君がまってる◆TAEv0TJMEI
――君をまってる。君がまってる
雪原を関する街で、親に見守られ子どもたちが遊んでいた。
わいわいと騒ぎながら、子どもたちは遊び道具を拾っては投げつけている。
街の名前にお似合いの雪玉でも投げ合っているのだろうか。
……否。
彼らが投げているのは雪玉でもなければ、投げあっている訳でもない。
石だ。
子どもたちは石を拾っては一方的に投げつけているのだ。
ただ一人の少女に向かって。
標的にされているのは幼い少女だった。
10歳にも満たないないのではなかろうか。
ボロボロになった服を纏い、全身に痣を作り、今なお打ち付けられる石で傷つきながらも。
少女は涙すること無く、歩き続けている。
その様がさらに子どもたちを苛立たせたのだろう。
石を投げるというまどろっこしい手段では我慢できなくなった数人の子どもたちが、少女に駆け寄り殴りかかった。
大人は誰も、そんな子どもたちを止めようとはしなければ、叱ることもなかった。
当然だ。
大人たちもまたその少女に暴行を加えたことは一度や二度ではないからだ。
彼らこそが、自分たちの子どもに少女のことを――具体的には少女の親のことを悪しように語り、虐げさせている元凶だからだ。
大人たちは語った。
少女の親は悪い悪い人間だったのだと。
スノーフィールドの開発に関わり、先住民を追い出し、富を独占し、貧民たちをこき使った大悪人なのだと。
あいつらのせいで俺たちは落ちぶれたんだ。あいつらのせいで俺たちは貧しいんだ。
あいつらのせいでお前たちにも満足な生活をさせられないんだ。
あいつらのせいで。あいつらのせいで。あいつらのせいで。
………………………………。
…………………………。
……………………。
……………。
でも、あいつらはもういないんだ。
事業に失敗してケツをまくって逃げたんだ、ざまあみろ。
そう大人たちはせせらわらった。
子どもたちに言い聞かせるように。
少女に聞こえるように。
笑って、嗤って、罵倒し続けた。
そこにあるのは悪意だった。
純然なる悪意だった。
始まりは少女の親への怒りや憎しみだったのかもしれない。
けれどそれは、いつしか、ただの悪意へと変わっていた。
少女の親はいなくなった。その分大人たちは弾劾の矛先を少女へと向けた。
親がどれだけ悪人であろうとも、子に罪はないというのに。
大人たちは皆が皆で、少女を責め立てた。
子どもたちもそれに倣って少女を迫害し始めた。
少女はいじめてもいい悪者だから。
何の権力も財力もない、親に置いて行かれた哀れな弱者だから。
正義の名のもとに、やり返される心配もない暴力を、暴言を、嬉々として人々は振るい続けた。
少女はそんな理不尽に、ただ、黙って耐え続けた。
涙するでも、やり返すでもなく、それでいて決して謝りはせず、許しを請うでも助けを求めることもなかった。
そんないつもの光景。
決して屈しない少女に、いつものようにエスカレートの果てに、子どもたちが直接暴力を振るわんと殴りかかったその時に。
いつもと、違うことが起きた。
少女の顔に殴りかかった一回り大きな少年の拳が受け止められる。
少年が、子どもたちが、大人たちが、何よりも他ならぬ少女自身が。
いつもと違う展開に驚き、目を見開く。
拳を受け止めたのは一人の青年だった。
歳は高校生くらいだろうか。
まだまだ少年と言ってもいい若さの青年は、しかし若者と呼ぶにははばかられる雰囲気を放っていた。
「楽しいか? 無抵抗の相手を一方的に殴りつけて」
青年が、口を開く。
静かな、それでいて確かな怒りが込められた言葉に誰もが圧っされるも、喘ぐように彼らは言い返す。
「な、なんだよ。お前、こいつの仲間か何かか!?」
「あの悪党どもめ、まさか娘にボディーガードを!?」
「見たことのない顔だが、よそ者か!? 何も知らない奴が首を突っ込まないでくれ」
「邪魔すんなよ、そいつの親は悪いやつなんだぞ!
