─────失くしたのは、何?
*
スノーフィールドの一角にある住宅街。
大きな都市からは少し離れているが、不便と言うには十分に恵まれすぎているだろう環境が整っている。
「住み良い」という言葉がよく似合うその一角に、その物件はあった。
階段昇降の為の簡易リフト、低めの位置に設置された諸々の家具、極力段差が少なくなり、かつなるべく広めになるような廊下を設ける設計、等の細やかなバリアフリーが行き届いたその家は、如何にもどこか不自由のある人間の為に建てられたのだろうと推測出来るもの。
丁寧なものだ、と感心する。
元々は「海外へのホームステイ」の一環であり、それに足が不自由で車椅子を使用している彼女という人間が割り当てられた、という設定である以上、それを不自然にしない為の配慮である─────とすれば、納得も出来るが。
「あら、美森」
そんな事を考えていると、奥のリビングから一人の女性──────今は自分の母親代わりである人が、何やら夕飯の準備をしていたらしくお玉を持って現れた。
ホームステイの母親役だが、実際の母親であるかのようにフレンドリーに接してくれる為に、此方からも気兼ねなく接することが出来る存在。
父親も、厳格でこそあるものの優しい事には変わらない。夫婦が揃った時の「気の置けないおしどり夫婦」といった雰囲気は決して居心地の悪いものではなかった。
唯一いただけないところは朝食を洋食にしている事だったが、そこはそれ、彼女がここに住んでからの時間で二人ともとっくに和食派へと鞍替えさせていた。
「夕飯はもうちょっとかかるから、部屋で待っててね」
「うん、わかった」
そんな言葉を最後に、彼女はすぐ近くにある自室に入る。
車椅子でも動きやすいよう、自由に動けるスペースを広めに確保した部屋。
荷物を置き、身の回りの物を軽く整理したあと、ため息をひとつ。
─────今日は、帰ってくるのが随分と遅れてしまった。
日が既に沈み、もうじき夕飯という時間帯。
ここまで遅くなることは、ホームステイであり、かつ人に迷惑をかけることを良しとしない彼女としては珍しいと言えるだろう。
それでは、何故そうなってしまったのかと言えば─────
部屋の中心で、彼女は呟くようにその名を呼んだ。
「…シールダー」
「はいっとな」
その声に虚空から返答が返り、かと思えば、彼女の隣の空間から徐にもう一人の影が姿を現わす。
深紅の衣装に身を包んだその少女が、彼女のサーヴァント。
盾を持ち、守護する者としてのクラスを抱く、嘗て人類を護った英霊。
─────彼女が、東郷美森が聖杯戦争のマスターであるという証拠の、その一つだった。
きっかけは、本当に些細なことだった。
部屋の整理をしている時に見つけた、見慣れぬ手帳。
最初は取り違えかと思ったが、それにしては奇妙な点が一つあった。
何か持ち主のヒントは無いかと中を見れば、そこには何かが書かれていた形跡はあるものの、全てが消されて残っていない。
何事かと調査を始めた彼女だったが─────とある事実に辿り着くまでに、そう時間がかかることはなかった。
筆跡が、明らかに己のものである、と。
やがて、それが確かあると気付き─────東郷の心臓が、大きく高鳴った。
もしかしたら、それは。
事故で失われた、自分の二年前の記憶に関連するものなのかもしれないと。
しかし、それで冷静な判断力を一旦失ってしまったからこそ─────彼女の指は、次のページに挟んであった白いトランプに触れてしまった。
それが、「あの世界」での東郷美森の最後の記憶。
「…私、怖かったの」
そして、それが復活したのはこのスノーフィールドにおける学校での生活。
気を遣われつつも何かが違うと思い続けた学校生活の、その一コマ。
友達を助けた、という、ただそれだけがきっかけだった。
ただそれだけの事は、しかし、「人の為になることを勇んでやる」勇者部としての彼女の記憶の引っ掛かりになるには十分過ぎて。
