チェルシー&キャスター◆srQ6oTQXS2



 ながい、ながいユメをみていたきがします。
 それはとてもわるいユメ。
 かなしい、くらいユメでした。

 ユメのなかのおかあさんはとてもからだがよわくて、わたしはずっとつきっきりでかんびょうしていました。
 がっこうにはいきたいけれど、おかあさんがだいすきなのでずっとそばにいます。
 わたしはそれでちゃんとしあわせなのに、おかあさんはいつもかなしそうな、さみしそうなかお。
 わたしがおかゆをもっていてあげると、おかあさんはベッドのなかでいつも、きえいりそうなこえでつぶやくのです。

 ごめんね、ごめんね。
 おかあさんのせいで、ごめんね。
 なんであやまるんだろうと、わたしはふしぎでした。
 わからないけど、おかあさんがわたしのせいでかなしいおもいをしていることだけはわかったので、わたしもかなしくなりました。

 それでもわたしはちゃんとしあわせでした。
 ともだちがいなくても、あそびにでたりできなくても、まいにちとてもしあわせでした。
 じゅうじつ……? だっけ。
 ことばのいみがあっているかはわからないけど、とにかくそんなかんじでした。

 おかあさんがいて、わたしがいて。
 たあいのないおはなしなんかしていると、あっというまにいちにちがすぎていきます。

 おかあさんはくすりがないとつらくなってしまうので、いつもおばあさんがつくってくれたくすりをのんでいます。
 おばあさんはもりにすんでいて、くすりがきれたときはおばあさんのいえまでとりにいきます。
 そのひも、いつものようにくすりをとりにいってきてほしい、といわれました。

 ひとりきりの、ちょっとしたぼうけん。もう、なれたものです。
 でもそのひ、わたしはおかあさんとのやくそくをやぶってしまいました。
 つんではいけないといわれているおはなを、ちょっとだけ、つんでしまいました。

 それが、いけませんでした。

 おばあさんをよろこばせたくて、おはなをつんだ。
 やくそくを、やぶってしまった。
 かみさまはそんなわたしをゆるしてくれませんでした。
 わたしはただしずかにおかあさんとくらしていられればよかったのに、それでぜんぶおかしくなってしまいました。

 オオカミは、おはなをつむわたしにやさしくこえをかけました。
 わたしはうたがいもせずに、オオカミとてをつないで、おばあさんのところまでいって。
 おばあさんのいえにはいって、すこしして、おおきな……とてもおおきなおとがして。

 みにいったときには、おばあさんはたべられていました。
 くすりをたくさんふくろにつめながら、オオカミがおばあさんをたべていました。
 わたしにきづいたオオカミは、ゆっくりと、わたしのほうへあるいてきます。
 こわくて、おそろしくて、ふあんで、ゆるせなくて――むがむちゅうで。

 わたしは。
 まっかに、なりました。
 オオカミをまっかにして、まっかになりました。

 ……とても。
 とても、いやなユメでした。
 めがさめて、おかあさんがしんぱいそうなかおでそばにいてくれたとき、おもわずなきだしてしまいました。

 わるいユメのことなんてわすれなさいと、おかあさんはそういってくれました。
 わたしもそうすることにしました。
 ユメはユメです。げんじつでは、ありません。
 でもわたしはだめなこだから、そのユメのことをどうしても、わすれることができませんでした。


 そしてとあるひ、きがつきました。


 わたしとおかあさんのおうちに、オオカミが、あたりまえのようにかえってきました。
 あのユメでてをつないだときのようなやさしいえがおで、ただいまって、いいました。

 そのとき。
 わたしは、ぜんぶおもいだしちゃった。
 ちがうって。
 こっちが、ユメで。
 あっちがげんじつなんだって、きづいてしまった。

 わるいユメからは、すぐにさめなくちゃ。

 そうおもってわたしは、わたしは。
 ちかくにあった、おおきなおのを。
 ユメのなかでオオカミをまっかにしたそれを。
 えがおでちかづいてきたオオカミのあたまのうえから、
 うえから、うえから、あたまのうえから、オオカミを、お×うさんを、めがけて…………


 そのあとのことは、よくおぼえていません。


 わたしはおかあさんと、いっしょにいられなくなりました。
 ユメのそとでやさしくしてくれた先生も、いまのおうちにはいません。
 レティちゃんも、ジョシュアくんも、ステラちゃんも、アレンくんも。だれもいません。
 まだ、ユメはさめません。つめたい、くらい、いやなユメはおわりません。


