昨今話題になっている、“日本から来たアイドル達”を迎えて、スノーフィールドに有る多目的ホールは、建設以来初めて満員御礼の札を下げる事態になっていた。

「その欲望!解放しなさい!!」

虫頭(緑)の様な決めゼリフを、青い光に照らされたステージ上の、最近凄まじい勢いで人気を伸ばしている新人アイドルが言うと、観衆達が一斉に歓声をあげ、無数のサインボードが掲げられた。



「ふう〜〜」

プロデューサーはステージの陰で深く息を吐く。もう何度目のことか直ぐには思い出せないが、アイドルがステージに立つ時は時は何時も緊張する。
ましてやいまステージに立つのは人間では無い。サーヴァント、偉業を為して人を越えた超越の存在。
しかもこのサーヴァントは元来人では無い。ステージの上で歌い踊る少女の姿は仮初めのものなのだ。


〜一月前〜

プロデューサーは遠くアメリカはスノーフィールドの地に居た。
346プロダクションがアメリカ進出をするに当たり、社内で厳選されたメンバー10人を引き連れて此の地にやってきた─────という役割を与えられていた事に、ほんの些細な違和感から気づいたのだ。
そもそもが、今、此処で、プロデュースしているアイドル達の顔触れに違和感を覚えたのが始まり。
その小さな小さな違和感は消えること無く、アイドル達と顔を合わせる度に増していき、遂に日本でプロデュースしていたアイドル達を思い出したのだ。

「此れは…一体……?」

思い出した記憶。自分が道を示さなければならないシンデレラ達。然しプロデューサーはこうも思うのだ。
この場所にいるアイドル達も自分を必要としている、と。
ならば自分は己の役割を果たすだけ。
プロデューサーは聖杯戦争に乗らない。然しアイドル達が巻き込まれる様な事があれば戦って守護る事を決めた。
後は此の事を己がサーヴァントに伝えるだけ。
どう切り出そうか考えこんでいたプロデューサーに出された異動命令、『白紙のトランプ』が光り出す。
吹き荒れる旋風。周囲を照らして輝く光。
脳に刻まれる知識。自分の置かれた状況を否が応でも理解する。
部屋を満たした魔力が形を取り、プロデューサーの前に彼の運命(シンデレラ)が姿を見せる。

「貴方が…私のマスター」

艶やかな女の声。しか現れた影は異形。全体的な姿は人型だが、シャチの様な頭部、吸盤の並んだ脚部。羽織った魚類のヒレの様なマントから伸びる触手。
思わず後ずさったプロデューサーを見て異形はくつくつと笑い、姿を変えていく。
年の頃は十代前半、長い艶の有る黒髪と、整った容姿の少女に姿を変える。

「私はキャスターのサーヴァント…メズール………何の真似?」

「あの…アイドルに興味はありませんか」

「はぁ?」

「いきなりな話ですが、貴女は何を願ってこの聖杯戦争にやってきたのですか?」

「願い……」

そんなものは決まっている。『愛』を得ること。けど其れは果たして今のままで叶うものなのか。
そもそも人間の感覚を得るだけで得られるものなのか。己で感じなければ意味が無いのでは無いか。
暫し黙考してふと気付く。

「アイドルって………何?」

というよりも人間では無いグリードにできるものなのだろうか?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そして今、アイドルというものについて知ったメズールは、プロデューサーに召喚されたサーヴァントとしてで無く、アイドルとして活動に勤しんでいる。
元から人間以上の身体能力を持つ身で有るから、ダンスのレッスンは必要は無かったが、歌唱力を磨き、演技力を磨き、スポットライトを浴びてデビューして、
CDを出して、握手会だのサイン会だのを重ねてファンを増やし続けて行った。元がサーヴァントば為に個人情報が全く無く、必要時以外は霊体化している為に住んでいる場所もプライベートも不明というミステリアスな面が神秘性を高めて、
今やメズールのファンは鰻登りに増え続け、出すグッズもCDもバカ売れ状態。こうなれば会社としてもメズールに全面的な投資を行い、今やメズールは346の全米進出の原動力となっていた。
とまあ…ここまで上手く行くのには当然裏が有る訳で………。



