エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル&アサシン◆WZmE.HBPA6
たとえ世界が滅ぶとしても、成し遂げたい願いがあった。
否。その願いのためなら世界が滅びようと構わない。
否、否。願いを叶えるためには、世界の滅びが不可欠なのである。
彼女の――彼の願いは、世界の終末を見届けた上で、殺されることだった。
世界に滅びをもたらした悪魔に。
あの恐ろしい、しかし孤独な幾千万の刃の王に。
殺されることが、望みだったのだから。
――……エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル。それが私の名前。はっきりと思い出した。
夜明けの街に、一人立ち尽くす美女。
金髪を背まで伸ばし、細い体を薄手のストールに包んだ姿は、どこか儚げな空気さえ漂わせていた。
手には大ぶりのトランクケース。女性の細腕にはやや大きすぎるきらいのあるそれを、片手で造作なく保持している。
細めた視線はやや前方、今にも消え逝かんとする男と女に向けられていた。
「終わりましたよ、マスター」
エレンディラの傍らに、新たな人影が現れた。
全身を雪のような白に統一したコーディネート。ただ一点、拳を包む手袋だけが黒い。
エレンディラとは対象的に、衣服の上からでも鍛え上げた筋肉の造形がはっきりと分かる。戦う者の肉体だ。
長身のエレンディラをしてなお見上げるほどの体躯。感情の読めない瞳、無骨な口髭が野性的な印象を抱かせる。
彼こそがエレンディラの召喚したサーヴァント、アサシンであった。
「ご苦労様、アサシン。鮮やかなものね」
見えなかったけど、とは言わなかった。それを口にするのは彼女自身のプライドが許さなかったからだ。
エレンディラとて、砂の星「ノーマンズランド」にて殺戮を撒き散らした殺戮異能集団「GUNG-HO-GUNS」の一員である。
戦闘こそ本分であるし、主であるミリオンズ・ナイヴズ以外の存在に負けると思ったことはない。
その彼女をして。今のアサシンの戦闘は、何一つ理解することがかなわなかった。
なにせ、アサシンが姿を現し敵のマスターとサーヴァントが身構えた次の瞬間――彼らは絶命し、地に倒れ伏したのだから。
――これが、サーヴァント。冗談じゃないわね……ナイヴズ様と同等か、それ以上ってワケ?
鉄面皮で以って、エレンディラは動揺を押し殺す。だが果たしてアサシンから隠せ通せたものか。
もちろん、純粋な力で言うならナイヴズだって似たような芸当は出来るだろう。
無から有を生み出すプラントの変異体、異次元より力を抽出・加工し自在に振るうナイヴズや彼の兄弟なら、一瞬で敵を鏖殺することは間違いなく可能だ。
だが、それを知覚させないということはない。
事後であれ事前であれ、彼らが力を発する兆候はエレンディラにも読み取れるし(防げるかとはまた別の話だが)、破壊の余波は痕跡となって現世に残る。
しかし今のアサシンにはそれがない。まさしく始まりと終わりが同時に来た。
一瞬たりともエレンディラが気を抜いたということはない。にも関わらず、この戦闘がどういう経過を辿ったか、本当に何一つわからないのだ。
――参ったわね。これはもう、認めるしかないのかしら。
トランクと逆の手には何もない。だがつい数分前には、白紙のトランプが握られていた。
都心の一等地でコスメショップを経営するオーナー兼、敏腕ビューティアドバイザーのエレンディラ。
彼女にはある噂があった。一見すると非の打ち所のない美女だが、本当の性別は田んぼの下に力があるそれであり、指摘した者は二度と人前に出られない顔になる、と。
実際エレンディラも軽い気持ちで突っついてきた常連に手酷い報復を加え、ぷりぷりと怒りながら帰途につき……そこで襲われた。
壮年の男性と、学生らしき少女。少女の方は見覚えがあった。何日か前に店に来た顔だ。
彼女はよくわからないことを言った。キャスターの薬品を店から流通させるだの、市内を裏から支配するだの。
そして少女が男に命じ、エレンディラの眼を覗き込み、意識が遠くなった瞬間……空の手にあのトランプが現れていた。
怒涛のように流れ込んできた記憶。偽りの生活。真実の過去。
意識が鮮明になる。怒りが満ちる。そしてエレンディラは叫んだのだった。
――こいつらをブッ散らせ!
