予算の少ない聖杯戦争 ◆NIKUcB1AGw
男は、真面目で誠実だった。
だが同時に、バカで好色だった。
ふとしたきっかけで女遊びを覚えた男は瞬く間にのめり込み、多額の借金を抱えることになってしまった。
◆ ◆ ◆
その朝、彼は自宅である狭いアパートで寝ていた。
彼を眠りから呼び覚ましたのは、ドアをけたたましくノックする音だった。
飛び起きた彼は、すぐに何が起きているのか理解する。
逃げ出したい、という気持ちはある。
だがなまじ性根が真面目であるがゆえに、それができない。
男はノロノロと玄関に移動し、扉を開ける。
「おう、素直に出てきたか。そこは褒めてやるよ」
「ブルアイランドさん……」
そこに立っていたのは、彼が金を借りている金融会社の社長だった。
「それじゃあ貸した金、さっさと返してもらおうか」
「もう少し、もう少し待ってください。
明後日になれば給料が入るんです!」
「先月もそう言ってたよなあ。だから俺も待ってやったんだ。
だがてめえは、入った給料を全部女に貢いじまったじゃねえか。
同じ言い訳が二度通用すると思ってるのか?」
「先月は仕方なかったんです! あの子を指名してあげないと、店をクビになるかもしれなくて……」
「やかましいわ!」
男を突き飛ばし、社長はずけずけと部屋の中へ足を踏み入れる。
「現金がないなら、少しでも金になりそうなものをもらっていくぞ。
ん? なんだこりゃ……」
社長が見つけたのは、部屋の隅で埃をかぶっていた棒状の物体だった。
よく見ればそれは、この安アパートにはまるで似合わない刀剣だった。
(なんだ、あの剣は……。あんなもの、私の部屋にあるはずが……。
いや、違う。あれは私が、ずっと愛用してきた……)
男の脳裏に、今まで失っていた何かがよみがえってくる。
「美術品か? まあ、こいつの持ち物にしちゃ上等……」
「うおおおおお!!」
「なっ!」
突如雄叫びを上げながら突進してきた男に、社長は一瞬ひるむ。
その隙に男は剣を奪い取り、鞘から抜き取る。
そして驚愕の表情を浮かべる社長に向かって、刃を振り下ろした。
◆ ◆ ◆
(思い出した……。私は、勇者ヨシヒコ!)
男……ヨシヒコは、裏路地を走っていた。
(社長が目覚めれば、血眼になって私を探すだろう……。
もうあの家には戻れんな……)
ヨシヒコに斬られた社長だが、彼は死んだわけではない。
ヨシヒコが用いる剣は、「いざないの剣」。
斬った相手を眠らせ、命を奪うことなく制する剣である。
(それはそうと、私はいったいなぜこんなところで平凡な労働者として働いていたのだ……。
いや、私の頭の中に流れ込んできた情報で「聖杯戦争」とやらに巻き込まれたというのはわかるのだが……。
あまりに情報量が多すぎて、すぐには理解できん……)
改めて言うが、ヨシヒコはバカである。
与えられた膨大な知識を、即座に理解することなど不可能であった。
ましてや、走りながらなのだからなおさらである。
そうこうしていると、彼の眼前に突然白いトランプが降ってきた。
それはまばゆい光を放ち、人の形に変化していく。
「な、なんだ!?」
敵襲の可能性も考え、剣に手をかけるヨシヒコ。
やがて光が消えたとき、そこには一人の青年が立っていた。
「サーヴァント、キャスター。召喚に応じて参上した。
君の力になろう」
「あ、あなたは……」
「ん?」
召喚されたキャスターの姿を見たとき、ヨシヒコの警戒心は驚愕に吹き飛ばされていた。
とはいえ、キャスター自身に見覚えがあったわけではない。
彼が反応したのは、その服装だ。
「その格好、普段の私にそっくりだ……。
もしや、あなたも勇者なのですか!」
そう、紫のターバンにマントというキャスターの姿は、元の世界で冒険していたときのヨシヒコとほとんど同じものだった。
ちなみに、今のヨシヒコの服装はよれよれのTシャツに短パンというものである。
何せ寝起きの状態で家を飛び出してきたので仕方ない。
「いやあ、勇者は僕じゃないよ。僕の息子さ」
ヨシヒコの問いかけに対し、キャスターは柔和な笑みを浮かべながら答える。
「息子……? つまりあなたは、勇者の父親ということですか」
「そう、僕は勇者の父親。グランバニア王で、モンスター使い。
でも一番気に入ってる肩書きは、ただのさすらいの旅人。
僕はリュカ。よろしくね」
リュカが仲間になった!(ファンファーレ)
【クラス】キャスター
【真名】リュカ(主人公)
【出典】ドラゴンクエストV 天空の花嫁
【性別】男
【属性】中立・善
【パラメーター】筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:A 幸運:E 宝具:A
【クラススキル】
陣地作成:―
