無題(西住みほ&キャスター)
西住みほは困惑していた。身の回りの全てに、この世界の全てに。
学校に行き、授業を受け、友人と他愛もない会話を交わし、家に帰る。なんの変哲もないこの日常。
いつかの彼女がずっと望んでいたこの生活。あまりにも平凡なこの世界の中に、ただ一つだけ、ぽっかり空いた穴のように足りないものがあった。
「戦車……どこかで乗れないかなあ」
そう、この世界には戦車が足りない。それもM1エイブラムスや10式のような現用の主力戦車ではなく、シャーマンやティーガー、Ⅳ号戦車のような第二次世界大戦で活躍したような古き良き戦車たちが。
彼女にとって戦車とは日常の一部であり、極端に言ってしまうなら靴や鞄のような、日常的に着用する道具と同じくらい当たり前に存在するはずの物であった。それが、この世界には無い。
戦車とは女性が乗るものであり、戦車道は乙女の嗜み。彼女の居た世界ではそれが常識だった。
戦車道とは武芸の一つである。第二次世界大戦の時代までに制作された戦車に乗り込み、部隊を組んで勝利を競い合う。試合には実弾を用いるが、戦車の車内は特殊なカーボンに保護されているので危険性は全くない。
彼女はこの戦車道で多くの敵を打ち倒し、そして友情を築いてきた。いわば彼女の青春の象徴でもあるのだ。単に趣味の一つを失ったという程度の落胆では済まされない。
どうして仲良くなったのかもわからない友人と別れ、西住みほはひっそりとため息を吐いた。懐からスマートフォンを取り出し、戦車というワードを検索する。
99999999980件のウェブページが見つかりましたという表示に彼女はむしろ表情を曇らせた。この世界にも戦車は存在している。ただ、今の私と同じように、『私』とはかけ離れたどこかへ行ってしまっただけなのだ。
西住みほは聖杯戦争の参加者である。彼女はこちらの世界に呼び出されてから、僅か一日足らずで予選を突破した。戦車の無い世界は彼女にとって空が桃色であるような、海が黄色であるような、大地が虹色であるような、そんな違和感に溢れた世界であった。
彼女は懐から白紙のトランプを取り出した。元々これはⅣ号戦車の車内で見つけたものだ。大学選抜との試合の数日後、自動車部から整備が終わったからⅣ号の確認をしておいてくれと頼まれ、通信手席の影からこれを見つけた。
そして気付いた時にはこのスノーフィールドの地で、至って平凡な女子高生としての生活を送っていたのだ。
「聖杯戦争。万能の観測機、ムーンセルオートマトンの支配権を争う、魔術師たちの命を懸けた戦い……」
声に出して確認してみてもやはり実感が湧かない。聖杯もムーンセルも魔術師も戦いも、耳慣れない言葉ばかりだ。別に、自分には聖杯に望む願いなんてものはない。それも敵を、ヒトを殺してまで叶えたい願いなんてものは……。
「あわっ!?」考え事をしながら歩いていた為か、なにかにぶつかってしまったようだ。感触からして人じゃないみたいだけど……と、彼女は顔を上げた。
予想に反して、目の前にいたのは確かに人間だった。彼女が頭をぶつけたのはスーツを着た人間の胴体部分であった。西住みほがもう少しだけ目線を上げようとした瞬間、ソレは彼女の眼前に現れた。
「……えっ?」
彼女の視界が赤く染まる。目の前には赤く脈打つ何かがあり、木の枝のようなものがソレをしっかり掴んでいる。
どうやら木の枝は人間で言う手と同じ役割を持つ器官で、赤い何かが紛れもなくヒトの心臓であると彼女が理解したその時、耳を裂くような甲高い鳴き声がして、心臓は真っ赤な血を飛び散らせながら破裂した。
「きゃああああああああああ!」
「■■■■■■■■■■■■!」
顔中にこびり付いた血液を拭うこともせず、西住みほは駆け出し、理解した。
これが聖杯戦争なのだと。自分には相手を殺す理由がなくとも、相手には自分を殺す理由があるのだと。
彼女は脇目も振らず逃げていく。元来た方向はダメだ。あっちには学校があり、仮初とは言え友達がいる。
幸いにもこのあたりは人通りも少ない。森の方向に逃げれば、木の陰に隠れてなんとか逃げ延びれるかもしれない……!
