貴方は次々死んでいく◆DpgFZhamPE




あなたがかわりに死ぬはずだったのよ。
これはそういうお話。
運命は一人、死人が欲しいの。
―――あなたは、大切な人を運命に差し出したの。

● ●










頭の中で、彼が泣く。
彼が泣くと、ぼくも悲しい。
だから。
だから、殺した。
殺して。殺して。殺して。
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して―――そして、ぼくが死んだ。
おやすみ、と。
少し休もう、と。
頭の中で彼が告げる。
嫌だ。
だって、ぼくが休めば、貴方はまた泣くじゃないか。
千切れていく四肢を奮い立たせ、完全に切り落とされた足は新たに生やした『何か』で代用する。

"何も出来ないのは―――もう、嫌なんだ"

これは、誰が言った言葉だろうか。
わからない。
わからない。
わからない。
薄れていく自我が、ぼくを塗り潰す。
待ってて。
待ってて。
待ってて―――待っててね、兄さん。
寂しくないよ。
もう守られるだけのぼくじゃない。
ぼくが、兄さんを寂しくないようにしてあげる。
もう、一人にしない。
バキバキ、と。
背から這って出た肉は、ぼくを異形に変える。

「ぼくが、みんな殺してあげるからねえ」

それが、最期だった。
ひらりひらり、と。
眼球に映った白いコートが舞う。
あれは、誰だっただろうか。
もう思い出せない。
誰かに、似ている気がする。

「―――SSSレート、『ジェイル』」

左に黒の剣。
右に雷の砲。
男は無差別で、無感情に。
平等に死を与える存在として、其処にいた。

「駆逐する」

白い、死神が、立っていた。
ぷすり、と。
脳が掻き混ぜられる音が、した。
そうして。
ぼくは、死んだ。


● ●

「囲めッ!逃がすな!」

発砲。薬莢が飛ぶ、音がする。
軽く十を越える銃口が、一つの人影を狙う。
飛び出す銃弾は速く。視認できる速度を越え迫る。
一斉に放たれたソレは、もはや『点』ではなく『面』の暴力として空間を襲う。
しかし。
それらは、一度として標的を捉えることはない。
発砲された時には既に、銃口の先に姿はない。
害虫のように素早くビルの壁面を走り、鬼のように破壊を振り撒く。

「あた あた あた 当たらないよ」

歌うように。快楽に酔うように。
銃弾の雨の中、ビルの隙間を蹴り上げ縦横無尽に駆け巡る。

「化物が……!」

青い制服の男たち。
『警察官』と呼ばれる役職の男たちが、悪態を吐く。
彼等も、彼等なりの意思がある。
矮小な一人の存在だが、鋼のような精神で町を守ろうと警官を目指した男たちだ。
日々鍛練を欠かさず、鋼鉄のような肉体も有している。
だが。
だが、無意味。
人は―――人外には、勝てない。

「次の、攻撃に備えて」

『悪魔』が、そう呟く。
黄色と黒のマスク。
顔全体を覆うソレは、悪魔を連想させた。
そして。
突如、『悪魔』の背から、長い―――触手が、生える。
筋肉のようにしなやかで。
鋼のように、硬い。

「ッ!?総員、伏せ―――ッ!」

警察官たちの中で、一番の年長者が声を挙げる。
だが、遅い。
振るわれた触手は一瞬で二十は越えるほど存在していた男たちの、半数の首を跳ねる。
「ごげ」「が」「ぐぎ」、と。
不様な断末魔と血飛沫をあげながら、数多もの首が跳んだ。

「…くそッ!化物が、なんなんだアイツは……!」

もう一度。
その頭蓋を撃ち抜かんと、男たちが銃口を向ける。
だが。

「遅い、よォ」

『悪魔』の肩から、散弾がバラ撒かれる。
一発一発が人の腕ほどもあるその『羽』に、多くの男たちが刈り取られていく。
正に。
その姿は、鬼。
鬼退治と張り切る戦士たちを無慈悲に刈り取る、鬼の具現そのものだった。
そうして。
数分間の攻防の後―――死屍累々の、丘が出来上がった。

「……」

周囲に、人の影はない。
否。あると言えばあるが、生者の気配は既にない。
一人の『悪魔』を除いて―――彼を囲む人影は、全て死に絶えていた。
かぱり、と。
『悪魔』は、そのマスクを外す。
現れたのは、金と黒の髪をした、まだ幼さを残す青年。
常人と違う箇所があれば、それは。
―――赫く染まった、その人外の瞳か。
青年は、のそりのそりと身体を動かし、男たちの死体に這い寄る。
そして。
―――がぶりと、喰らいついた。

