想いを胸に、誇りにかけて
豪奢な調度品が、部屋の主の優れた美的感覚に則り配列されている広い部屋。
その中に置かれたテーブルを挟んで座るのは、この部屋の中で最も美しい存在だと断言できる二人の美少女。
金の髪に翠がかかった碧眼の美少女と、銀の髪に紫水晶(アメジスト)の色の瞳の美少女は、ティーセットを配したテーブルを間に互いの顔を瞳に写していた。
「伺いますが、貴女はこの件にどう臨むおつもりですの」
最初に口を開いたのは銀髪の少女。嘘や誤魔化しを決して許さぬという意思を込めて、真っ直ぐに金髪の少女を見つめる。
外見上は自分とそう変わらぬ年の頃に見える銀髪の少女の目線に、何故か自分よりも遥かに永い時を生きたかの様な凄みを感じ、僅かに気圧されるも、怒りも露わに告げる。
「イキナリ人を拉致しておいて殺しあえだなんて、死ぬほど気に入らなくてよ。相応の報いを受けさせなければ気が済みませんわ」
銀髪の少女の眼差しが鋭さを増した。男でも目を逸らしそうな視線を向けて、金髪の少女に再度の問い。
「それでは、聖杯を破壊すると?」
「ウィ(ええ)」
間髪入れずに、眦を決して宣言する金髪の少女に、銀髪の少女は口元を吊り上げた。
その右手が霞むと、少女の白く美しい繊手には酷く不釣り合いな無骨な拳銃が握られていた。
驚愕に目を見開く金髪の少女の眉間に、銃口は不動の直線を引いている。
「超越存在である英霊が、只人の使い魔などに身をやつす訳をご存知かしら」
怒気も殺気も見せぬ問いかけ、然し答えを誤れば確実に死を与える。そんな確信を抱かせる問いかけ。
「生前に果たせなかった願いを果たし、残した未練を晴らす為……」
眼前に形として突きつけられた、明確な『死』を見ても、金髪の少女は怯まない。
「私が乗り気だったら、貴女は此処で生き残る為の命綱を、自ら手放すに─────どころか自らの死を望むに等しい発言ですわね」
艶やかに言ってのける銀髪の少女に、金髪の少女は怒りの籠った視線を向ける。
「けれどその率直さは気に入りましてよ。私は貴女のサーヴァントとして力を貸しましょう」
いきなりの宣言に、金髪の少女─────マスターはキョトンとした顔になった。
「アナタには…叶えたい願いは有りませんの?」
「そうですわね……無い、と言えば…嘘になりますわ」
銀髪のサーヴァントの願いが有るならば其れは唯一つ。『人としての生』。
少女が超越の存在となるに至った始まりの一歩。その時に力を得る代償として受けた呪いにより奪われた“人としての限り有る生”。
願いとしては至極真っ当なものだろうとは思う。決して願う事は無いが。
“人としての限り有る生”を失い、老いる事も死ぬことも無いまま、妖の様な存在として妖達に恐れられ続けた時間。
親しい人間全てを見送り、その子や孫までも見送って尚、不変のまま在り続けた自分。
妖と妖に関わる者達に、畏怖と共にその名を語られながら在り続けた時間。
悔いが無かったわけでもない。終わりたいと思ったことも有る。
だが、それでも、奇跡を願って自分の得たものを無くしてしまおうとは思わない。
力を得なければ、呪いを受けなければ、少女は人としての生どころか、人として過ごす時間すら得られなかったのだから。
古の世より黄泉帰った鬼と戦うことすら出来ぬ。古の世より黄泉帰った鬼に殺されて死んで終わる。そんな結末は人でなくなって永劫を過ごすよりも嫌だった。
それに、人で無くなる以前から人としては外れていた自分を受け入れてくれた者達もいた。
身も心も人で無くなった自分の思いを受け止めてくれた少年も居た。
『人としての生』を失ったが、『人としての時間』を満足しすぎるほどに少女は過ごしたのだ。
そこには何の未練も無い。想いを寄せた少年が大切にした日常を護れた力を得た事に悔いなど抱き様が無い。
それに─────。
「私は私……ですわ」
妖となって砕けそうな己を引き止めてくれた少年の言葉を思い出す。彼は『万能の願望機』なんてモノを餌にした殺し合いなんて絶対に許さない。
