アットウィキロゴ

3-664

「あれー、お嬢ちゃん一人?」

「うん。ちょっと忘れ物したから」
「ドーナツおまけするよ」
「あ、ごめんね。ちょっと急いでいるから」


初夏の夕方。
まだ日が高いといっても、森の奥に行くのだから、少しでも早いほうがいい。

後ろから、冷たいとか、グハッ、とか切れ切れに聞こえてきたが、構わず進む。


占いの館は、森の奥の洋館。
アタシは生まれた時からこの街に住んでいるが、今まで森に洋館があるって聞いたことがない。
洋館の存在を知ったのは、つい最近。

もしかしたら、子供が洋館で遊ばないようにと、大人たちが存在を隠していたのかもしれないけど。


もし、アタシ達が子供の頃、洋館の存在を知っていたら、
多分、肝試しとか称して、探検に行っていただろうな。




ラブはああ見えて、怖がり。
雷の音とかが苦手。本人は必死に隠そうとしているけど。

ブッキーはああ見えて、豪胆。
おばけ屋敷にいったときも、アタシやラブの知らない動物の名を挙げ、
あのおばけさん、似てるー。可愛いよね。と言ってきたっけ。
って、ブッキー、誰も知らないよそんな動物。


知らず知らずのうち、笑みがこぼれ、緊張が少し解けた気がした。

あ、アタシ、緊張しているんだ。
そう気付き、深く息を吐く。


洋館は目の前にあった。


どう見ても、アタシの生まれる前から建っているよね。
目の前の古ぼけた洋館は、そう思って見ているせいか、禍々しく見える


意を決し、扉の前へと進む。

すると、突風が吹き、扉が開いた。


「ようこそ、占いの館へ」
扉の開いた先には、東せつなが立っていた。


3-714へ続く
最終更新:2010年01月11日 17:10