ともあれ、彼女は漸く思い出した。
勇者部という、彼女の居場所のことを。
先輩がいて、後輩がいて、親友がいる、そんな幸せが存在する場所のことを。
「こうして、私の記憶が、簡単に消されてしまったこと。
友奈ちゃんや風先輩、樹ちゃんのことを、忘れさせられてしまったことが」
そして、同時に。
一時でも、完全に記憶から消去されてしまったことに、彼女は恐怖した。
あれだけ楽しかった日々を、掛け替えのないオーロラのように彩られた日々を、理不尽に奪われてしまった事が、怖くて怖くて仕方がなかった。
東郷美森は、そういう少女だ。
普通の少女と同じように笑い、悲しみ、そしてその中でも己の中に手に入れた物を無くすことに関してはとりわけ怖がるという、そこだけ見れば何とも普遍的な少女だ。
「…人を殺してまで叶えたい願いなんて、私にはない。
だけど、大切な友達が待っているのに、こんなところで死にたくない」
けれど。
東郷美森は、ただの少女というだけで終わることはない。
彼女の意志は、恐怖で絶えかけようと、そこで潰えるのではなく。
失いたくないという恐怖があるからこそ、それを護る為に何処までも強くなる、そういう意志だ。
「私は、ここから帰る。普通の日常に、どうにかして帰りたい
勇者部の皆が、待ってるから」
単純ながら、そんな折れぬ意志が篭った言葉。
未だ蕾なれど、確かな決意の華となる片鱗が、そこに僅かに覗いていた。
「そうかい」
それに答えるのは、何処か安心したような声。
いつのまにか此方を振り向いていた英霊の少女は、東郷が出した答えを肯定するように口の端を上げた。
けれど、それとは対称的に、東郷の表情は申し訳無さそうなものに変わっていく。
「…ごめんなさい。私には何も出来ないのに。
貴女に頼ることしか出来なくて、貴女の願いの為に戦う事も出来ないのに」
英霊とて、願いがある。
生前成し得なかった、或いは思い残しとして残っていた、そんな聖杯にかける願いがあるからこそ、英霊はサーヴァントとして聖杯戦争に呼び出される。そういう基本原則が存在する、という知識は、彼女も与えられていた。
だが、それを聞いたシールダーはそんなことかと笑い飛ばす。
「謝る必要なんて無いよ。アタシも、元々そんなに叶えたい願いなんて無いんだ。
そりゃ勿論、何も未練が無いわけじゃないけど──────」
そこで。
一瞬、シールダーは東郷をチラリと見る。
その視線に篭る複雑な感情を、東郷が解することは出来なかったけれど。
何故だか、そこに込められた想いを、気付かなければならないと、そうも思えたよう気がした。
「─────あの」
「─────何も、心配はいらないよ」
けれど、それを問うより先に、シールダーの言葉が、声が、それを遮った。
その声は、まさしく心強い声。
勇敢で、気丈で、聴く者を安心させる声。
そんな声音で、安心しろ、何も心配することはないとシールダーは言う。
「マスター─────いや、美森。そう呼ばせてもらっていいかな」
ふと、シールダーがそんなことを言い出した。
きっと、彼女なりの歩み寄るひとつの方法なのだろう。
そう解釈した東郷は、それに了承の返事を返そうとして。
「…出来れば」
けれど、そういう事なら、と。
東郷には、一つ条件をつけたかった。
酷く個人的な感情だが、名前を呼ばれるのなら、そっちの方が良いというほんの小さなワガママ。
「私の事は、名字で読んでもらっても良いかな?」
その、言葉で。
シールダーが僅かに静止したことに、東郷は気付きはしなかった。
それは致し方無いことだ。
彼女にとって、その思い出はまさに恋にも等しい、大切なものなのだから。
どんなことになろうときっと忘れない、色褪せない、そんな思い出を、彼女は語ろうとしたのだから。
「私の大切な友達が、褒めてくれた名字なの」
だから。
その瞬間。
シールダーの顔が、歪んで。