今スノーフィールドで起きてる事件だってそいつの仕業だって、みんな言ってんだからな!」
自分は悪くないと言い訳する子どもたち。
青年が語った正論を前にして、叱られるのを嫌がった子どもたちは口々に正義を主張する。
一方大人たちは誰にも嫌われていた少女に思わぬ味方が登場したことに戸惑い、中には少女の親の影を感じ恐れを抱く者もいた。
ざわめく老若男女たち。
口汚くまくしたてる彼らを前にして、青年は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。
「みんな、か。いつの世もどの世界も変わらないな……。
誰かがそう言うから。みんながそう言うから。
そんな理由で真実を見ようとしない。小さな声を、聴こうともしない」
「わけわかんないこと言ってんじゃねえよ!
父ちゃんや母ちゃんがそいつが悪者だって言ったんだ!
そいつの味方をするなら、お前だって悪者だ!」
痺れを切らしたのは、拳を受け止められた少年だった。
少年からすればわけもわからぬ乱入者に正義の邪魔をされ、何故か怒りをぶつけられているという理不尽な状況だった。
その苛立ちをぶつけんとして、青年に掴まれている方とは逆の手で拳を振るう。
今度は受け止められることはなかった。
ざまぁ見ろ、と少年は悪者を退治したと確信する。
少年の拳はただの拳ではない。
少女に投げつけていた大きな石の余りを握りしめた立派な凶器だった。
少しくらい年上だからと偉そうに見当違いな説教をしてきた青年くらい、やっつけられる。
そう思い充足感に浸っていた少年の顔は、直後引き攣ることになる。
「どうした。もう終わりか。これっぽっちの痛みじゃ俺の心には全然響かないな。
ほら、手を放してやる。今度は利き腕で全力で打ってこい」
凶器で殴られたはずの青年が、笑みさえ浮かべて少年のことを見下ろしていた。
「ひ、ひぃっ!」
「ママ、あの人どこかおかしいよ!」
「し、近づいてはいけません! 目を合わせちゃいけません!」
「こ、子どもの喧嘩に年上が出張らないでもらいたいがね……っ」
右手を解放された少年は、しかしもう拳を握ることはなかった。
ぺたんと尻餅をついて、恐怖のままに後ずさる。
少女を取り囲んでいた人の輪も同じだった。
おかしなものを見るように青年を指さし、汚いものに触れないようにほうぼうへと散っていく。
少年の親らしき大人が子どもを助け起こし、わめきながら去って行った時には、少女と青年以外の誰も残ってはいなかった。
「傷、見せてみろ」
大丈夫か、とは問わない。
明らかに大丈夫じゃないのは目に見えている。
青年は手早く少女の傷に処置を施していく。
「あの、その……ありがとうございます。ご存知かもしれませんが、私は瀬良あゆみと言います」
ぺこりと頭を下げ、礼を言う少女。
「嬉しかったです。助けていただいて。
それに、ここにはいない、いて欲しくない大切な人たちのことを思い出しちゃいました。
あなたみたいに赤いあの人のことや、私のたった一人の友だち……かもしれない男の子のことを」
胸に手を当て、思い出を抱きしめるように語る少女に、青年は応え、問いかける。
「構わない。俺が何なのかお前にはもう分かってるんだろ」
「……はい。私の、サーヴァントさん、なんですよね」
「ああ。サーヴァント、アーチャー。
お前に呼ばれて俺はこの世界、この時代へとやってきた」
青年――アーチャーは、少女――自らのマスターへと言葉を続ける。
「マスター。お前は自分がマスターだと思い出していながらも、あいつらを前に自分から俺を呼ぶことはなかった。
俺を呼んで命じさえすれば、あんな奴らはどうとでもできたはずだ。
どうしてそうしなかったんだ。
あいつらに復讐してやろうとは思わなかったのか?」
アーチャーは知っている
。
無理解からの孤独に狂い世界を壊さんとした異界の王を。
憎しみのままに破滅へと突き進まんとした絶望の暗闇を。
……怒りに呑まれないよう必死に耐え続けた自分自身を。
知っているからこそ、不思議だった。
少女は幼いながらも聡明だ。自らの置かれている状況も、与えられた力も理解している。
なのに少女は、されるがままだった。
サーヴァントの力さえあれば、後先を考えないなら、今の状況も簡単に脱しえるというのに。
そうはしなかった。
「
思いたく……ありません。私はどんな時でも誇りを失いたくないんです」
思わない、ではなく、思いたくないと少女は答えた。
「誇り?」
「はい。私は暴力になんて屈しないと胸を張って示し続けたいんです」
それは何も暴力を振るわれることに耐え続けるというだけではないのだろう。
暴力に訴えること。
暴力に訴えて気に食わないことを解決するというその思想そのものに、少女は屈したくないのだ。
「そうか、お前も戦ってるんだな」
世界と。
目に見えないものと。
それがどれだけ険しい戦いなのか、アーチャーは嫌でも知っている。
「そんな立派なものじゃないですよ。それに……きっとあの人たちも不安なんです」
分かるんですと、少女は続ける。
「あの人たちも私のようにこの世界に無理やり連れてこられた人たちなんですよね……?
