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 好きな人がいます。


 とても優しくて、あたたかい人。


 今までずっと、一緒にいてくれた人。


 それは、許されない気持ち。


 伝えたらきっと、あなたと“友達”じゃいられない。


 でも、それでも。


 あなたが、好きです。


【 message for you ・ 最終回 】


「美希ちゃんは悪くない…。
 悪いのは…本当に悪いのは…私なの…!」

 絞り出すような、祈里の声。
 美希は涙に濡れた瞳を、親友に向ける。

「ブッキー…?」
「私が…私がいけなかったの。私が、勝手に意識したから…」
「…意識?」
「美希ちゃんは、大切な友達で、幼なじみなのに。それなのに、私が…っ」

 そこまで言って、祈里は言葉に詰まる。
 その先を口にしたら、どうなるだろう。
 きっと美希ちゃんは、私を嫌いになる。
 気持ち悪い子だって、遠ざけるようになる。
 会えなくなって、話せなくなって。
 ダンスだって、プリキュアだって、いっしょにはできない。
 それでも、私は。

「私…私が美希ちゃんを、好きになったから…!」
「えっ…!?」

 もう、止まらない。

「ずっとずっと、友達だと思ってた。
 でも…でも、いつのまにか、美希ちゃんを好きになってた…」
「……!」
「女の子同士だって、分かってる。
 気持ち悪いって、分かってる。
 でも、それでも、美希ちゃんが…好きで…。
 好きで、好きで、好きで…たまら…なくって…。
 ごめんなさい…美希ちゃん…本当に、本当に…ごめ…な…さ…」

 それ以上は、言葉にならなかった。
 静まり返った部屋に、祈里の啜り泣く声だけが響く。

「ごめん…なさ…美希…ちゃん…美希…ちゃ…許して…許してっ…!」

 時折漏れるのは、ひたすらに謝罪の言葉。
 長年の友情も、絆も、全て砕け散ってしまった。
 きっと、二度と、こんな風には会えない。
 目も合わせない、言葉も交わせない、触れることもできない。
 絶望と恐怖で、涙が後から後から溢れてくる。

 だけど。

「…ブッキー」



 美希の声は、優しかった。
 そして、肩に手が触れる。

「…ごめん…!」
「え…?」

 一瞬、何が起きたのか、祈里には分からなかった。
 ただ、気がついた時には。
 祈里は、美希の両腕に抱きしめられていた。

「美希…ちゃん…?」
「ブッキー…アタシも、アタシも…」

 美希の声も、涙で震えていて。

「アタシも…ブッキーが好き…ずっと、ずっと前から、ブッキーが好きだった…。
 ブッキーのコト、好きで…ずっと、好きで…!」

 祈里を抱きしめる両腕も、小刻みに震えていた。 




 …のだが。

「え、えええええええっ!?」

 祈里は美希の両腕から脱出すると、壁に激突するまでベッドの上を後ずさった。

「…って、何よそのリアクション」

 突然のことに、美希も唖然として祈里を見つめる。

「だ、だだだ、だって、美希ちゃんが、私を…って…」
「ええ、言ったわよ」
「み…美希ちゃんが、私のコト、す…すす…好きだ…って…」
「だから、今言ったじゃない」
「だだ、だって、美希ちゃんこの前、好きな人がいるって」
「ええ、言ったわね」
「それなのに、私のコト…」
「だから、アタシの好きな人っていうのは、ブッキーのコト」
「え…う、嘘…」
「あ~~~~っ、もう!」

 しびれを切らした美希が、声と共に立ち上がった。
 床に置いてあった自らのバッグを取り上げ、中から出したのは…。

「ハイ、証拠物件!」
「あ…それ…」

 あの時の、ロケットだった。
 昨日夢に見た、美希のロケット。

「中、開けてみて」
「う…うん…あっ!」

 写真には、並んで微笑む二人の少女。
 見覚えがある、ありすぎる。
 だって、私の机の上にも、同じ写真があるから。


「この写真…」
「初めてブッキーが、ダンスレッスンに来た時の記念写真。
 あんまり可愛い笑顔だったから、その写真にしたの」

 アタシも隣に写ってるしね、と美希。

「じゃあ…あの、美希ちゃん…本当に…」
「…ん。アタシも、ブッキーが好き。
 ず~っと悩んでて、迷ってて…ブッキーに、先越されちゃったね」

 悪戯っぽく微笑む美希。
 だが、その笑顔は、途端に困り顔になった。

「…ってブッキー、泣かないでよ…」
「だ…だって、だって…美希ちゃんが、美希ちゃんが、私なんかのコト…」
「“なんか”じゃないよ」

 美希もベッドに上がり、祈里の手を優しく握る。

「え…」
「とっても優しくて、とっても可愛くて、とってもあったかくて。
 一緒にいると安心する、陽だまりみたいな女のコ。
 そんなブッキーが、アタシは好き。…大好き!」
「み…美希ちゃん…美希ちゃん…っ!」