「ねえ」
「ねえ」
「ねえ」
「兄さん―――僕、一人で生きていけるよ」

そうして。
口内を満たす芳醇な血液と、噛み応えのある筋肉。
突っ張った皮はまるで、人の食べ物で例えるならば焼きたてのトーストのようで。
大きな眼球は、口の中で溶けてなくなる生クリームようだ。
コリコリと音を立てるのは視神経だろうか。
生憎と人の構造には詳しくないため、何なのかは食べ終わってもわからなかった。

「大丈夫だよ、兄さん」
「僕が、僕が僕が僕が僕が」
「寂しくないように、してあげる」
「全員殺して、殺して、兄さんのところに連れてってあげるからねえ……」

譫言のように、羅列される言葉。
既に、彼は狂っていた。
邪魔物の命を奪うことの利便性を知り。
大切な人を誰一人守れなかった彼は、遂に、狂った。
……いや、これが『喰種』―――人喰いの生物としての、正しい在り方なのかもしれない。
兄を失った哀しみ。
帰る場所を失った絶望。
心の穴を埋めるために、彼は殺戮を選んだ。
力に溺れることを、選んだ。

「ああ、でも」
「みんな殺して、殺して殺して、それでも足りなかったらどうしよう」

幽鬼のように。
ふらふらとしながら、呟く。
ああ、それならば。
また新しく殺せばいっか―――と。
ジェイル。『檻』の名を冠する喰種―――リオは、そう結論付けた。
見当違いな、行く先には破滅しかない一本道。
狂った彼は、全てを失った彼は、その道を突き進む。

「―――全く、酔狂よな。
鬼に非ず、しかして人にも非ず。
人しか喰えぬ人外とは、何とも狂うた存在よ。
まだ鬼の吾らの方が分別がついているぞ?」

そして。
背後から、声がした。

ゆらり。
背骨を抜かれたかのような、軸を感じさせない動きで、ジェイルは振り返る。
其所にいたのは、赫い四肢を持つ少女。
和の装いを纏った、角を持つ炎熱の少女。
身長は、150より少し下と言ったところか。
どう見ても、人間ではない。
ぴりりと肌を刺激する威圧感。
『人ならざる者』が放つ、驚異。

「……だれ?」
「誰、とはまた可笑しなことを。汝が召喚したのであろう?
確かに聞こえたぞ。鬼を呼ぶ声が」

少女はくるりくるりと小さな身に不釣り合いなほどの大剣を掌で回し、告げる。
その口許は、愉快愉快と歪んでいた。


「『殺し尽くせ』。『この世の全ての人を喰らい尽くせ』とな。
なんという暴食。なんという狂気。
人ならざる者の狂気が従者を呼んだのだ、ならば鬼が呼ばれるのも必然であろう?」

ジェイルは、はてと頭を傾けた。
右手の甲に刻まれた、檻のような赤い痣。
いつの間にか、懐にしまわれている白紙。
―――令呪と、トランプ。
前者については何やら特別な意味を持つようだが、理解する気もない。
後者については―――そも、人の文化に触れることの少ない喰種であったジェイルは『トランプ』という概念すら知らない。
ただ。
目の前のこの少女が、己に敵意を持ってないことだけは、理解できた。

「吾のことはバーサーカーと呼べ。
真名は……まだよかろう。人の言語すら失い始めている汝に語っても仕方なかろうて」

ほれ、と。
警察車両、横転したパトカーに鎮座していた少女は近くの死体の頭を切り落としかぶりつく。

「吾はムーンセルがどうなぞ、聖杯がどうなぞ興味がない。
それが至高の盃ならば鬼のモノであろう。ただ、それだけよ。
…だが、汝は違う。何か『望み』があるのだろう?
言ってみよ」

バーサーカーと言ったか。
目の前の少女が語る。
望み。
何としても叶えたい、願い。
……自分にあるだろうか。
ジェイルは、少し悩むような仕草を見せ。

「……殺したい」

そう、呟いた。

「僕のね、兄さんはね、キジマって捜査官に殺されたんだ」
「耳も鼻も、切り落とされて殺されて、武器に―――クインケに加工された」
「今でも僕の頭の中で兄さんがいるんだ」
「だから、殺さないと」
「一人で生きていける、人を殺して食事も捕れるし」
「こんなにも強くなった」
「この、兄さんがいなくなった心の穴を埋めるために。兄さんが寂しくないように」
「兄さんが、何も出来なかった僕を心配しないように」
「みんな、みんな」
「みんみみみみんなみんみんみんんんんんみんな」
「僕が、殺さなくちゃ」