その上、記憶を思い出していないあの人たちは、与えられた役割をわけもわからないままこなすしかなくて。
……それはきっと、自分のことも、置かれた状況も理解できている私より、ずっと不安だと思うんです」
私も、思い出すまではもやもややひっかかりを常に感じ続ける日々でしたから。
そう言って少女は困ったように笑うけど、それは笑えるような日々ではなかったはずだ。
いつも味方でいてくれたという赤い帽子の青年も、たった一人の友だちだった乱暴そうで優しい少年も、ここにはいない。
少女の心を支えてくれていた人たちが抜け落ちた5年前を思わせる日々のロール。
それは少女に記憶を取り戻させるほどの違和感を感じさせる程に辛かったというのに。
少女は笑って、あまつさえこんなことまで言いきるのだ。
「その無意識の不安を、私をいじめることで少しでも晴らすことができるなら……私は、いいんです」
いいわけがないだろ。
そう憤るのは簡単だが、アーチャーは少女を否定するのではなく、踏み込むことを選んだ。
アーチャーはただ、自分とは違う生き方をすることができている少女のことを理解しようとしていた。
「マスター。何がお前をそこまでさせるんだ」
「……。私のパパとママは皆さんにひどいことをしたそうです」
「…………」
ほんの僅かにアーチャーの表情が歪むも、それは少女に察せられぬよう、少女の話をさえぎらぬよう抑えられたものだった。
その甲斐もあり、アーチャーの様子に気付かず、少女は訥々と語る。
「パパとママは所謂大金持ちでした。でも、5年前に事業に失敗してしまって。
ある日突然、私を残していなくなってしまったんです」
5年。その幼い少女にとって余りにも長い年月がどういったものだったのかは、想像するに容易い。
ボロボロの服、刻まれた傷、消えていない数多の痣。
アーチャーがさっき目にした光景は、少女にとって慣れてしまった日常だった。
「でも、パパとママはいなくなる前の日の夜に私に、言ったんです。
いい子にしてれば必ず迎えに来る、って……」
少女はそんな、自分を置いて行った両親との口約束を信じて、辛い日々をただただ耐え続けることを選んだ。
恨み言一つこぼさず、いい子であり続けた。
アーチャーは遂に耐えきれなくなり、口を開く。
「……そんなもの、子どもを捨てる親の定例句だとは思わなかったのか」
「私はパパとママを信じてます。それは迎えに来るという約束だけではありません。
実のところ、私は、パパとママがみなさんにひどいことをしていないと信じてるんです。」
「……たとえお前の親が悪人でないとしても。
どこにでもいる普通の母さんと、父さん、だったとしても。
……手のひらを返すことだってあるんだぞ」
それは確かな重みを持った言葉だった。
甘い夢を見る少女を諭すための大人の言葉なんかじゃないのは少女にもすぐ分かった。
だってそこにあるのはアーチャーの声に、瞳に入り交じった感情は。
少女自身も嫌というほど体験したものだったから。
「……知ってます。人は、変わることもあるって。
友だちだと思っていた人がパパとママのせいで……」
言葉が詰まった。
それ以上言う必要が無いことを二人が二人共理解していた。
持ち上げるだけ持ち上げておきながらあっさりと手のひらを返す。
……どこにでもある話だ。
「それでもお前は、信じるんだな」
「はい。だからこそ私は、聖杯なんていりません」
「いいのか? 聖杯があればお前の父さんと母さんに遭うことだって」
「……いいんです。……私は信じて待つって決めたんです。
それなのに聖杯なんてものを使って会いに行っちゃうのや、連れてきちゃうのは……ズルですから」
「そうか」
そこまで分かっていながら、少女は信じるといいきり、聖杯を使うことも拒絶した。
これ以上アーチャーが何を言っても、この頑固な少女が道を変えることはないだろう。
アーチャーがそうであるように、少女もまた、もうそういう生き方しかできない人間なのだ。
たとえどこか寂しげな笑みを浮かべていても。
少女が、聖杯に頼ることは、決して無い。
……それにきっと、この少女は、信じたとおりに両親から迎えに来てくれない限り、泣くこともできない。
「それに私にはパパとママのデッキがあります。これだけで十分なんです」
「デッキ? もしかしてバトスピか!?」
