十六人目の少女、五十四枚目の札 ◆lkOcs49yLc






アリスはうさぎを追いかけました。


アリスは穴に落っこちました。


アリスはうさぎを追いかけるために、他の動物達と追いかけっこをはじめました。


さて、アリスはうさぎに寄り添えたのでしょうか。



◆  ◆  ◆



箱の中にはジョーカーが二枚


ゲームで使えるジョーカーは一枚


さて、黒と白、どちらのジョーカーを捨てますか。


◆  ◆  ◆



夜の地下歩道。
其処で一人の青年が、息を切らしてゼェゼェと走っていた。
男は聖杯戦争に乗っかったマスターの一人だった。

(畜生……何で、何でこんな事に……ッ)

あの時、偶然店で拾ったカード。
それが、青年を聖杯戦争に招いた鍵となったのだ。
幸いにも記憶は取り戻し、同時に自身のサーヴァントは中々に強かった。
彼は頼もしい男だった。

だが彼は死んだ。
そして自身は惨めに取り残される―

いや、そんな程度だったら、どんなに幸せなことなのだろうか。
普通の街で、普通に滅びを迎えて取り残される。
そんな程度だったら―

そう考え、青年は地下歩道の出口を目指す。
その出口がもうすぐ其処に有る。
さっさとあの家に帰ろう。
彼処にいるのは、自分の家族だ。
例え偽物であろうと、彼等は―

だが、青年を容易く追手は見逃してはくれなかった。

「ひっ!」

怯える青年の眼の前には、地面から大量に出現した怪物だった。
頭部にはゴキブリのような触覚、されどその色は石膏の様に白い。
その数は、十体。

腰を抜かし、尻もちを突き、後ろを振り返る。
しかし後ろを振り向けば、其処にいるのはまたあの怪物。
顔を真っ青に染めた青年は怯え、絶望する。
怪物は四方八方を囲む。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

白き怪物、アルビローチに喰われ逝く青年の断末魔が、地下歩道上に鳴り響く。
そしてそれを見つめる、黄色の鎧戦士がいた。
鎧戦士はベルトの鍵をもとに戻し、青年の姿を表す。
青年は霊体化し、姿を消した。
地下歩道は、一瞬の間にして再びその静けさを取り戻した。



◆  ◆  ◆


ハードゴア・アリス、鳩田亜子が聖杯戦争の記憶を取り戻して、大凡1日が立つ。
切っ掛けは、あの時拾った、一枚のトランプであった。
カラミティ・メアリによって不意打ちを喰らい、自身はゴミ箱に捨てられてしまった。
恐怖は微塵もなかった。自分は直ぐに復活できるから、と。

だがその時に、海に浮かんでいた一枚のカード。
それが、自らをこの聖杯戦争を招いた切っ掛けであった。

自身のサーヴァントは、今昼間の道路を歩く自分の隣にいる青年。
クラスはライダーで、とても心優しい青年だった。
歩く所歩く所で困っている人を、常にライダーは見逃さず、助けていた。
今回出会ったサーヴァントも、魂食いをしていた所を止めてくれて、あの鎧姿に変身して、他者を救ってくれた。
それはまるで、嘗て自分が憧れていた「彼女」の様で―

(スノー・ホワイト……)

未だにアリスは、彼女に会うことが出来ていない。
話せたのは、あの時助けてくれた時。
最後に会えた時には、逃げられて―

「どうしました?」
「ッ!?」

心配げな表情で、隣を歩くライダーが問いただす。
此処で、一旦話題を変える。

「ライダー。」
「……はい。」
「さっき、ライダーが戦ったサーヴァント、あの人は、どうなったの?」

あのサーヴァントを最後に見たのは、ライダーが抱えて、地下へ飛び込んだ所だ。
マスターも既に逃げている。
彼らがどうなったかが、気になる。

「ええ、何とか威嚇し、退散させました。
向こうの魔力も十分消費させました、恐らく、暫くは魂食い等しないでしょう。」

大丈夫ですよ、と言いたい様な表情で、ライダーは答える。
良かった、と、アリスは独りごちる。

「ですがマスター、一つお聞きしたいことが。」

ライダーは問い返す。

「マスター、僕は約束しました、貴方を元の世界に帰すと。」

アリスの眼に、その気迫の迫った眼をライダーは見せつける。
その気迫にアリスは足を止める。
嘗て、最後に己が父親を見た時の眼にそっくりだったからだ。
同じく足を止めたライダーは、己のマスターに面と向かい、更に言葉を続けていく。