そして、トランプが輝いた次の瞬間、現れた。このアサシンのサーヴァントと名乗る強面の男が。
優雅にエレンディラに一礼すると、少女たちに向き直り、懐から取り出した青い薔薇を放った。
少女らがその薔薇を警戒して僅かに後退した瞬間、アサシンは右腕の時計らしきものを操作し……終わった。
気がついた時には決着は着いていた。今はもう、この場に生きている者はエレンディラとアサシンだけ。
アサシンは冷たくこちらを見下ろしている。次の指示を待っているのか、それともエレンディラを値踏みしているのか。
何を言おうか迷ったエレンディラだが、そのとき自身の化粧が汗によって乱れていたのに気づく。
息を吐く。何をするか決まったからだ。
「とりあえずシャワーを浴びたいわね。化粧も直さなくちゃ」
「おや、随分と呑気なものですね。そんな悠長な状況ではないことくらい理解していると思っていましたが」
「状況? ただの殺し合いでしょ。みっともない顔で人前に出るのは私のプライドが許さないのよ」
そう……これはただの殺し合いだ。エレンディラにとって、別に非日常でも何でもない。
殺し、殺され、殺す。それがエレンディラ・ザ・クリムゾンネイルの日常。思い出したらなんてことはない。
アサシンの力には面食らったものの、それだけだ。自分より強大な存在と付き合うことなど初めてではない。
だから、怖れない。脅威には思うし、戦えば負けるだろうともわかっている。それでも、頭を垂れることはしない。
エレンディラの主はミリオンズ・ナイヴズただ一人であるからだ。
「それとも、ご不満かしら? 血と汗に塗れてドブネズミのように這い回るのをお求め?」
「いやいや、まさか。美に理解のあるマスターであるなら私は大歓迎ですよ。ええ、あなたのように強く美しい者こそ、私を従える資格がある」
白装束の男は唇を三日月に歪め、再び腰を折る。
どこか胡散臭い印象は拭えないが、それがアサシンなりの忠義の証だということらしい。
「私の真名は黒崎一誠。またの名を仮面ライダーコーカサス……以後、お見知り置きを」
「イッセー、ね。あのおっ死んだサムライと似たような名前だこと。まあいいわ、よろしくお願いするわねアサシン。
……私にはどうしても成したい願いがある。あんな終わりなんて、絶対に認めることは出来ない」
エレンディラにある最後の記憶は、敗北の瞬間だった。
遥か格下と見ていた裏切り者の小僧ども、リヴィオとラズロにとどめを刺された、屈辱の記憶。
だが本当に悔やむべきはこれではない。何より、誓約を違えてしまった。
ナイヴズが世界を滅ぼし、その様を見届けた後に殺されるという、あの誓いを。
エレンディラ・ザ・クリムゾンネイルの終末は、ミリオンズ・ナイヴズによって与えられるものでなければならない。
エレンディラは死など恐れない。恐れるのは、無為に死ぬこと。意味のない死。
ナイヴズではない誰かによってもたらされる死など、決して受け入れるわけにはいかないのだ。
「ふむ、構いませんよ。何でも好きに願われるがよろしい。私も私で、この薔薇にかけて証明しなければならない。
天の道などではない、この私こそが唯一無二の最強であるということを」
アサシンが、少女の遺体から青い薔薇を拾い上げる。
少女の血で紅く染まった青い薔薇。美しくも棘がある、死出の先触れ。
エレンディラはその薔薇……血に濡れた薔薇の美しさに、目を奪われていた。
「天に梯子を掛け、この手に掴んで引きずり落とす。今度こそ成し遂げてみせましょう」
そして、アサシンとともに明けゆく空の向こうへと手を伸ばす。
掌からすり抜けた夢を、もう一度追い求めるために。
【クラス】
アサシン
【真名】
黒崎一誠@劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE
【属性】
【ステータス】
筋力B+ 耐久B 敏捷A+ 魔力D 幸運C 宝具B
【属性】
秩序・悪
【クラス別スキル】
気配遮断:EX(C)
通常時は「Cランク」相当の隠蔽能力しか発揮しない。このスキルが真価を発揮するのは後述の宝具を開放したとき。
【固有スキル】
勇猛:A
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。また、格闘ダメージを向上させる。
無窮の武練:A
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
武の祝福:A
天賦の才を弛まぬ鍛錬によって磨き上げ、武道における一つの極致へと到達した者。
極限まで精密化・最適化された動作は敵の意識の間隙を突き、耐久値を無視した一撃を与える。
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
【宝具】
『黄金なりし不毀の甲殻(スペリオル・コーカサス)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
地球外生命体「ワーム」に対抗するために作られた「マスクドライダーシステム」の一つ。
カブティックゼクターを呼び出しベルトに装填することでシステムが起動、「仮面ライダーコーカサス」へと変身する。
従来のマスクドライダーと違い重装甲形態「マスクドフォーム」はオミットされている。