少女が取り出して、ぎゅっと大事に握りしめたディスクを前にアーチャーの様子が変わる。
明らかにさっきまでとは違う熱が入ったアーチャーの様子に少女は若干戸惑いつつも、ディスクからデッキを取り出してカードを広げる。
「あ、いえ、デュエルモンスターズというカードゲームのものなんですけど。
パパとママが残してくれたデッキで。
そういえばあのトランプもデッキケースの中にに混ざってたものでしたっけ」
「それは……いや、いい。それよりもデッキを手にとって見せてもらってもいいか?」
知ってか知らずかよりにもよって『白紙のトランプ』を娘に残していたことに一層きな臭さを感じつつも、アーチャーは言及することを避けた。
両親を信じると決めて、てこでも動かない少女に、そんなことを言っても傷つけるだけだろう。
それに言葉であれこれ詮索せずとも、デッキを見れば分かるものもある。
アーチャーはカードを一枚一枚真剣に目を通していく。
「これがデュエルモンスターズ……」
アーチャーはデュエルモンスターズというカードゲームを直接は知らない。
ただ、聖杯から与えられた知識にデュエルモンスターズについても含まれていた。
デュエルモンスターズは幾度か世界の危機を潜り抜ける力となっているからだろう。
その知識に加え実物を目にしたことで、アーチャーは幾らかデュエルモンスターズへの理解を深めていく。
デュエルモンスターズはかなり複雑なゲームだが、アーチャーとて一つのカードゲームを極めた英霊だ。
さらには異界のカードや未来のカードも柔軟に取り入れ自在に扱うだけの腕前を誇っている。
極めるとまではいかなくとも、おおよそを理解するくらいなら問題ない。
「そしてあゆみのデッキか」
その上で少女のデッキを見るに、バトスピで言うところの【不死】の一種と言えなくもない。
自らデッキを破棄することで、トラッシュ(墓地)にカードをため、キースピリット(エースモンスター)のBP(攻撃力)を上げていく戦術を主体にしているようだ。
アーチャーの愛用するカードで言うならトレスベルーガ辺りとは相性がいいかもしれない。
まあ実際のところ、系統光導の存在しない少女のデッキではトレスベルーガを活かし切ることはできないのだが。
それよりも手札入れ替えと破棄、BPアップを両立できる灼熱の谷がいいか。
硯が使っていたストロングドロー辺りも……いっそ異界王のフラッシュドロー……いや、あれは聖杯による伝説入りに引っかかるか……。
「あの、アーチャー、さん?
すごく熱心にデッキを見てますけど私のデッキ、どこか変ですか?
両親の残してくれたものを、私なりに改良した物なのですが」
「いや……」
カードバトラーとしてついついデッキ構築やカード効果について考えを巡らせてしまう一方、アーチャーは二つのことに気づいていた。
一つ、デッキ構築を見るに、少女は彼女たちの世界曰く“墓地肥やし”の重要性を知っている。
墓地にモンスターを貯めれば力になるということを、彼女は知っている。
それはつまり、魂喰の有意性を少女が理解していることへと繋がる。
死なせれば死なすほどに力となる。命を墓場に送れば送るほどパワーアップする。
【ワイト】しかり、聖杯戦争しかり、そしてアーチャーのデッキに眠るあるカードしかり。
アーチャーにとって魂喰は忌避すべき行為だが、単なる魔力補給以上の効果を得られる行為でもある。
蛇皇神帝アスクレピオーズ。
死者の憎しみと怨念から生まれたあのカードにとっては、魂喰は絶好の強化手段なのだ。
そのことを理解しているであろう少女が、安易な魂喰に走らないのは。
少女が言うように暴力への忌避に加えて、きっとスピリット――モンスターへの感謝も忘れていないからだろう。
もう一つ。
少女のカードたちは、非常に大事に扱われているのが見て取れた。
両親の遺したものとして少女が大切にしてきた、というだけではない。
少女の手に渡る前から大切にされていたのが伝わるデッキだった。
(デッキには組んだ人間の命が宿る……。
このデッキには、確かにあゆみの両親の魂が宿っている……)
デッキテーマは死霊の家族という不吉極まりないものだとしても。
少なくとも、少女の両親は、自らの魂とも呼べるデッキを、我が子に託していくような人間ではあったらしい。
