And they begat sons the Naphidim, and they were all unlike, and they devoured one another: and the Giants slew the Naphil, and the Naphil slew the Eljo, and the Eljo mankind, and one man another.
The Book of Jubilees 7:22
「~♪」
キッチンの電灯が照らすのは、中学生と呼ぶにも幼すぎる少女の容姿、そしてその赤い瞳が見つめるひき肉と刻んた野菜。
狭いキッチンに響くのは少女のハミング。
それに伴い、少女の細い腕がリズムよくひき肉と材料をこね合わせ、天辺に大きなはね返りのある淡いの紫色のショートカットを乗せた頭もリズムに乗って揺れていた。
事故で両親を無くし、唯一の親族であり同じく身寄りも無く、一人で暮らしていた金髪の少年――GVに引き取られ、今は二人で暮らしている。
それが彼女のこの世界での設定<プロフィール>である。
買い物のために立ち寄った歓楽街で、突然落ちてきた白紙のトランプを、ワンダーランドのアリスのように惹きつけられるように追いかけ、拾ってしまった。
そのような経緯でこの聖杯戦争の場に呼ばれてしまった少女――シアンではあったが、この場での生活は不幸ではなかった。
彼女の同居人であり、想い人GVは現実と同じように仕事で忙しく、
他に身寄りの無い少年少女二人での生活もまた、楽とは言えない。
しかし、誰にも追われること無く、責められること無く堂々と生きられる。
皇神の目も気にせず友人と本名で呼び合える。
何気なく買い物に出かけ、手料理をGVに振る舞う時間もあった。
仮初とは言え、確かに幸せな居場所であった。
ただ、一つを除いでは。
「…!」
ふと、シアンの肉をこねる手が止まる。
そして急いで軽く手を洗うと、冷蔵庫から数品のチルド食品を取り出し、皿に盛るとレンジの中に押し込み、温め始めた。
そして何事もなかったかのように料理に戻って数分後、肉団子を入れた鍋が煮えてきた頃に再び手が止まった。
シアンが玄関を向く、GVが帰ってきたのではない。
彼は今日も、仕事で夜遅いはずだ。
そこには白いシャツを着た、穏やかな雰囲気を感じさせる中性的な青年――バーサーカーのクラスで召喚された。彼女のサーヴァントが居た。
「えっと、おかえりなさい、バーサーカーさん」
「どうも、ただいま」
霊体化し、音も立てず帰還した己のサーヴァントを正確に察知し、挨拶を交わす。
これは互いの日常となっていた。
当初は念話で連絡を取り合っていたが、互いに察しが良い者同士必要性が薄く、細かい打ち合わせをする時以外では使われなくなっていた。
故に、互いに互いを感じてるものを、大雑把であるが感じ取ってしまっていた。
タイミングよく、レンジが音を鳴らした。
一瞬、レンジから香るかぐわしい匂いを嗅いだバーサーカーの端正な顔が、飢えた獣のように歪んだのをシアンは見た。
「ありがとう、用意してくれてたんだね」
「…もっとちゃんとしたお料理も作ってるけど、今はそれだけしか」
「いや、これだけあれば十分だよ」
バーサーカーはそう言うと、レンジから皿を取り出し、食卓へ持ち込んでいった。
シアンにはわかっている、彼は常に空腹だ、あれだけ激情を燃やした後にあれだけではとても足りないだろう。
まだ沸足りない鍋を見て、やむを得なく鍋を、安い電気コンロの上から食卓へ運んだ。
すでに皿に盛った食料を平らげたバーサーカーは、持ち込まれた鍋を見て一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに申し訳そうな表情に変わった。
「…ごめん」
「ううん、気にしないで」
「でも食費とか…」
確かにただの未成年の二人暮しという役割での生活は苦しい。
シアンも食費のため、GVに気づかれないよう隙を見て内職に手を付けているし、
家事上手のGVに冷蔵庫の中身や食器の異変に気づかれ、
「いっぱい食べれば大きくなれるかと思って…」
「GVに負けないよう料理の練習したくて…」
など苦しい言い訳をして、GVに複雑な表情をさせるのも心苦しい。
だが、いざとなれば(本当に最終手段だが)不正をしてお金を稼ぐことも不可能ではないし、
それに現実のGVのように、身を挺して戦ってくれているバーサーカーに対して、その程度のことで腹を立てるほど器は小さくない。
「バーサーカーさんは戦ってくれてるし、これくらいはしないと」
鍋の中の肉団子は、まだ赤みが残っていたが、バーサーカーは気にせずにフォークをつきたて、口の中に運んだ。
思いの外熱かった肉団子に苦い顔をするが、しかし飢えたバーサーカーは急いで噛み砕き、飲み込んだ。
そして、箸を止めてポツリと一言漏らした。
