「えぇ~っ!?」
金曜日の放課後。
いつものドーナツカフェに、美希と祈里の叫びが響いた。
「せ、せつなちゃんに…」
「ラブレターですって!?」
「そうなの~! あたしもビックリだよ!!」
「???」
当のせつなは、今一つ状況を呑み込めない顔で、ドーナツを齧る。
「しかも送り主は、ちょーイケメンで有名な3年生!
この前引退するまでサッカー部のレギュラーで、女子人気ナンバーワン!
そんな人から、せつな宛のラブレターが来たんだよっ!
けさ学校に行ったら、せつなの下駄箱に入ってて…」
我が事のように目を輝かせ、状況を説明するラブ。
美希は興味津々といった風情で、
「で…せつな、返事はどうするの?」
「返事?」
「ラブレターの返事よ! まさか、もうOKしちゃったとか?」
テーブルから身を乗り出す美希に、圧倒されるせつな。
「へ、返事って言われても…手紙は読んだけど、よく分からなかったし…」
「え?」
その言葉に、美希は一瞬固まってしまう。
“よく分からないラブレター”。
そんなものが存在するのかどうかの方が、美希にはよく分からなかった。
言い回しが、やたら難解だったのだろうか。
それとも、字が雑だったか、逆に達筆すぎて読めなかったとか…?
「よく…分からない?」
「ええ。“つきあってください”って書いてあったんだけど、
何につきあってほしいのか、書いてなかったのよ」
「は?」
「一緒にサッカーをやりたいってことなのかしら?
でも私、サッカーのルールってよく知らないし…。
あ、それとも、私たちと一緒にダンスを習いたいとか…。
まさか! 私の正体を知っていて、プリキュアになりたいとか…!?」
「…ラブ、ちゃんとせつなに説明した?」
ラブはポリポリと頭をかきつつ、
「え、え~っと…タハハ、説明してませんでした…」
「やっぱり…あのねせつな、ラブレターっていうのは、
自分の好きな人に想いを伝える手紙のことなの。分かる?」
呆れ顔で説明する美希。
「好きな人に…伝える手紙…」
せつなはしばらく考え込んでいたが、やがて、
「…うん、分かったわ」
と、力強く頷いてみせる。
「よしっ! さすが、アタシの説明、完ぺ…」
「私、ラブに手紙を書くわ」
「…はい?」
「もちろん、美希やブッキーにも手紙を書くわ。
私、みんなのことが大好きだもの!
好きな人に手紙を書くのが、ラブレターなんでしょう?」
その答えに力尽きた美希は、テーブルに思い切り突っ伏した。
「み、美希たん!?」
「美希、どうしたの?」
「ごめん…ラブ、アタシ限界。後の説明は任せるわ…」
「う、う~ん…えっとね、せつな、ラブレターっていうのは…」
身振り手振りを交えつつ、熱心に説明するラブ。
せつなは小首を傾げつつ聞いていたが、首の傾きが次第に大きくなる。
「だからね、好きな人っていうのは、そういう意味じゃなくて、もっと他に…」
「他に好きな人…? あ、私、ラブのご両親も好きよ。とても優しいもの」
「だから、そうじゃなくって…あ~!」
どうしてよいか分からず、頭を掻きむしるラブ。
そんな二人のやりとりを見つめつつ、美希は苦笑混じりのため息をついた。
「はぁ…こりゃ、手紙書いたイケメン君も災難だわ。ねぇ、ブッキー?」
「………」
「ブッキー?」
「えっ!? あ、ごめん美希ちゃん、何の話だったっけ…?」
「ラブレターの送り主の話よ。ブッキー、どうしたの?」
美希が尋ねると、祈里は小さく頷く。
「うん。すごいなぁ…って」
「転入してから、一ヶ月も経ってないのにね。でも、当の本人があの調子じゃ…ねぇ」
「あ、ううん、そうじゃなくって」
「そうじゃ…なくって?」
「手紙を書いた先輩さんが、すごいなぁって」
意外な視点での評価。
思わず美希は、目を丸くする。
「すごい…って、何が?」
「うん。だって、断られるかもしれないのに手紙を書いて、
せつなちゃんに送ったんでしょ?」
「まぁ、そうよね」
「私には、絶対真似できないなぁ…って思って。
好きな人に手紙を書いて、想いを伝えるなんて…」
遠くを見つめて、呟く祈里。
ところが、
