世界で一番 ◆DpgFZhamPE


火花が散る。
鉄と鋼が擦れ合い、戦の境界線を生む。
片や銀の甲冑に身を纏いし騎士。
その手に輝く銀の宝剣は、風を斬り敵を斬り栄光を輝かせる。
さぞ生前は数多くの武勲を勝ち取ったのだろう。
その神秘は光輝き、見た者を魅了する。
降り下ろされる刃は雷が如く。
返す刃は焔が如く。
彼の宝剣の前では、あらゆるモノが存在を赦されない。
だが。
だが。

「―――滾る」

だが、しかし。
その輝かしい宝剣は―――何の特別製も無い、ただの武人の槍に弾かれる。

「滾る」
「滾る。滾る。実に滾るッ!!」

撓る槍は神速の如く。
その一撃は、必殺を体現する。

「いやはや、滾る滾る!
年老い死に絶え何を悟った気になっておったのやら―――武とは生き死にの境界を巡ってこそ。
儂も、所詮は檮?茸の如く死に絶えるまで覇を競う化生であったか!
良い、良い。全く以て良い!」
「決闘中に、何をべらべらと……!」

宝剣の勢いが、倍増する。
武人の槍が神速ならば。
その宝剣は土石流が如く、強大な質量と筋力を以て降り下ろされる。
しかし。
しかし、至らず。
武人の首を苅るには覇気が足りず。
技が足りず。身体が足りず。
何もかもが足りていない。

「遅い遅い。良いのか。
其処まで遅く振るうなら―――その宝剣、我が槍で叩き折って終いにするが」

騎士が感じたのは―――殺気。
この一瞬。
時間にしてみればほんの一秒にすら満たぬ間。
何かを思うには、余りにも短い間。
しかし。
剣士は―――己の死を、視た。

「我が槍に『二の打ち要らず』。
必殺必倒、此の槍に一切の矛盾無しと知れ」

回避を。
―――もう遅い。
防御を。
―――否、そのような軽い業ではない。
迎撃を。
―――これだ。
剣士は一切の防御を捨て、己が甲冑に全ての魔力を籠める。
武人の一撃を、受け反らし迎撃を叩き込む。
この状況における最大の一手。最高の一手。
―――だが、しかし。
それは、この武人を相手にする場合、最悪の一手と化す。

「獲っ―――!!」

獲った。
剣士は、そう確信した。
己が甲冑を信頼していた。
あの様なただの槍に貫かれるほど柔くはないと。
それが、一番の悪手。
一撃必倒。
无二打。
『牽制ですら相対する者を絶命させた』と謳われる、二度を必要としない刺突。
迎撃は叶わない。
『この一撃を受けた後』。
そう判断したことが、最大の過ち。
七孔噴血。
素手ですら一撃で相手を絶命させた、その神槍の撃。
剣士は己の敗北を理解することも無く。
心の臓を貫かれ―――消えた。




○ ○




貌に付いた剣士の血が、粒子となって消えて行く。
勝った。勝った。勝った。
この身体を槍と成し、武を競い合い、一撃必倒の名の元にその全てを折り尽くした。
ああ。
これは―――なんて、滾る。

「……フゥー」

吐く息と共に、感嘆が漏れる。
此度も、良い戦であった。
最高の死合いとは程遠いが、それでも胸中を占めたのは、満足だった。

「……終わったか?」

物陰から、少年が姿を現す。
クールな雰囲気を纏わせつつ、何処か軽薄で。
だが、『芯』を感じさせる少年だった。

「……」
「おーい、ランサー……だっけか?」
「―――嗚呼、済まぬ。感慨に耽っておった」

くるりと振り返った武人…ランサーのその姿からは、既に身に纏った覇気はを控えている。
その変貌に少年は驚いたが、如何な武人と言えど、常時戦に興じている訳ではない。
出逢う度に殺しては生きていくのすら難しかろう―――とは、ランサー談だったか。

「さて。主の名は……『クリーン』だったか」
「『グリーン』だよグリーン。それじゃ綺麗になるだけだ」
「おっと済まんな。グリーン……グリーン、良し覚えたぞ」

うむうむと頭を振るランサーに、グリーンはふう、と溜め息を吐く。
実のところ、グリーンは聖杯戦争については何も知識を有していない。
いつも通り彼の世界でポケットモンスター―――縮めて"ポケモン"―――と共にバトルに興じ、絆を育み、ポケモン図鑑の完成へと一歩一歩進んでいた。
……はずだった。
彼の世界では、誰が落としたものかは知らないが道具が落ちていることが稀にある。
ポケモンが盗んで落としたのだろうとか、誰かが要らぬと棄てたのかは知らないが。