怪物――鴉を人間大にして羽毛を全て取り除いたようなその生物は、どうにも注意が散漫であるようだ。先程の死体から得た部位を啄んだり、両手で弄びながら自分をゆっくりと追いかけてくる。
彼女は様々な理由から込み上げる吐き気に耐えながら必死に走り続け、なんとか郊外の森までたどり着いた。
森に着いた彼女はできるだけ木が多く、草の茂っている方向に向かう。足跡を残さないよう、柔らかい腐葉土ではなく木の葉の上を走る。
元の世界において、彼女は幼い頃から戦う術を叩き込まれ、誇りを賭けた戦いを何度も勝ち抜いてきた。一度覚悟さえしてしまえば恐怖を感じることもなくなる。この異常事態において、西住みほは驚くほどに冷静だった。
大きな茂みを抜ける。今なら怪物の方からこちらの動きを見ることは出来ない。彼女は近くの草むらの下にうずくまり口を抑えた。
怪物の耳障りな鳴き声が近付く。心臓が高鳴ると同時に、否応なしに先程の惨状が思い出される。涙が溢れそうになるのを必死で堪えながら、彼女は決して怪物の動向から眼を離さなかった。
怪物が動く。
木の葉がひらりと舞って西住みほの目の前に落ちる。
怪物はそれを一瞥し、木の葉に向き直し不気味な足取りで歩を進める。彼女はそれを見ることしか出来ない。
怪物は身を屈め木の葉を拾った。
それをしげしげと見つめ、針のような指先で切り刻んだ後、聞くだけで脳を掻き乱されるような怪笑を上げながら森の入口へと戻っていった。
彼女はほっと胸をなでおろし、怪物の姿が見えないのを確認して茂みから這い出た。
体に付いた木の葉を振り払い、自分が無事に生きていることを再認し、そして、鋭く縦に切り付けられた自分のふくらはぎを確認した。
「■■■■■■■■■■■■■■■■――――――!」
突然、森そのものが狂ったような笑い声。西住みほは半狂乱になりながら、もう一度辺りを見渡した。
木という木、草という草、茂みという茂み全てが、例の怪物の声で笑っている。
後ろを見ると、先程まで隠れていた茂みは肉塊のようなモノに変貌し、醜悪な笑みを浮かべながら彼女の脚に鋭い爪を立てていた。
「あ、ああ、あ、……なんで」これは初めからそういう狩りだったのだ。善良な一般市民を見つけ、この森まで追い込み、集団で襲い魔力を効率よく抽出する。
それが美しい女であれば尚の事いい。女の悲鳴は彼らにとってなによりも甘い慰みになる。
彼らはここまで、何の狂いもなく完璧な計画を遂行してきた。
彼らの算段に誤りがあるとすればそれは――――――
「正義の味方って奴も中々難儀なものだ。マスターのピンチにこうも遅れて駆けつけることしか出来ないなんて」
――――――彼らの見定めた、無力で蹂躙されるだけの獲物が、自分たちと同じ人外を従える存在であったことか。
彼らは突如現れ、そして己の分身を軽々と消滅せしめたその存在を、まずはゆっくりと観察した。
赤い外套を身に纏ったソイツは、どうやら自分たちではどうしようもないほど強大な力を持った存在らしい。両手に携えた双剣は鋭く、同朋は一刀の下に両断された。
しかし。怪物は一斉に下卑た笑みを浮かべる。コイツの武器はただのこれだけ。己らが同時に襲いかかればそのうち対応できなくなる。
一撃でも浴びせればそこから加速度的に動作は鈍っていくはずだ。
それに――新たに現れたコイツも、どうやらとびきり美しい女であるらしい。
「■■■■、■■■■■■■■」
怪物は一斉に標的に向かって飛びかかる。赤い外套の少女は舞うように動き、それらを切り刻む。
右、左、前、後。四方から襲い来る怪物を少女は一点の狂いもない動作で切り捨てる。