「僕はその為に戦っていく所存です。ですが、他の主従を殺さずして戦い抜く、と言うのは、極めて困難な道程となるでしょう。
聖杯を獲得せずに勝ち残る方法など、僕にだって想像が付きません。何より、既に脱落者は大量に出現しています。それでも良いのですか?」

その言葉に、彼女の心は、まるで時計の重りの様にゆらゆらと動き始める。
確かに。
アリスには、脱出の仕方が分からない。
憧れのスノーホワイトに会うためには、聖杯が必要だという事は、彼女にも十分分かっている。
だが、アリスには聖杯を取る気はしなかった。
もしもだ。
仮に聖杯を手に入れて、彼女の元に帰れたとしても―
彼女は、本当に振り向いてくれるのだろうか。
誰かの為に一生懸命になり、笑顔を目一杯浮かべて誰かを救うことに全力になる、あの彼女が。
いや、寧ろ逆だ、それは彼女の想いを、優しさを、踏み躙る事になってしまう。
そうなってしまえば、とても彼女に、寄り添える刺客なんて無くなる。

しかし、自分が迷っている為に、今こうしてライダーは自分に問いかけているのだ。
きっと、自分は彼に迷惑を掛けてしまっているのだろう。
そう考えると、とても辛い。

「ごめん、ライダー……でも、私には……。」

その言葉に、ライダーは先程までの問い詰めるような表情を緩め、自分よりも背の丈が小さい彼女の頭を撫でる。

「いえ、大丈夫です。僕も言いすぎてしまいました。焦る必要は有りませんよ、マスター。焦らず、ゆっくりと考えて構いません。
その時間は僕が作ります。貴方が答えを見つけるまで、僕が貴方を護りますから、心配せずに。」

その言葉に、アリスは少し楽な気持ちになり、暗い仏頂面に、小さな笑顔を浮かべる。

「……ありがとう。」
「いえ、これくらいのことで。」

ライダーもはにかんだ表情をアリスに見せつけ、答える。
そして二人はまた歩きだす。
此処でのロールでは、アリス―亜子は、家族と旅行に出かけている、と言う事になっている。
生活環境は日本のそれとはやや異なるが、それでも、生き辛い、と言う程でもない。
それでも苦しくない、訳ではないが、少しだけ、生きていられる気がしてきた。
ほんのちょっぴり、ほんの少し、前向きな気持に変われたアリスは、ライダーと手を繋ぎ、家へと足を進めて行く。




◆  ◆  ◆



―面倒だな。

心内でライダーは、そう呟く。
召喚された当初、ライダーは自身のマスターの能力を把握し、当たり、だと考えていた。
如何なる方法でも死なない不死の魔法、そして中々に優秀な魔術回路。
これでなら、自身の「本来」の力も、存分に振るえると。
彼女の考えを知るまでは、そう考えてはいた。

聖杯を望まずして脱出する、そんな事が叶うはずない。
多少話が分かる人なら己の願いも叶えられるというのに。
とは言え、能力のみを見ればそうそう見つからない程彼女は優秀なマスター適性の持ち主だ。
自身をカモフラージュするこのスキルも有効だ、まだまだ騙せるだろう。

―あの宝具、あの切り札を使うまで、当分は利用させてもらいますよ。

ライダーには、無論マスターには教えていない切り札があった。
「バニティカード」。
四体のカテゴリーKを回収して漸く手にしたカードが、今こうして自分の手に有るというのが、何という幸運だろう、と少し思った。
生贄なら、先程マスターから隠れて殺したサーヴァントとマスター、他にもかなりの人間をローチに食わせ、手にしている。
或いは、バニティカードが本当に欲す贄を手にすれば簡単なのだが―

―いや、それは取っておきだ、今使うわけには行かない。
それに、燃料は多ければ多いほど良い、当分魔力も影で集めさせて貰おう。
極めてイレギュラーな形では有るが、漸く眠りから醒められたのだ。
今度こそ、この聖杯戦争(バトルファイト)で、勝たせてもらうぞ。
この聖杯(チャンス)、逃す手はあるまい。

本来彼は、聖杯によって喚ばれるべきではない存在である。
今も彼の肉体は、カードに収められ、あのカテゴリー2の子によって長い長い眠りに着いている頃だろう。
だが、ライダーと言う不死生命体の情報すら、このムーンセルは把握していたのだ。
故に、彼を再現したこの霊基は此処に現界した。

今の生物の基礎を作った不死生命体、アンデッド。
その中において何れの生物の繁栄も齎さず、滅びというマイナスを齎すイレギュラーが、此処に顕現したのだ。
更に彼は、人間ですら把握できていないカテゴリーに属していた。

