Girl in dream◆As6lpa2ikE
ずっと、誰かを守る為に戦っていた。
もう、二度と、あんな思いをしたくなかったから。
もう、二度と、誰かが沈む姿を見たくなかったから。
戦って。戦って。戦って。
必死に戦って、必死に守った。
しかし、それでも、失う物はあった。
沈んで行く仲間たちは、少なからず居た。
当然だ。
戦争において、何一つ失わずに済むなんて事はあり得ない――そんな事は、とっくの昔から分かっていた筈だ。
そんな風に自分を言い聞かせながら、私は再び戦場へ赴く――散って行った仲間たちの分まで戦う為に。
戦いが始まってから、どれだけ経っただろうか。
やがて、しばらくすると、戦況は此方側の不利に傾いた。
これまで騙し騙し戦い抜いていた分、ガタが来たのだろう。
寧ろ、よくそれまで持ってきた方だと思う。
一度不利に陥ってからと言うもの、それからの展開はあっという間だった。
みるみるうちに後退して行く防衛線。
人気の無くなって行く鎮守府。
尽きて行く資材。
対して、相手の兵力の底は未だ不明。無尽蔵。
遂に、防衛線が限界まで下がった果てに、私たちの鎮守府は""奴ら""に囲まれて集中砲火を受け――そして、全滅した。
皆、死んだのだ。
爆撃した""奴ら""が何処かへ去り、誰の声もせず、瓦礫の崩れる音と炎が轟々と燃える音以外はしない鎮守府跡に私以外の生命は感じられなかった。
悲鳴一つ、聞こえやしない。
崩れた壁の下敷きになっても、私がこうして辛うじて生きているのは、いつも通りの幸運による物だろう。だが、今となってはこの幸運が憎たらしい。
敗北しておきながら薄汚く生き残っている自分が、まるで生命力だけは一丁前の蜚?梃であるように思えて、恥ずかしかった。
恥ずかしさと悔しさに、涙が流れる。
あれだけの決意をしておきながら、結局大切な物を何一つ守れなかった自分の事が許せなかった。
――私にもっと力があれば、こんな結末は無かったんじゃないだろうか?
今更しても遅い後悔が、脳内を埋め尽くす――壁の下敷きになって、身体の至る所から血が流れ、指先一つまともに動かせない状態で私に出来る事と言えば、後悔ぐらいであった。
だが、その無意味な行為にもようやく終わりが訪れようとしていた。
血を流しすぎたのか、それとも瓦礫の圧力で重要な器官が破損したのか――視界が歪み、段々と薄れて行く。
あまりにもゆっくりとやって来る死。
逆らおうとしても無駄である事が分かる、絶対的な死。
「嫌だ! 死にたくない!」
咄嗟にそんな台詞を吐いた自分に、私自身が驚き、そして呆れた。
先程己の蜚?梃並の生命力を恥じたのは何処のどいつだ。
ここまで来て、私は生きようとしているのか。ここで一人生き残った所で、どうしようと言うのだ。
死を恐れる感情的な私と、そんな私を冷めた目で見つめる私――二人の私が此処に居た。
冷めた私の考える通りだ。例え、ここから奇跡的に生き残った所で、私に出来る事など何もない。
まさか、一人で""奴ら""に復讐でもするのか? 不可能だ。鎮守府の皆と共に戦っても勝てなかった相手に、私一人で勝てるわけがない。
現実を理解し、私は唇を噛んで項垂れた。
視界は既にマトモに機能して居なかった。
彼方此方で燃え上がる炎の朱色が、ぼんやりと認識出来る程度である。
突如、白い小さな光が空中に浮かび上がった。
誰か生存者が居て、灯を照らして居るのだろうか。
そんな事を考えて居ると、ついに視界は黒く染まり、私は意識を手放した。
❇︎
聖杯戦争――と言うらしい。
目を覚ました私の元に現れたサーヴァント――バーサーカーは、私が巻き込まれた新たな戦いについて、そう説明した。
再び意識を取り戻した時、私が居たのは崩壊した鎮守府でなく、遠く離れた異国の街であった。
身体に目を落とす、血が流れて居る所か、傷一つついていない。
見事な健康体である。
どんな願いでも叶えると言う、聖杯の疑わしい説明は、私の身に実際に起きたこの奇跡を持って信じるに値するだろう。
瀕死の私をここまで修復した聖杯ならば、きっと崩壊した鎮守府や、死んだ皆だって元通りに戻せるに違いない――そんな期待が、私の頭を掠める。
「HMKZ」
未だ奇跡を実感して居る私に向けて、バーサーカーは私の名前を呼び掛けた。
黒くてやや筋肉質な彼の身体は、男性の野性味に溢れた物である。野獣という形容がしたくなるぐらいだ。
「どうしましたか?」
「夜中、腹減んないすか?」
バーサーカーが口にしたのは、食事の提案であった。
窓の外を見る。まだ太陽が昇っていた。
今の時刻が夜中であるとは言いづらい。
だが、まあ、それくらいなら些細な言い間違いだろう。
ちょうど、私もお腹が空いていたのだ。
此処は、食事を取りつつ彼と話し合う事にしよう。
❇︎
自慢ではないが、私は料理が結構得意だ。
なので、簡単な食事程度なら、半時間程度で作る事が出来る。
