あなたが誰かを殺すとき◆iwVqxDO6jU
レイチェル・ガードナーは平凡な日常を過ごしていた。
母と父、そして自分の三人家族。
夫婦仲の良い両親と、さして問題も起こさない平凡なティーンエイジャーの少女。
そこにはスノーフィールドの一般的な家庭が存在していた。
そう、存在“していたのだ“。
何時からだろうか。
リビングで仲良く談笑する父と母に違和感を持ったのは。
何時からだろうか。
普通に笑う自分に違和感を持ったのは。
何時からだろうか。
ここは自分の居場所じゃないと感じたのは。
望んでいたのは、死ではなかったのか。
決定的な亀裂。日常への拒絶。
その日、その夜、レイチェルの手元に白いトランプが出現した。
それはムーンセルの聖杯戦争への参加券であり、招待状であり、サーヴァントを呼ぶための呼符でもある。
滞りなくレイチェルの従者は召喚される。
そして呼び出されたものが真っ先に行ったのはーー殺人であった。
薄暗いリビングは鮮血で染まっていた。濃厚な血の臭いと生臭さに不快感を感じる。
もっとも、その表情は変わらず無表情だが。
そこには変わり果てた両親の姿があった。
母は腹を切り裂かれ、引き抜かれた腸とその内容物が床一面に散らばっていた。
父は首を切り裂かれ、両目と鼻を削ぎおとされた状態でソファーに座らされていた。
その惨状を見ても、レイチェルの顔は変わらず無表情だった。
その視線は、まっすぐと部屋の中心に立ち尽くす小柄な人物に向いている。
血濡れのナイフを持ち、着ている厚手のパーカーは返り血で紅く染まっている。
明らかにその人物こそがこの惨状の実行犯、もとい殺人者であることは疑いようもない。
「……だれ?」
レイチェルの問いかけに彼は答えず、ただ、撫でるような手つきで頭のフードをスルリと取ると、自身の顔を晒した。
「……っ」
レイチェルは息を飲んだ。
薄暗い部屋の中、ぼんやりと光に照らされたその少年の顔は、もはや人間のものとは思えぬものであった。
「貴方が……わたしの、サーヴァント?」
猛禽のようにするどい眼光が、レイチェルを射ぬく。
その目はよく知っている。
今の今まで忘れていた……ザックが、誰かを殺そうとする時の目と一緒だ。
少年は血に濡れたナイフを隠そうともせず、「そうだよ」と答えた。
「なんで、ふたりを殺したの?」
「殺したかったから」
「……そう」
冷たいな。と思う。
仮にも両親が殺されたのに、レイチェルの心中には奇妙なほど、感情が沸いてこない。
まるで、テレビ画面のフィクションを眺めているような気分だ。
それは彼らがNPC、だからだろうか。
「なんでそんなに顔が白いの?」
そうーー白だ。
少年の顔の色は白で覆われていた。無論その色は、雪のように白く美しい肌とは到底言い難いものであった。
その人工的で、渇ききった白色はまるで、例えるならばペンキのようだった。
その塗料を何度も塗りたくられたかのように厚ぼったい感触の肌は、一切の光を通す事無く弾き返し、ぼやりと暗闇の中で光っている。
「そう、白いんだ。僕、綺麗でしょ?」
奇妙なのは確かだが、綺麗かどうかはよくわからない。 ただ、どこか彼は嬉しそうだった。
その狂った精神が、顔を誉められたと受け取ったのかもしれない。
「なんで瞼がないの?」
レイチェルはそっと少年の目を覗いた。真っ黒い輪が、目の周りをぐるりと囲んでいる。
まるで彼の目はもう、二度と閉ざされる事は無いかのように…。
「この素晴らしい顔をずっと見るためには、こうするしか無かったんだ。
だってずっと自分の顔を見ていたいのに、瞼が邪魔なんだもん。
でも焼いてさえしまえば、もう永遠に閉じる事は無いよね。
これならずっと自分の顔を見る事ができるんだよ」
なるほど、瞼を閉じたくなくなるほど、彼は自分の顔が好きらしい。
納得はできなかったが、理解はできた。
「なんで口が裂けてるの?」
レイチェルの指摘する通り、彼の滴る鮮血のように真っ赤な唇は、笑顔の曲線を描いている。
だがそれは”描かれた”というよりも、”裂かれた”といった方が正しい。
そう、文字取り彼の唇は頬まで裂かれていたのだ。ニンマリと、笑みの形に。
その笑みから露出する、ずらりと並んだ黄ばんだ歯と、熟れた歯肉は、意外にもすらすらと言葉を紡ぐ。
「ずっと笑顔を保っているなんて、不可能だろう? だから、こうやったらずーっと笑ってられるんじゃないかって、思ったんだよ」