「不安だよね、あの僕の中の僕を視たら」
シアンは息を呑んだ。
シアンがバーサーカーの飢えがわかるように、バーサーカーもシアンの不安がわかるのだ。
バーサーカーがある時、突然ベルトを身に着け、外に出て、帰ってくる。
聖杯戦争だ、そこで何が行われているのかは、当然わかっている。
しかし、令呪を通して伝わってくる感情は、皇神と戦っていたGVが生温く思えるほど、純粋で、溶岩のように熱く、そして頭の全てを塗りつぶすほどの快感と、そして底のない苦しみであった。
まさに人が未だ踏み入れていない、否、人が何万年もの時間を掛けて、ようやくわずかに抜け出せた深い密林、人外魔境の世界であった。
「でも、心配しないで」
「守るべきものは守る、例え人間でも、そうでなくても」
そう言ってバーサーカーは再び箸を動かし始めた。
シアンの不安は消えなかった。
それはバーサーカーの中の激情を恐れている――からではなかった、
本能ではなく理論(ロジック)。
彼の言う守るべきもの、そこに自分とGVが含まれているかが不安なのだ。
人から能力者に向けられる謂れなき恐怖。
そして、その人と能力者の両方から向けられる恐怖、望み、期待。
シアンは感じている、あのプロジェクトリーダー、紫電の正義欲を。
GVの父に等しいアシモフの、あの眼鏡の奥の瞳が自分を見る時、時折不穏な感情になる時を。
皇神に囚われている時に感じた、あのピンク色の気配を。
人食いであっても生きられる世界。
怪物であっても生きられる世界。
だがそこに、人外からすらも恐れられる自分<サイバーディーバ>とGV<アームドブルー>の居場所は、あるんだろうか。
己の存在そのもの、それはシアンにとって夢であり、そしてたったひとつの不幸でもある。
生きることは決して諦めない。
だが、この弱肉強食の熱林のような地で生きることとは
いや、この世界で生きることとは、つまり――
物言わず、赤身の残る肉団子を食べるバーサーカーを見ながら、
軽く身震いをしたシアンは、気づかぬうちに右の手のひらに刻まれた令呪を握りしめていた。
そして監視者達はネフィリムと呼ばれる息子たちを人間に産ませた。
ネフィリムは監視者とは似つかわず、ネフィリムは互いを食べた。
ギガスはネフィルを、ネフィルはエルヨを、エルヨは人を、そして人は互いを殺した。
ヨベル書 7章22節より
【クラス】バーサーカー
【真名】水澤 悠
【出典】仮面ライダーアマゾンズ
【性別】男
【属性】秩序・悪
【パラメーター】筋力:D 耐久:D 敏捷:D 魔力:E 幸運:C 宝具:B
(変身時)筋力:B- 耐久:C 敏捷:A- 魔力:E 幸運:D 宝具:B
【クラススキル】
狂化E-(C)
人のタンパク質を好む性質を抑えられないアマゾンの一人であるが、
バーサーカーは普段はアマゾンズレジスターから注射される抑制剤の効果によって抑えられている。
そのため、バーサーカーでありながら通常通り会話可能である。
【固有スキル】
加虐体質:A
戦闘において、自己の攻撃性にプラス補正がかかるスキル。
攻めれば攻めるほど強くなるが、反面、防御力が低下してしまう。
バーサーカーは狩るべきものと判断したものに対して、普段の冷静さを失ってしまう傾向がある。
気配感知:B
気配を感じ取ることで、効果範囲内の状況・環境を認識する。近距離ならば同ランクまでの気配遮断を無効化する。
バーサーカーはアマゾン体の中でも高度な察知能力を持つ。
獣の本能:B
人並み以上に三大欲求が強い。
バーサーカーの場合、常に食欲を満たしていなければ戦うことができない。
この食欲は魔力補給のためというより、もはや精神観念に近いものであるため、魔力での代用は難しい。
空腹状態では狂乱の軍神と調和の申し子(アマゾンズドライバー)が使用不可能になるが、
満腹状態なら戦闘続行、直感を兼ねるスキルとなる。
【宝具】
狂乱のアレスと調和の申し子(アマゾンズドライバー)
ランク:D 種別:対アマゾン宝具 レンジ:― 最大捕捉:1人
装着者のアマゾン細胞に影響を与え、戦闘能力を向上させる機能などを備えているベルト。
このベルトを所持した2人のアマゾンは、アマゾンを交え世界に新たな生態系を作ったとされる。
守るべきものは守り、狩るべきものは狩る(ギガンツ イン ネフィリム)
ランク:B 種別:対敵宝具 レンジ:1~50最大捕捉:1~4000人
人食い狩り、或いは同種のバーサーカーと敵対した時、
加虐体質の防御低下のみを無効にし、更に相反しうるAクラス相当の勇猛スキルを付与する。
1000人余りのアマゾン達を守り続け、時が来てしまったものを狩ったとされる伝承から与えられた宝具
【サーヴァントとしての願い】
守るべきものは守り、狩るべきものは狩る。
【マスター】
シアン@蒼き雷霆ガンヴォルト
【マスターとしての願い】
GVと共に生きる。
最終更新:2017年01月28日 23:43