恨むようでも、憎むようでもなく─────ただ、悲しみを溢れさせたその表情を見て、初めて東郷は「言ってはいけないこと」を言ってしまっていたのだと気付いた。
然れど、その表情の意味は、彼女には分からず。
そして、次の瞬間には、既にシールダーの表情は元の明るいそれへと戻っていた。
「…分かった。
じゃあ、改めて、だ」
その声は、一瞬前の悲痛な表情が嘘のように明るい。
先の数秒の陰りは錯覚だったのではないかとさえ思えるような変化に、東郷が声を掛ける暇もないまま。
シールダーは、まるで心を許した親友にするように、笑いかけた。
「アタシは、どんな事があろうとあんたを絶対に守る。
だから、安心してな?東郷サン」
*
「それじゃ、アタシは軽く周囲を警戒しとくよ。もしなんかあったら呼んでね、超特急で戻ってくるから」
話の後。
そう言って、彼女は家の屋上へと飛び上がっていった。
そんなシールダーの背中を見守りながら、東郷はほう、と息を吐く。
彼女の一言、苗字で呼んでくれ、と頼んだ時の彼女の顔が、やけに印象に残っていた。
何か気に障るような事を口にしてしまっていたのだろうか、と思い、改めて自分の発言を思い返す。
─────あの英霊にも、友達がいたのかな。
結果、出てきたのはそんな結論。
有り得る話だ。なんせ、少なくとも外見だけなら己より年下だ。垣間見せる相応の無邪気さは、まさしく年齢の通りの精神性とも見る事が出来る。
そうなると、寧ろ。
それだけ幼いながら、英霊として戦わなければならなかった理由とは、何だったのか─────それが、気になってしまう。
彼女のような幼い少女までも戦いに駆り立てたそれに、東郷は想いを馳せる。
盾の英霊、と彼女は言った。ならば、守りたかったものがあったのだろうか。彼女は、それを守る事が出来たのだろうか。
けれど、──────そう。
今の己のように、あのような少女に守らせるだけというのは、違うだろう。
人を助ける勇者部の一員として、そう思う。
東郷美森は、優しい少女だ。
サーヴァントとは言えども、自分よりも幼い少女である彼女を戦わせることに関して、罪悪感を感じずにはいられない程度には。
(─────やっぱり、私にも出来ること。何かあるはず)
だから。
だから、東郷美森は願う。
何より、己が元の世界に帰り、友達と再び笑い合いたいから。
そして、それまでの自らの相棒─────シールダーを、ほんの僅かでも支えられるように、戦うだけの力が欲しい、と。
…彼女は、未だ知らない。
その身体に刻まれた記憶も、戦闘によって呼び起こされる恐怖も。
そして何より、彼女のスマートフォンの中に眠る─────戦う為の、「力」の存在さえも。
*
「そうかい」
寒空の下。
シールダーは、一人呟く。
周囲の見回りと言ったのは、嘘ではないが、真実全てではない。
屋根に上り、警戒を怠らずに周囲の夜闇を見渡しながら、彼女はちょこんと座り込む。
冷え込みつつある夜、吐いた息が白く残り消えていく様をぼうっと見ながら、彼女は独り言を続けた。
「いやー、ホント。酷い話もあったもんだよなあ」
酷い話。
彼女がそう思うのは、無論ひとつの価値観としては当然のことだ。
巻き込まれただけで、己の命を懸けた戦いに挑まざるを得なくされたのだから。
これが、自分のように世界を守る為に単純に向かってくる戦えばいいのだとすればまだ良いが、幼いながらに没した彼女でも「戦争」という呼称からは一切の生易しさを感じない。
騙し合いだとか策謀だとか、どちらかといえばそんな言葉を思わせる、そんな響きだ。きっと、目の前の敵にただ単純にぶつかればいい、という話になることはないのだろう。
それに、願いが叶うという景品にしたって、前提として「人を殺さなければならない」以上は、よっぽどのものが無ければ躊躇うだろう。
─────けれど。
シールダーが残酷だと言ったのは、決してそれだけが理由ではない。
彼女が漏らしたその言葉に込められた、自嘲にも近い想いが、それを端的に表していた。