西住みほはそれを見つめることしか出来なかった。恐怖に怯えて動けなかったのではない。
赤い外套の少女、自身のサーヴァントである彼女は自分を守るように立ち回っており、下手に逃げようとすればそれは、西住みほの所持する唯一の戦力の消耗を早めることになると気付いていたからだ。
サーヴァントはそれを察し、身動き一つ取らない自分のマスターを見てふと笑った。
彼女は完全な一般人であり、戦闘能力は全く期待できないだろう。しかし。決して悪くはない。自分の分を弁えるということは、何においても重要だ。
「そろそろかな」サーヴァントは呟く。僅かにだが、自分の動作に乱れが生じている。
怪物はそれを察知したのか、徐々に分身の数を増やして彼女を圧し潰そうと動き始めた。
「しっかり掴まってて、マスター」彼女は西住みほを抱きかかえ、そして跳躍した。
「あの、えっと、ありがとうございます」西住みほはぺこりと首だけを動かし、自らのサーヴァントに頭を下げた。
「いや、感謝される筋合いは無いと思う。私があなたを助けるのは当たり前のことだし、何より間に合ってないから」
サーヴァントは西住みほの傷口を見て目を伏せた。「話は後にしよう」
彼らの数メートル下では怪物たちがひしめき、宙に舞う二人を指差してケタケタと嘲笑している。追い詰められて跳躍するとは愚の骨頂。空中では方向転換もできず、そのまま落下するしかない。
しかし、サーヴァントはそれを承知の上でこの行動を選択した。
彼女は目を閉じ、記憶の奥底を潜るように辿る。
メモリの海の中からおぼろげな記憶が浮かび上がってくる。
桃色の髪に青い着物、狐の耳に麗しい美貌。どこか別の世界で彼女と共に戦った相棒――
「――――――来て、キャスター!」
瞬間、彼女の姿が変わった。しなやかな体躯は女性らしい豊満なシルエットに。白黒の双剣は消えてなくなり、代わりに握るのは数枚の札。
彼女がそれを投げつけると札から白氷が生じ、怪物たちの動きを封じるように絡みつく。
そして彼女が怪物たちの中央に着地した時、彼女の装いはまたも変化していた。
赤いドレス。お姫様が着るようなふわりとしたスカート。しかしその手には、華美な装いに不似合いな、真紅の大剣が握られていた。
「てえええええいっ!」
鋭い一閃。マスターを小脇に抱えたまま、彼女は片手のみで怪物の群れを文字通り切り抜けた。
そしてもう一度怪物の側に向き直る。多数の同朋を失った彼らは怒りの咆哮を上げ、もぞもぞと身を寄せ合っていた。肉体が溶け合い、一つの塊となっていく。
本来の姿に戻って一気に決着を付けるつもりだろう。
好都合だ。彼女はもう一度、赤き外套を纏った姿に変化した。
――体は剣で出来ている
彼女は呟いた。
血潮は硝子で、心は鋼
瞼を閉じ、精神を集中させる。
幾度の戦場を越えて不敗
水の中に落ちた小石を拾うように、
ただの一度も敗走はなく ただの一度も停滞はない
彼女は自分と、自分に最も近い誰かの在り方を見つめ直す。
彼の者は友と二人 熾天の座で未来(ゆめ)を想う
人の十倍はあるだろうか、巨躯の生物が彼女を睨む。
故に その道程に答えなど求めず
怪物の鋭い爪が彼女へ振り下ろされる、その寸前
心が折れようとも、剣は常に手の中に在る
枯れ木の森は一瞬にして、朽ち果てた剣の点在する荒野に成り果てていた。
『無名・固有結界』
彼女はいつからか手に握った双剣で爪を防ぎ、攻撃の勢いを利用して怪物の背中へと回り込み白刃を突き立てる。
「■■■■■■■――――――!」
怪物が苦悶の声を上げるのを意に介さず、彼女は白刃を蹴り、更に深く捻り込みながら跳躍する。