 きょうも、アヒルさんだけがわたしのそばにいてくれます。
 わたしをげんきづけようと、いろんなたのしいことをしてくれます。
 どうかおしえてください、アヒルさん。
 わたしはもう、おかあさんのところにはかえれないのかな。
 先生やみんなのところにかえることは、できないのかな。


 ……ひとごろしだから、だめなのかな。



  ◇  ◇


 ――スノーフィールド郊外の一軒家で、とある悲惨な事件が起きた。

 仕事から戻った父親の頭を、娘が突然斧で叩き割った。
 父親は即死。返り血を浴びた少女は、まるで"赤ずきん"のように、赤く、赤く染め上げられていたという。

 少女はあまりにも幼かった。
 法の下に罪を問うことが出来ないほど幼く、そして混乱していた。
 少女は児童養護施設に送致され、暫くは厳重な監視がついていたが、あまりにも大人しいためにそれも日に日に緩んでいった。
 心に大きな傷を負っている。何らかのトラウマがフラッシュバックして、突発的な凶行に及んでしまった可能性がある。
 彼女を問診した精神科医はそう言ったが、しかし誰も、彼女のトラウマを突き止めることは出来なかった。

 親殺しの少女の名前を、チェルシーといった。
 チェルシーのポケットには今も、一枚の白紙のトランプが入っている。
 悪夢の世界へ彼女を導いた切符は、相変わらず真っ白なままで、そこにあり続けていた。



  ◇  ◇


「ヘヘ、見ろよチェルシー! 僕はこんなことも出来るんだぜ!!」

 チェルシーへの監視は、事件当初に比べれば大分緩んでいる。
 それでも万一があってはいけないと考え、施設は彼女に個室を与えていた。
 チェルシーはほとんど一日中、与えられた部屋の中でじっとしている。
 クマのぬいぐるみを抱き締めて、誰かと遊ぶこともなく、一人で過ごしている。

 にも関わらず、耳を澄ますと時々クスクスという笑い声や、少年の声が聞こえてくることを知る者はいない。
 他の子供達の間では怪談めいた噂として語られていたが、大人達は子供の妄想と一笑に伏してしまっていた。
 だが現にこうして、部屋の中には彼女のものではない声が響いている。
 声の主は――奇妙な姿の少年だった。アヒルのような嘴のある、恐らくチェルシーより更に幼いだろう少年。

「次はそうだなあ……コポルク、って唱えてみろよ」

 呪文のような言葉。
 言われるがままに、チェルシーはそれを唱える。
 そんな彼女の手には、黄色く分厚い一冊の本が握られていた。
 チェルシーの声が呪文をなぞると同時に、それはかあっと発光する。そして――

「! ……あ、アヒルさん!?」

 嘴の少年……"アヒルさん"の姿が、急にチェルシーの目の前から消えた。
 どこに行ってしまったんだろうと慌てるチェルシーの下から、「へへ、僕は此処だぜ!」と声がする。
 視線を落としたチェルシーは、目を見張って驚いた。
 なんとそこでは他でもない"アヒルさん"が、親指ほどのサイズにまで縮んで手を振っていたからである。
 チェルシーの家にもたくさんの絵本や童話本はあった。 
 魔法使いや優しい小人の存在に憧れたことはあるし、今でも"居たらいいなあ"くらいには思っている。
 それでもそういう存在はユメの中にしか居らず、現実には存在しないのだと、チェルシーは当たり前の常識として承知していた。

 だが、此処は現実の世界ではない。
 チェルシーが迷い込んでしまった、悪いユメのセカイ。
 だから、こういうこともあり得るのだろう。
 何にでも化け、体を縮めて小人になれる――そんな存在が居たって、ユメなんだから何もおかしくはない。

「アヒルさんはすごいね……! まほうつかいみたい」
「そりゃそうさ。なんたって僕はすげー大変な戦いで最後の方まで勝ち残った超スゲー魔物なんだからね」
「まもの……? ……それって、わるいひと?」
「ん~、魔物にもいろんなやつが居るんだ」  

 チェルシーの読んだ本の中では、魔物という生物は大体悪者として扱われていた。
 実際、人間の書物で彼らを凄い善人と褒め称えた作品はそうないだろう。
 だからつい、そんな疑問を口にしてしまう。
 気を悪くしてしまうかなと言ってから後悔したが、"アヒルさん"は少し考えてから、どこか懐かしげに語り始めた。

「悪いやつも居たよ。他人を苦しめて喜んだり、力を使って散々悪さをしたり。
 中には魔法で石にされた魔物を脅して怖がらせて、自分の言うことを無理矢理聞かせてたやつも居た」