「えっ、なになに? ブッキー、好きな人いるの?」
「え、えぇっ!?」
突然話題に喰いついてきたラブに、思わず祈里は後ずさった。
「え、あああの、別に、いるというか、いないというか…」
「どんな人? あたしたちも知ってる人だったりするの?」
「えっと、その、知ってるというか、知らないというか、その…」
誤魔化しきれず困り果てる祈里に、美希が助け船を出した。
「ラブ、別にいいじゃない。誰だって、好きな人くらいいるわよ」
「え、美希たんも好きな人いるの?」
美希は一呼吸おいて、いつもの口調で言った。
一瞬だけ、祈里に視線を移したように見えたが。
「…まぁね。誰なのかは、とりあえずナイショ、かな」
「えっ…」
「えぇ~! いいじゃん美希たん、教えてよ~!」
「ダ~メ。ラブみたいなお子ちゃまには、まだ早いわよ」
「ひっど~い!」
口を尖らせるラブ。
だが、美希の口調から、恐らく冗談だとでも思ったのだろう。
決して、本気で怒ってはいないようだった。
そんな二人の会話を見ていたせつなが、ある異変に気付いた。
「…ブッキー、大丈夫?」
「え…?」
「顔、真っ青になってる。気分でも悪いの?」
「あっ…ううん、大丈夫。ゴメンね、せつなちゃん」
「そう? それなら、いいんだけど…」
「もう…帰ろっか?」
珍しく、真っ先に席を立つ祈里。
ラブと美希も、腕時計に目をやる。
「あら、もうこんな時間…」
「そうだ、今日の夕食、ラブが作るんでしょ?」
「あ、そうだった。買い物して帰らなきゃ! せつな、つきあってくれる?」
「ええ。こういうのも、ラブレターになるのかしら?」
「だから、そうじゃないってば…」
不毛なやりとりを繰り返す、ラブとせつなだった。
「そうだ! みんな、明日は予定空いてる?」
「明日? 美希たん、何かあるの?」
「ほら、ミユキさんがお仕事で、レッスンはお休みでしょ?
アタシは午前中だけ雑誌の撮影があるけど、午後は暇だから…。
みんなで、久々に買い物でも行こうかなって」
「あちゃ~…ゴメン美希たん、あたしとせつなはパス…。
明日は、家族みんなで出かける予定があるの」
「そっか…ブッキーは?」
「え、あ…その…私も、ちょっと用事が…」
「ブッキーもダメか…しょうがない、和希にでも電話しよっかな」
ちょっと残念そうに微笑む美希。
その美希から、祈里は逃げるように視線を外した。
その日の夜。
自室で一人、ため息をつく祈里の姿があった。
『美希たんも、好きな人いるの?』
『まぁね』
「美希ちゃん…好きな人、いるんだ…」
考えてみれば、当たり前のような気もする。
美人で、優しくて、大人っぽい美希のこと。
好きな相手どころか、恋人がいても全然不思議じゃない。
その“誰か”と腕を組んで歩いたり、デートしたり…。
想像すると、目の前が真っ暗になるような錯覚に襲われる。
「そうだよね…美希ちゃんなら当然、だよね…」
机の引き出しを開ける祈里。
中にあった封筒を見て、ため息をまた一つ。
半年以上、机に入れられたままの封筒。
その中に封じ込められた想い。
伝えられない、許されない、想い。
祈里自身は、そう思っていた。
そして。
封筒には、宛名が記されていて。
「 蒼乃美希 様 」
~ To Be Continued ~
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~おまけ~
イース「投下初めて…だと?信じられないな、GJ!」
ラブ「そうだよね!スッゴク上手い~」
祈里「なんで私の心のなかがYMさんには見えるのかなぁ?」
タルト「よっぽどパインはんの気持ちがバレバレなんやろうな」
シフォン「プリプ~!」
せつな「ねぇ美希、ラブレターって、ラブの書いた手紙のこと?」
美希「だから違うから!」
祈里「続きが気になるわ、今夜投下あるかしら」
ラブ「きっとあるよ!ワクテカだね~」
美希「アタシ授業が手につかないかも…」
祈里「あぁっ美希ちゃん!鼻血出てるよ!」
せつな「どして?」
イース「これだから人間というヤツは…!」
最終更新:2011年02月27日 22:41