或いはアーチャーのように、辛い思い出としてデッキを置いていったのか。
……世の中に広まるのはほんとにあったことそのままじゃない。誰かがそう思わせたがっていることだ。
だから富豪だったという少女の両親が上手くいかないのを誰かのせいにしたがっている人たちに利用されただけの善人ということも十分あり得る。
この聖杯戦争でだってそうだ。
自分のように巻き込まれていないか心配した少女の耳に入ってきたのは、少女の両親の不在を裏付けるような噂と、してもいない悪事への罵詈雑言だった。
少なくとも今、この街を脅かしている事件は聖杯戦争であって、少女の両親によるものではない。
なのに、居もしない少女の両親のせいにされているのは、誰かが聖杯戦争を隠すためのちょうどいいスケープゴートとして利用しているからではないか。
その誰かとは、他のマスターではなく、聖杯戦争を管理している者たちではないかとアーチャーは見ている。
少女の身元や両親の経緯といったことは単なるマスターでは知りようがないからだ。
この聖杯戦争の管理者たちは、神秘の秘匿のロールプレイングをマスターたちに求め、同様に運営用NPCもそういう風に動いているのだという。
聖杯戦争を行っている以上、どうしてもマスター個人では隠しきれない世界の歪み。
それを運営側が少女の両親がいないのをいいことに、それならばとスケープゴートにして神秘の秘匿の一環にしているのはありえなくない話だった。
(……聖杯戦争を影からコントロールしようとしている奴ら、か)
それがムーンセルによる管理にしろ、戦争を起こし、願望機を謳いながら少女の願いを踏みにじるというのなら、闇のフィクサーと一緒だ。
世界の矛盾だ。
「いいデッキだ。見せてくれてありがとう」
「いえ、どういたしまして。ふふ、アーチャーさんは本当に、私のパートナーになってくれたあの人に似てますね。
デッキを見る目がそっくりでした」
「俺に似てる、か。ならそいつも強さの深みにはまっているのかもしれないな」
「?」
「なんでもない。話を脱線させて悪い。お前は聖杯はいらないと行ったな、あゆみ。
両親を待ちたいとも。なら、お前が俺に望むのは……」
デッキを返しつつ、少女のタッグパートナーだったという赤い帽子の男の話を聞き、アーチャーは思う。
もしかしたらそれこそが、自分がこの少女に召喚された最大の要因かもしれない、と。
となるとアーチャーとして召喚されたのは幸いだったかもしれない。
もし本当に赤い帽子の男が強さの深みに至っていたなら、その縁でアーチャーもバーサーカーとして召喚されていた可能性もあったろう。
アーチャーならセイヴァーで召喚された時ほどではないが、バトルができればそれでいいとはならないでいられる。
こうして少女の心からの願いに耳を傾けることができる。
「はい。アーチャーさん……お願いします。私のパートナーになって、私を元の世界へと返してください。
アーチャーさんだって、聖杯が欲しくて、召喚されたんだってことは分かってます。
でも、こんなことを頼めるのは、今の私には……アーチャーさんしかいないんです」
お願いしますと頭を下げる少女を前に、アーチャーの心は決まっていた。
「あゆみ」
少女にスッと、手を差し伸べる。
「お前の、母さんと父さんは。いや、お前の母さんと父さんも。
お前のこと、待ってくれてると、いいな」
「はい!」
少女が笑顔で手を重ねる中、アーチャーは思う。
アーチャーを――馬神弾を待ってくれている人のことを想う。
――ごめんな、まゐ。お前にごめんなとありがとうを伝えるの、もう少し遅くなりそうだ
【クラス】
アーチャー
【真名】
馬神弾@バトルスピリッツ ブレイヴ
【ステータス】
筋力:D 耐久:D+ 敏捷:D 魔力:D 幸運:E 宝具:A
【属性】
混沌・善
【クラススキル】
対魔力:C
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクCならば、マスターを失っても1日間現界可能。
【保有スキル】
カードバトラー:EX
伝説の激突王にしてブレイヴ使い。
自分の勝利に迷わないアーチャーは絶妙のタイミングで望むカードをドローできる。
戦闘時に限り幸運のランクがEXとなる。
……強さの深みまで達しているアーチャーは、強敵に飢えており、命がけの戦いを求めている。