その時点で、ほぼレイチェルのなかで少年のイメージが固まった。
彼女は臆することもなく、ぽつり、と呟いた。
「ーーあなた、変わってるわ」
その見も蓋もない感想は、逆にアサシンにとっては愉快だったらしい。
「ハハハハハハ。ハハハハハハハ! ハーーーーーッ。 あぁーー君も、とっても変わってるよ。とっても……」
彼はひとしきり笑った後、吐き出すようにしてアサシンは呼吸を整えた。 そしてレイチェルを一瞥すると、ふいに姿を消した。霊体化したのだ。
その場にはレイチェルと、無惨な二組の死体だけが残っていた。
ある一家がひとり娘を残して惨殺された夜。
その日から、スノーフィールドである噂が流れるようになった。
曰く、この街には殺人鬼がいる。
曰く、その顔は人間とは思えないほど奇妙で、一度見たら忘れられない。
曰く、その殺人鬼は犠牲者の枕元でこう囁くという
ーー『Go to sleep』と
【クラス】アサシン
【真名】ジェフ・ザ・キラー@Creepypasta
【マスター】レイチェル・ガードナー
【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運C 宝具C
【属性】混沌・悪
【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
【保有スキル】
微睡みの殺人鬼:A
殺人鬼という特性上、被害者に対して常に先手を取れる。
ただし、無条件で先手を取れるのは夜のみ。昼の場合は幸運判定が必要
精神汚染:A
混沌・錯乱した精神状態を示す。
精神干渉系の魔術を高確率で遮断するが、同じく『精神汚染』を所持していない人物とは意思疏通が成立しない
狂気の異相:C
硬く真っ白い肌、裂けた口に真っ赤な唇、焦げた黒髪と回りが黒くまぶたの無い目。
精神耐性の低い相手がバーサーカーと対峙すると、怯み、恐怖を抱く。
精神防御で抵抗可能。
【宝具】
『寝れよ眠れ、永遠に(Go to sleep)』
ランクC 種別:対人宝具 レンジ:1~2m 最大補足:1
アサシンの犠牲者が最後に聞く台詞。
一度発動したが最後、レンジ内の人物はアサシンによって刺殺される。
判定に成功した場合、この宝具によるダメージはどのような部位でも即死攻撃扱いとなる。
回避にはAランク以上の幸運か直感などのスキルが必要。
【weapon】
無銘のナイフ
【人物背景】
Creepypastaという海外都市伝説や怖い物語の一つ「Jeff the killer」の主人公である少年殺人鬼。
ジェフとその家族が引っ越して来た先で、弟のリウと不良に絡まれてしまう。
一応ジェフは撃退したものの暴行罪によりジェフが捕まりそうになってたところをリウがジェフの代わりに捕まり、そのショックからジェフは落ち込んでしまう。
弟が逮捕されたショックから立ち直れないなか、親にビリーという向かいに住んでる子の誕生日パーティーに連れていかれた。
しかしそこに不良が乗り込んできて喧嘩になるが、漂白剤を被り最後に火を付けられ、火だるまになったまま意識を失う。
その後ジェフは病院で意識を取り戻し、釈放されたリウを含む家族の前でジェフは包帯をはずしたが、その顔は白くなり、茶色い髪は黒く焼け焦げ、唇は深い紅色に変色していた。
ジェフは鏡で自分の顔を見て一言「完璧だ!」と叫んだ。
ジェフの精神は不良たちと喧嘩してた時からおかしくなっており、家族はまだジェフが完全に狂っている事に気づいていなかった。
退院した日の夜、物音に気づいた母親が見たものは、洗面所で瞼を焼き、ナイフで口を裂いているジェフの姿だった。
ジェフは銃を取ろうとした親を殺したあと、リウの部屋に行き、彼に馬乗りになってこう言った。
「Just go to sleep」 と。
原作は英文だが元となったストーリーはこんな感じ。
【サーヴァントとしての願い】
無い。強いて言えば、殺したいから召喚に応じた。
【マスター】
レイチェル・ガードナー@殺戮の天使
【マスターとしての願い】
『本当の』お父さんとお母さんに会いたい。
【weapon】
『裁縫道具』
縫う為の道具を一通り所持している
【能力・技能】
なし
【人物背景】
記憶をなくした少女。その過去は不明。ただ、病院でカウンセリングを受けていたような気がするし、人が殺される場面を目撃したような気もする。
最終更新:2016年11月26日 11:54