「こ……こわいんだね……」
「でも、良いやつもたくさん居るんだぜ? そうだなあ、例えば――」

 "アヒルさん"がチェルシーに話してくれたのは、彼の友達の話だった。
 チェルシーは、"アヒルさん"が昔大変な戦いに身を投じていたことを知っている。
 臆病で人付き合いの苦手な彼女は言うまでもなく喧嘩が嫌いだが、"アヒルさん"の経験したという戦いは、ただ辛くて悲しいものではなかったらしい。
 彼が直接そう言ったわけではない。それでも、表情を見ればそのことが伝わってきた。
 彼はとても嬉しそうに、過去の戦いのことを話す。アヒル嘴を笑みの形に緩ませて、どこか遠いところを見つめながら。

 "アヒルさん"は結局、その戦いで勝つことは出来なかった。
 勝って"魔界の王様"になることは出来ず、志半ばで魔界に帰る羽目になってしまった。
 王様になったのは、彼の友達だったという。
 強いのは確かなのにどこか間抜けで、幼く、お人好し。
 やさしい王様を目指すと言って憚らず、何度も血だらけになりながら戦って、戦って、戦って――
 ……結局その友達は、自分の願いを叶えた。やさしい王様になって、やさしい魔界を作り上げた。

「……とにかく、そんなやつも居るんだ。人間じゃないからって、皆が皆悪いやつってわけじゃない。それともチェルシーは、僕のことを悪いやつだって思うのかい?」
「! そ、そんなことないよ……! アヒルさんがきてくれてから、わたしはまいにちたのしいから……」

 嘘偽りのない、チェルシーの本音だった。
 事件があって塞ぎ込んでいたチェルシーの前に、"アヒルさん"は突然現れた。
 彼はチェルシーに自分の持っていた本を渡し、そこに書いてある言葉を読み上げさせた。
 すると、どうだ。彼の姿が目まぐるしく変わる。時には物に、時には人に。
 まるでサーカスでも見ているような驚きと愉快さに、気付けばチェルシーは笑顔になっていた。
 この悪いユメの中で、彼だけがチェルシーの味方であり、友達だった。

「――なあ、チェルシー」

 顔を赤くして俯くチェルシーに、"アヒルさん"が突然改まって口を開く。
 その声色はいつになく真面目なもの。彼らしくもない、真剣なものだ。

「チェルシーはさ……何か叶えたい"願いごと"ってあるかい?」
「ねがい、ごと……?」
「何でもいいんだぜ。お金持ちになりたいだとか、それこそお姫様になりたいだとか。一個くらいあるだろ?」

 問われたチェルシーは考える。
 願いごと。叶えたい、夢。
 別にお金が欲しいと思ったことはない。
 お姫様に憧れたことはあるけれど、なりたいってわけじゃない。
 今とは違う自分になれるのなら、"アヒルさん"のような魔法使いになりたい……でも。
 一つだけ願いが叶うというのであれば、チェルシーの答えは一つだった。

「………かえりたい」

 此処は、チェルシーにとっての現実じゃない。

「そうしたら、アヒルさんとはおわかれになっちゃう。でも……ごめんなさい。それでも、わたしはここにいたくないの」

 現実の世界にも、嫌なこと、思い出したくないこと、たくさんあった。
 でもチェルシーの大好きなお母さんや、気遣ってくれた先生、友達なんかは全員"あっち"にしかいない。
 このスノーフィールドにもしも彼らが居たとしても、それはユメの世界が作り出した偽物だ。
 そんな世界で、セカイでずっと暮らすなんて嫌だし、間違っているとチェルシーは思う。
 だから、帰りたい。この悪夢(アリス・メア)を抜けて、あの現実に。
 少女の切なる声を聞いた"アヒルさん"は、静かに頷いた。
 そしてまた、いつも通りの顔で笑うのだ。
 その顔だけが、一人きりのチェルシーを安心させてくれる。笑わせてくれる。


「じゃあ、僕が連れてってやるよ」


 彼はチェルシーにとってのヒーローだった。
 見た目はかっこよくはないし、むしろかわいい方。
 お調子者ですぐ得意になるけれど、彼もまた心のやさしい魔物だ。

「帰ろうぜ、こんなトコはさっさと抜けて。それまでこの僕が、チェルシーをちゃんと守ってあげる」
「アヒルさん……」
「だってそれがチェルシーの願いごとなんだろ? だったら叶えなくちゃ。それが今の僕のやるべきことなんだから」