「有難う」

輝くばかりの笑顔でファンの手を握るメズール。サイン会にやってきたファンに対するサービスをキッチリとこなしている。
その手が時折霞んでは、ファンの身体がグラリと傾くが、毎度見られる光景なので誰も気にしない。精々が感極まって貧血でも起こしたのだろうと思う程度だ。
統計を取れば、サイン会で貧血を起こしたファンが、廃人と呼ばれる程にファン活動に金銭を投入していることが判るだろうが、誰も調べていないので当然気付いた者は存在しない。



〜その夜〜


「お帰り、坊や」

プロデューサーの住んでいるマンションの一室で、実体化したメズールの前に、サメと人を併せたかの様な異形が複数現れた。

「出しなさい」

異形に向かってメズーが微笑んで告げると、異形の形が崩れ、無数の鈍く銀色に輝くメダルとなった。
そのメダルにメズールが手をかざすと、掌に吸い込まれでもしたかの様にメダルが消えていく。

.;このメダルこそセルメダル。メダルの塊でしか無いグリードのCELL(細胞)人の欲望によって精製される人の欲望そのもの。
メズールが機を見てファンに投入したセルメダルから産まれ、ファンの欲望─────この場合はファン活動を─────宿主が破産する勢いで行わせて成長する怪物、ヤミーを形作るもの。欲望の火に注がれる油。


メズールがプロデューサーの申し出を受けたのは、セルメダルを楽に集められると踏んだから。その読みは正しく、メズールはデビューして以来魔力に困ったことは無い。
“魂喰い”等という目立つことをしなくても、メズールの元には魔力の供給源が毎日の様にやって来る。そして膨大な魔力をグリードであるメズールに齎し、膨大な収益をアイドルであるメズールに齎す。
あの何処かガメルを思わせるプロデューサーの、突拍子もない申し出を受けた甲斐が有ったとメズールは思う。
こうなる前にやっておけば良かったと思うが、そもそもグリードには既存の欲望を利用することは出来ても、欲望を作り出すことは出来ないのだから仕方が無い。

この供給元である346を守る為なら、アイドル達が襲われた時に戦って追い払うくらいのことはしても良い。
何しろ現時点で既に魔力充溢しているのだ。そして魔力の供給が衰える事も無い。全力で戦った処でマスターに負担をかけることも無い。
此れだけの好条件では有るが、それでもメズールは不満だった。
アイドル活動をやってみた理由はもう一つ有る。自らの欲望である『愛』について得るものが有るかと思ったからだ。
アイドルとして愛されれば何かを得られるかも知れない。そう思ってみたが皆目得られるものは無く、メズールはこの点に関しては不満を募らせていた。


─────食べて、見て、聞いたんでしょ?どうだった?

袂を分かった鳥の王に投げかけた疑問を思い出す。仮初めとはいえ人の肉体を得て変わった鳥の王は、一体何を知ったというのか。

「人の身体」

やはり鍵は其処なのだろうか?グリードの身では決して満たされぬ欲望も、人の身体を得れば満たせるのだろうか?


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



仕事を終えたプロデューサーは、自室でシミジミと考える。
偽りの世界とはいえ346のアメリカ進出は順調だ。
プロデューサーの見たてではメズールというイレギュラー抜きにしても、346のアメリカ進出は成功する。
元々アメリカ進出は346でも取り沙汰されていた事案であり、今回の件は丁度良いシュミレーションといえた。
尤も、プロデューサーがいま考えているのはメズールの事だった。彼女の存在を“惜しい”と、元の世界でも輝いて欲しいと、そんな事を考えていたのだ。

「聖杯……ですか」

万能の願望機。メズールは何か願いたいことが有るらしいが………自分も乗ってみるか?
だが、他人の願いを踏み潰す。そんな事が許されるのだろうか?