兎も角、誰の仕業とはわからないが落ちているのだ。
そして。
いつもと同じように道具らしきものを拾ったのだ。
―――白紙のトランプ。
ジャグラーやギャンブラー、火吹き野郎が落としたのかとも思ったが、白紙というのはどうも違和感がある。
そうこうしている内に―――気づけば、此所にいた。
見たこともない街。
相棒のポケモンすら、手持ちにはいない。
こんな状態では街の外にも出られない。
こんな危険な状況でよく記憶を失っていたとはいえのうのうと生きていたものだと自嘲する。
そうして。
とりあえず元の場所に帰るためにモンスターボールでも買って鳥ポケモンでも捕まえなければ、と歩き出した後に出会ったのが、ランサーだった。
直ぐに襲ってきた剣士と戦闘を開始してしまったが、色々な事を話した。
取り敢えずはお互いを知ることだろうと。
自分は祖父の目的であるポケモン図鑑の完成のため冒険していたこと。
ポケモンリーグという強さの頂点に立ったこともあること。
……そして、すぐに負けて幼なじみに座を奪われたこと。
そして、ジムリーダーにもなったこと。
その全てを、ランサーは静かに聞いていた。

「ふむ。言うならば軍師のようなものか。
そして最強の座に立ったが、負けたと」
「まあ、そうなるな。……そう省略されると何か、こうモヤモヤするけどな」
「その主を倒した"レッド"とやらは、今どうしている?」
「さあな。無口なヤツだからな。どっかで武者修行でもしてんじゃねーの?」

再度ふむ、と顎に手を置くランサー。
その所作は戦闘時の苛烈さとは裏腹に、礼儀を感じさせるものだった。

「さてグリーン。いや、マスターよ。
主に一つ問うておきたいことがあるが」
「? なんだよ」

直後。
ランサーの眼光が、グリーンを見据える。

「―――日和っているな、マスター」
「ひよ……っ!?」

放たれた言葉に、強く反発する。
誰が日和っているのかと。
毎日自分はジムリーダーとして腕を磨き、強くなっていると。
努力を怠っていないことを、強く主張した。
サーヴァントだか英霊だか知らないが。
ポッと出の人間に知ったような顔で分析されたことが、彼の腹を立てた。

「では聞くが。マスターはレッドのやらに座を奪われた後。
その座を奪い返そうと躍起になったことはあるか?」
「…それは…」
「無かろう。勝負に負け、後続を育てる位置に着く。
それも間違ったことではない。
しかし―――惜しいものよ。最強の座を一度は手にしておきながら、勝の心の高鳴りを知っておきながら安寧に浸るとは」

図星、だった。
何時からか―――自分はレッドを己と競うライバルとして見ずに。
何処か、共に生きる仲間として見てはいなかったか。
負け、越えることを止めてはいなかったか。

「…じゃあ、どうしろってんだよ」
「決まっておろう」

即断だった。
ランサーは、グリーンを見据え、当然のように、告げた。

「儂を使え」
「……はぁ!?」
「"強くなりたい"と言われれば他所を当たれと言うがな。
主がマスターとして選ばれたのも何かの縁。軍師と言うならば、この儂を使って聖杯戦争を勝ち抜いて見せよ。
呵々、そう案ずるな。儂も儂でこの戦争を楽しむまでよ。
主はその中で経験を積めばよい」

一言で言えば、呆然、だった。
この男は何を宣っているのかと。
要するに。
この男は、自分を使ってポケモンバトルをしろと言っているのだ。
思考がブッ飛んでいる。
常人には理解できない極みだ。
だが。
だがそれは―――何とも、胸が高鳴った。
それは、トレーナーとしての性か。
仲間と共に戦いを勝ち抜き、成長する喜びか。
それとも、戦士としての生き甲斐か。
何にせよ、その提案は、グリーンの心を高鳴らせた。

「…ああ、良いぜ」

「見せてやるよ」

「この俺様が!」

「世界で一番!」

「強いってことをな!」

ああ、見せてやろう。
この槍兵に、自分を侮ったことを後悔させてやろう。
自分を認めさせ、己以上の軍師だと見せつけてやろう。
……少し、変わってはいるが。
彼らなりの、サーヴァントバトルが幕を開けた。

【出展】Fate/Grand order
【CLASS】ランサー
【真名】李書文
【属性】中立・悪
【ステータス】
筋力B 耐久C 俊敏A 魔力E 幸運E 宝具―――