 "アヒルさん"は、ユメの世界に迷い込んだアリスを導く案内人ではない。
 サーヴァント・キャスター。魔術師のクラスをあてがわれた、英霊の座より来たる者。
 それが彼。願い抱く旅人にとって彼らサーヴァントは兵器であり、道具であり、望むなら友達にもなり得る存在だ。
 臆病な赤ずきんは、友達であることを選んだ。キャスターもそれを受け入れた。だからその願いはちゃんと叶える。

「チェルシー。このセカイは、楽しいことより辛いことの方が多いんだ。
 ただ帰るって言っても、そこまでの間に絶対戦わなきゃいけない場面がある。ケンカするよりもっと怖い、戦いが」
「……っ」
「チェルシーは弱虫だからきっと耐えられなくなって、泣くこともあると思う。
 でも、諦めることだけは絶対にしちゃダメだ。諦めたら、もう前に進めなくなっちゃうから」

 彼の言う通り、チェルシーは弱虫だ。
 体も心も、決して強くはない。
 激しい戦い――聖杯戦争の中で、何度も泣いて、震えて、弱音も嫌ってほど吐くだろう。
 それでも諦めるなと、彼は言う。それはチェルシーにとって、とても難しいことだった。

「でも……わたしに、できるかな。わたし、アヒルさんみたいにつよくないよ。
 さいごまであきらめないなんてこと、わたしに――こんなわたしに、できるのかな」
「簡単さ。歌を歌えばいいんだ」

 絞り出すようなチェルシーの吐露に、"アヒルさん"……キャスターは胸を張ってそう言った。誇らしげだった。

「うた……?」
「そう、歌。痛くて、苦しくて、諦めそうな時に歌うんだ」
「うたえば、あきらめないでいられるの?」
「もちろん。これはね、僕の大好きなヒーローの歌なんだぜ」

 キャスターの言うヒーローは、無敵の超人などではない。
 普通の人間だ。ただ人より少し打たれ強いだけの、人間。
 それでもキャスターは、英霊の座に祀り上げられた今でも、彼のことを無敵で最強のヒーローだと信じている。
 困っている時に必ず助けに来てくれる彼は、このセカイ――スノーフィールドにはいない。

327: チェルシー&キャスター ◆srQ6oTQXS2 :2017/01/22(日) 17:38:00 ID:UWRimRNI0

「手をこうやって腰に当てて、もう片方の手をこう振り上げながら歌うんだ。最高にカッコイイヒーローの特別な歌なんだから、よ~く覚えとくんだぜ」

 彼が居なかったなら、キャスターはきっと、英霊の座に登録されるような"強い魔物"になることはなかっただろう。
 情けなく、無様に、何も残せずに敗北して魔界に送り返されていたのがオチだ。彼と出会えたから、そうはならなかった。
 泣いている時は前に立ってくれる。手を引いてくれる。
 道を踏み外した時は体を張って止めてくれる。父親のように強い瞳で、キャスターのことを見据えながら。
 これは、そんなヒーローの歌。間抜けでも、阿呆らしくても。どんな宝具よりも力強くキャスターを支えてくれる勇気の歌。

「鉄のフォルゴレ~♪ 無敵フォルゴレ~♪」

 歌詞に深い意味なんてない。ただ、とある人物を礼賛しているだけの歌。
 チェルシーは当然その男のことを知らないし、一瞬ぽかんとした顔さえしてしまった。
 それでも――何故か、その歌は心の奥をぽかぽかとさせてくれる暖かい響きに満ちていて。

「てつの、フォルゴレ……」

 気付けばチェルシーも、キャスターと一緒に口ずさんでいた。
 パルコ・フォルゴレ。それはキャスターがかつて戦いのために訪れた人間界で、一世を風靡していた国際的スターの名。
 そして――キャスターのサーヴァント・キャンチョメと共に魔界の王を決める為の戦いを駆け抜けた戦士の名。


(……見てるかい、フォルゴレ。僕はあれから色々あって、とうとうこんな戦いにまで呼ばれちゃったよ)

 思いを馳せる。
 別れて久しい、遠い世界のパートナーに。
 正直な話、キャンチョメもチェルシーのことを言えた柄ではない。
 サーヴァント同士の殺し合いなんて恐ろしいものに巻き込まれて、内心ではガタガタ震えたい気持ちでいっぱいだ。
 それでも、こんな小さくて弱々しい女の子が帰りたいと願っているのに、それを知ったことかと蹴飛ばすのは男のやることじゃない。
 フォルゴレならば、絶対にそんなことはしない。

(でも、この子と行けるところまで行ってみようと思うんだ。だから……見守っててくれると嬉しいな、フォルゴレ――)

 悪夢から覚める為に、白い道化師は優しい夢を演ずる。――此処に、弱虫同士の冒険譚が幕を開けた。













【クラス】
キャスター

【真名】
キャンチョメ@金色のガッシュ!!