【クラス】
キャスター

【真名】
メズール@仮面ライダーOOO

【ステータス】
筋力:D+ 耐久:D+ 敏捷:B++ 幸運:D 魔力:A+ 宝具:B(怪人態)
セルメダルを大量に摂取した為に幸運を除くステータスに+が着いている。

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
陣地作成:D
ヤミーが『巣』を作るがキャスターには作成能力は無い

道具作成:ー
グリードに何かを作ることはできない


【保有スキル】
疑似生命・欲望結晶(青):A
グリードと称される錬金術に依り作り出された擬似生命体。キャスターは水棲系生物の力を宿した青いメダルを体内に宿す。
欲望の結晶であり、グリードの細胞でも有るセルメダルを人間に投入して、ヤミーという使い魔を作成する能力。人間への擬態を可能とする変化の二つのスキルの効果と
五感が正常に働かない感覚異常。欲望に支配された精神性からくる精神異常のバッドスキルの効果も持つ。
メダルの塊でしか無い為に死の概念を用いた攻撃に耐性を発揮する。

戦闘続行:D
キャスターそのものと言えるコアメダルが一枚だけの状態になっても、死なずに逃げ延びることが可能。
ウヴァさんを引っくり返す水流も出せる

吸収(偽):A
セルメダルを吸収し魔力に変える。膨大なメダルを取り込めばステータスを向上させることができる。
セルメダル限定能力

場面転換:EX
取っ組み合ってジャンプすれば人気の無い場所へと移動できる。
“昭和”とカテゴリーされる者達なら確実に採石場になるが、キャスターの場合は一定しない。大抵は林の中に移動する。


【宝具】
欲核結晶・海王(青メダル・シャウタ)
ランク:C 種別:対 レンジ :0 最大補足:自分自身

800年前に生み出された、水棲生物の力を宿した10枚のメダルから一つを抜いたもの。一つ一つのメダルが魔力炉としての機能を持つ。
この形態はセルメンと呼ばれる不完全体であり、本来の実力を出せないが燃費は良い
能力としては高圧水流の放出しか使えない
高熱に対して非常に脆弱。


青き核の発現・流れ巡る水の力(メズール)
ランク:B 種別:対 レンジ :0 最大補足:自分自身

グリードとしての本来の力。
全ステータスが1ランク向上し、水棲生物の王のグリードとしての力を行使出来る様になる。
高圧水流の他に、液状化による攻撃透過や三次元移動。液状化して地面に溶け込む事すら可能。
熱に対しても耐性を持つが、凍結攻撃に対して脆くなっている。

【weapon】
高圧水流

【人物背景】
800年前に欲深い王により作られた水の王
『愛』というものを欲しながら自分では誰も愛せなかったメダルの塊。

【方針】
このままアイドル活動を続けてセルメダルを大量に集めて能力を強化する。
346の関係者や自分を襲ってきた奴は殺す

【聖杯にかける願い】
人の肉体を得る


【マスター】
プロデューサー@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ版)

【能力・技能】
プロデューサーとしての能力・優秀。

【weapon】
名刺

【ロール】
346のアメリカ進出の責任者

【人物背景】
通称『武内』
180cm越える長身と、無口かつ強面の為に初対面の相手には怖がられ、警察には職質される。
実際には小学生相手でも敬語で話す礼儀正しさを持つ、朴訥な人柄の人物。
困ったことが有ると首筋に手を当てる癖がある

【令呪の形・位置】
首筋に三角

【聖杯にかける願い】
キャスターを受肉させて連れ帰りたいが……その為に他者の夢を踏み躙るのは気が進まない

【方針】
当面は専守防衛。アイドル達が襲われない限りは戦わない

【参戦時期】
アニメ終了後

【運用】
ネタ枠に見えるが、合法的にNPCから魔力を集められる上に、セルメダルをファンに投入する現場を抑えるのは、神秘の隠匿というルールに触れるか、純粋に事案として警察のお世話になる可能性が高く。
ヤミーを抑え様にも隠匿性が高い水棲系ヤミーは発見が困難。
こうやって魔力を集めていけば貧弱なステータスを補う強さを獲得できるだろうし、継戦能力も上がる。
時間経過と共に強くなり消耗しにくいので、後半戦にまで残れば勝ちの目はかなり高くなっているだろう。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2017年02月01日 13:20