同ランクの狂化の互換とも言え、熱さと冷静さを保ったまま幸運を上げる代わりに、相手の全力を引き出した上で、勝とうとしてしまう。
心眼(真):A+
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、
その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
読み合い・探り合いこそがバトスピの肝であり、高度な心理戦をも可能にする。
被虐体質:A+
集団戦闘において、敵の標的になる確率が増す。
A+ランクともなればライフで受けることにより、味方への攻撃を任意で自身に誘導することさえ可能。
アーチャーはダメージを受ければ受けるほど、ライフを失えば失うほど魔力を得る。
また、攻撃側は攻めれば攻めるほど戦いに熱中し、ついにはこのスキルを持つ者の事しか考えられなくなるという。
不屈の意志:A+
あらゆる苦痛、絶望、状況にも絶対に屈しないという極めて強固な意思。
肉体的、精神的なダメージに耐性を持つ。
幻影を破った逸話がある弾は、幻影のように他者を誘導させるような攻撃にさえ耐性を得ている。
――俺はもう、倒れない。
【宝具】
『開け放て、異界への扉(ゲートオープン、カイホウ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:― 最大補足:自身
本来は異界への扉を開く言霊。
転じて、バトルスピリッツの
ルールの一部を戦場に流入させる宝具。本来の使い方も場合によっては可能。
アーチャーはいかなる戦いでもバトスピで戦えるようになる。
最たる効果として威力の大小を問わず、五回攻撃の直撃を受けない限り、ダメージは受けつつも、アーチャーは戦闘続行できる。
この回数――ライフは下記の宝具で回復・防御することも可能。
ただし敵が合体していたり宝具の性質次第では一度の攻撃で複数のライフを失うこともある。
高火力相手でもライフは一度に付き一つしか減らない代わりに、低火力でも直撃を受ければ一つ減るため注意が必要。
『【激突せし魂・合体軸(バトルスピリッツ ブレイヴ)】』
ランク:E~B 種別:対人宝具 レンジ : 最大補足:5体
未来世界で使用した赤中心の混色デッキが宝具となった物。
現代から未来まで伝説として語られるアーチャーの組んだデッキであり、下記の神のカードも入っているため相応の幻想として成立している。
アーチャーは戦いの中で何度かデッキを組み替えているだけあり、多くのカードから編成できる。
単純な強さだけでなく、魔力消費0で出せるブレイドラなど、扱いやすいカードも多い。
『光導く星の神々(ジュウニキュウエックスレア)』
ランク:A~A++ 種別:対人宝具 レンジ :1~5 最大補足:5体
神話の時代より伝わる強大な力を持った星の力を束ねる神のカード。全12枚+α。
神話の存在だけあり1枚でもかなりの力を誇るが、十二枚揃うことで星をも救う力となる。
特に光龍騎神サジット・アポロドラゴンはアーチャーの最強のキーカードであり、
全力使用時にはアーチャー自身も異界の王の如き姿となり補正を得る。
魔力消費自体は相応の重さだが、他の宝具を組み合わせることで、コストを軽減することもできる。
尚、宝具にはアーチャーが所持したことのないカードや未使用のカードも含まれるが、
12宮Xレアを巡る戦いの最後の勝者であり、神々の砲台であるアーチャーは宝具として全種使用可能となっている。
『神々の砲台、引き金たるは――(バシンダン)』
ランク:EX 種別:救星宝具 レンジ:― 最大補足:―
12宮Xレアをエネルギーとする砲台。
引き金であるアーチャーは宝具として自分の意思で召喚、使用可能となっている。
この宝具使用時のバトルで使った12宮Xレアの枚数に比例して威力が上がり、半分も使えば星を救うだけの力を発揮する。
単純なエネルギー砲としても使用可能だが、この宝具の真価は星を、世界を、そしてそこに住まう命を救うことにこそある。
星を滅ぼす類の宝具やスキルを打ち消すことや、滅亡に瀕した世界を救うことができる。
また、星によるリセットから生命を救った側面から、抑止力を阻止する力も持つ。
――引き金である、アーチャーの命と引き換えに。