ならば己もそうするだけ、彼に胸を張って、“私は道を外さずに生きている”と言い切る為に。
遠くを見て呟く己がサーヴァントに、金髪の少女は訝しげな目線を向ける。
「願いなどというものは、自分の力で叶えるものでしてよ……それで、マスターに願い事は有りませんの?」
「フン!あたくしの願いはあたくしの力で叶えてみせますわ!それに……」
─────願いを餌に殺し合わせるなんて、あの人が知ったら絶対に止めようとするでしょうし。
そう、少女が想いを寄せる少年は、己の願いや信念の為に戦う事を否定はしないだろうが、その為に他者を踏み躙る事は許容するまい。
ましてや餌をぶら下げて殺し合わせるなどということには、ハッキリと否を唱えるだろう。
自分だってそんな事は気に入らない。だから反旗を翻す。少年への想いと己への自負に賭けて。
「さっきも言いましたわ!イキナリ人を拉致しておいて殺しあえだなんて、死ぬほど気に入らなくてよ。相応の報いを受けさせなければ気が済みませんわ」
キャスターは大きく被りを振って、答えに満足した事を示した
「では短い間ですが、手を携えて戦う者同士、ここで名乗っておきましょう」
言って、サーヴァントは胸を反らす。豊かな双丘が勢い良く揺れる。
「私の名は神宮寺くえす。キャスタークラスのサーヴァントとしてアナタと共に戦う者ですわ。私に万事任せておけば何も心配はいりませんわ」
マスターもまた胸を反らす。キャスターのそれより大きな年齢不相応なものが派手に揺れる。
「あたくしは亀鶴城メアリ。短い間ですが宜しくオネガイしますね。あたくしがいれば何も問題有りませんわ。マスターをサッサと撃破して差し上げましてよ」
そして二人は反っくり返って笑い出す。
ともに気位が高く、己が優れていると自負して止まない美少女二人は、共に同じ目的の為に魔戦に臨む。
自負にかけて勝利を目指し、想いにかけて聖杯戦争の打破を目指す、二人の行く手に待ち受けるものとは─────。
【クラス】
キャスター
【真名】
神宮寺くえす@おまもりひまり
【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:C 幸運:C 魔力:A++ 宝具:EX
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
陣地作成:A+
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
街一つを異界とすることも可能。
道具作成:D
魔術的な道具を作成する技能。
【保有スキル】
対魔性:A
魔に属するものと戦い、撃ち倒し続けた。
魔族、魔性といったものと戦う際、戦闘判定が大幅に有利になる。
加虐体質:C
戦闘において、自己の攻撃性にプラス補正がかかるスキル。
プラススキルのように思われがちだが、キャスターは戦闘が長引けば長引くほど戦いを喜び、冷静さを欠いていく。
千里眼:B
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、透視を可能とする。
さらに高いランクでは、未来視さえ可能とする。
無窮の叡智:A
キャスターが生前読み解いた『真実の書』より獲得した知識。
Aランクの魔術。高速神言。A+ランクの蔵知の司書の効果を発揮する。
また、 英雄が独自に所有するものを除いた大抵のスキルを、C~Bランクの習熟度で発揮可能。
このスキルを得る為には、耐える事など到底出来ぬ真実の書の膨大な情報量を受け止め、己が物とすることが必要な為、最高ランクの精神耐性の効果を常時発揮する。
魔力放出:A+
武器ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
いわば魔力によるジェット噴射。
……の筈なのだが、キャスターのは文字通り魔力を熱線として射出するだけである。
魔力の質・量ともに高い水準に有るキャスターの魔力放出は魔術を用いずとも絶大な威力を叩き出す
【宝具】
