない。


――お前は、何を望むのだ?


ふと、退屈というには余りある空虚な闇から、声がした。
誰だ、と問う間もなく、僕の体が新たな変化を感じ取る。
その感覚を発する手元を見る。
しばしの間、指すらも動かした覚えはない中、軋む掌が内から見せたものは――緑に輝く宝石だった。
闇の中ですらも妖しい輝きを放つそれに、僕は目を見開く。

「これは――」

見覚えのあるそれは、確かに僕が握りしめていた。
■■■の願いを叶えるために不可欠なもの。
■■■の願いが僕の全てだった。

「――そうだ。僕は…僕にはしなければならないことがある」

――もう一度問おう。お前は、何を望む?

「彼女の願いを叶える。スペースコロニーの力を借りなくとも、聖杯で…!」

僕は、ひたすら進む。目的のためなら手段を選んでいられない。








―――お願いよシャドウ。私のかわりに… いつかかならず… あの星に住むすべての人達に…―――

「分かっているさマリア、約束する。この星に住むすべてのものに――」








轟音と地響きが機密兵器の保管区を埋め尽くしたのは、警備員が見張りを始めて小一時間が経過した頃だった。
その非常事態を表すかのように赤いパトライトがあちこちで研究所を赤く染め上げる。
絶え間なく続く騒音に混じって、サイレンがけたたましく叫び声をあげる。
二人の警備員は突然の事態に、足を崩して前のめりに倒れてしまう。

「な、なんだ…!?」
「な、内部だ!このシャッターの内側で何かが起こっているんだ!」

今も巨大なシャッターの奥側で何かが蠢き、衝動の赴くままに暴れているかのような破壊が音となって警備員の耳に伝わっていた。
自分の当番に限って引き起こされた異常事態に混乱しながらも、一人はなんとか銃を構えて臨戦態勢を取った。
もう一人の方は、現在の状況を上官に伝えるために、無線機を懐から取り出そうとしていた。

「こちら――ぐふっ!?」

しかし、取り出して話し始めたところで警備員の言葉は苦悶と驚愕が入り混じった悲鳴に塗り替えられた。
震える手で武器を構えていた警備員が見ると、無線機を持っていた警備員は稲妻の如き輝きを見せるエネルギー体でできた槍に胴体を貫かれていた。
無線機からは応答を求める声が虚しく鳴いている。
胴体に深く突き刺さったやりは貫通しており、刺さった時のあまりの衝撃により心臓を中心に胸に鉄球のような穴が開いて肉を焦がしていた。
既にその警備員は絶命していたことは明らかだった。
警備員が呆然としつつも周囲を見回すと、巨大なシャッターの四角の下部に大きな穴が開けられていた。

「おい――」

眼前に広がる光景を受け止められず、遺体と化した同僚に近づこうとした警備員の言葉もその後に続くことはなかった。
シャッターの奥側から生じる爆発。爆風の熱により警備員は命ごと蒸発し、その肉体は瞬く間に粉微塵へと還った。
その衝撃でシャッターはもとあった位置から吹き飛ばされ、ついにその奥に眠っていた者を阻むモノはなくなった。

生命活動を終えた二人のNPCを後目に、噴煙の中からカツカツと靴音を鳴らしながら保存室を出る二つの影があった。
一つは、2足歩行の黒いハリネズミだった。これは比喩でもなんでもなく、ハリネズミシューズを履き、人間と同じように歩いているのだ。
もう一つは、マントと大剣を携えた青年だった。しかし、耳は尖っており、少なくとも人間でないことをうかがわせる。
二人ともこの世の全てを憎んでいるかのような表情で、ただ前を見据える。

「…行こう、アヴェンジャー。マリアの願いを叶えるために」

黒いハリネズミであるシャドウ・ザ・ヘッジホッグが自身のサーヴァントに向けて言う。
先ほど警備員を討った槍は、シャドウによるものである。
冬眠制御装置から目覚めたばかりだというのに、その実力は余すことなく発揮されていた。

「その望み、しかと聞き入れた。この聖杯戦争、何としてでも勝つぞ。我が望みのためにも…」

ピサロ――否、「デスピサロ」はそれに応じた。
それは幾度か人間とも協力したことのある魔剣士ではなかった。
シャドウの願いに引きずられ、人間を根絶やしにすべく活動していた魔族の王として現界したピサロの姿であった。

「この星に住むすべてのものに」
「欲深く身勝手な人間どもに」
「「復讐を」」

それと同時に、シャドウは片手に持っていた宝石――カオスエメラルドを掲げる。
そして「カオスコントロール」と叫ぶと、シャドウとデスピサロは眩い光に包まれ、何処かへと消えた。
シャドウの脳裏には姉のように接してくれたマリアの姿が、デスピサロの脳裏には今は亡きロザリーの姿があった。




【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
デスピサロ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