【ステータス】
筋力E 耐久D++ 敏捷D+ 魔力A 幸運B 宝具A++

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
陣地作成:-
 キャスターは魔術師ではない為、このスキルを持たない。

道具作成:-
 キャスターは魔術師ではない為、このスキルを持たない。

【保有スキル】
魔物の子:A
 人間界とは異なる世界、『魔界』で生まれ育った魔物の子供。
 キャスターの場合、口元にアヒルのような嘴が生えている。
 一般に、普通の英霊よりも多くの魔力を保有する。

発想力:C
 柔軟な発想力を発揮し、目の前の物事に対処することが出来る。
 彼はお世辞にも真っ当に強い英霊ではないが、この発想力が自身の術と噛み合った時、予期せぬ力を発揮する。

記憶の中の英雄:A
 遠い日に、遠い世界で出会った英雄(ヒーロー)の記憶。
 それを思い出して力を込めるだけで、キャスター・キャンチョメは痛みを堪えて立ち上がる。
 泣きながら、泥に塗れながら、変テコな踊りに乗せて声を張り上げる。
 そうすればほら、いつかのあの歌が聞こえて――

【宝具】
『黄の魔本』
 ランク:D 種別:対人宝具(マスター/自身) レンジ:- 最大補足:-
 キャスターは魔界の住人キャンチョメとしてではなく、人間界で勇敢に戦った魔物キャンチョメとして召喚されている。
 その為彼が自分の呪文を行使するには、マスターがこの本を持ち、呪文を唱えるという行程が必要となる。
 マスターの裁量で自由に呪文は唱えられるが、無限に打てるわけではなく、魔力ともまた違った『心の力』と呼ばれるエネルギーが切れてしまうと回復しない限り呪文を使うことは出来なくなってしまう。強力な術になればなるほど、この心の力の消耗も大きくなっていく。
 そして何よりの欠点が、この宝具の焼却――破壊はキャスターの消滅に直結する。この消滅はどんな方法でも防げない。


『白の虚構劇場(シン・ポルク)』
 ランク:A++ 種別:対人・対軍宝具 レンジ:1~30 最大補足:300
 キャスターの持つ術は全て『黄の魔本』に搭載されているが、この術のみは個別の宝具として扱われる。
 彼の最大呪文で、作中のとある人物には「魔物同士の戦いにおいて最強の呪文」とすら称された強大な術。
 自由な姿の変形、幻の作成、敵の脳への干渉。これらの要素を組み合わせ、相手と空間の認識を支配する。
 幻による風景の変更、攻撃された錯覚による肉体的ダメージ、異能の消滅に始まり、相手が人間であれば命令を下すことで特定の行動を強制したり、動きを縛ったりすることも可能。幻覚ならばと目を閉じたところで、彼が攻撃したところから脳に情報が送り込まれてしまい、結局は苦痛を感じる羽目になる。
 ただしあくまでも精神攻撃のため、彼が術を解けば多少の怪我と疲労感は残るが、術中ほど大きなダメージは残らない。
 それでも過度な攻撃と苦痛を与え続ければ、傷は消えても精神の崩壊を引き起こす危険性は存在する。
 相手によっては完封すら出来てしまう強力な宝具だが、彼自身を実際に強化する効果はない為、術の効果による撹乱を掻い潜って本体に物理的ダメージを与えられればそれは通ってしまうという弱点も持つ。

 かつて彼はこの力に溺れ、非道な獅子となった。
 それでも、今の彼がまたその姿を象ることはきっとないだろう。
 彼の心に、世界一カッコイイヒーローとの思い出が残っている限り。

【weapon】
 なし

【人物背景】
 魔界の王を選定する百人の魔物の子の戦いに参加させられた内の一人。
 とても臆病なお調子者だが善の心を持っており、戦いの中でめきめきと成長していき、終盤まで勝ち残った。

【サーヴァントとしての願い】
 チェルシーをお母さんのところまで帰してあげる。


【マスター】
 チェルシー@Alice mare

【参加方法】
 部屋にあったトランプのなかに、偶然紛れ込んでいた白紙のトランプに触れた。

【マスターとしての願い】
 かえりたい。

【weapon】
 なし

【能力・技能】
 特筆したものは持たない。

【人物背景】
 臆病で泣き虫な赤ずきん。
 でも、その赤は。
 必ずしも、望んで被った赤じゃない。

【方針】
 たたかいたくない、こわい、でもがんばらないと――







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最終更新:2017年01月22日 23:13