机の上に並べられた料理を目にし、バーサーカーは「やりますねぇ!」と称賛の声を上げた。
机を挟んで私たちは向かい合って座る。バーサーカーは麺類が好きらしく、それの器を真っ先に手に取り、中身を口に運んでいた。
「バーサーカーさん」
同じく食事を摂りつつ、私はバーサーカーに呼び掛ける。
「私は、この戦いを勝ち抜き、聖杯を手に入れたい――失った物を取り戻したいんです」
それは私の切なる思い――やり直しの願い。
かの悪しき深海棲艦を打ち滅ぼし、仲間たちを取り戻す――それぐらい聖杯ならば出来るだろう。
「ですから、どうか私に協力してくれませんか?」
機嫌が良さそうに食事を咀嚼するバーサーカーに対し、私は真摯な目で見つめた。
見た目は限りなく人間に近いとは言え、彼はサーヴァント――人を超えた英霊だ。協力してもらって損はない。
まさか、私の元に召喚されておいて「協力出来ない」なんて事は言わないであろうが、やはりこうしてはっきりと返事を聞かなくては安心出来ない。
私の言葉を受け、バーサーカーは食事を止める。
暫く、黙した後、彼は口を開いた。
「まずウチさぁ、聖杯あんだけど……」
「? はい?」
「取ってかない?」
?
それは、肯定でもなければ否定でもなく、提案であった。
質問に質問を返された形になる。
いや、待てよ。これは解釈次第によっては、肯定とも受け取れるのでは無いだろうか。
「……つまり、私に協力してくれると」
「ウン」
首肯した。どうやら、私の予想は当たっていたらしい。
ほっと、胸を撫で下ろし、「ありがとうございます」と感謝の言葉を告げる。
と、その時、また新たな疑問が私の頭に浮かんだ。
「もう一つお聞きしても良いですか?」
「ドゾー」
「バーサーカーさんには、何か聖杯に託す願いはあるんですか?」
これは、これから一緒に過ごす事になる相手が、どんな望みを抱いているのか、という単純な好奇心だ。
もし、彼もまた願望をもっているのなら、手伝ってあげたいし、何か悪しき野望を持っているならば、マスターとしてそれを阻止しなくてはならない。
「そうですねぇ……」
下を向き、熟考するバーサーカー。そこまで悩む程、数えきれないまでの願いがあるのだろうか。
数秒後、答えを決めたのか、バーサーカーは再び私の方に顔を向けた。
「やっぱり僕は王道を征く……ソープ系、ですか」
「ソープ?」
泡? 何故今ここでシャンプーの話題が出るのだろうか? 訳がわからない。
いや、これまでもバーサーカーの台詞で訳が分からないものは多々あったが、今回のそれは特に意味不明な物だ。
そこまで考えて、私は今更ながらに思いだす。
彼はバーサーカーであり、狂った存在なのだと。
そんな人物をサーヴァントとして従えて、今後聖杯戦争を勝ち抜いていけるのであろうか――私は、胸に溜まった不安な気持ちを流し落とすようにして、スープを一気に飲み干した。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
無銘(野獣先輩)@真夏の夜の淫夢
【属性】
中立・中庸
【ステータス】
筋力C 耐久A 敏捷B+ 魔力E 幸運E 宝具EX
【クラススキル】
狂化:EX
一見、バーサーカーは理性を持って普通の言葉を話し、コミュニケーションが取れるように見える。
しかし、彼の話す言葉の一部は、我々にとって意味不明で理解不能な物ばかりであり、肝心な部分でコミュニケーションが取れない可能性が高い。
【保有スキル】
真夏の夜の淫夢:EX
ホモビデオとかいうクッソ汚いジャンルであるにも関わらず、某動画サイトを中心に爆発的に普及し、本編動画が幾度の削除を食らっても再投稿され続けた――という、『真夏の夜の淫夢』というジャンルの繁栄性と不死性が顕現したスキル。
極めて高ランクの戦闘続行、仕切り直しを内包する。
これにより、バーサーカーはかの神話の大英雄にも匹敵――あるいはそれをも超えるほどの不死性を有している。
バーサーカーは最早『真夏の夜の淫夢』というジャンルの代表とも言える存在になっており、超越性を表すEXランクでこのスキルを獲得した。
真名秘匿:EX
およそ1145141919810364364人にクッソ汚い醜態を見られたにも関わらず、今日まで彼の居場所や真名が発覚していない事により生まれたスキル。
どれだけ高ランクの真名看破スキルを用いようとも、バーサーカーの真名を知る事は不可能である。
無↑辜↓の怪物:EX
生前の行いから生まれたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられた者が持つスキル。
バーサーカーの場合、それは呪いを超えた言い掛かりに近いレベルのこじつけであり、何回かのホモビ出演をした彼は、たったそれだけで世界を救ったり、人を殺したり、女の子になったり、凶悪犯罪の犯人に仕立て上げられたり――と、ありとあらゆる逸話が付け足されていった。