早口言葉のように羅列される言語。
何も出来ない自分を心配しながら死んでいった兄を、安心させる。
こんなにも強くなったと。
こんなにも、殺せるようになったと。
殺戮が、楽しいと―――ジェイルは、そう語る。

「ふむ」

その言葉を受けて。
バーサーカーは、ニヤリと笑う。

「それは、良いな」
「良かろう。汝が望むのなら、吾も全てを殺し尽くそうぞ」
「人っこ一人から草の根に至るまで」
「あらゆる生命を凌辱し、喰ろうてやろう」
「死体を積み上げ、このムーンセルを血の海で満たそう」
「彼の英霊の座まで。酒呑にまで轟く殺戮を繰り広げよう」
「良し。貴様ならば吾の名を教えても良いかもしれん」

ジェイルの言葉に、バーサーカーの殺意が煌めく。
かつて日本を襲い、京の町を恐怖に陥れたその口が。
あらゆる生命を焼き、喰らい尽くした焔が。
その、真名を語る。

「吾は―――茨木童子。かつて京を陥れた、大江山の鬼の首魁よ。
その愚かさ―――実に吾の好みよ」

炎熱が、華開く。
巨大な焔が背後で燃え盛り、鬼の威容を現す。
此所に。
檻の喰種と鬼が、殺戮を誓った。
目的は殺戮。手段も殺戮。
黒く澱んだ精神は、平和を壊し恐怖に落とし込む。
ああ、どうか。
彼等を止める、仁義の存在が在ることを、祈ろう。



【出展】Fate/Grand order
【CLASS】バーサーカー
【真名】茨木童子
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力B 耐久A+ 敏捷C 魔力C 幸運B 宝具C


【クラス別スキル】
狂化:B
 理性を失う代わりに能力値が上昇する。
しかし鬼故か、彼女は理性を保っている。
―――鬼のソレが、人と同じ理性かどうかはさておいて。

【保有スキル】
鬼種の魔:A
 鬼の異能および魔性を表すスキル。
天性の魔、怪力、カリスマ、魔力放出、等との混合スキル。
魔力放出の形態は「熱」にまつわる例が多い。
茨木童子の場合は「炎」。

仕切り直し:A
 戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。
また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。
同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。

変化:A
 文字通り「変身」する。

【宝具】

『羅生門大怨起』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:不明 最大補足:不明

姦計にて断たれ、戻りし右腕が怪異と成ったもの。
巨大な焔の右腕が、迫り、そのまま相手を焼き握り潰す。
見た目はまさにロケットパンチ。

【人物背景】

平安時代、京に現れて悪逆を尽くした鬼の一体。
大江山に棲まう酒呑童子の部下であるとされ、
源頼光と四天王による「大江山の鬼退治」の
際には四天王・渡辺綱と刃を交えたという。
羅生門の逸話では「美しき女」の姿で現れる。
その逸話及び痕跡から「反英雄」に分類される。
大江山の鬼として唯一生き残り、京の羅生門(もしくは一条房橋)にて渡辺綱へ襲い掛かるも腕を切り落とされてしまう。
腕は戦利品として一時こそ奪われるが、後に茨木はこれを取り戻し、いずこかへと姿を消す。
実際のところ―酒呑童子の部下ではなく、むしろ「大江山の鬼の首魁」として茨木童子が存在していたと思われる。
(強大な存在なれども享楽的に過ぎる酒呑は鬼の群れを自らが統率する気は一切なかった)
茨木童子こそが大江山に荘厳の御殿を建て、酒呑童子を義兄弟として愛おしみ、一騎当千の鬼の集団を統率して平安京で暴虐を振るい、人々を恐怖に陥れていた「荒ぶる鬼」であった。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。
聖杯がこの世の宝であるのなら、鬼である吾のものだろうて。
マスターの殺戮に付き添う。


【出展】
 東京喰種JAIL

【マスター】
 ジェイル(リオ)