魔術師として自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
リュカは全盛期を流浪の旅人として過ごしたため、このスキルは機能していない。
道具作成:E
魔力を帯びた器具を作成可能。
リュカは本来そういった能力を持たないが、クラス補正により薬草や毒消し草などの安価な消耗品なら作ることができる。
【保有スキル】
カリスマ:B
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
Bランクであれば国を率いるに十分な度量。
魔術:B
基礎的な魔術を一通り修得していることを表す。
リュカは真空系の攻撃呪文と、回復呪文を主に用いる。
友誼の証明:C
敵対サーヴァントが精神汚染スキルを保有していない場合、相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことができる。
聖杯戦争においては、一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。
【宝具】
『ドラゴンの杖』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1-100 最大捕捉:100人
龍の力が込められた杖。
打撃武器として振るえば、破格の破壊力となる。
また真名を解放すれば、一定時間自らの姿を龍に変えることができる。
ただしその間は「狂化」に近い状態となり、「敵を攻撃する」以外の行動が取れなくなる。
いちおう、マスターが令呪を使えば、それ以外の行動も可能になると思われる。
『集え、愛を知る魔物よ(リュカズ・ワンダーランド)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1-75 最大捕捉:80人
固有結界。
広大な草原に生前に仲間にしたモンスターたちを召喚し、一斉攻撃を仕掛ける。
なおキラーパンサーのみ、固有結界を発動しなくても単独で召喚が可能である。
【weapon】
本来なら伝説級の装備をいくつも持つが、今回はクラス制限もあってドラゴンの杖しか持ち込めていない。
【人物背景】
グランバニア国の王子として生を受けた男。
しかし生まれた直後に母・マーサがさらわれ、それを探す旅に出た父・パパスと共に各地を放浪していたため自分が王子だということは知らずに育った。
成長した後、グランバニアの王位を継ぎ、母をさらった魔王ミルドラースを討ち取った。
目の前で父を殺され、その仇に拉致され10年以上の間奴隷として過酷な労働を強いられる、
呪いにより8年間を石像として過ごす、ようやく再会できた母をその直後に殺されるなど、
その人生はあまりに不幸続きなことで知られている。
【サーヴァントとしての願い】
一人でも多くの人を助けたい
【基本戦術、方針、運用法】
クラススキルがほぼ死んでいるため、典型的なキャスターとしての運用は事実上不可能。
前線でバリバリ戦っていくことになるだろう。
幸い強力な宝具を二つも持ち、本人の戦闘力も悪くないため真っ向勝負に不都合はない。
またそのスキル構成から、仲間を集めての集団戦に向いているといえる。
【マスター】ヨシヒコ
【出典】勇者ヨシヒコシリーズ
【性別】男
【令呪】スライムのシルエット(とんがり、右半分、左半分でそれぞれ一画)
【マスターとしての願い】
巨乳のお姉ちゃ……ゲフンゲフン
特になし
【ロール】
多額の借金を抱えた、肉体労働者
【weapon】
「いざないの剣」
勇者の証である剣。
斬った相手を傷つけず、深く眠らせる。
【能力・技能】
幾度も魔王を倒した勇者であり、戦闘力は相応に高い。
……はずなのだが、雑魚モンスターに苦戦することもあり、その戦闘力は変動が激しい。
根が単純であるため、デバフ系の魔法・技にはほぼ100%かかる。
しかしバカが幸いして、相手が一般常識を持っていることを前提とした催眠術にかからなかったこともある。
【人物背景】
カボイの村で生活していた、正直者で素直な青年。
岩に刺さっていた「いざないの剣」を抜いた(というか勝手に抜けた)ことで勇者とされ、魔王打倒のために旅立つことになる。
紛れもない善人ではあるのだが「バカすぎて空気が読めない」「目の前の問題に気を取られすぎて、最終目標を放り出す」「巨乳に弱い」など
数々の問題点も抱えている。
今回は第2作「悪霊の鍵」終了後からの参戦。
【方針】
異世界だろうと、勇者のやるべきことは変わらない。
悪を倒し、平和を取り戻す。
(まだ聖杯戦争については、4割くらいしか理解していない)
最終更新:2016年12月24日 09:10