このスキルによって在り方が変わり、能力を付加された彼は最早生前の原型ないやん(笑) 状態になっている。
つまる所、バーサーカーは『24歳のホモビ男優の学生』ではなく『野獣先輩』という、大衆が彼に勝手に抱いたイメージが集まった存在と化したのだ。
常変の貌:EX
同じビデオの中であるにも関わらず、シーン毎に顔が全く別の物になっていた、というエピソードに由来するスキル。
これにより、敵との戦闘終了後、相手がバーサーカーの顔を覚えるのは不可能となっており、再戦時に相手がバーサーカーをかつて戦ったサーヴァントであると認識する事は出来ない。
カリスマ:E---(A+++)
群衆の心を掴む、天性の才能。
通常時は最低ランクの効果しか持たないが、相手がバーサーカーの出演しているホモビデオの熱烈なファン――所謂淫夢厨――である場合、このスキルのランクは括弧内まで上昇する。
【宝具】
『届け、そして見よ。我が到達するは歓びの境地(野獣の咆哮)』
ランク:E 種別:対軍宝具 レンジ:バーサーカーの声が届く範囲 最大捕捉:左に同じ
オーガニズムが最高潮に達した際に放たれる、甲高いイキ声。
あまりにも特徴的なその咆哮は、範囲内の知的生命体全員の注意を引く。自らにターゲットを集中させる効果があると言えよう。
また、この声を聞いた際、Cランク以上の精神耐性スキルを持っていない者は、バーサーカーのイキ様に目を奪われ、1ターンの間行動が不能になる。だが、イッたばかりのバーサーカーも当然行動する事が出来ないので、この隙に不意打ちを狙うは不可能。
『未だ遠き絶頂。銀色青年の喘ぎは響く(サイクロップス先輩)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 種別:-
生前バーサーカーが演じてみせた役の内の一つ――サイクロップス先輩へと変身する宝具。
変身によって耐久のランクはA++まで上昇する。
しかし、その代わりにバーサーカーの言語能力はますます下がり、意味不明な英語や『アーイキソ』という喘ぎ声を放つだけになる。
また、変身時に上記の宝具は使用不能となる。
『失せる境界線。彼は私に、私は彼に(野獣先輩新説シリーズ)』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 種別:-
何者でもないが故に、何者にでもなれる、というバーサーカーの無限の可能性が顕現した宝具。
女の子、著名人、フィクションキャラクター、犯罪者、天体、偉人、宇宙人、概念――どんな存在であろうとも、ほんの少しの共通点が見出されるだけで、バーサーカーはそれらになる事が出来る。
この宝具を用いれば、相手のサーヴァントに変身する事も可能であり、それ故、バーサーカーの戦闘において、ステータス差による敗北という懸念は存在し得ない。
しかし、バーサーカーが認識した事のない未知の存在への変身は不可能となっている。
【weapon】
なし。
バーサーカーとして召喚された事で、本来有しているはずの武具の殆どを置いて来てしまった。
【人物背景】
ネットでお馴染みのホモビ男優。
無↑辜↓の怪物スキルとバーサーカーで呼ばれた事が合わさった結果、彼は野獣先輩という存在がビデオ内で放った台詞や取った行動をトレースするようになっており、痛い淫夢厨のような存在となっている。
その為、彼には自我と呼べる様なものがなく、いつだって『野獣先輩が言うであろう事』を喋り、『野獣先輩がするであろう』行為をするだけ。
ネットのおもちゃにされた結果、クッソ哀れな狂人と化してしまった、悲しいサーヴァントであると言えよう。
【サーッ! ヴァントとしての願い】
地球ありますねぇ! ダイナモ感覚!
【マスター】
浜風@艦隊これくしょん
【weapon】
なし。艦装の無い浜風は、ただの女の子である。
強いていうなら、その愛くるしい容姿こそが、現時点で彼女が持つ唯一の武器であろう。
【人物背景】
片メカクレ巨乳。
ボブヘアー巨乳。
駆逐艦のくせに巨乳。
真面目な話をすると、かの武蔵や金剛、信濃の轟沈に遭遇するも、自分は生き延びたという豪運を持つ、生存能力の高い艦娘である。
性格は真面目で努力家、そして仲間思い。めちゃめちゃいい子。
それに、元が戦艦ということもあり、軍人気質な一面もある。
また、ゲーム内でのイベントやボイスから、料理上手であることも類推されている。嫁に欲しい艦娘である。
戦争なんかに参加せず、幸せな家庭を築いて欲しいものだ。
深海棲艦との戦いに敗北し、鎮守府が壊滅した世界線からの参戦。
【マスターとしての願い】
深海棲艦の全滅。鎮守府の仲間たちを蘇らせたい。
最終更新:2016年12月03日 19:28