己のマスターの環境ではない、ひどく個人的なこと。
この催しを残酷だと評した、その理由。
「─────アタシが逢いたかったのは、『須美』なのにサ」
シールダー『三ノ輪銀』が逢いたかった少女の、よりにもよって変わり果てたその姿を呼び寄せる、なんて。
悪趣味というか、性格が悪いというか─────とにかく、己をここに送り込んだムーンセルとやらに対して怒りに似た感情が湧き上がる。
それを怒りだと彼女が断じないのは、偏にそれを上回る感情が大きすぎて、そこまで感情が追いつかないから、だが。
「…なあ、須美」
ぽつり、ぽつり。
幼き英霊は、空を見上げて一人呟く。
「こっちは一目見て分かったのにさ。須美ったら、ずっとポカーンとしちゃって」
最初に目覚め、己の目の前に彼女の姿を見たとき、シールダーが抱いた感情は様々だったけれど。
最も強く感じた、己の親友をここに招いた者への怒りと共に─────再び巡り会えたという喜びが無かったとは、言い切れない。
そんな親友が己を見たときの、不安そうな声。
須美、と呼んだ己に、深い困惑と共に漏らした言葉。
『…だ、れ?』
それだけなら、冗談だろ、で済ませたかもしれないけれど。
目の前の、言ってしまえば堅物である彼女がそんな事を冗談でも口にするなんて、何より自分が良く知っていて。
何があったのかは知らないが、それでも『自分を覚えていない』という事実こそが、銀にとっては重すぎる事実だった。
暫く接している内に、その事実が如何なるものかは理解した─────きっと戦いで起こった事故か何かで記憶を失ったのだと。名前が変わっている理由など不可解な点はあれど、大まかに言えばそういうことなのだろう。
しかし、それは決して思い出が失われた悲しみに納得を齎すものではなく。
或いは再会を喜んだ報いか、或いはその喜びすら弄ばんとしていたのか、と、慟哭せずにはいられなくて。
「覚えていてほしく、なっちゃうじゃん」
─────そして。
その慟哭は、同時に、彼女に悪魔の囁きを齎した。
三ノ輪銀とて、少女だ。
四国を護った英霊として殉じた身であれど、そもそもその命を散らせたその時に、彼女は未だ世の道理を大して理解しようもない程度には幼かった。
勿論それは、彼女が完全にものの解らぬ阿保であるという事ではない。
だが、護る為に命を懸けて戦った親友から忘れられていたという事実に対してすぐに気を持ち直す事を求めるには、彼女の年齢はあまりに残酷だと言わざるを得ない。
だから。
自分が死んだ後の鷲尾須美に、何があったのかは知らないけれど。
もしもその過程で失った記憶を、奇跡という手段を以て覆せるのであれば。
─────己の戦いの結果によっては、彼女の記憶を取り戻せるのかもしれないとしたら、と。
そんな事を、考えずにはいられなかった。
「…英霊、もとい勇者失格なのかね、アタシは」
自嘲の笑みが、冷えた空気の中で破れたように広がる。
それは、或いは彼女の純粋さの証明、勇者としての規範を胸に抱いていることを表す言葉。
友の為に戦った彼女だからこそ、完全に己の為に戦うこととなる道を選ぶことは、忌避こそせずとも迷うには充分なことではあった
「でも、まあ─────どっちにしろ、やる事は同じか」
─────ならば、と。
迷ってこそいるけれど、それはそれとして。
一つ伸びをして、顔を上げる。
そうだ、変わらない。
誰かが、いや、「彼女」が危機に瀕している。
そして、それを護ることが出来るのは己のみ。
つまり今この状況が、そういうことであるのなら。
三ノ輪銀として出来ることは、何一つ迷う事もなく、何一つ変わる事も無い。
むしろ、それに対する決意はより固くなったと言っても過言では無いだろう。
「何度でも─────いや、『今度こそ』、本当の意味で守ってみせる」
空を睨む。
今度は、絶対に護る。
ただ護るだけじゃない。今の須美が、東郷美森が持つ記憶。それを失わなければならなくなる悲劇なんてものが、絶対に襲い来ることの無いようにする。