【weapon】
コアブリット
本来はバトスピ用のバトルフィールドへの移動手段兼台座となるメカ。
その名の通り弾丸のような形状をしており、移動時は砲撃の如く射出される。
聖杯戦争では基本台座としての機能を用いることはないだろうが、単体で自立飛行可能なため使いみちがないわけではない。
バトルフォーム
バトルの際に着装するプロテクターのようなもの。
スピリットを合体させるとそれに合わせて色が変わる。
【人物背景】
異界の王より、地球と異世界、2つの世界を救った伝説的なカードバトラー。
だが、異界王と結託していた権力者たちの世論操作により、友人や家族にも掌を返され、世界から孤立。
大好きなカードバトルさえ、強すぎることを理由に、大会へ出場できなくなる。
果には真実を訴えようとしたライバルが暗殺されてしまう。
奇しくもそれは、かつて異界の王が味わい、強硬策を取ってでも世界を変革しようとした怒りと絶望、そのものだった。
異界王の二の舞いにならないよう、自らを抑え込むのに必死だった日々は、いつしか、明るかった少年を変えてしまう。
それでも。
少年の根は変わってはいなかった。
かつての仲間に呼ばれ、自分を必要としてくれた未来の世界とそこに生きる命を救うために少年は命を賭ける。
そうして少年は星になった。
一筋の涙と愛する人を残して。
【サーヴァントとしての願い】
苦しんでいる人がいるのに知らん顔なんてできない。たとえ君が待ってるとしても。
【基本戦術、方針、運用法】
基本ステータスは低いながらも、スキルと宝具が強力なサーヴァント。
宝具で召喚したスピリットを庇うという召喚系サーヴァントとしては一風変わった戦術を取る分、アーチャー自身も変則的だが硬い。
クラスこそアーチャーだが、タンク役もできるキャスターと言ったほうが分かりやすいかもしれない。
耐えて庇って力をためつつ相手を読み、圧倒的な力で勝つ。それがこのサーヴァントの戦い方である。
各種軽減やコアの運用など宝具やスキルが噛み合ってることもあり、宝具の強力さの割にはコストパフォーマンスも悪くはない。
生身でもそれなりの戦闘力はあり、剣を用いて魔族を圧倒したこともあるが、流石に正統派三騎士などを相手にするのは苦しい。
ちなみに英霊化したことで、バーストやアルティメットなどの知識も得ている。
【マスター】
瀬良あゆみ@遊☆戯☆王ファイブディーズ タッグフォース6
【参戦方法】
パパとママのデッキに白紙のトランプが混ざっていた。
出典時期はハートイベント3以降、4より前
【マスターとしての願い】
私の大事な人達が幸せでありますように
【weapon】
デュエルモンスターズ
パートナーデッキ【パパとママと一緒】
所謂ワイトデッキ。死霊の家族である。
尚、【パパとママのデッキ】→【パパとママの呼ぶ声】→【パパとママと一緒】とテーマも合わせ、やたら不吉。
デュエルディスク
決闘者必須アイテム。
カードをこれに乗せる事で、ソリットビジョンによりカード映像を表示させる。
実は永久機関であるモーメントが内蔵されており、電力を心配する必要はない。
あゆみは一般人なので、単なる玩具にすぎず、モンスターも実体化したりはしない。
【能力・技能】
決闘者ではあるものの、子どもなのもあってか、まだまだデッキを扱いきれておらず、あまり強くはない。
決闘者としての誇りはあり、少女にとって、デュエルとはじっと我慢して耐えて、最後に勝って笑うもの。
【人物背景】
元々は貴金属王の一人娘だったが、大事業に失敗したことで、没落し、一家は離散、ひとりサテライト(スラム)で暮らすことになる。
両親は相当にあくどい方法で財をなしていたとされ、その恨みと上流階級へのねたみから彼女に冷たく当たる人間は非常に多かった。
当初は世界を救うほどの人間たちからも嫌われていたほど。
それでも理解者は徐々に増えていき、少女はそのことを支えとして胸を張って生き続けた。
私は大丈夫だよ。いい子にしているよ。強く生きていくから。
そう大好きな両親に伝えたいがために。
今日も少女は祈り続ける。私に訪れた幸運が。沢山の人に支えられている今が。パパとママにも訪れますように――。
【方針】
暴力には屈さない。元の世界へと帰る。
最終更新:2021年07月01日 19:55