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今日のレッスンはせつなちゃんとの組み合わせ。

普段の立ち位置は美希ちゃん、せつなちゃん、ラブちゃん、わたし。

だから、滅多にないチャンスにちょっと・・・


〝どきどき〟



「せつなちゃん、ちょっとイイかな・・・」

「ん?なぁにブッキー。」


わたしが作った練習着をせつなちゃんが着てくれてるだけでまた・・・



〝どきどき〟



はぁ・・・。これじゃまたミユキさんに怒られちゃう。
夏合宿が終わってから、妙にせつなちゃんを気にしてるわたしがいて。
最近では意識しすぎてダンス練習も身に入らず・・・。


「どうしたのブッキー。ぼーっとしてるけど。」

目の前には不思議そうにわたしを見つめるせつなちゃん。

「わっ!あ、いや、その・・・」
かわいいよぉ。せつなちゃん、ほんとかわいい・・・。



〝ぎゅうぅっ〟


気が付くとわたしはせつなちゃんを抱きしめていた。


「きゃっ!」
突然の事にびっくりするせつなちゃん。わたしも何でこんな事しちゃったかわからず。


「あっ!しーーーっ。静かに・・・。ラブちゃんたちに声聞こえちゃうから・・・。」
無我夢中だったのかも。今しかない!と、言うか。


ほんの数秒の出来事だったんだけど、わたしにはもの凄く長い時間に思えて。
せつなちゃんの顔はその時見る事は出来なかったんだけど。


せつなちゃんの体を離すと、聞こうと思っていた事を思い出す。



「せつなちゃんて、ラブちゃんの事・・・」
最後は声にならなかった。わたしが聞いといておかしいんだけど、聞くのが怖かったと言うか。


「ラブがどうかしたの?それよりブッキー、何で私を抱きしめたの?」
問うどころか、逆に質問されてしまい、わたしは行き場を無くして。


「あっ、あの・・・、その・・・、ラブちゃんが羨ましいなぁと思って。」
せつなちゃんを独り占めしてるんだもん。私の本音が私の体を動かしたんだと思う。


「羨ましい?どして?」
わたしの感情など理解出来るはずも無く。せつなちゃんはほんとにピュアだから。
それもまた彼女の魅力。


「せつなちゃん・・・。時間のある時でイイから。たまには・・・、わたしも構って欲しい・・・」
叶わぬ想いであると知りながら、つい言葉にしてしまった事を後悔する。

と、同時に一粒の涙が目からこぼれた。



「ブッキー?何で泣いているの?」


「ごめんなさい。へんな事したり、聞いたりして。でもね、わたしだってせつなちゃんの事・・・」


難しい顔に変わったせつなちゃん。わたしさっきから何してるんだろう。せつなちゃんは困ってるのに・・・。



「私、どうしていいかわからないわ。でも、今日の練習、精一杯二人で頑張りましょ!」
難しい顔から一転、今度はその明るい笑顔と声にわたしは救われた。泣いてしまった事も反省。



「そーだよね。頑張ろっ!二人なら上手に出来るって私、信じてる!」


せつなちゃんは不思議な魅力を持った子。ラブちゃんよりも早く出会いたかったな・・・

~END~

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最終更新:2009年09月26日 22:50