もし何らかの悲劇が起きてしまうというのなら、その総ては自分が引き受けよう。
大丈夫だ。友達を護る為ならば、自分がどれだけの力を発揮できるかは、自分が一番よく分かっている。
そして、もし中身が少し違ったって、須美が須美である事に、友達であることに変わりは無い。無いのだ。
だから─────
「だって、アタシ達は─────」
ダチコーだから。
そう、言おうとして。
頭を過ぎったのは、己を見た「東郷美森」の。
(…私、怖かったの)
寂しそうな顔。
(勇者部の皆が、待ってるから)
嬉しそうな顔。
(私の事は、名字で読んでもらってもいいかな?)
─────友を想う、顔。
─────結局、吐いた息だけが。
華の眠る雪の大地で、銀(しろがね)の色に輝いて、消えた。
【クラス】
シールダー
【真名】
三ノ輪銀@鷲尾須美は勇者である
【属性】
秩序・善
【パラメーター】
筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:C 幸運:E 宝具:B
【クラススキル】
対魔力:E
魔力に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
騎乗:─
騎乗の才能。クラススキルとして付与こそされているが、事実上機能していない。
【保有スキル】
勇者:A
神樹に選ばれた者としての力、そして選ばれた者として戦った彼女の生き様そのものを表しているスキル。
同ランクの勇猛スキルを持つほか、Cランクの神性スキルを内包する。
戦闘続行:A
決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。「往生際の悪さ」あるいは「生還能力」と表現される。
情熱の華:B
彼女が戦闘する際に信条とし、友の勇者にも受け継がれていた「根性」「気合い」といった概念が、彼女の力のモチーフの華と合わさってスキルに昇華されたもの。
戦闘時、窮地に陥った場合、それが窮地であればある程大きくステータスに補正がかかる。
トラブル体質:B
不運に巻き込まれる体質。言うまでもなくデメリットスキルである。
彼女の場合、無視することは出来る程度の、然程大きくないトラブルが多く襲ってくる。勿論素通りすることは出来るが、シールダーの性格上それを良しとして通り過ぎる可能性は限りなく低い。
【宝具】
『紅蓮の華、尚も朱に染め上げて』
ランク:B 種別:対友宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:3
仲間達が危機に陥った際に、他の二人を逃し、彼女一人で戦いその命と引き換えに敵を退けたことに由来する宝具。
己以外の仲間を強制的に戦闘から離脱させ、かつ同戦闘に於いて「確実に敵を退却させる」。退却させられた敵は、この宝具によって逃がされた相手に対し一定期間接触することは出来ない。この期間は最大で一日、最低でも四半日は効果が続くが、その度合いは本人の持つ対魔力スキルによるほか、神性スキル、天地人でいう天属性や星に所以する力、「蠍」「射手」「蟹」の要素を持つ敵には最大限に効果を発揮する。
尚、「味方、敵共に総数が3である」「劣勢である」という二つの条件を満たさなければ発動は不可。また、この条件における総数とはサーヴァントだけでなく戦闘に参加しているもの全て─────双方のマスターや己自身、操られた一般人も含む─────である。
己そのものを盾とし護るべき者を護った逸話の具現であり、これを所以として彼女はシールダーとして現界した。
【weapon】
両手に握った二挺の斧。神樹の力で生み出された物であることから相応の強度と神秘を誇る。
彼女の身を覆うくらいの大きさであることから、重ね合わせ盾として用いる事も可能。
【サーヴァントとしての願い】
須美を護れれば、それで良い─────?