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
中国武術(六合大槍):A+++
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれだけ極めたかの値。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
+++ともなれば達人の中の達人。
ランサーとして召喚されているが、槍術含めて八極拳を極めている。

圏境:B
気を使い、周囲の状況を感知し、また、自らの存在を消失させる技法。 極めたものは天地と合一し、その姿を自然に透けこませる事すら可能となる。
アサシン時よりワンランクダウンしている。

絶招:B
無敵貫通及び己の性能アップ。
絶招とは、中国武術における必殺の意――すなわち“一撃必殺の奥義”を意味する。神槍として絶招を解き放った時、李書文の前に凡そ貫けないものは無くなる。


【宝具】

『神槍无二打』
ランク:― 種別:対人宝具 レンジ:2~5 最大補足:1

しんそうにのうちいらず。
『燕返し』または『无二打』同様に宝具として昇華されるまでに極まった術技。
生前の異名である「二の打ち要らず=无二打」がカタチとなったもの。
厳密には英霊の象徴であるアイテムとしての宝具ではなく、武術の真髄。
彼の修めた八極拳の絶招(奥技)。
達人としての優れた勁力から放たれる単純な破壊力だけでなく、自身の気で周囲の空間を満たすことで形成したテリトリーで相手の「気を呑む」ことで相手の感覚の一部を眩惑させ、緊張状態となった相手の神経に直接衝撃を打ち込むことで迷走神経反射(ショック死)を引き起こし心臓を停止させる。
「気を呑む」という中華の武術の技法は、むしろ仙道に近い。
西洋魔術の知識に照らし合わせた場合、自身の魔力を相手に打ち込み、相手の魔術回路を乱してダメージを与える、という解釈になる。
「毒手」とも言い表された。
効果は上記のアサシン召喚時の『无二打』と同じだが、槍を持つ分レンジが幅広い。精密動作性も素手とさして変わらないと推測される。

【人物背景】
ランサーとして召喚された、肉体が全盛期の李書文。
近代の生まれでありながら、数々の伝説を刻んだ中国の伝説的武術家。
八極拳の使い手としてももちろん名高いが、槍技の精妙さは「神槍」として讃えられたほどの腕前。
清朝末期、滄州に生まれた李書文は八極拳を習い始めるとたちまち頭角を表し、拳法史史上でも最強と謳われるまで上り詰めた。
千の技を学ぶより一の技を徹底的に磨き上げることで、文字通りの一撃必殺を体現した。
一度契約すれば仁義は通す。
人の理を知り情も有りながら戦に生き、生死を楽しむ戦士。

【サーヴァントとしての願い】
マスターを軍師として、この聖杯戦争を楽しむ。

【出展】
 ポケットモンスター 金・銀(ハートゴールド・ソウルシルバー)

【マスター】
 グリーン

【参戦方法】
 落ちていた道具を拾ったら白紙のトランプだった。何故こんなものが落ちているのかとも思ったが、技マシンが落ちている世界観なので特に気にはしていない模様。

【人物背景】
14歳の少年。
完全に自立している。
オーキド博士の孫で、ナナミという姉がいる。
主人公のレッドは幼なじみでありライバルでもある。
主人公と同様にマサラタウンを旅立ち、RGBP・FRLGの作中7度に渡って彼・彼女の前に立ちはだかる。
最後はポケモンリーグチャンピオンとして主人公とラストバトルを繰り広げる。
一人称は「オレ」。
自信家で、主人公と出くわすと嫌味や自慢話をたびたび切り出してくる。かなりエラそうな言い方をする。
だがポケモンバトルの結果は(負けた言い訳を探したりもするが)しっかりと認めるため、根っからの“嫌な奴”ではない模様。
その大口に見合った実力を備える手ごわい相手でもあり、特に物語ではいきなり画面外から現れてバトルに突入する初見殺しな一面もある。
現在はサカキに代わり、トキワジムの新しいジムリーダーに就任している。

【weapon】
  • なし
ポケモンはどうやらついてこれなかった模様。

【能力・技能】
一度はチャンピオンとして輝いたトレーナー、ジムリーダーとしてのズバ抜けた指揮能力と状況判断能力。
相手を見る判断能力や習性・特性を見抜く観察眼も高い。

【マスターとしての願い】
 特になし。
ランサーにこのサーヴァントバトルで己の強さを認めさせる。

【方針】
ランサーにこのサーヴァントバトルで己の強さを認めさせる。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2017年01月27日 02:58