【参戦方法】
 わからない。わからない。
狂うた頭ではそれを理解する頭すら有らず。
そして、理解するつもりもない。

【人物背景】
「僕達の運命を狂わせたのは、たしかにジェイルだった」

穏やかかつ臆病な性格の少年で、縞模様の服を好んで着用する。
「ジェイル事件」 の容疑者としてCCGの喰種捜査官・キジマ式に兄と共に捕獲され、コクリアに収監されていた。
アオギリの樹の襲撃に乗じて脱走するも、喰種捜査官の追撃を喰らって負傷し、更にキジマに遭遇して絶体絶命、と思いきや四方に助けられ、九死に一生を得る。
芳村達に事情を話した上で、表向きはあんていくの新入店員として働く(時系列的にロマのポジションに相当する)一方、コクリアに囚われた兄を助けるためにキジマが探している凶悪な喰種「ジェイル」を追跡する。
しかし。

「僕達の運命を狂わせたのは、確かにジェイルだった。
―――僕自身、だった。」

自分自身。
それが、ジェイルの正体だった。
潜在的に非常に強力な赫子を持つ喰種である。
かつて兄と共にキジマら喰種捜査官の追跡を受けた際、駆逐されそうになった兄を助けようとして赫子を発現し、本能のままに殺戮の限りを尽くした。自身が引き起こした凶行の記憶こそ失っていたものの、その一部始終を目撃した兄は凶悪な喰種として認識されるかもしれない弟の身を案じ、彼の力を使わせないように守っていたのだった。
キジマに告げられた、残酷な真実。
追い討ちをかけるように彼は所持していたクインケを投げ捨て、新たなクインケを展開する。
それは兄の赫包から作り出されたクインケ [ロッテンフォロウ] だった。

兄はとうの昔に殺されていた。

昂ぶる怒りと悲しみのままに、暴走する赫子。
両眼の縁から広がる格子状の痣。
これが彼の呪い。彼が背負った悲劇。
死闘の末にキジマを殺害するも、彼が背負った悲劇はあまりにも大きかった。
再会したカネキに、リオは懺悔するかのように告げる。

檻の喰種・ジェイルは自分自身だった。
自分がジェイルとして死んでいれば、兄は死ななかった。
自分のせいで、兄は死んだ。
自分はずっと、檻の中でもがいていただけだった。
自嘲するリオに、カネキは静かに涙を流す。
自分の為に泣いてくれる人がいたことだけが、リオにとっての僅かな慰めだった。
そして訪れた20区の梟殲滅戦。
喫茶あんていくは瓦解し、頼りにしていた人物は死に、兄の面影を漂わせていたカネキも助けることができず、カネキも死亡する。
そして、彼は狂った。
障害を力で排除する快感。その利便性。
狂ってしまった彼は殺戮を繰り返し、その生涯で喰種捜査官100人、民間人1000人の捕食を行う。
その驚異の怒りと凶暴性から、隻眼の梟に次ぐ二番目のSSSレート喰種として認定される。
共喰いも行っていたらしく、最期は半赫者と化していたよう。
最期には、有馬貴将特等捜査官に四肢を切断され、頭部を破壊されて駆逐された。
その後より参戦。

【weapon】
  • 四種の赫子
喰種の補食器官であり、殺戮の臓器。
羽赫・甲赫・鱗赫・尾赫の四種があり、ジェイルは喰種の中でも異質の四種赫子を持っている。
そして半赫者でもあるため、本気を出せば赫子が全身の半分を包むように展開し、莫大な戦闘能力を発揮できる。

  • 羽赫
肩付近から噴出する。
遠距離攻撃を可能とする射撃と赫子の噴出による高速戦闘が可能だが、その反面消耗も速い。
檻のように身体の周りに展開する形になっており、防御も可能。

  • 甲赫
肩甲骨の辺りから発現する。
重く、硬い赫子。
右腕を覆うように顕現し、全てを切り裂く刀と化す。
しかし硬く高い防御力を持つ反面、重く動きが鈍くなる。

  • 鱗赫
腰から発現する。
複数の触手のようにうねり、長い。
一撃の威力が凄まじく、再生力も高い。
だがその反面、脆い。

  • 尾赫
尾てい骨辺りから発現。
太い尻尾のようにうねり、万能。
だが万能が故に決定力に欠ける。

  • 悪魔のマスク
金と黒のストライプの仮面。
人として生きる喰種が己の素性を隠して戦闘するためのアイテム。

【能力・技能】
SSSレート喰種としての高い戦闘能力。
人間の数倍~何十倍もの力を持っており、弾丸を視認して避けることも。
弾丸すら貫けない硬い皮膚を持っている。

【マスターとしての願い】
 全員殺す。


【方針】
 みんな殺さなくちゃあ―――

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最終更新:2016年11月27日 12:31