【パラメータ】
筋力A 耐久A 敏捷B 魔力A+ 幸運E 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
復讐者:A(A++)
復讐者のクラススキル。
復讐の対象となる者を前にした時、憎しみにより己の魔力を本来の値以上に増加させる。
生来の仇敵のみならず、その復讐対象に連なる者、単に自らを負傷させる・不利な状況に追い込む等した相手に対してもわずかながらに効果を発揮する。
デスピサロの復讐の対象は『人間』であるため、多くの相手が復讐の対象となる。
『進化の秘法』によって暴走した場合、ランクは()内のものに引き上げられる。

忘却補正:-(A+++)
デスピサロにおける忘却補正は、「忘れられた」ではなく「忘れる」ことによるもの。
デスピサロが最愛の恋人のことをも忘れ、復讐のためにすべてを捨て去った時、このスキルは真価を発揮する。
『進化の秘法』によって暴走した場合、ランクは()内のものに引き上げられる。

自己回復(魔力):A+(A+++)
異形と化したデスピサロが、幾度ともいえる自己回復と変身を経て導かれし者たちを苦しめた逸話もあり、憎しみを魔力に変えたかのように毎ターン魔力を大幅に回復する。
その回復量はマスターとカオスエメラルドによる魔力のバックアップを抜きにしても十全な戦闘力を発揮できるほど。
実質的に単独行動スキルを有しているといっても過言ではない。
『進化の秘法』によって暴走した場合、ランクは()内のものに引き上げられる。

【保有スキル】
魔王:A
魔に魅入られた者達を率いて人間を脅かす悪の象徴であり、それらを統べる長たる者。
人間の英霊に与えられる魔王スキルとは違い、生前から魔王として在った者に付与されるスキル。
「デスピサロ」として召喚されているため、「ピサロ」の時と比べてランクが著しく上がっている。
デスピサロは魔王ではなく「魔族の王」とされていたが、それでも名だたる魔王に勝るとは劣らぬ格を持つ。
魔族であるため、呪いや呪術、反英雄のスキル・宝具によるバッドステータスなどの影響を全く受けない上、
対象が人間ならば敵の全パラメータを強制的に1ランクダウンさせ、威圧によるバッドステータスを与え、あらゆる判定におけるファンブルの確率を上昇させる。
ただし、世界を救うべく戦った「勇者」にまつわる逸話を持つ者はこの効果を撥ね退けることができる。

カリスマ:B
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる。
かつて配下の奸計により自滅した逸話を持つことからランクが下がっているが、それでも魔物達からは多大な信頼を寄せられていたため高ランクを維持している。

魔術:A
呪文を幅広い分野において最高水準で習得している。
損傷を完全回復する「ベホマ」、敵のプラスステータスを全て打ち消す「いてつく波動」、地獄より雷を呼び寄せる「ジゴスパーク」など、強力なものを取り揃える。

魔物作成:A
魔物たちを率いており、デスピサロが現れた場所には魔物が出没するようになったという逸話からくるスキル。
かつて自身の配下であった魔物を召喚することができる。

【宝具】
『進化の秘法』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
魔族に伝わる秘法。
人や動物、魔物などの生物を従来の成長の過程を無視して進化させる力を持ち、全ての災いの元として天空人に危険視されていた。
デスピサロは愛する者を失い、この秘法によって憎しみ以外のすべてを失った異形の怪物へと変貌して導かれし者たちと相対した逸話から、この宝具を持つ。
デスピサロはこの秘法によって異形の怪物へと変身することができ、上記のパラメータとは比べ物にならない力を得ることができるが、
一度変身すれば全ての記憶を失い、暴走してしまう諸刃の剣。
異形と化した『デスピサロ』はあらゆる傷を瞬時に再生して不死身の如き耐久力を得る他、『進化』の概念によって受けた攻撃に対し耐性を得ることができる。
一方で、この『進化の秘法』は他者にも使用することができ、動物に知性を与えて会話を可能にしたり人間を怪物に変えたりできる他、
サーヴァントに使用すると無辜の怪物スキルを強制的に付与することもできる。

【weapon】
  • まかいのつるぎ、まかいのよろいといった魔界にまつわる武具

【人物背景】
ロザリーヒルに住んでいた魔族で、本来の名前は「ピサロ」。
行く宛のなかったエルフの娘に「ロザリー」という名前を与え2人で暮らしていたが、
ルビーの涙を流すエルフであるロザリーはしばしば一攫千金を狙う人間に狙われており、
その影響もあったのか人間たちを滅ぼして世界を支配する野望を抱いてロザリーヒルを飛び出し、「デスピサロ」と改名した。
世界を魔族のものにするべく、魔物たちを従え地獄の帝王の復活のために奔走し、人間を根絶やしにする決意を固める。
一方で、ロザリーに対しては優しい姿を見せており、彼女を守るために塔を建造し魔物たちに守護させ、人間たちのエルフ狩りから守っていた。
しかしその後、ロザリーを人間に殺されたことで憤怒と狂気にかられ、様々な研究・実験の末に完成させた進化の秘法を自らに施す。
比類なき強力な肉体を得たが、精神がそれに耐えられずに記憶は失われ、人間を根絶やしにするという憎悪のみが残った怪物へと変貌してしまった。
最終的には、死闘の末導かれし者たちによって倒された。