空に浮かぶ歯車を蹴り、彼女は高度を上げていく。
彼方には青白い月。月光に照らされて、宙に舞う彼女がその手に握るのは――
「――投影開始、永久に遥か黄金の剣(トレースオン、イマージュライナー)」
星の聖剣が怪物を焼き尽くす。この輝きの前ではいかなる悪もカタチを保てない。怪物は声を上げる時間すら無く消滅した。
「……ふう」そうして彼女が着地した時には既に、荒れ果てた荒野は元の薄暗い森に戻っていた。
彼女の服装はまたも別のものに変化している。今回のソレは赤い外套でも、奥ゆかしい着物でも、豪奢なドレスでもない。
薄茶色の、何の変哲もない学生服だった。彼女はへたり込む自らのマスターに手を差し伸べ、柔和な笑顔を浮かべて言った。
「サーヴァントキャスター。真名は岸波白野。これからよろしく、私のマスター」
◆
「あの、本当にありがとうございました!」
西住みほは自分の手を取り、何度も頭を下げる。数えているだけで、みほの土下座に近いお辞儀はこれでもう六度目だ。
いや、こっちこそ本当にお礼はもういいから! それよりも怪我は大丈夫かと、私はみほのふくらはぎに視線を向けた。
コードキャストの効果で既に傷は塞がっているが、なにしろみほは生身の人間だ。
この世界も電脳空間である以上、効力は以前のものとなんら変わりないはずだがそれでも心配になる。
マスターを守りきれなかった不甲斐なさから顔を伏せる私に、彼女は困ったような表情を浮かべ、手をひらひらと振りながら言った。
「うん、もう大丈夫です。全然平気です。えっと……キャスター、さん?」
気軽に白野と呼んでくれていい。一応これが真名だけど、知られたところでどうなるものでもない。
むしろ私の場合、キャスターというクラス名を隠しておくほうが戦略上重要だ。
「戦略上……」先の戦いを想起させるその言葉に、みほは表情を曇らせた。
……気持ちは痛いほどわかる。彼女はおそらく、命のやり取りなんてものとは無縁の生活を送っていたのだろう。
それが何かの間違いでこんなところに来て、現状を咀嚼しきれないままに戦闘に巻き込まれた。あちらのムーンセルでさえ聖杯戦争の参加自体は自由意志だったと言うのに、全くふざけた話だ。
私は深く息を吐いた。すると彼女はその意味を勘違いしたのか、びくりと肩を震わせて、潤んだ瞳でこちらの顔色を伺っている。
先程の戦闘中、狂笑に囲まれながらも眉一つ動かさなかった姿とは似ても似つかないこの怯えよう。一体どちらが本当の西住みほなのだろうか?
「あの、えっと、さっきの、その、生き物はどうなったんでしょうか」
怯えながらも彼女は現状把握に努めようと必死だ。
敬語は使わなくていい、おそらくみほと私は同じくらいの年齢――はい、コールドスリープ中の時間経過なんてノーカウントです。気持ちはまだまだ十代だから!――みたいだし、と伝えてから、私は少し考えを巡らせた。
みほの話から推察するに、あいつらはかなりこの「狩り」に手慣れていたようだ。
おそらく何度も似たような凶行を繰り返していたのだろう。となると少なからず目撃者もいるはずだし、神秘の秘匿に重きを置いているらしいこちらのムーンセルが黙ってはいないだろう。
おそらくだが、今夜日付が変わる頃には、あの怪物のマスター共々監督役に始末されているのではないだろうか?
「……やっぱり、本当に死んじゃうんだ」
みほ?
「私は……私には願いなんてないけど、生きるためには殺さなきゃいけないなんて、こんなの絶対におかしいよ。
なんで人を傷つけなきゃいけないの? どうして人を殺さなきゃいけないの?