トランプの山札の中に紛れ込んだ、もう一枚の「ジョーカー」。
五十三までとされていた記録には残されていなかった、白きジョーカー。
ゲームの秩序を破戒しかねん真のイレギュラー。
嘗て月の隣で行われたゲームのワイルドカードは今、この聖杯戦争と言うもう一つのバトルロワイヤルに紛れ込んだ。


第五十四体のアンデッド、カテゴリー・ジョーカー。
アルビノジョーカー、サーヴァントと言う器、騎乗兵(ライダー)のクラスを以って、この聖杯戦争に現界した。
願いは一つ、世界のリセット。







―さあ、統制者(ムーンセル)よ、我がこの聖杯戦争(バトルファイト)に勝利した暁には、この我が願いを叶え給え。









【出典】劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE
【CLASS】ライダー
【真名】志村純一/アルビノジョーカー
【属性】秩序・善(正しくは混沌・悪)
【ステータス】筋力C+ 耐久C+ 敏捷C+ 魔力B+(EX) 幸運D 宝具EX(グレイブ変身時)

【クラススキル】

対魔力:A
原初の時代に星の集合意識が生み出した不死生命体、生物の祖に連なる者として強大な神秘を宿しており、魔術による干渉をAランク分削減・無効化する。
宝具である鎧を装備している間はその身に纏う神秘の飛躍的な向上から更に効力を倍加し、事実上純粋な魔術でダメージを与えることはほぼ不可能となる。

騎乗:EX
乗り物を乗りこなす才能。
バイクを乗りこなした他、ライダーで召喚されている影響でランクが規格外に跳ね上がっている。
始祖の怪物すら、彼は乗りこなすことが出来る。


【保有スキル】

人の殻:B
彼は以前、人間の殻を被って生活していた。
自身の姿を人間に変化させることが可能。
属性が「人」「秩序・善」に隠蔽され、占いすらも騙し通せる。
実質的に「気配遮断」と同等の効果も併せ持つ。


原初の一:A
アンデッド。星の集合意志(ガイア)が神代以前の原初に一体ずつ産み落とした、各生物種の始祖たる怪物。最初の産声を上げた星の胤子たち。始まりが故に終わりを持たぬ不死存在。
あくまでサーヴァントのために劣化しているとはいえ、その特性からセイバーの生命そのものを直接対象とした呪い・概念干渉等を一律無効化し、更にHPが0になった際、必要な魔力が供給されていれば幸運判定で復活の機会を得ることができる。
また、自らの意志や令呪による強制・補助を以ってしても自害、及びそれに繋がる行為ができない。


無貌の切札:A
ワイルド。
いかなる生物の系統樹でもないという、ジョーカーのみの特性。
特定の種族に適用する効果を一律無効化する。
また、ライダーは生前、統制者にはマークされることがなかった。


軍勢生成:A
自身の眷属たる「アルビローチ」を生成する能力。
本来ローチは、戦いの勝者となって初めて召喚できるのだが、彼が何故召喚できるのかは不明。



【宝具】

「狩犬宿す黄昏の鎧門(グレイブバックル)」
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1

人類基盤史研究所「BOARD」が開発した、ライダーシステム。
これは、嘗て53体のアンデッドを封印した旧世代型を基に創りだした、新世代型のバックルである。
人工アンデッド「ケルベロス」を封印したカテゴリーAを装填することで起動、「グレイブアーマー」をライダーに纏わせる。
装備は「グレイブラウザー」、必殺技は「マイティ」のカードをラウズして発動する「グラビティスラッシュ」。
バックル自体は科学の産物であるため、ランクは然程高くはないが、ラウズカードを宝具に組み込んでいる影響で、+補正が働いている。

「原戦を欺け、虚白の死札(ジョーカーエンド・マンティス)」
ランク:A-(EX) 種別:対生宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
命を刈り取る形をした手持ち式の鎌。
地球上の全生命を死滅させるという、ジョーカーの攻撃本能が結晶化したもの。
斬り付けた対象の、生物としての純粋度、完成度に応じて追加ダメージが加算される。追加分が一定値を超えると即死判定が働く。
対象外となるのは、地球上の生物でないもの、生物の版図を越えてしまったもの、そもそも生物でないもの。
(人外の魔物や機械系サーヴァント、高ランクの神性スキル保有者が対象となる)

ただし、ライダーは霊格を下げられた上での現界の為、ランクが下がっている。
その代わり、「敗者を躙れ、十四の邪神」の発動時にはランクが()内に修正、本来の力を取り戻し、ジョーカーの真の権能が発現する。