第二の真実の書(神宮寺くえす)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:ー
キャスターの存在そのもの。
キャスター生前読み解いた『真実の書』に秘められた呪い。
並の魔術師ならその片鱗に触れただけで絶命する膨大な情報量を持つ魔書を記した狂った賢者が、己の存在した証を永遠に残す為に、書に施した呪いそのもの。
膨大な情報量が齎す負荷に耐え、書を読み解く者は、己と同じ領域に立つ己の存在証明となる第二の己そのもの。
書を読み解く事が出来る、賢者と同じ領域に立つ者を、第二の『真実の書』として永遠に保全する為に、書を読み解いた者を不老不死とする。
この呪いによりキャスターは、限界に魔力を必要としない。
例え総身を消滅させられても、マスターから膨大な魔力を徴収して復活する。魔力が無かった場合は消滅する。
魔剣再現(ソード・ゴースト・リプロダクション)
ランク:B~A++ 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人
古の魔剣を魔力を用いて再現する。
ムーンセルが観測した再現魔剣は二つ。
閃雷魔剣(カラドボルグ)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:2~3 最大補足:1人
アルスターの英雄フェルグス・マクローイの剣を再現する。
オリジナルの様に剣身が伸びることは無いが、強度自体はオリジナルと遜色無い。
害為す裏切りの魔杖(レーヴァテイン)
ランク:A++ 種別:対城宝具 レンジ:1~99 最大補足:1000人
北欧神話に語られる炎の魔剣を再現する。膨大な熱量を帯びた閃光は呑み込んだ物総てを焼き尽くす。
【weapon】
スチェッキン:
ロシア製の大型自動拳銃。装弾数20発。少女の手には余るサイズだが、キャスターは簡単に使いこなす。
弾丸は魔力で幾らでも精製可能。あらかじめ術式を施した弾を用意しておくことも出来る。
スタンガン:
改造されていて、常人なら一撃で気絶する。
【人物背景】
鬼斬り役十二家の末席神宮寺家の跡取り娘。
ロンドンに留学して魔術を学んだ際、無窮の叡智と力を持つ『真実の書』を読み解き、強大な力を得る。
帰国後、復活した酒呑童子と戦い相討ちとなる。その時に『真実の書』の呪いが発動し、以後は不老不死の存在として永い時を生きる事となる。
許嫁という関係を越えて思いを寄せた少年との幸福な時間を得ることができたのは幸いだった。
【方針】
聖杯戦争の打破。
【聖杯にかける願い】
無い。
【マスター】
亀鶴城メアリ@武装少女マキャヴェリズム
【能力・技能】
フェンシングの達者で、しなるレイピアを用いて戦う。刺突主体のスタイルで閉所においては無類の強さを誇る。
【weapon】
レイピア
【ロール】
女子高生
【人物背景】
剣の遣い手で構成される愛知共生学園“天下五剣”の一人。五剣の中で最もスタイルが良い。フランス出身の日仏ハーフ。
フェンシングの達者で、閉所では無類の強さを誇る。
五剣一のぶりっ子と呼ばれているが、その実態は逆さ吊りにした対象者を回しながら竹棒で「ぶーりぶり!」と掛け声をかけつつ殴打する拷問を好むことから着いた呼び名。
寮の地下に専用の拷問部屋を有している。
日本語が不自由で常に辞書を持ち歩く。興奮すると日本語が飛ぶ。
フェンシングの
ルールに忠実で、戦闘時には常に左手を空けて辞書を持っているが、それでも充分に強い。
【令呪の形・位置】
左手の甲に三角。
【聖杯にかける願い】
無い。
【方針】
聖杯戦争の打破
【参戦時期】
眠目さとり戦の後。ウーチョカのウィッグを探している時に『白紙のトランプ』を拾った。
【運用】
一ぷキャスターは近接戦闘も下手なセイバー並みに熟せる。油断して近寄って来た相手をカモることが出来るだろう。
マスターに魔力が残っている限り死ぬことは無いので強気に攻めていける。
しかしマスターは魔力を持っていないので、慢心は禁物。
最終更新:2017年02月04日 20:12