きっと、これから会う人達だって、さっきみたいに殺すことをなんとも思わない人しかいないんだ。
そんな人達が望むような、命を潰してまで叶える願いに価値なんてあるわけがない……!」
彼女は大粒の涙を流しながら、口から自分だけを傷付ける刃を吐き出している、それは止め処なく、余りにも痛々しい。
自分たちが手を下さなくともいずれ死ぬ運命だったと慰めたところで、彼女はきっと自分を責め続けるのだろう。
ああ、やっぱりこのマスターは私に似ている。自分が傷つけられることもそうだけど、なにより覚悟のない自分が、自分以外を傷つけることをなによりも心配している。
……でも、だけど一つだけ、訂正しなければならない箇所がある。
「西住みほ。あなたが生きたいと祈るのと同じくらい、あなたが人を殺したくないと思うよりもよっぽど強く、人を殺してでも何かを成し遂げたいと願う人たちを私は何人も見てきた。
彼らには倫理を放棄してでも、良心を押し殺してでも、友人の命を乗り越えてでも、それでも成し遂げたいと願う望みが在った。
それを――誇りがないと、あなたは笑うのか」
初めは覚悟も何もない、遊び半分みたいな戦いだった。
友達を失い、これが本当に戦争なのだとようやく気づいた。
海の底から空を目指すにつれて、私はいろんなものを打ち倒し、踏みにじり、乗り越えてきた。
私が戦った/殺した相手はみんな、それぞれ譲れない信念を胸に抱いていた。
命を賭けた戦いの中で、自分の持っていない何か、岸波白野の知り得ない何か持った人たちを、私はただ生きたいという理由で全部潰してしまった。
――それが、間違いだったとは思わない。彼らの望みと同じくらいに、私の叫びも意味があるものだったはずだ。
だけど、だからこそ、彼らの望みを価値のないモノのように扱わないでほしい。
聖杯戦争なんてカタチじゃなければずっと友達でいられたかもしれない、あの人たちの夢を笑わないでほしい。
みほは押し黙って、自分の言うべき言葉を探している。うん、その姿勢だけで私はもう何も言うことはない。
別に私の考えが絶対的に正しいわけじゃない。他者を犠牲にしてまで叶える願いに価値がないという思想も、それはまたきっと別の正解なのだろう。
ただ、さっきのような殺戮を楽しんでいるやつとは別に、覚悟を持って戦う人もいると言いたかっただけなのだ。
「……うん、本当にありがとう。沙織さ……じゃなかった白野さん!」
七回目のお辞儀。沙織さんって誰だ? と一瞬思ったけどそれはまあ、追求しないでおこう。
何しろここまで来て初めて見たみほの笑顔だ。無粋な茶々入れでこれを曇らせるのはあまりにも野暮というもの。
最弱のマスターとサーヴァントの旅路の、せめて門出くらいは笑顔で迎えよう。
――ねえ、アーチャー。あなたと同じ霊基(カラダ)になって、ようやくあの時のあなたの気持ちが少しわかった気がする。
きっと今の私のように、大きな不安と、少しばかりの期待で胸が張り裂けそうだったのだろう。
……大丈夫、あなたのように、きっと私も、上手く彼女を導いてみせるから。
【マスター】西住みほ
【出典】ガールズアンドパンツァー
【人物背景】
大洗女子学園に通う女子高生であり戦車道の名門「西住流」の娘。人が傷つくのを見るのが苦手な、至って普通な優しい女の子。
元は黒森峰女学園という戦車道の名門校で副隊長を努めていたが、自身の行動が全国大会での敗因となり戦車道を引退。翌年には大洗女子学園に逃げるように転校した。
戦車道のない高校に転校したことで、もう戦車に乗らなくて済むことに安堵するみほだったが、ひょんなことから復活した大洗女子学園戦車道に半ば強制的に加入。隊長としてほぼ全員が素人の部隊を指揮することになる。
【能力・技能】
普段は至って普通の女子高生だが、試合(戦闘)時には人が変わったように冷静になり、大抵のことには動じなくなる。
どんな時でも勝利を諦めない精神力が取り柄。