「敗者を躙れ、十四の邪神(フォーティーン・クアドラプルエボリューション)」
ランク:EX 種別:対生命・対軍宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:1000

ライダーが生前、レリーフに四枚のカテゴリーKを融合させることで生み出した、十四の怪物。
白き竜の姿をしており、四本の腕には剣、杯、盾、杖をそれぞれ持つ。
巨大な火球を吐き、大地を吹き飛ばすほどの尾を武器として戦う。
普段は、ライダーがバニティカードとして封印している。
そしてこれに莫大な魔力を注ぎ込み、召喚したレリーフに装填することで、フォーティーンが顕現し、周囲には天変地異を表すかのように暴風が吹き荒れる。
其処にライダーが融合することで、「寂滅を廻せ、運命の死札」のランクが上昇する。
消費魔力は必然的に激しく、バニティカードには途方も無いほどの魔力を込めなければならない。

本来なら、この宝具はアンデッド解放に関わった人間の血を持つ者が生贄となって発動する事になっている。
また、嘗てはジョーカーアンデッドがカードの生贄となった逸話も残されている。
もし「ジョーカーその物」、あるいはジョーカーを「目覚めさせた」者を生贄にした際、この宝具は一発で起動する。
魔力も()内に修正される。
弱点は一つ、石版のバニティカードを破壊する事、それだけである。


【Weapon】

「グレイブラウザー」
グレイブアーマーに付いている、ブレイラウザーを解析して作り上げた醒剣。
ラウズカードの力を目覚めさせ、アーマーに宿すことが可能となっている。

「デスサイズ」
ジョーカーが振るう鎌。
本来ならアンデッドを封印する能力も有るのだが、霊格の低下の影響もあり使えない。

「バニティカード」
四枚のカテゴリーKの進化能力を使って生み出されたカード。
「敗者を躙れ、十四の邪神」の起動キー。
魂喰いで吸った魔力や、ジョーカーアンデッド、ないしジョーカー覚醒に起因する人間を封印できる。


【人物背景】

存在することのなかった、もう一体の「ジョーカーアンデッド」。
53のアンデッドが封印された時に暗躍を始める。
バニティカードを奪い取り、ジョーカーの愛した少女を生贄にフォーティーンを顕現させるが、ジョーカーと、彼の意志を継いだ仮面ライダー達により倒される。

と言うのは、もう一つの世界での話。
52のアンデッドが封印されている時点で統制者はジョーカーにマークを付けており、アルビノジョーカーの存在は明らかにされていない。
彼は何処にいるのかは分からない。
もしかしたら、既に仮面ライダーに倒されているのかもしれない。
或いは、何処かで運命と戦う男に倒されたのかもしれない。
または、アルビノジョーカーの存在は無かったのかもしれない。

不死であるアンデッドだが、生物の始祖という強大な神秘は発生した時点でムーンセルに記録されている。
このサーヴァントはそこから召喚に応じた存在であり、英霊の本体と分身のサーヴァントとの関係のようなもの。
本来の彼は、未だカードの中に眠る。

【サーヴァントとしての願い】

最強のアンデッドの力を手にする。

【方針】
当分はマスターに従い、護るふりをするが、バニティカードの燃料が見つかり次第行動を起こす予定に有る。
現在はアルビローチに裏で、魂食いをさせています。



【出典】魔法少女育成計画
【マスター】ハードゴア・アリス(鳩田亜子)

【参戦経緯】

カラミティ・メアリによって海に廃棄された際に白紙のトランプを拾った。

【能力・技能】

「どんなケガをしてもすぐに治るよ」

魔法少女としての固有魔法。
どんな致命傷を受けようが直ぐに復活する。
例え溶けようが爆殺されようが燃やされてゴミ箱にコンパクトに詰められて沈められても再生してしまう。
実質的に不死身では有るが、その代わり変身前には効果はない。


【人物背景】

父親に母親を殺されたと言う過去の持ち主で、今は親戚の家で生活している。
殺人犯の子なだけあって学校では孤立しており、自分が不必要なのではと言う考えすら浮かんでいた。
そんな時、家の鍵を拾ってくれたスノーホワイトに憧れ、彼女は魔法少女になろうとする。
結果、彼女は16人目の魔法少女となったのだが、皮肉にもそれが、キャンディ争奪戦の鍵となってしまう。

最低でも殺される前からの参戦。

【マスターとしての願い】

スノーホワイトの元に―

【方針】

殺したくはない。
だが、同時に迷ってはいる。

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最終更新:2017年01月26日 01:00