【人物背景】
小学六年生にして、四国を護る勇者としての神命を授かった少女。
同じく神命を授かった二人の少女と友情を育み、そして─────最期はその友を護る為に命を散らした、間違う事無き英雄。
この聖杯戦争に於いても、同じように友を護る事を願ったが─────その願いが齎した思いも寄らぬ真実の開示に、僅かにだが揺らぎつつもある。
【運用】
戦闘続行スキル・情熱の華スキルと素のステータスを見て分かる通り、白兵戦でしぶとく生き延びることにかけては相当に優秀。勇者スキルでの勇猛により精神的な搦め手も効果が薄い・攻撃力に補正がかかるのも相まって、攻める事にもそれなりに秀でている。
しかし、敏捷の低さから、素の筋力で押し負けがちな白兵戦に特化した相手に対して単騎で真っ向から勝負するには少々心許なく、正面から戦い辛いアサシンやアーチャーなどもやり辛い敵となる。
宝具の条件も合わせて考えると、仲間を見つけた上で戦闘においては盾役を務める事が最適な運用方法だろう。
…なお、マスターが思わぬ存在であったこと、シールダー自体が幼いと言っても過言ではないことから、僅かに精神面で揺らぎがあることも留意しておく必要がある。尤も、シールダー自身が極力その揺らぎを隠しているのだが。
【マスター】
東郷美森@結城友奈は勇者である
【参戦経緯】
部屋の整理をしている最中、二年ほど前のものと思しき手帳と同時にトランプを発見。
【マスターとしての願い】
元の世界に、勇者部の元に帰る。
【weapon】
平時は無し。後述する『勇者』に変身した場合、それと同時に以下の武器を装備する。なお、これらは自由に生成・消去することが可能である。
・精霊「青坊主」の加護を受けたスナイパーライフル。これのみ「シロガネ」という名を持つが、当人はそれを知らない。
・精霊「刑部狸」の加護を受けた短銃。
・精霊「不知火」の加護を受けた拳銃。
【能力・技能】
『神樹の勇者』
神樹という、彼女の世界を守護する神の集合体の力を身に纏い、変身した姿。上記の武器を出現させることが出来るほか、耐久力なども含めた身体能力が大幅に向上する(足が動くようになる訳ではない)。
また、変身した状態で「勇気を示すような行動をする」ことによって胸元の朝顔の模様に色がつく。これがある程度溜まることで「満開」という勇者の切り札を発動、高位のサーヴァントにも十分に匹敵し得る戦闘力を一時的に発揮出来る。だが、これを発動した後、「散華」と呼ばれる機能によって身体機能の何れかが失われる。
…なお、彼女は未だ勇者として覚醒はしていない。その為に変身する為のアプリもロックされており、現在は任意での変身は不可能だし、そもそもその存在自体を本人が理解していない。
戦うという強い意志があればロックは解除され変身できるようになるので、もしも戦闘に参加した際に己も戦う事を決意すれば、或いは─────
【人物背景】
讃州中学校に通う二年生。勇者部という、「人の為になることを勇んでやる」部活に所属し、親友や先輩、後輩と共に日々人助けに勤しんでいる少女。
二年前の記憶を無くしているが、本人は事故に遭ったせいだと説明されている。
過去の戦いも未来の戦いも、何も知らない時点において、彼女はこの聖杯戦争に巻き込まれることとなった。
【備考】
※上記のように、樹が勇者部に所属してからバーテックスの襲撃が起こるまでの何処かの時間から呼び出されました。その為、現時点では勇者の力については存在そのものを知りません。