また、幼いころからの修練によって培われた戦術眼と天性の直感はまさしく西住流の名に恥じない物であり、特に多数対多数の大規模な戦闘においてその指揮能力を遺憾なく発揮する。
【マスターとしての願い】
元の世界に帰る。
【方針】
他者を傷つけること無く聖杯戦争を生き残る。
当面の目的は同盟を組んでくれそうな相手を探すこと。
【出典】fate/extra(CCC)
【CLASS】キャスター
【真名】岸波白野
【属性】中立・善
【ステータス】筋力E 耐久EX 敏捷E 魔力D 幸運D宝具EX
【クラス別スキル】
陣地作成:D 魔術師として自らに有利な陣地を作り上げる。
岸波白野の場合、元から存在する屋内の敷地をマイルームと呼ばれる空間に作り変えることが可能。
元がどんなに荒れ果てた場所であろうともゆったりくつろげるようになる素敵なスキル。もちろん戦闘では役に立たない。
道具作成:E 魔力を帯びた器具を作成できる。
岸波白野の場合、観葉植物や写真立てなど、マイルームに飾るための小物のみ作成可能。
殺伐とした聖杯戦争に癒しをもたらすニクいやつ。もちろん戦闘では役に立たない。
【保有スキル】
専科百般:EX ここではないどこか、今ではないいつかに行われた月の聖杯戦争。その優勝者としての権能。
平行世界におけるムーンセルのデータベースを参照することができるほか、自分の所持していないスキルでもランクC以上の習熟度で使用できる。
ただし一度に使用できるスキルは一つだけであり、英霊固有のスキル、もしくは怪力などの直接肉体に作用するスキルは使用できない。
また、宝具発動中にはこのスキルの使用自体が不可能となる。
ムーンセルは平行世界も含めた全ての事象、人物を記録しているため、データ閲覧の権能は即ち真名看破も内包する筈だが、こちらの世界のムーンセルの妨害により、
聖杯戦争優勝の段階で岸波白野が存在を知り得ないサーヴァントの情報は閲覧不可となっている。
「全てを知っている」のではなく、あくまでも「多くを知ることができる」状態。
今はどの知識が必要か、また、得た知識をどのように活用するかは岸波白野が選択すべき領分である。
カリスマ:EX サーヴァントの心を掴む才能、あるいはイケ魂A+++
ある世界では薔薇の暴君を骨抜きにし、ある世界では抑止力の父性を引き出し、またある世界では日本三大化生が一角をみこっと一目惚れさせた。
稀代のサーヴァントたらし、狙った獲物は逃さない、百発百中のジゴロ。
悪属性以外のサーヴァントに対して幸運判定を行い、成功した場合は岸波白野とそのマスターに対しての戦闘行動を一度だけ躊躇させる。
マスターが行動を促すか、ある程度の意志力さえあればサーヴァントは即座に行動を再開できるが、初撃の行動を完了するまでの間対象のステータスは1ランク低下する。
理性の無いバーサーカーや、善人であろうとも強い決意を抱いた者に対しては効果がない。
また、話術判定や交渉においても有利な補正が付加されるが、この効果はマスターが相手の場合でも適用される。
沈着冷静:A 永劫の責め苦に耐えた者、終わりの見えぬ放浪を終えた者にのみ与えられるスキル。
ランクB+以下の精神に干渉する宝具、スキルを全て無効化し、ランクA以上の効果でも大幅に影響を軽減させることができる。
仄暗い闇の中。心身を押し潰すような圧力に耐えながら、仲間の諦観を耳にしながら、しかし彼女は前に進むことを決して辞めなかった。
今はまだ終わりではない、ここはまだ結末ではない。心の奥底から湧き上がる、意志の力だけが彼女を動かした。
魔術:C 魔術を一通り習得したことを示すスキル。
岸波白野の場合、神秘が枯渇した世界の電子魔術、コードキャストを操る。
ステータスを一時的に上昇させるgain_str, gain_con, gain_mgi、傷を癒すhealなどの基礎的なコードキャストが使用可能。