アヴェンジャーの他、セイバークラスとしても現界可能で、セイバーの場合は真名は「ピサロ」となる。
しかし、「人類に復讐する」というシャドウの願いに引きずられた結果、セイバーではなくアヴェンジャーに、
「ピサロ」ではなく人間に憎悪を抱いていた「デスピサロ」としての側面が反映されて召喚された。

【サーヴァントとしての願い】
人類どもを根絶やしにする。




【マスター】
シャドウ・ザ・ヘッジホッグ@ソニックアドベンチャー2バトル

【マスターとしての願い】
マリアの願いを叶える。
この星に住むすべてのものに、復讐を。

【weapon】
  • ホバーシューズ
シューズの裏に穴が開いており、そこから噴射される空気の力で地面を滑走するように走ることができる。
そのスピードはかの青いハリネズミに勝るとも劣らず、マッハ2で移動することも可能になる。
他にも空中でホバリングをしたり、急上昇・急下降したり、ジェットから吹き出る炎で攻撃できるなど応用も効く。
なお、ホバーダッシュのみでも相応な俊足を持つと思われる。

  • カオスエメラルド
1つ1つに膨大なエネルギーが宿った世界に7つあると言われる宝石。
その1つをシャドウは元の世界から持ち込んでいる。
そのエネルギーは魔力に変換でき、魔力炉としても優秀だがその力を利用して後述のように時空を歪めることができる。

【能力・技能】
  • 銃火器の扱いに長け、徒手格闘もそこそこ出来る。

  • カオススピア/カオスランス
エネルギーを光の矢に変えて相手を貫く。

  • カオスブラスト
カオスエメラルドのエネルギーを蓄積し、一気に放出することにより発生する爆発攻撃。
周囲一帯の全てのものを吹き飛ばす。

  • カオスコントロール
時空を歪めて自分以外の時の流れを遅くする。完全に時を止めることも可能。
その間、相対的に速く移動でき、物質の質量や耐久値を無視してすり抜けることができる。 
客観的に見れば尋常でないスピードで移動しているように見え、テレポートしたように見える。
時を止めた場合は動きを認識することは不可能。

  • スーパー化
ソニックのスーパー化と同様、7つ全てのカオスエメラルドのエネルギーを最大限まで引き出すことにより、体中が銀色(に近い金色)に輝くスーパーシャドウとなることができる。
ソニックと同様の重力に逆らった飛行能力や、光速での移動能力を得ることができ、強力なサーヴァントをも圧倒することが可能になる。
しかし、シャドウはカオスエメラルドを1個しか持ち込んでいないため、事実上スーパーシャドウになることは不可能。
また、ソニックとの因縁がない時期から参戦しているため、スーパー化する発想に至ることすら難しいかもしれない。

【人物背景】
「プロフェッサー・ジェラルド・ロボトニック」によって作られた人工生命体であり、究極生命体。
ハリネズミを擬人化したような容姿をしている。性格は危険過ぎるほど一途で純粋。
世界最速の青いハリネズミ・ソニックと酷似した外見をしており、違いは胸毛があることと黒いことくらい。
究極生命体というだけあってその戦闘能力はずば抜けており、銃弾を受けても弾いてしまうし、神経ガスの中でも平然と動ける。
普段からカオスエメラルド頼みの戦法を使うが、上記のように格闘関連は結構何でも卒なく出来る。
普段履いているのは靴底に4筒のジェットを仕込んでいるホバーシューズ。
高速移動はこの靴から噴出されるジェットの力でスケートの要領で滑走している。
そのスピードは高速移動中のソニックに追いつくほど。

スペースコロニー『アーク』で生まれ育ち、プロフェッサーの孫娘のマリアとは実の姉弟のような関係だった。
しかし、ある一件でスペースコロニー封鎖を断行した軍によって、マリアを失ってしまう。
マリアと離れる間際にマリアが言った 「私のかわりに、いつか必ず、あの星に住むすべての人達に…」
という言葉を復讐を願うものだと信じ、聖杯でそれを叶えることを望む。
カオスエメラルドを盗み出し、ソニックと始めて相対するまでの間から参戦。
そのため、ソニックとの面識はない。

スノーフィールドにおける役割は研究所の最高機密兵器…だったが、脱走したために住所不定のホームレス。
後のシリーズにもシャドウは登場するが、ソニックアドベンチャー2の内容をメインにしているので把握はそれだけでOK。

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最終更新:2016年12月23日 00:24