 美希にしがみつき、大声で泣きじゃくる祈里。

「あ~、も~、泣かないでってば…」
「だ…だって…私、美希ちゃんのこと、ずっとずっと…好きだったから…」
「うん」
「美希ちゃんは美人で、大人っぽくて、カッコ良くて、何でも一生懸命で…」
「うん」
「真面目で、まっすぐで…怒ると、少し怖いけど…とっても、とっても優しいの…。
 そんな美希ちゃんが、好き…大好き…!」
「…うん」
「美希ちゃん…美希ちゃん…!」
「…うん…アタシも…アタシも、大好き…」

 美希は、任せるままにしていた。
 祈里の、愛しい人の、背中を優しく撫でながら。

 やがて。

「…落ち着いた?」
「うん…」

 ようやく泣きやんだ祈里が、顔をあげた。
 ずっと泣いていたせいか、目は真っ赤になっている。

「あっ…ごめんなさい。私のせいで、美希ちゃんの服が…」

 見ると、美希のブラウスが涙でたっぷりと湿っていた。

「あら。…まぁ、しょうがないか。今回は大目に見るわ」
「でも、せっかくの服が…」

 オロオロする祈里の姿に、美希は何かを思い立ったのか、ニヤリと笑った。

「ね、本当に悪いと思ってる?」
「えっ? う、うん。だって、私のせいで…」
「じゃあ…一つだけ、アタシの願い事を何でも聞く…ってのはどう?」
「えぇっ!?」
「悪いと思ったんでしょ?」

 ずいっと身を乗り出す美希に、

「う…うん…」

 圧倒されたまま、頷いてしまう祈里。

「ふっふっふ~、じゃあ、ねぇ~…」

 ニヤニヤと笑いながら、美希の顔が近づいてくる。
 …どんなこと、要求されるの!?
 あわあわと混乱する、祈里の耳元で。
 美希は、そっと囁いた。


「…名前で、呼んでもいい?」


 肩に手を乗せて。
 小さな小さな声で。
 でも、とっても嬉しい願い事。

「……うん」
「…アリガト。大好き…祈里」
「美希ちゃ……んっ……」
「ん……」

 二人が重なって。

 時が止まって。


 そして、また動き出して。

「ふぅ……ふ、ふふっ……やっぱり、ちょっと照れるね。祈里…って」
「ふふっ…うん。でも…私、嬉しい」

 “ブッキー”じゃなくて、“祈里”。
 すごく、すごく、特別な感じがするから。
 満面の笑みを浮かべる祈里を、美希が

「あ~っ、やっぱり可愛いっ!」
「きゃっ! み、美希ちゃん!?」

 ぎゅ~っと、抱きしめる。

「可愛いし、優しいし、抱き心地も最っ高だし! …よし、アタシ決めたっ!」
「決めた…って、何を?」
「これまで悶々としてた分、祈里に目一杯甘えるっ! 目一杯、祈里とイチャイチャする!」
「み、美希ちゃん!?」

 親友の、否、“恋人”の突拍子もない発言に、驚く祈里。

「…ダメ?」
「え、あ、ダ、ダメじゃないけど…」
「じゃ、決まりね。今まで以上に…いっぱい、い~っぱい! 祈里を好きになる。ねっ?」

 ニッコリと、今までで一番の笑顔。
 そんな美希に、祈里もつられて笑顔を浮かべた。

「…うんっ! 私も美希ちゃんを、もっともっと好きになる!」
「祈里、大好きっ!」
「美希ちゃん…大好き!」

 二人はしばらくの間、笑顔で抱きしめあっていた。


そして、しばらくして。

「…あ、そういえば」

 美希が何事か、思い出したようだった。
 抱擁を解かれて、祈里は困惑する。

「美希ちゃん?」
「あの中身、見てなかったわよね」
「…中身? …あっ!?」

 見ると、美希の手には例の手紙が。

「コ・レ。アタシ宛てだし、読んでもいいわよね?」
「ダ、ダメっ!」

 慌てて取り返そうとするが、美希は涼しい顔で祈里から逃れる。

「祈里からの手紙で、アタシ宛てで、結果こうなった…ってことは、コレ、ラブレターよね?」
「えっ!? あ…あの、その…」

 途端、真っ赤になる祈里。
 その純情な反応に、美希はニンマリと笑う。

「祈里からアタシへの、愛が綴られてるってワケよね。
 さぁ~て、中身は…っと」 
「ダ、ダメだってば!」

 飛び付く祈里。
 美希は手紙を持った腕を伸ばし、その追及をかわそうとする。

「いいじゃない、減るもんじゃないんだし」
「そういう問題じゃ…もう、美希ちゃ~んっ!」


 美希ちゃんを好きな気持ち…私、完璧。


 祈里をずっと好きでいるって…アタシ、信じてる。


~ Fin ~


3-677ではその後の二人の様子が…
最終更新:2009年09月22日 00:17