不屈の意志:EX あらゆる苦痛、絶望、状況にも絶対に屈しないという極めて強固な意志
肉体的、精神的なダメージに耐性を持つ。ただし、幻影のように他者を誘導させるような攻撃には耐性を保たない。
一例を挙げると「落とし穴に嵌まる」ことへのダメージには耐性があるが、「幻影で落とし穴を地面に見せかける」ということには耐性がついていない。
【宝具】
『超越すべき夢幻の運命(fate/extra)』
月の聖杯戦争優勝者としての能力。
彼女が越えてきたあらゆる命、彼女が摘み取ったあらゆる願い、彼女が刈り取ったあらゆる可能性を、ムーンセルは彼女を媒体として発現させる。
ムーンセルの権能を用いて自身にサーヴァントの霊基データをダウンロードし、霊基を無理やりそのサーヴァントのものに変化させる。
彼女のサーヴァントであった無銘のアーチャー、または平行世界で契約を結んだセイバーのネロ・クラウディウス、キャスター玉藻の前の武装、ステータス、スキル、戦闘技術を再現できる。
また、専科百般以外の岸波白野のスキルも変身後に受け継ぐことができる。
しかし平行世界へデータを送信する都合上、データの劣化は免れないため、全ステータスとスキルのランクは1ランク低下、宝具の真名開放も不可能となる。
ただし、岸波白野が自ら契約したサーヴァントである無銘のアーチャーに変化する際のみ、劣化したデータを岸波白野自身の記憶(おもいで)で補うことができ、この能力低下は発生しない。
『無名・固有結界』
岸波白野とアーチャーの絆の象徴。完成された「正義の味方」の心象風景に影響を与えられるほど、無銘という男が彼女に心を許した証。
厳密には宝具ではなく、魔術として完成された無限の剣製に岸波白野が入り込んでいるだけであり、彼女自身が固有結界という魔術を行使できるわけではない。
固有結界内では投影魔術の精度が飛躍的に上昇し、ランクこそ落ちるがエクスカリバーなど神造兵器の投影すら可能となる。
一応、アーチャー変身時以外でもこの固有結界は使用できるが、そもそもアーチャーの姿以外では投影魔術の行使自体が不可能であるため無駄に魔力を消費するだけで終わる。
【weapon】
宝具使用時には姿に応じた様々な戦法を使用する反面、本来の姿では武器を持って戦うことはまず無い。
一応攻撃用のコードキャストも習得しているが、せいぜい使い魔の撃退に使用する程度で、英霊相手にはほとんど効果がないため使用する場面はまず見られない。
肉体的にも生身の人間と変わりなく、常時コードキャストを使用することでなんとか身体能力がサーヴァント基準でのEに到達するかといったところ。
ただし、精神的な耐久力だけは並のサーヴァントを凌駕する。聖杯戦争で培った精神力が彼女の唯一の、または最強の武器であると言える
【サーヴァントとしての願い】
みほの成長を導き、彼女が元の世界に帰る手助けをする。
【人物背景】
別の世界で行われた月の聖杯戦争の優勝者。
元は一般NPCがなんらかの要因から自我を獲得しただけの存在であり、元となった人物は世界の何処かで病による昏睡状態に陥っている。
トワイスを打ち破りムーンセル中枢に侵入した後、彼女の存在が消滅するその刹那の瞬間にムーンセルから取引を持ちかけられ、これを受諾。
万能の観測機は岸波白野に英霊としての器を与え、スノーフィールドへ送り出した。
ムーンセルの要求は事象選定の障害となる別世界のムーンセルの排除。
報酬は今回の聖杯戦争で失われたすべての命の救済、及び次回聖杯戦争のシステム改定。
元から存在しない、失われてすらいない「彼女」自身はどうあっても消滅し、岸波白野の元になった人間だけが残る定めである。
【方針】
聖杯戦争に優勝するため、善良そうなマスターかサーヴァントを見つけて同盟を持ちかける。
トーナメント制ではない、つまり必ずしも殺し合わなければいけないわけでないこの聖杯戦争の形式に少し安堵している。