あるいは夢いっぱいのおもちゃ箱 ◆7u0X2tPX0


 すうすう、と。小さな幼い、か弱いながらも確かな生命を感じさせる息遣い。それが心地よく私の耳に届く。

 光源が月明かりのみの、静かな部屋。暖かなベットの中で寝息をたてて眠る金髪の少女。その傍らで、私はベットに腰掛けながら眠る少女を起こさぬよう気遣いながら見守っている。

「…………」

 髪の色や顔立ち、明らかに国籍が違う二人。端から見れば年の離れた友達と見えなくもないかもしれない……いや、時と場所が違っていたら、本当にそうだった、そうなりたかったかもしれない。

  だが、違う。


 彼女の守護者にして使い魔。この月の聖杯戦争を生き抜く主従。

彼女は、マスター。私は、サーヴァント・バーサーカー

――――真名は、ジーナ・チャウ
かつてはとある組織に「SCP-2599」と呼ばれ生涯を終えた、ある一人の女の名だ。


※※※※※※


 白いトランプの導きの元。召喚されて初めて見たものは、困惑に揺らぐ緑の眼だった。
無力を容易く察せられる程の瞳、彼女と目を合わせた途端。
「『病気』をなかったことにする」願いのために覚悟を定めていた私の意志は、砂山が崩れるかのように霧散した。

 何の力も持たない無力で無垢な小さな女の子。
……「守らなければならない」。自然とその結論に達した。


 彼女は聖杯戦争について正しく認識していない。

 偽りの地、スノーフィールドでの生活。マスターの資格を得たと同時に取り戻すことのできた本来の自分と……この地で繰り広げられる願いのための争い。それらへの折り合いがつけられなかったのだろう。

 私は彼女へ本当のことを告げることができなかった。
願いのために、他者と争い血を流すことになるかもしれない醜い真実を。

『聖杯戦争とはお祭りのようなもの。私は貴方の秘密の友達』

 そんな風にでっち上げ、深く考えなくていいと云った。
そして今、彼女はそのままの、偽りの生活を享受し続けている。
 当たり前の日常。暖かな家族。楽しい学校生活。
絵に描いたような、理想の生活。
……私がかつて、理不尽にも奪われたもの。

 「当たり前」を失う痛みを私は誰より知っている。
だから……奪えなかった、壊せなかった。
偽りに重なる偽善。汚れた真実を隠す綺麗な嘘。
 いずれ失うのだとしても、せめて――――

「……貴方は私が守る。シガーロス」

 暗闇に響く、静かな決意。この胸に宿った、新たな闘志。


   ――――そう、これはきっと、確かな私の意志だ。



 言い聞かせるように、思い込むように。
 ついぞ私は、何にも気づくことはなかった。

【出展】 SCP Foundation

【クラス】バーサーカー

【真名】ジーナ・チャウ(SCP-2599)

【パラメーター】
筋力:D 耐久:D 敏捷:C 魔力:D 幸運:C 宝具:EX

【属性】
中立:中庸

【クラススキル】
狂化:EX
 バーサーカーのクラススキル
彼女は狂ってなどいない。彼女のもつ特異性が、「人として異常な状態」というだけ。
故に、彼女の場合は規格外ではなく異例的という意味合いのEXである。


【保有スキル】
無力の殻:C
 能力値が一般人と変わりない程度に落ち込み、固有スキルが発動しなくなる。
代わりに、サーヴァントとしての気配が関知されにくくなる。


【宝具】
『Not Good Enough (不十分)』
ランク:E~EX 種別:対人(自身)宝具 レンジ:― 最大捕捉:―

 バーサーカーは自分に向けられた全ての命令を絶対に実行する。
 しかし、命令を完全に完了することはできず、結果には何らかの「失敗」や「不完全さ」を孕んでいる。

 現実的に困難あるいは不可能な命令の場合、バーサーカーは異常な挙動を見せることがあり、「現実を歪曲」していると思わしき現象が発生することがある。

 これはマスターであるか否かに関わらず、バーサーカーに下された全ての命令に例外なく発動し、命令に対するバーサーカーの精神的抵抗は一切ない。
 バーサーカーが自発的にこの宝具を解放することはできない。

 また、パラドックスを含んだ命令を下しだした場合、バーサーカーは[削除済み]

【weapon】
特になし

【人物背景】
 SCP財団に収容されている人型オブジェクトの一つ。14歳の朝鮮系の少女。
 有している異常性以外はいたって普通な家族を想う女の子。


【サーヴァントとしての願い】
 自分の「病気」をなかったことにし、両親の元へ帰る。
 ……はずだった。


【出展】 SCP Foundation
【マスター】 シガーロス=ステファンスドッティル(SCP-239)
【参戦方法】 
 収容時期に白いトランプを入手。詳しい経路は不明

【人物背景】
 SCP財団に収容されている人型オブジェクトの一つ。
 外見は8歳程度の少女。肩までの長さの金髪と、眼には灰緑色の陰がちらついている。

【weapon】
スペルブック

【能力・技能】
 彼女は未知の形態の放射能を有しており、低濃度だと無害だが高濃度だと物質を素粒子レベルまで分解する。
 また、財団が「現実改変」と呼称している特殊な異常性により、現実を思うがままに改変することができる。
 彼女はその力について無自覚であり、財団は「君は魔女なんだ」と刷り込むことにより行動をある程度制御することに成功している。

 その効果範囲は彼女が認識する全て。すなわち、「彼女は見れば、変えられる」

【マスターとしての願い】 
 不明
【方針】 
 不明


 クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、 
SCP FoundationよりSCP-293(著者不明)。及びSCP-2599(著者 weizhong氏)の創作キャラクターを二次流用させていただきました。

本家ページ
SCP-239
ttp://www.scp-wiki.net/scp-239
SCP-2599
ttp://www.scp-wiki.net/scp-2599

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最終更新:2017年02月01日 12:31