右肩にブレード兼用のショルダーアーマーを装備するほか、携帯する武装はない。
しかし基礎スペックは全マスクドライダーシステム中最高であり、黒崎自身の卓越した格闘技術によって無手ながら恐るべき力を発揮する。
変身中は以下の機能を使用可能となる。
「クロックアップ」 カブティックゼクターが生成したタキオン粒子を制御し、違う時間流に突入することで擬似的に高速移動する。
「ライダービート」 カブティックゼクターが生成したタキオン粒子をまとい、一時的に腕力を強化する。
「ライダーキック」 ハイパーゼクターが生成した膨大なエネルギー「マキシマムライダーパワー」を脚部に集中し放つ超強化キック。
『手向けよう、葬送の青き薔薇を(クロノス・ローズ・ブルー・アワー)』
ランク:B++ 種別:対時間宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
『黄金のライダーと戦う者は、戦う前にすでに敗北している』 という逸話から昇華した宝具。
ハイパーゼクターを召喚し、マスクドライダーシステムを更に強化する。
この宝具を開放した瞬間、アサシンはあらゆる存在の知覚から離脱する。これは生身の認識に留まらず、機械・使い魔の監視も同様。
気配遮断スキルは「A+++ランク」にまで上昇し、攻撃態勢に入ってもランクが低下しない。
任意の敵一体に攻撃を仕掛け、その攻撃が終了するまで効果は持続する。ただし、同じ相手に効果が発動するのは一戦闘につき一度のみ。
本来ハイパーゼクターは時空間を自由に駆け巡るほどの力を所有者に与えるが、黒崎がその力を使いこなしたという逸話はない。
そのためできるのはせいぜい短時間の超・超加速、あるいは他者が使う時間制御の無効化、といった程度に限られる。
また、後にハイパーゼクターの使い手となるカブトと違い、コーカサスはこの宝具を使用してもフォームに変化は起こらない。
仮面ライダーコーカサスは元々このハイパーゼクターとのマッチングを重視して設計されたシステムであり、通常形態が既に最もハイパーゼクターに適した状態であるため。
【weapon】
なし。徒手空拳で戦う。
【人物背景】
ワームの侵攻を受け滅びの危機に瀕する世界において、対ワーム組織 『ZECT』 に所属する男。
通常の指揮系統の外、ZECT総帥からの直接指示によって動き、組織にとって害となる者を秘密裏に抹殺する殺し屋の役割を担う。
常に青い薔薇を持ち歩き、始末するターゲットにその薔薇を手向ける。その姿を見た者は誰もいないが、犠牲者の傍にある青い薔薇が彼の伝説を立証する確かな根拠となる。
最も強く、最も美しいもののために戦う……という信条を持つが、これが指すのは自分自身のこと。
つまりは自分こそが最強であり、自分さえ存在するのなら世界などどうでもいい、という歪んだエゴの持ち主である。
天の道を往き総てを司る……つまりは己と世界を合一させあらゆる存在を守護せん、とする天道総司とは対極の思想であり、当然のように激突した。
最終局面において、人類側の最高戦力と呼べる天道総司=カブト、加賀美新=ガタックの二人を同時に相手取るも、苦もなく圧倒する。
ガタックを瀕死に追い込むも、カブトが一瞬の隙を突いて力の源であるハイパーゼクターを強奪。
コーカサスと同等の存在であるハイパーカブトへと変身し、「最強のライダー」の称号は天道総司へと奪い取られた。
そして新たな力に目覚めたカブトの猛攻により破れ、宇宙に散った。
【サーヴァントとしての願い】
己こそが最も強く、最も美しい存在であると証明する。
【マスター】
エレンディラ・ザ・クリムゾンネイル@トライガン・マキシマム
【マスターとしての願い】
ナイヴズがもたらす終末を見届け、彼に殺されること。
【weapon】
トランクケース型の弾数無限巨大ネイルガン
【能力・技能】
特別な異能はない。
極めて高い肉体的スペック、敵の内奥まで見透かす観察眼、戦闘経験からなる対応力、と純粋に人間の持てる性能を極限まで突き詰めた、ただの最強の真人間。
【人物背景】
ミリオンズ=ナイヴズ率いる殺人集団「GUNG-HO-GUNS」GUNG-HO-GUNSのNo.13(ロストナンバー)。
容姿はたおやかな美女そのものだが、性別は男性。オカマ。ただしそれを指摘すると本気で殺しに来る。
人体改造、異能など人間の範疇を超えた極まった殺し屋集団の中にあって、ただ一人の真人間。
だがその身体能力・戦闘センスは桁外れであり、さしたる理由などなく単純に強い。
戦闘経験も豊富であり、心の弱い者には殺気を放つだけで無数の釘が津波のように襲い来るビジョンを見せることすら可能。
トランクケースに偽装したネイルガンを使う。ネイル、といっても釘のその大きさは1メートルを優に越え、鉄板すら一撃で貫通する威力を誇る。
人類殲滅を目論むナイヴズの腹心の部下として動く。最終的にナイブズはエレンディラをも殺すつもりだが、それを理解し心待ちにしている。
しかしその願いが叶う前に、リヴィオ・ザ・ダブルファング&ラズロ・ザ・トライパニッシャー・オブ・デスの二人(一人)と戦い、敗北した。
表側のロールはコスメショップの経営者兼、凄腕のビューティアドバイザー。
最終更新:2016年12月03日 11:09